安愚楽牧場:「赤字」申告、法人税0円
毎日新聞 2013年06月21日 02時31分
安愚楽牧場(栃木県那須塩原市・2011年8月に経営破綻)による特定商品預託法違反事件で、同牧場は顧客らに公表していた決算資料では黒字を続けながら、法人税の確定申告書では「赤字」を計上し、1999年度以降の少なくとも10年間の法人税を支払っていなかったことが分かった。警視庁捜査2課は、逮捕された元社長の三ケ尻久美子容疑者(69)ら旧経営陣が「二重帳簿」で経営実態を隠し出資金を集めていたとみて調べる。
◇顧客には黒字と公表
毎日新聞が入手した安愚楽牧場の確定申告書(98〜08年度)によると、99年度以降はすべての年度で所得金額をゼロかマイナスと申告。いずれの年度も、法人税を払っていなかった。一方、オーナーや顧客らに郵送していた決算書では、99年度から破綻直前の年度までいずれも黒字で、利益が5億円を超える年度もあった。オーナーらには税務署に提出した申告書の内容は知らされておらず、公表された決算書も貸借対照表と損益計算書のみで、個別の税目が分かる内容ではなかった。
牧場の監査役を務めていた税理士は毎日新聞の取材に対し、「税務処理は問題ない。税務署からも何も指摘はなかった」と話す。
しかし、決算書を見て出資した男性は「財務諸表を見た限りは何のリスクも不確実性もないと思った。だまされた自分が悪いが金融商品でリスク表示をしないのは不誠実」と憤る。捜査関係者は「投資経験の浅い主婦や財務諸表に詳しくない一般投資家に対し、うその数字を示して出資を募ったのは詐欺的行為ともいえる」と話している。【浅野翔太郎、福島祥、中川聡子】