また、会場となった高齢者施設に入居する高齢者からは「受験のお守りを作って持たせる」などの応援があり、子どもたちから感謝を受けるという循環もあるという。おそらく子どもたちにとっては、学習指導を行う支援員・学生ボランティアなどとの交流も含め、「コミュニティへの参加」「安定した人間関係を、年長の人々との間に作る」という機会でもあるだろう。
もちろん、問題を抱えているのは、子どもたちだけではない。その親世代にあたる生活保護当事者もまた、最終学歴は中卒・高校中退であることが多い。職歴も、アルバイト・パート・派遣などの不安定就労を転々としていることが多く、就職活動時に魅力としてアピールできる職歴がない。埼玉県では、50歳未満の稼働年齢層の生活保護当事者に対しては、フォークリフト・警備・介護ヘルパーなど、就労に結びつきやすい資格取得・職業訓練を提供している。
この他に提供されている住宅支援も含めると、
「住宅を確保し、安定した生活が送れるようにし、職業教育から段階を追って就労と職場コミュニティへの参加機会を、子どもたちに対しては教育と地域社会への参加機会を」
というモデルが、埼玉県では、ある程度は機能していると見ることができそうだ。就労可能なはずなのに就労しないことの背景には、「働けるのに働かない」といった本人の心がけの問題以上に、さまざまなコミュニティや人間関係からの孤立がある。
孤立から困窮者本人を救うこと自体は、悪いことではない。しかし筆者は、心に引っかかりを感じてしまう。「社会参加」「人とつながる」が、行政による「させてあげる」「してもらう」であり、困窮している本人の主体性は期待されていないということに。
「貧困率を下げて進学率を上げる」は
生活保護基準引き下げと両立するか?
では、議員・閣僚たちは、子どもの貧困の連鎖について、どう考えているだろうか?
この5月31日の厚生労働委員会では、山井和則衆議院議員(民主党)による質疑と、田村厚労相らによる答弁も行われた。