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【発明の名称】 写真廃液の処理方法
【発明者】 【氏名】宮崎 英男
【住所又は居所】神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真フイルム株式会社内
【課題】写真廃液のBOD及びCODと、浮遊物質量のいずれをも効果的に低減させ得る写真廃液の処理方法を提供すること。

【解決手段】酸化による前処理を施した後、担体に固定化された微生物によって該廃液に微生物処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。さらに該微生物処理済みの廃液に、酸化分解処理、超音波印加処理及び好熱性微生物処理から選択される少なくとも一つの余剰汚泥低減処理を施した後、該低減処理した廃水を前記固定化微生物処理用の処理槽に返送する工程を付加した写真廃液の処理方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真廃液に酸化による前処理を施した後、さらに担体に固定化された微生物によって該廃液に微生物処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
【請求項2】
写真廃液写真廃液に酸化による前処理を施し、続いて担体に固定化された微生物によって該廃液に微生物処理を施し、さらに該微生物処理済みの廃液に、酸化分解処理、超音波印加処理及び好熱性微生物処理から選択される少なくとも一つの余剰汚泥低減処理を施した後、該低減処理した廃水の少なくとも一部を前記固定化微生物処理用の処理槽に返送することを特徴とする請求項1に記載の写真廃液の処理方法。
【請求項3】
余剰汚泥低減処理が電解酸化処理であることを特徴とする請求項2に記載の写真廃液の処理方法。
【請求項4】
写真廃液の酸化による前処理が電解酸化処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
【請求項5】
微生物の固定化が包括法によって行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は写真廃液の処理方法に関するもので、従来微生物処理が困難とされていた写真処理廃液の実用的且つ経済的な処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真廃液は高濃度のBOD 、COD 、窒素、リンを含み、且つ、生物処理または化学処理によっても難分解性成分が多量に含まれている。写真廃液特にカラー現像液は種々の工業廃液の中でも最も処理が困難なものの1つであって、従来から多くの処理法が開示されているが、除去率・処理コストの両面で尚多くの問題がある。
【0003】
写真廃液処理に関して従来開示されている方法は、主として生物処理、化学処理及び物理処理である。生物処理法は、例えば活性汚泥法によるもので、通常廃液を10〜50倍に希釈したものを処理期間15〜50日でCOD の60〜80%、及びBOD の60〜80%が分解除去出来るとされている。化学処理(酸化法)にはオゾン酸化法、過酸化水素−第二鉄塩法(フェントン法)、電解酸化法等がある。オゾン酸化法は無機COD 成分の分解除去及び現像主剤である芳香族化合物のベンゼン環分解に有効であるが、有機BOD 成分を除去する効果は殆どない。フェントン法は有機・無機成分いずれに対しても効果があるが、処理コストが高い点に問題がある。一般に化学処理によるCOD の除去率は50%程度とされている。
【0004】
物理処理には高圧加熱法、噴霧焼却法、蒸発乾燥法等がある。写真廃液中には多量のハロゲン化物イオンが含まれているので、反応装置の応力腐食が問題となる。また、熱回収のための熱交換器のスケール、残渣、廃ガス等の処理にも問題がある。
【0005】
これらの従来技術の例には、例えば活性汚泥による写真廃液の処理法については、特許文献1に医療用X線写真廃液中のCOD を減少させる方法及び特許文献2にに現像廃液の処理方法が開示されている。また化学的処理法としては、特許文献3にに酸化剤として過硫酸塩を使用した方法、特許文献4にに強酸性液中に酸化剤を加えて硫黄化合物を安定化して析出させる方法及び特許文献5には過硫酸塩を加えて加熱する処理法が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの開示された写真廃液処理手段は、難生分解性のものも含む無機、有機の多種の化合物が混在した写真処理廃液を排水基準を満たすレベルまで処理するには不十分である。そのため改善方法として、上記した処理手段の組み合わせ、とりわけ酸化処理と微生物処理を組み合わせた処理方法が提示されている。例えば、特開平3−262594号公報には、過酸化水素酸化処理(フェントン法)と微生物処理との組み合わせにより、特開平4−235786号公報に電解酸化処理と微生物処理との組み合わせにより、また特開平5−96298号公報にオゾンガスによる光化学酸化と微生物処理との組み合わせにより、写真廃液のBOD及びCODの低減できることが開示されてる。
