2013年6月18日(火)

風疹患者1万人超え

大越
「今年(2013年)の風疹の患者数が1万人を超えました。」

井上
「これは平成20年以降で最も大きな流行となった去年(2012年)1年間の、実に4倍以上です。
この風疹、妊娠中の女性が感染すると、赤ちゃんに障害が出るおそれがあり、実際に、障害がある赤ちゃんが生まれてきています。」

大越
「出産を希望する女性だけではなく、私たち男性もまた、感染源にならないよう予防措置が必要なのですが、国のワクチン行政の迷走もあって、ワクチンの接種が徹底しないのが現状です。」

風疹患者 地方にも拡大

松田
「全国的な流行となっている風疹。
鹿児島県ではこの薩摩川内(さつませんだい)市を中心に患者数が増えています。」



松田
「風疹がはやっていると聞いたことはありますか?」

「保育園でお知らせがあった。」

「(夫が)営業で回るから余計怖い。
いろんな所からもらってくるかもと思うと。」

鹿児島県内では、この半年で患者数は280人。
そのうち8割以上が薩摩川内市と隣のさつま町の患者です。
市内の病院の医師は、患者の傾向に特徴があると言います。

坂口病院 坂口由一院長
「男性がほとんど。
うちに来た23人の中では女性は3名。」

患者の7割以上が20代から40代の男性でした。
さらに、職場で感染した人が目立つと言います。

坂口病院 坂口由一院長
「職場の同じ部署、寮生活をしている人、そういったところでも接触があって、抗体を持たない人がいるのであれば、そこでどうしても広がってしまう可能性もある。」



今日(18日)発表された、全国の年齢別の患者数。
男性の20代から40代、女性の20代で多くなっています。
これは、これまでのワクチン行政の不備が大きく影響しています。
34歳以上の人は、子どものころ、風疹ワクチンが女性のみに義務づけられていたため、男性は接種していません。
さらに、23歳から34歳までの世代は男女とも接種の対象でしたが、義務ではなく個人の判断に委ねられたため、接種率が低下。
抗体がない人がこの世代に多いのです。
成人男性を中心に感染が拡大したことが妊娠中の女性に影響を与えています。

 

核心:繰り返された大流行

いかされなかった警鐘

今から9年前。
実は、今の流行を防げたかもしれない機会がありました。
当時、風疹が大流行。
予防接種を受けていない10代以上の世代で感染が目立ちはじめ、厚生労働省の研究班が対策の重要性を指摘していたのです。

研究班の一員だった 加藤茂孝さん
「これなんですね、緊急提言。」

研究班では、免疫がない世代への対策を急ぐよう提言。
“蓄積された免疫のない人に、予防接種をすることが重要”、“このまま放置すれば危機的状況になる。”

しかし国は、提言で指摘された免疫のない世代に、ワクチン接種を進める有効な対策を打ち出しませんでした。
そして去年、再び風疹が流行。
今年に入って、その勢いはさらに拡大しています。

研究班の一員だった 加藤茂孝さん
「いち早く成人男子をターゲットにしてもっと広く免疫をしていれば、ここまで広がらなかった。
後手後手にまわっている。
危険を察知したらすぐに動かないといけない。」

地方自治体 助成の限界

患者数が増え続けている薩摩川内市。
国の対策が示されない中、市は独自の取り組みを始めました。
ワクチンの接種費用の助成です。
助成額は6,000円以内。
この1か月でおよそ200人から申し込みがあり、利用者は増えています。

「助成が出ると聞いた時はうれしかった。」

しかし、助成の対象は妊娠を希望する女性や、妊婦の夫とその家族に限定されています。
市は、助成の財源を既定の予算から捻出。
感染者が多いとされる男性全般に広げるには、財政的に限界があると言います。

薩摩川内市 市民健康課 宍野克己課長
「実際やりたいが、全体をやるとなると5,000万円くらいかかってしまう。
どうしてもピンポイントで行っている。」




「薩摩川内市単独でやるには…。」

薩摩川内市 市民健康課 宍野克己課長
「単独では厳しい。」

“流行を止めてほしい” 国に直訴

成人男性への接種が進まない中、風疹によって子どもに障害が出た親たちが、昨日(17日)厚生労働省を訪れました。

西村麻依子さん
「私の感染源は夫でも家族でもありません。
どこからなのか不明です。」



要望を読み上げたのは、神戸市の西村麻依子(にしむら・まいこ)さん。
妊娠中に風疹に感染し、娘の葉七(はな)ちゃんは耳などに障害が出ました。
葉七ちゃんを含め、去年から続く流行で「先天性風疹症候群」と診断された赤ちゃんは、11人に上っています。

