父もバカ
男に生まれたからには最強を目指せ。
私達3兄弟は父にそう言われ続け、育てられた。
優秀だった兄達は父の教え通り強く逞しくなった。
まだ、若干17と18の歳でランクCのダンジョンに行くのは本当に凄いことである。
最高ランクCでハンターを終えるというのが最も多い層である。
それを踏まえると、やはり兄達は才能に恵まれた存在だ。
バカではあるが、兄達をここまで育てあげた父の腕は確かなものだ。
兄達は感謝しているし、私も尊敬している。
そんな立派な父だが、
実のところ心の奥底では貴族や王族などに憧れている。
父は少しミーハーなのだ。
これは母をはじめ、兄達も私も知っている。
本人は気づかれていないと思っているらしい。
私の曲がる剣事件の夜、父はすぐに家を飛び出した。
母にも行き先を告げず、馬車を走らせどこかへ行ってしまったのだ。
「お前の剣の腕に嫉妬して、武者修行に出たんじゃねーか?」
ライ兄さんがバカな憶測を口にする。
「いや、きっと祝いの酒を急ぎで買いに行ったのだろう」
こちらもバカ。
父さんはランクCでハンター生活を終えた人物だ。
嫉妬しているなら、とっくの前にお前たちに嫉妬している。
それにこの家は誰も酒を飲まないだろ!!
兄達は考えてからものを話すというのができないらしい。
あれから3日、
私は更に剣の素振りを極めた。
一日5万回、つまり3日で体には1億5000万回の経験だ。
私の剣はとうとう神道といっていい領域まできた。
剣が自由に、流れるように進む。
気のせいか、剣の呼吸まで聞こえてくる気がする。
それは気のせいか。
でも、剣は明らかに軽くなった。
筋肉も1000倍の早さで強くなっているが、それでは説明がつかないほど軽い。
正に剣と一体化したような感覚。
私は新世界の扉を開いたかもしれない。
そして3日後の日が暮れた頃、父が戻った。
「サイ!!
国王の三女、レイン姫との縁談を取ってきた。
正式なものになるかはお前の腕を見てからだそうだ」
父は満面の笑みを浮かべて言った。
薄々予想していたが、
まさか父に王族から縁談を取ってくるほどのプレゼン能力があったとは。
父は文官だったらもっと大成していたのでは?
贔屓目かもしれないがそう思えてくる。
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