向精神薬依存:8割、投薬治療中に発症 「医師の処方、不適切」−−専門機関調査
2013年06月19日
ベンゾジアゼピン(BZ)系といわれる向精神薬の依存や乱用に陥った患者の8割以上が、アルコール依存など別の疾患の治療中に発症していたことが、国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)の調査で分かった。BZ系は用量内でも乱用・依存に陥る可能性が指摘され、欧米では処方を避ける傾向にある。診察せずに処方されたケースも4割あり、調査した専門家は、医師の不適切な処方が発症につながったと指摘している。【和田明美】
2011年12月、同センターなど首都圏の薬物依存症専門医療機関4カ所が、BZ系と、近い系統の睡眠薬や抗不安薬を乱用するなどしていた20〜60代の87人(男性37人、女性50人)を調査。うち84%の73人が、調査対象の専門機関にかかる前の通院先で、アルコール依存や気分障害、不安障害、睡眠障害などの治療中に乱用や依存に至っていた。
依存、乱用するようになった薬は、調査対象者の89%の77人が精神科医療機関で処方されたものだった。知人や密売人などから入手したのは、いずれも1割未満だった。
処方時の問題は、BZ系で特に依存の危険がある薬を処方(7割)▽患者が薬をためている可能性を考えず漫然と処方(同)▽多種類の処方(5割)▽用量を超えた大量処方(同)▽診察なしの処方−−などがあった。
一方、患者は「不眠の解消」「不安・緊張感の緩和」「いやなことを忘れる」などを求めて乱用したものの、調査対象者の6割が暴力をふるったことを忘れるなどトラブルを起こしたほか、5割が過量服薬で救急搬送され、3割が交通事故や転倒で救急搬送されるなどしていた。
BZ系は、不眠や不安の解消などさまざまな場合で処方され、国内での向精神薬の依存や乱用の原因の約9割を占めるとされる。飲み過ぎるともうろう状態になり、健忘や転倒などの副作用が出る。1970年代に欧米で乱用・依存が問題化し、英国国立医療技術評価機構のガイドラインでは2〜4週間を超える使用は推奨されておらず、米国食品医薬品局も長期の使用は承認していない。
また、米国などでは90年代以降、新型の抗うつ薬が使われたことに伴い、BZ系抗不安薬の処方が激減した。日本では精神科以外でも広く処方され、抗不安薬の処方件数は欧米の6〜20倍とも言われる。