【0007】
これらの組み合わせ処理によってBOD及びCODの低減効果は向上するが、その反面、微生物分解率の向上に伴って余剰汚泥量が増大するというあらたな、かつ写真廃液組成に起因する問題が生じている。その結果として、BOD及びCODに関して排水基準を満たしても、浮遊物質量に関して排水基準を満たさないことになりがちである。写真廃液は、有機成分量に対して相対的に高い塩類濃度を有しており、廃液を希釈しても塩濃度が相対的に高い構成は変わらず、それが余剰汚泥の沈降、凝集、返送などの操作性を低下させるので、通常高くても3%以下でしかない都市下水や一般産業廃水を微生物処理する場合よりも浮遊物質量を増大させると考えられる。
【0008】
浮遊物質を減少させる手段として、特開平6−320184号公報には、電解処理と生物処理を組み合わせた写真廃液処理であって限外濾過膜によって汚泥を処理槽の系の中に保たせる方法が開示されている。しかしながら、写真廃液に対しては限外濾過膜は保守性、耐久性及び余剰汚泥の引抜きに係る作業負荷が加わるなどの問題があって、解決手段とはなりにくい。
したがって、写真廃液に対して、BOD及びCOD並びに浮遊物質のいずれをも排水基準値以下に低減させ得る実用的な廃液処理手段が強く望まれている。
【0009】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
【特許文献1】
特開昭59−42094号公報
【特許文献2】
特開昭63−242396号公報
【特許文献3】
特開昭49−58833号公報
【特許文献4】
特開昭49−64257 号公報
【特許文献5】
特開昭53−63763 号公報
【特許文献6】
特開平3−262594号公報
【特許文献7】
特開平4−235786号公報
【特許文献8】
特開平5−96298号公報
【特許文献9】
特開平6−320184号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した背景からなされたものであり、その目的は、写真廃液のBOD及びCODと、浮遊物質量のいずれをも効果的に低減させ得る写真廃液の処理方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的の解決方法を鋭意検討するなかで、対象が写真廃液であっても微生物を固定化できるような微生物処理を主体とする廃液処理条件を見出すに至り、それに基づいて本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
(1)写真廃液に酸化による前処理を施した後、さらに担体に固定化された微生物によって該廃液に微生物処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
(2)写真廃液に酸化による前処理を施し、続いて担体に固定化された微生物によって該廃液に微生物処理を施し、さらに該微生物処理済みの廃液に、酸化分解処理、超音波印加処理及び好熱性微生物処理から選択される少なくとも一つの余剰汚泥低減処理を施した後、該低減処理した廃水の少なくとも一部を前記固定化微生物処理用の処理槽に返送することを特徴とする上記1に記載の写真廃液の処理方法。
(3)余剰汚泥低減処理が電解酸化処理であることを特徴とする上記2に記載の写真廃液の処理方法。
(4)写真廃液の酸化による前処理が電解酸化処理であることを特徴とする上記項1〜3のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
(5)微生物の固定化が包括法によって行われることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
【0013】
すなわち、特許請求の範囲第1項の発明は、写真廃液に前処理として酸化分解処理を施し、その処理済み液を微生物処理する写真廃液処理方法において、微生物を担体に 担持・固定化して用いることを特徴としている。一般廃水の微生物処理に際して、微生物を固定化すると、微生物濃度が高められて生分解効率が向上することは知られていることである。しかしながら、写真廃液を固定化した微生物によって処理することは行われていなかった。その理由としては、前記したように微生物処理そのものが写真廃液に対しては効率的に行われないこと、すなわち写真廃液そのものが生分解しないため、そこで増殖する微生物が少ないので固定化が速やかに行われないこと、及び写真廃液が高い塩類濃度を有するため(廃液を希釈しても相対的な高い塩濃度の構成である)通常高くても3%以下でしかない都市下水や一般産業廃水とは異なって微生物の担体への 担持が行われにくいためである。しかしながら、意外なことに前処理である程度酸化分解した廃液に対しては、微生物の固定化が円滑に行われて、その結果として微生物濃度が高いレベルで維持され、分解率が向上し、余剰汚泥に起因する浮遊物が顕著に減少する。