西村麻依子さん
「風疹の流行を食い止め、赤ちゃんを守るために国の積極的な対応を求めます。」

西村さんたちは感染の中心になっている大人に無料で予防接種を行うなど、国として積極的に対策をとるよう要望しました。

西村麻依子さん
「今まで生きてきた中で一番苦しい思いだったので、私のような思いをする方がいなくなるよう、皆が(ワクチンを)打てる体制を整えて頂きたい。」

被害者の訴えを国はどう受け止めたのか。
今後の対策について田村厚生労働大臣に問いました。

田村厚生労働相
「他の予防接種、まだ定期接種化されていない予防接種の感染者の数と比較しても、爆発的に多いということではない。
財政的な措置をして他の予防接種の疾病(と比べて)特別な対応というところまではきていない。」

動かない国 見えない被害拡大

井上
「スタジオには、取材に当たった報道局の松岡康子記者です。
風疹の流行が繰り返されてきたにも関わらず、国の動きが鈍いのはなぜなんでしょうか?」

松岡記者
「1つには『風疹による被害が、ほかの感染症に比べて大きくない』と捉えられているからなんです。
しかしこの1年で障害が出た赤ちゃんは11人、それでも多いと思いますけれども、それ以外にも、この風疹というのは妊娠初期に感染しますと50%以上の確率で赤ちゃんに障害が出ると言われているんですね。
感染した妊婦さんは、産むか産まないかの非常に厳しい選択を迫られているんです。
周りからも中絶を勧められて悩んでいた妊婦さんが、私が知っているだけでも何人もいらっしゃいます。
数には出てきませんが、風疹によって失われている命がたくさんあるということを知っていただきたいと思います。」

どう進める ワクチン接種

大越
「一方で、財政上のということもありましたけれども、全国民へのワクチン接種は難しいというのが現実であれば、効率的にワクチンの効果を上げていくためには、どういうふうにワクチン接種の対象を絞って考えていったらいいと思いますか?」

松岡記者
「今、接種する人が増えていますから、国もこのままいくとワクチンが足りなくなるおそれがあると言っています。
効率的な接種という意味では、最も重要なのは妊娠を希望する女性をまず第一に優先すべきだと思います。
抗体があるかどうかわからない女性で妊娠を希望している方は、ぜひワクチンを接種してほしいと思います。

そして、こちらをご覧ください。
女性の中でも最も注意が必要なのは、こちらの23歳から34歳までの女性です。
それより上の人たちは子どもの頃に風疹のワクチン接種が義務づけられていましたので、接種率は高いんですね。
ただ、こちらの年代の女性はあくまでも接種が努力義務だったために、接種を受けていない方が多いんです。
次に男性なんですが、23歳から34歳までの人は女性と同様に努力義務だったために、接種を受けていない人が多いです。
そして男性で最も注意が必要なのがこちらでして、34歳からの男性は定期接種の対象にならず、1回も接種を受けていません。
ですから今も患者の中で年齢別に見てみますと、この34歳以上50歳くらいまでの男性が多くの割合を占めています。」

井上
「ただ、個人に任せるだけでは進まないですよね。
国もやはり何らかの対策をとる必要があるのではないでしょうか?」

松岡記者
「そうですね。
そもそもワクチンで防げる風疹で1万人もの患者が出ている先進国というのは、日本以外にないと言われています。
ワクチン接種の費用はおよそ1万円前後しますので、個人で支払える人というのはかなり限られるとも思うんですね。
今、一部の自治体では接種費用を助成しているところも出てきていますが、これだけ風疹の感染・流行が全国に広がっていますから、国が一律にワクチンの接種費用を助成すべきだと思います。
そして対象が働いている人になりますから、接種しやすい環境を整えることも大切ですね。
職場や、夜間、休日などで風疹のワクチンが接種できるような環境を整えていくことも必要となっています。
ただ、ここまで流行していますので、私たちは国の対策を待っている時間もないんですね。
妊娠を希望する女性はもちろんのこと、それ以外の人も妊婦さんにうつしてしまう、感染源になってしまうおそれがあるということを自覚して、行動していただきたいと思います。」

大越
「かかるわけにはいかないし、うつしてもいけないということで、国の助成が待たれるのは当然ですが、やはり本当に必要だと、これを見てお感じになる方はみずから行動にうつしていただきたい。
それによって、制度や予防接種の輪が広がっていくといいと思いますね。」

<関連リンク>
ストップ風疹 赤ちゃんを守れ

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