日経トレンディ2013年5月号(4月4日発売)では、話題の最新列車から、全国相互利用が始まった交通ICカード、そして新幹線まで、鉄道のさまざまな面に迫る特集「乗ってわかった! 鉄道の正解」を掲載している。近畿日本鉄道が導入した、観光列車「しまかぜ」にも試乗した(この記事は「日経トレンディ2013年5月号」から転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります)。

 3月21日、近畿日本鉄道の新型観光特急「しまかぜ」の運行が始まった。しまかぜは、大阪難波駅、近鉄名古屋駅それぞれと三重県志摩市の賢島駅の間を、水曜を除き1日1往復する。チケットの売れ行きは好調で、4月22日分までの大阪難波発は完売。近鉄名古屋発もほぼ満席の状態だという(3月22日時点)。

 しまかぜが停車する伊勢市駅から程近い場所にある伊勢神宮では、今年、20年に1度の「式年遷宮」が執り行われる。今年1000万人近い数が予想される伊勢神宮の参拝客の利用を狙って、しまかぜは投入された。

[画像のクリックで拡大表示]
大阪難波・近鉄名古屋―賢島間を、いずれも水曜を除き1日1往復する。定員は従来の特急列車の半分以下の138人。個室とサロン席を除く全席がプレミアムシート。カフェ車両も備える
[画像のクリックで拡大表示]
今年、「式年遷宮」が行われる伊勢神宮。社殿を移す最も重要な神事「遷御」は内宮が10月2日、外宮は10月5日行われる。最寄り駅は伊勢市駅
[画像のクリックで拡大表示]
近鉄グループが運営する観光施設「志摩スペイン村」
[画像のクリックで拡大表示]

特等席は展望車両だが、一般車両でも十分満足!

 しまかぜは6両編成で、1、6号車が展望車両、2、5号車が一般車両。展望車両は床面が一般車両より72cm高く、客席からの眺望が良い。窓の大きさも一般車両が縦84cmなのに対し、展望車両は110cm。車両の先頭はガラス張りで、最前席はフロントビューを満喫できる特等席だ。

 そうなると展望車両に座りたくなるところだが、乗ってみると一般車両でも十分満足できるとわかった。まず、展望車両と一般車両のシートは全く同じ仕様。ゆとりある2+1の3列配置で、シートの座席幅が広い。さらに、前の座席との間隔は私鉄最大の125cm。身長172cmの記者は、十分足を伸ばせた。またシートの背もたれ部分に、鉄道車両では初めてエアクッションが設置されており、腰部の硬さを自分の好みに調節できる。硬さが自動的に変化して腰に振動を与える、リラクゼーション機能も備わる。

 走行中に感じたのは、揺れが少ないこと。これは、「横揺れを軽減するアクティブサスペンションを全車両に採用している」(近鉄)ため。揺れの面では、座席の重心が低いぶん、一般車両のほうが少ないと感じた。

 【ポイント】 すべての座席がプレミアムシート、リラクゼーション機能も備わる
 総工費37億円をかけたしまかぜ。個室とサロン席を除くすべての座席シートに、電動リクライニングやフッドレスト、背もたれの硬さを好みに変えられる機能などが備わる。1、6号車は展望車両。床面が高く、窓も大きい。車体の前面がガラス張りで最前席はフロントビューを楽しめる。
車体の前面がガラス張り
[画像のクリックで拡大表示]
前後のシート間は、私鉄では最大の125cm。ゆったり足を伸ばすことができる
[画像のクリックで拡大表示]
2+1の3列のゆったりとしたシート配置。一般車両の一部は車椅子対応席
[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]