【0014】
また、特許請求の範囲第2項の発明は、写真廃液を前処理としてある程度の酸化分解を行ってから、その処理済み液を担体に 担持・固定化した微生物を用いて微生物処理する前記第1項の発明の処理に加えて、さらに微生物処理した後の余剰汚泥含有廃水に余剰汚泥低減処理―酸化分解処理、超音波印加処理及び好熱性微生物処理のいずれか又はそれらの組み合わせによる処理―を施した後、余剰汚泥低減処理を施した廃水を該固定化微生物処理槽に返送することを特徴としている。上記した微生物の固定化の効果に加えて、余剰汚泥低減処理によって浮遊物質量を一層低減させることができる。
【0015】
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では生分解に係る「微生物」を「菌体」と呼ぶこともあるが、実質的に同義に解してよい。また、「写真処理廃液」とその簡略表現である「写真廃液」は、同義である。
【0016】
【発明の実施の形態】
[被処理廃液]
本発明の実施の形態の説明に先だって、発明の対象である写真処理廃液について述べる。写真処理廃液は、カラー写真或いはモノクローム写真の現像廃液の他、定着液または写真製版等写真工業で発生した多くの種類の廃液が含まれている。定着液は溶存している銀を回収した残液が処理の対象となる。通常これら種々の写真処理工程からの廃液は混合された状態で回収されて、処理される。写真廃液の組成はこれらの混合比率によりかなり変動するが、おおよそCOD 30,000〜50,000 mg/l、BOD 5,000 〜15,000 mg/l、TOC(Total Organic Carbon) 10,000〜25,000 mg/l、ケルダール窒素 10,000 〜15,000 mg/l、トータル燐 100〜500mg/l の範囲である。COD:BOD:TOC の比率は概ね 4:1:1.5でCOD が高い特徴があり、またC:N:P の元素比率はほぼ 100:100:1でN の含有率が高い特徴がある。
【0017】
写真廃液の成分は、現像液由来の成分や漂白液・定着液・漂白定着液由来の成分などが感光材料溶出物や処理中の反応生成物と混在しており、例えば緩衝剤(炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩など)、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、界面活性剤(アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等)酸化剤(鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸錯塩など)、ハロゲン化物(臭化アルカリ、臭化アンモニウムなど)、チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩など多岐に亘る化学成分を含んでいて、この多様性が効果的な廃液処理手段を見出すことを困難にしている。
多くの場合、廃液処理に際して、廃液は水洗水やその他の希釈水により5〜50倍に希釈されて処理される。
【0018】
[廃液処理工程]
本発明の写真廃液処理方法に係る廃液処理工程を図によって概略説明する。
図1は、請求項1の発明の実施形態を示す工程ブロック図であり、図2は、請求項2の発明の実施形態を示す工程ブロック図である。
図1において、現像処理工程から排出される写真廃液は、調整・貯留槽1に貯留され、均質化 (equalization)されたのち、前処理槽2に導かれ、前処理(予備的な酸化分解とも記す)が行われる。予備的な酸化分解が施された廃液は活性汚泥処理槽で代表される微生物分解槽3に制御された流量のもとで導入される。微生物分解槽3では、微生物を 担持・固定化した担体と廃液と空気とが接触して好気性分解が施されて廃液の酸化分解が進行する。この槽は、多段構成であってもよく、その場合は還流系が設けられていてもよい。
【0019】
図1の態様では微生物分解槽3は、槽31と槽32の2槽構成で内部還流系gが設けられている。槽31と槽32に含まれる固定化微生物は、同じ微生物種であってもよく、また例えば槽31が活性汚泥中の微生物が固定化されて投入されており、槽32にはEDTA分解菌が固定化されているなど異なった固定化微生物が用いられていてもよい。微生物分解槽3から調整された速度で排出された処理済み廃液は、沈降槽5を経てその一部は排出系eを経て排出され、残りは還流系f、余剰汚泥貯留槽6、還流系h1によって微生物分解槽3に返送されて微生物処理が反復される。別の態様としては、余剰汚泥貯留槽6からの返送汚泥は、還流系h1によって微生物分解槽3に返送されてる代わりに還流系h2によって前処理槽2に返送されて酸化による前処理と微生物処理が反復される。
【0020】
