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<ネット選挙最前線>(2) SNS運動

◆強みは「友達」の輪

◆賛同候補の主張を発信

「希望日本投票者の会」の会合で、ネットを使った運動を呼びかける志太さん=東京・赤坂で

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 「政治を変えよう」

 今月四日夜、国会近くの一室。カラオケ店などを展開するシダックスの創業者、志太勤(78)は、この日が初対面の「友達」に笑顔で語りかけた。

 集まったのは三十人余。若い女性から年配の男性まで、世代を超えた顔ぶれを結びつけたのは、インターネットの交流サイト「フェイスブック」だった。

 志太は二年前、財団法人「希望日本投票者の会」をつくった。東日本大震災の後、政治が被災者に寄り添わず、混迷を深める姿に失望したからだ。

 「今こそチャンス。一緒にやりませんか」。その呼び掛けに会場が応える。「選挙のたびに『どうせ…』とあきらめの気持ちがあった」「政治の本音と建前にギャップがありすぎる」。政治への「選ぶ側」の不信感が次々と噴き出した。

 志太らは学習会を重ね、将来の脱原発や憲法の見直しなど、八項目の主張をまとめた。参院選では党派を問わず、主張に賛同した二十九人を推薦すると決めた。政治を変えるために、動きだす。

 そのための武器がネットだ。

 参院選でネット選挙運動が解禁される。有権者がフェイスブックや短文投稿サイトのツイッターなど、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)と呼ばれるネット上のつながりを使って、特定候補の応援や批判ができるようになる。

 志太はフェイスブックで仲間を募り、登録メンバーは六千人を超えた。メンバーにつながる「友達」を足し合わせれば、計算上は四百八十七万人もの大勢力となる。無論、すべてが票になるわけではないが「このネットワークこそが、力の源なんです」と志太。推薦候補の主張を動画で収録してネットで拡散させ、当選に向けて後押しする。

 SNSの威力を見せつけたのが、数十万人ともいわれる群衆が首相官邸前に押し寄せた脱原発デモだ。作曲家の秋山桃花もツイッターでデモを知り、現場に駆けつけた。「日本が変わると思った。明治維新のように」

 だが昨年の衆院選で、脱原発を掲げる政党は惨敗し、変化への予感は急速にしぼんだ。

 秋山は「票に結びつけないと、脱原発の目的は達成できない」と振り返る。その反省から三月、市民グループ「緑茶会」が設立された。米国の政治運動「ティーパーティー」(茶会)をもじって、SNSを使って草の根で運動を広げる戦略を描く。参院選では脱原発を掲げる候補と政策協定を結び、SNSで情報を流して支持拡大を目指す。

 「自分たちが政治を変えるという自覚を持つ。それが選挙」と秋山。投票先を決めるのに、政治家からの一方的な情報に頼るしかなかった構図を変え、選ぶ側が政治家を見極めて、自ら発信して共感の輪を広げる。新たな風をネットが起こすのか。参院選が試金石となる。(文中敬称略)