曲がる剣
EXP×1000
つまり経験値1000倍!?
あり得ない。
こんなスキルが存在するはずがない。
かつてEXP×2のスキルを巡って、
Sランクのハンターが決闘したと聞いたことがある。
EXP×2を英雄級2人が命がけで奪いあったのだ。
では、1000倍じゃどうなる?
私は怖くなり、すぐさま家に帰った。
母に何も告げず、すぐ様ベッドへと潜り込む。
「どうしよう。どうしよう。どうしよう」
私はまたもテンパっている。
スキルは自分から話さなければまずバレることはない。
私は今死ぬ気でこの事実を隠さなくてはならない。
もしもバレれば、タブーを犯しててでもスキルを奪いにくる輩が現れるだろう。
それだけは勘弁して欲しい。
こっちの世界でも一応人生を全うしたい。
…待てよ。
私はもしかしたらもの凄い勘違いをしているかもしれない。
EXP×1000などあるはずがない。
もしかして他の意味があるのでは?
まぁものは試しだ。
私は剣を取り出し、素振りを始めた。
「おっなんだか調子がいいな」
次第に私は夢中になり、日が暮れるまで剣を振り続けた。
不思議と疲れが出ない。
むしろ、振れば振るほど集中力は高まり、体力も増加した。
私は夢中になりすぎて、すでにEXP×1000のスキルの恩恵を受けていることに気づいていなかった。
「サイ、お前の初ダンジョン祝いだ。
新しく盾を買ってやったぞ」
いつもの通りライ兄さんがノックなしに私の部屋へ来る。
「お前何時だと思ってんだ。
いつまですぶ…」
そこまでライ兄さんは言い、
驚いた顔をし部屋から飛び出した。
すぐ様バカ兄は帰って来たが、なぜかフイ兄さんと父さんもいる。
「サイ、何なんだその剣さばきは」父さんが私を指差して言った。
そこで私もようやく気づいたのだが、私の剣は曲がっていた。
いや違う、あまりに滑らかな振りに、剣が曲がって見えていた。
フイ兄さんは剣の軌道に感動し、空いた口がふさがらないと言った状態だ。
私はそこでようやく理解した。
私は今日およそ2万回剣を振るったが、どうやら私の体には2000万回の素振りの効果が出ている。
これが実戦で役に立つかはわからないが、私は既に素振りの美しさなら国有数の人材になったかもしれない。
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