図2において、現像処理工程から排出される写真廃液が調整・貯留槽を経て、前処理槽2に導かれ、次いで微生物分解槽3に導入されるまでの工程は、図1に示したものと同じである。微生物分解槽3から調整された速度で排出された微生物処理済み廃液は、余剰汚泥低減槽4に導かれる。ここでは後述する化学的、物理的、生物的、あるいはそれらの組み合わせの余剰汚泥低減処理がなされ、余剰汚泥の分解、凝集、沈降などにより余剰汚泥量が減少する。余剰汚泥低減槽4を経た処理済み廃液は、直接または沈降槽5を経てその一部は排出され、残りは、還流系f、余剰汚泥貯留槽6、還流系h1によって微生物分解槽3に返送されて微生物処理が反復されるか、又は別の態様としては、還流系h2によって前処理槽2に返送されて酸化による前処理と微生物処理が反復される。
いずれの場合も、返送汚泥量の管理によって固定化微生物の濃度は、適切に維持される。
【0021】
[前処理工程]
前処理槽で行われる酸化分解処理は、写真廃液の被還元成分を部分的にでも酸化しうる酸化手段による処理であれば、いずれでも適用できるが、好ましい酸化手段は、電解酸化及び化学酸化法であり、電解酸化法がより好ましい。
【0022】
電解酸化法について述べる。写真廃液中には、一般的に多量のハロゲン化イオンが存在する。従って電解により塩素イオンは陽極で酸化されて塩素が生成し、塩素の一部は更に水と反応して次亜塩素酸イオンが生成するため酸化活性が増大するため、本発明の目的に好ましく適用される。その反面、電解液は高い腐食性をもっているので、電解槽はこれらの成分に耐える耐食性材料である白金、フェライト、ステンレス、酸化皮膜が速やかに形成される鉄等を選択する必要がある。陰極はこの電解酸化反応には直接関与しないが、反応液に対して不活性な材質である白金、ステンレス等が好ましい。例えば、陽極にはフェライト電極を、陰極にはステンレス電極等が好ましい。また、反応液中には多量の懸濁成分が含まれているため、電極への懸濁物の沈澱を防止して均一な酸化反応を起こさせ、電流効率を高めるためには回転陰極が好ましい。
【0023】
電解酸化処理の温度は常温或いはこれよりやや高い温度が好ましく、また、電圧は5.0 〜8.0 V 、電流密度は、0.005 〜0.01 A/cmが好ましく、より好ましくは0.05 〜0.5 A/cmがよい。また、電解は回分法でも連続法の何れでもよい。
電解酸化処理の程度にもよるが、好ましい条件ではこのプロセスによって廃液中のCOD の10〜20%が低減される。しかしながら、電解酸化処理の大きな利点は、COD の低減効果以上に、前記したように電解酸化処理後の廃液には担体に固定化した微生物を用いることが可能となり、微生物による生分解率が向上することにある。実際に、殆ど生物分解性がない現像主薬成分、EDTA、Fe+3−EDTA錯塩等の化合物の大部分が生物分解性物質に分解されているという分析結果が得られている。
【0024】
本発明の廃水処理方法における電解酸化処理では、高速度攪拌の電解酸化処理装置を用いると効果が増加する。本発明に適用される高速度電解酸化処理装置には、振動板を備えた攪拌装置を用いて電解液を振動板の振動のよって攪拌させて電解酸化を行なう処理方式も好ましく、振動周波数を適当に選択することによって、極めて高い電解酸化速度とCOD低減効果が得られる。
【0025】
本発明に好ましく用いられる攪拌装置の例としては、振動板を電動機と結合させて電動機の回転を振動板の振動に変換させ、その振動によって電解液に攪拌作用を及ぼさせる方式のものが挙げられる。その振動周波数は、10cycle/sec以上100cycle/sec以下であり、好ましくは15cycle/sec以上80cycle/sec以下であり、より好ましくは20cycle/sec以上60cycle/sec以下である。
【0026】
また、前記の好ましい攪拌装置は、少なくとも1個の振動板を有するものであるが、好ましくは複数個の振動板を配列させた構成である。複数個の振動板からなる攪拌装置の場合は、振動板の配列の形態は、好ましくは振動板の板面が一平面内になるように一列に並べた形態、振動板を板面を並行にして板面方向に直角方向に重ね合わせた多段式の形態、あるいは振動板の板面同士は並行であるが、板面が重ね方向と斜めになるように重ね合わせた斜め多段式形態のいずれであってもよいが、いずれの場合も各振動板の間に液流が確保されるように振動板同士は互いに一定間隔を置いて配列される。その間隔は、1〜200mmであり、好ましくは2〜150mm、より好ましくは、3〜100mmである。
【0027】
また、振動板の形状は矩形、楕円形、梯形、正方形、矩形又は正方形の各稜に丸みを持たせた形のいずれでもよいが、好ましくは矩形又はその稜に丸みを与えた形である。振動板のサイズは、電解酸化槽の大きさに応じて適宜選択することができる。目安としては振動板の片面の面積が電解槽断面積の1/1000〜1/5であり、好ましくは1/50〜1/5である。その厚みは振動板が金属板の場合はその長辺(長径)の1/100〜1/5であり、好ましくは1/10〜1/20であり、振動板が樹脂板の場合は、1/50〜1/5であり、好ましくは1/20〜1/10である。
【0028】
