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  EXP×1000 作者:avu
番外編 40年の重み
私の名は、トラ・エヴァンス。

城の正門を守り続けて40年。

未だこの門を破られたことはない。


私の真面目な勤務態度が評価され、昇進の話も何度かあった。

しかし、私はその全てを断った。

門番は初めてもらった定職であり、ここで道を訪ねてきた女性と恋に落ち結婚した。

この門はいつしか私の人生の一部となっていたのだ。

そんな私を見て、周りはいつしかこの門をトラの門と名付けた。

今では国王にも浸透している名前だ。

そんな愛するトラの門とも後3日でお別れである。

私は定年を迎え、これからは新たな若者にこの門を託すことになる。

そんなときにあの男は現れた。


昼食を食べ終えた頃、馬車がやってきた。
勢いよく馬車は止まり、男が飛び出す。

「クイ・アルレリックだ。
元Cランクハンター。
国王に大事な話があり、家から急いできた」

「国王様は忙しい、早々に立ち去れ」

「大事な用だ。
きっとこの国にとって有益になる」

「それでもダメだ。
身分もはっきりしない者を城に入れる訳にはいかない」

「ギルド証ならある。ほら」

そう言って男は、ギルド証を差し出した。
どうやら本物のようだ。

だが門を通すことができるのは、一部の貴族と、ハンターはSランクからだ。

そのことを説明すると、男は肩を落とし帰っていった。



次の日、
この門とも後2日。

門は今日も変わりなく、硬く閉ざされている。

その門を睨む男が一人。

クイ・アルレリックだ。

男は近づき「どうにかならないか」

「ならない」私は冷たく跳ね返す。

男は肩を落とし、また帰っていくが、20mほど離れた場所で立ち止まった。

あの構えは…
助走をかける構えか!?

飛び超える!?
このトラの門を!?

トラの門は5mもある巨大な門だ。

人間が飛び越えられるものなんかじゃない。

でもあの男の目は本気だ。

だが、男は越えられなかった。

そして、今日も帰っていった。


次の日、今日でこの門とお別れだ。

なんとも感慨深い日になるはずだったが、
門を睨む男が一人。

もちろん、クイ・アルレリックだ。

「またお前か」今日は私から声をかけた」

「入れてくれ」

「なぜそんなに国王様に会いたい」

「息子が一人、天賦の才を授かった。是非、国王のために役立てたい」

「息子のためか」

「そうだ…

いや、すまない嘘をついた」

男は本当の事情を全て私に話した。

「はっははは」
こんなに笑わされたのは初めてだった。

貴族になりたいから、国王に恩を売りたいとは。

「5時まで待て。私の仕事が終わったら城に入れてやる。
それまでは死んでも通すわけにはいかない」

「本当か!!ありがとう」


そして時間を迎え、私は40年の仕事に幕を引き、男を城に入れた。

国王に会いたいと告げたらすんなりと話は通った。

私の40年は伊達ではなかったようだ。


「国王様、私はトラの門を守ってきたトラ・エヴァンスと申します」

「知っておる。40年間もご苦労じゃった」

「ありがとうございます。
40年間お世話になりました。

最後にお願いがございます。
後ろの男の話を聞いてはくれませんか?
息子に天賦の才があるとか」

「ほう、お主が入れた男か。
興味がある、話せ」

あとはこの男の頑張り次第だ。

私は帰るとしよう。

家では妻と、久々に戻ってきた子ども達が待っている。















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