化学酸化法について述べる。化学酸化法としては、公知の化学的酸化手段、例えば、特開昭50−30361号、特開昭53−12152号、特開昭56−124485号、特公昭57−37396号、特開昭61−241746号等にも記載がある過硫酸塩、ハロゲン酸塩(とくに次亜塩素酸塩)、水溶性鉄(III)塩、鉄(III)アミノポリカルボン酸錯塩、過酸化水素(又はその前駆体)などから選ばれる酸化剤による酸化方法を適用できるが、好ましい方法としては、過酸化水素を用いる方法とオゾンを用いる方法が挙げられる。さらに前者では、鉄イオンを酸化触媒として用いるフェントン法が、また後者では紫外活性光の照射のもとでオゾンガスを廃液に注入する光化学的オゾン酸化法がとくに好ましい。
フェントン法による写真廃液の酸化処理は、特開平3‐262594号公報の第2頁右上4行目より同頁右下2行目に説明されている。
【0029】
オゾン酸化法は、オゾナイザー(オゾン発生装置)から導かれるオゾン含有空気を写真廃液に注入して行われる。この際にオゾン含有空気注入とともに紫外光による照射処理を行なうことが好ましい。紫外光を効率良く透過する容器に処理水を導びき入れオゾンを容器底部に設けたガラスボールフィルター(気孔径40〜50μm)を通して送気する。
【0030】
オゾンを発生させるには無声放電を行わせたり、コロナ放電を利用したりあるいは電解反応を利用するなどの方法が採られているが、本発明に用いるオゾン発生装置は、いずれであっても特に制約はなく通常市販されているものから選択して使用することができる。その中では無声放電を利用する方法が好ましい。無声放電は2つの電極の間に誘電体を介して交流高電圧をかけたとき、その間隙に起る放電現象を指すもので、放電の際にその空間に介在する酸素の一部がオゾンに変化する。誘電体は普通ガラスを用い、空間々隙は数mm、電圧は交流50〜500サイクル数千ボルトから場合によっては2万ボルトぐらいまでが使われる。
【0031】
オゾン発生装置は、平板型の相対する電極群からなるものや、筒状のオゾン発生管を縦型又は横型に配置したものなどがあるが、本発明にはそのいずれも使用できる。また原料は酸素、空気いずれでもよいが本発明においては空気を使用する方が安価である。
【0032】
このオゾン送気と同時に紫外光を照射するとオゾンが活性化されて酸化効率が向上する。紫外光は容器底部または内部または周囲に設置した水銀ランプ等の光源より照射される。水銀ランプはランプ内部の水銀蒸気圧により低圧、高圧、超高圧に分類されていてそれぞれ遠紫外の輝線,近遠紫外の輝線,紫外連続スペクトルを発するが、本発明の目的にはどの型のものでも使用でき、そのランプの電力は、COD値と廃液成分の分解性によって異なるが、目安として廃液量100kgに対して5Wから600Wが好ましく、中でも20Wから500Wがより好ましい。
化学酸化により分解される適当な量は、廃液の組成や濃度によって適宜選択されるが、電解酸化処理の場合と同じく廃液中のCOD の10〜20%が低減される程度が適切である。化学酸化による前処理の利点も、COD の低減効果は副次的で、化学酸化処理した廃液には担体に固定化した微生物を用いることが可能となり、微生物による生分解率が向上することにある。
【0033】
上記のオゾンおよび紫外光による処理については水処理技術第32巻1号3頁(1991)、工業用水第349号15頁(1987)、ACS Symposium Ser.(Am. Chem. Soc.) 第259号195頁(1984)などに記載されている。
【0034】
[微生物処理工程]
<担持・固定化方法>
本発明の微生物固定化担体の製造方法において、微生物の 担持・固定化方法としては、担体から生分解菌が流出しないように固定される方法ならばその種類、形式を問わない。具体的な 担持・固定化法としては、例えば、微生物が付着して生物膜を形成するような担体を用いる付着生物膜法、担体と培地を混合して微生物を培養する担持培養法、水不溶性の担体に微生物を結合させる担体結合法、減圧下で担体の孔隙内に微生物を封入する方法、2個以上の官能基を持つ試薬によって菌体内に架橋を形成させて固定化する方法、微生物を高分子のゲル内部や皮膜などに閉じ込める包括固定化法、さらに結合手段により共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法及び生化学的特異結合法などと分類される担体結合法が知られているが、本発明には、これらの公知の方法を用いることができる。中でも、付着生物膜法及び包括固定化法が好ましく,とりわけ包括固定化法が優れている。
【0035】
付着微生物膜法の特徴は、微生物を高濃度化することができ、処理効率を向上させることができる。また、通常は系外に洗い出されてしまうような増殖速度が遅い菌を系内に留めることができる。また、微生物が安定して棲息できる状態に保てることも特徴としてあげられる。
【0036】
包括固定化法の特徴は、菌体を高濃度に保持できるため、処理効率を向上させることができ、増殖の遅い菌を固定化できる。また、pH、温度等の条件変化に対する耐性が広く、高負荷状態にも耐えることができる。包括固定化法としては、アクリルアミド法、寒天−アクリルアミド法、PVA−ホウ酸法、PVA−冷凍法、光硬化性樹脂法、アクリル系合成高分子樹脂法、ポリアクリル酸ソーダ法、アルギン酸ナトリウム法、K−カラギーナン法等、微生物を閉じ込めることができ、系の中で微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば種類を問わない。
【0037】
包括固定化法の代表例としてアクリルアミド法の場合の微生物固定化ゲルの調製法について説明する。固定化ゲルは、架橋剤(例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド)を含有したアクリルアミドモノマー溶液と細菌(MLSS 20,000ppm程度の濃縮菌体)とを懸濁し、重合促進剤(例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)を添加し、3mm径の塩化ビニル製チューブ等の成型形に入れ、20℃で重合し、重合終了後、成型形から押し出し、一定の長さに切断して得られる。固定化ゲルの表面の細孔は、細菌より小さいため、包括固定化した細菌はリークしにくく、内部で増殖し、自己分解する。廃液中の汚染成分のみが細孔よりゲル内部に入り込み、内部の細菌により処理される。
【0038】
これらの固定化法のより具体的な方法については、「生物触媒としての微生物」100頁、福井三郎著(共立出版、1979),「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究, 13巻,9号(1990),563−574頁、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水, 34巻,10号(1992),829−835頁 などに記載されている。
【0039】
<微生物担持用担体>
次ぎに、微生物担持用担体について説明する。
微生物担持用担体としては、微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば、いずれの公知材料をも使用できるが、有用微生物の効果的な担持という点から、担体表面に微生物が強く吸着するもの、微生物を微小孔隙中へ侵入させることにより保持力を高めることができるような多孔性のもの、ミクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸蔵表面を増大させたものが望ましい。
また、膨潤性の担体材料は、微生物が利用できる空間が広い点では、好ましい材料ではあるが、微生物を 担持・固定化した後、長期に亘って安定に使用するためには、物理的な強度が必要であり、その点では非膨潤性の担体材料を用いることが好ましい。非膨潤性であっても後述するようなサイズ効果や形状効果を利用して利用空間を維持させることができる。
また、被処理水と担体とが激しく相対運動する微生物処理環境においては、担体の物理的強度が特に重要であり、さらに活性汚泥槽のように担持担体が流動する流動床の場合には、比重の制御ができることが必要で、シリカなどの比重制御剤を用いて比重値を約1.1程度に調整するので、この点からも物理的強度が大きいことが好ましい。
【0040】
これらの理由から、本発明に好ましい担持用担体としては、具体的には、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどがあげられる。また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等などの天然物も利用できる。
中でも、上記した好ましい要件に特に適合する材料としてポリプロピレン及びポリエチレンで代表されるポリオレフィン系の合成高分子化合物材料が好ましい。
これらの材料は、市販されており、例えばバイオステージ(ポリプロピレン製、筒中プラスチック工業(株)製)、ゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)などを挙げることが出来る。
【0041】
好ましい担体の形状としては、ほぼ球状、ほぼ立方体状、ほぼ直方体状、円筒状あるいはチューブ状であり、なかでも製造し易いほぼ球状、あるいは比面積を大きくできるほぼ直方体状又はチューブ状であることが好ましい。担体の製造方法としては、既知の任意の方法を用いることができる。例えば微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を不溶解性液体中に滴下して液体中で液滴を固化させて微生物 担持担体粒子の分散物を作る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を低温化、ゲル化剤や固化剤の添加などの方法で固化させた後、固化体を適当なサイズに裁断して微生物を 担持した直方体粒子を得る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を押し出しノズルから不溶解性液体中に注入して液体中で固化させて微生物 担持担体の糸状の固化物を得てこれを適当に裁断して円筒状粒子を作る方法、またこのときの押し出し成形のダイを環状として円環状(チューブ状)の微生物 担持担体粒子を得る方法を挙げることができる。
【0042】
担体粒子の大きさは、外径0.1〜70mm、好ましくは0.5〜40mm、より好ましくは1.0〜10mmであり、粒子サイズが大きければ比面積が少なくなって非効率となり、小さいとすぐに分解・消滅して 担持体の意味をなさなくなる。したがって、適用対象に応じて好ましいサイズが選択される。
【0043】
<固定化される微生物>
一般的に難分解性である写真廃液を、本発明の方法では通常用いられている活性汚泥を用いて処理することができる。順化処理が行われるので、活性汚泥中の微生物の履歴・由来などは問わない。しかし、写真廃液は、前記のようにアミノポリカルボン酸型の錯形成剤、各種のアニオン性及び非イオン性界面活性剤、有機溶剤など類を含んでいることからそれらの生分解を効果的に行う特定の微生物を単独で用いたり、活性汚泥と組み合わせて用いたりすることができる。後者の場合は、それぞれの微生物がいずれも十分に活動できるように、活性汚泥と上記特定の微生物とを別個の処理槽で処理できるように複数構成(図1参照)の微生物処理槽を用いることが好ましい。
【0044】
上記の特定の微生物としては、芳香族炭化水素系化合物(例えば、フェノール類)、有機溶剤(例えば、トルエン、トリクロロエチレンなど)、有機塩素化合物(例えばダイオキシン、PCBなど)等を分解する微生物としては、Pseudomonas属に属する細菌のほか、Methylosinus、Methylomonas、Methylobacterium、Hethylocystis、Alcaligenes、Mycobacterium、Nitrosomonas、Xanthomonas、Spirillum、Vibrio、Bacterium、Achromobacter、Acinetobacter、Flavobacterium、Chromobacterium、Desulfovibrio、Desulfotomaculum、Micrococcus、Sarcina、Bacillus、Streptomyces、Nocardia、Corynebacterium、Pseudobacterium、Arthrobacter、Brevibacterium、Saccharomyces、Lactobacillusの各属に属する微生物等を用いることがきる。
【0045】
また、EDTAなどの金属キレート化剤やそれらが重金属と錯結合した重金属キレートなどを分解する能力を有する微生物には、バチルス属に属する細菌として、バチルス エディタビダス(Bacillus editabidus) 、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis) 、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium) 、バチルス スファエリカス(Bacillus sphaericus) などがあげられる。これらは、例えば、Bacillus edtabidus−1(微工研菌寄 第13449号)、Bacillus subtilis NRIC 0068 、B. megaterium NRIC 1009 、B. sphaericus NRIC 1013 などとして容易に入手することができる。
【0046】
別のEDTA分解能を有する微生物としては、特開昭58−43782号に記載のシュードモナス属やアルカリゲネス属、アプライド・アンド・エンバイロンメンタル・ミクロバイオロジー(Applid and Environmental Microbiology)、56巻,3346−3353頁(1990)に記載のアグロバクテリウム属の菌種、アプライド・アンド・エンバイロンメンタル・ミクロバイオロジー(Applid and Environmental Microbiology)、58巻,2号、671−676頁(1992)に記載のGram−negative isolateが挙げられる。これらのうち、例えば、シュードモナス・エディタビダス(Pseudomonas editabidus) は、Pseudomonas editabidus−1(微工研菌寄第13634号)として入手できる。
【0047】
さらに別のEDTA分解能を有する微生物としては、海洋性菌類であるバチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus)及びメソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus) が挙げられる。この有機アミノカルボン酸類分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus)は、Bacillus editabidus −M1(微工研菌寄第14868号)及びBacillus editabidus −M2(微工研菌寄第14869号)の属する種である。又、有機アミノカルボン酸類分解菌メソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus) は、Mesophilobacter editabidus−M3(微工研菌寄第14870号)の属する種である。
【0048】
また、フェノール類やクレゾール類化合物を分解する微生物としては、例えばUSP4352886号及び4556638号の各公報に記載のシュウドモナスプチダcb−173(atcc31800)を挙げることができる。これらの微生物の適用対象となる廃水は、例えば、フェノール樹脂工場排水、クレゾール樹脂工場廃水、ビスフェノールAなどから得られるポリフェノール類の工場排水や、それらのフェノール系樹脂を扱う製版工程やフォトレジスト形成工程から排出されるフェノール類含有排水であるが、フェノール性化合物が含まれる写真廃水にも活性汚泥処理と組み合わせて、この種の微生物による処理を用いることができる。
界面活性剤分解性菌としては例えばUSP4274954号に記載のシュウドモナスフルオレッセンス3p(atcc31483)を挙げることができる。これらの微生物の適用対象となる廃水は、例えば、アニオン系、ノニオン系あるいはカチオン系の界面活性剤含有排水、とりわけいわゆるハードな界面活性剤と呼ばれる生分解性に乏しい界面活性剤含有排水、なかでもスルホン酸基含有界面活性剤含有排水である。写真処理液や感光材料には種々の目的で界面活性剤を用いるので、これらが含まれる写真廃水にも活性汚泥処理と組み合わせて、この種の微生物による処理を用いることができる。
【0049】
<栄養物>
本発明では、微生物を 担持・固定化する際に、該微生物用の栄養物を供給してやることが、 担持・固定化される微生物の増殖を促進して速やかに該微生物が優先的に生育する環境が確立されるので、好ましい。また、廃液処理装置の稼動中に微生物の活性が低下した場合にも栄養物の供給により賦活してやることが好ましい。
栄養物としては、炭素、窒素、リンを含むものが好ましく、微生物の生育に適した培養液などが挙げられる。培養液としては、例えば、肉汁、酵母エキス、麦芽エキス、バクトペプトン、グルコース、無機塩類、ミネラルなどが適当な割合で混合したものが良く用いられているが、微生物の種類に応じて適当な配合比のものを選べば良い。また、本発明に用いる栄養物としては、上記の培養液以外にも有機、無機栄養物を適当に含むものであれば、どのようなものでも利用可能である。例えば、自然界より採取した、あるいは培養を加えた任意の微生物を乾燥、粉砕し、粉砕微粉体を栄養物として用いてもよい。
さらに、生分解菌として働く微生物を活性化する特定の共存微生物を用いることもできる。この共存微生物は、それ自身が生分解菌として働く微生物の栄養源となったり、その共存微生物が分泌する物質が生分解菌として働く微生物を活性化する成分を含んでいる。好ましい微生物としては、いわゆるEM菌として市販されている微生物混合体や光合成細菌が挙げられる。とりわけ、ロードシュードモナスキャプスラータ(Rhodepseudomonas capsulata)やチオバチルスデフィニトリカンス(Thiobacilluse definitricans)をはじめとする光合成細菌が好ましい。
【0050】
<その他の調整条件>
微生物処理の温度は、微生物の活動に適した温度であることが必要で、3〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは18〜40℃である。この温度に維持するためには、状況に応じて温水を撒布又は注入するなどの加温を行なってもよい。また、寒冷地などでは、熱伝導体をバイオリアクターに装備して熱源からの伝熱あるいは直接の通電によって加温することもできる。熱伝導体としては、金属、セラミックスなど熱を伝えることができる物質であれば材質は問わない。
【0051】
被処理廃水のpHは、通常2〜10であり、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8.5であって、微生物の至適pHであれば最も好ましい。
【0052】
[余剰汚泥低減処理工程]
余剰汚泥低減処理は、酸化分解による後処理、超音波印加処理及び好熱性微生物処理のいずれか又は組み合わせによって行われる。この処理を施した後、廃液は処理を安定に持続するに必要な量を微生物処理槽に、又は前処理槽に返送してこれまでに述べた一連の工程を反復させ、残りは処理済み排水として排出される。
【0053】
<酸化分解による後処理>
酸化分解による後処理は、前処理工程の説明で述べた電解酸化法及び化学酸化法の中から選択することができ、好ましい方法も前記した方法が選択される。
例えば、電解酸化分解処理によって余剰汚泥中の微生物を減少させ、微生物処理槽に返送して曝気によって余剰となる汚泥の減量を図る具体的な方法は、例えば水道機工(株)が提示している。
【0054】
化学酸化処理による余剰汚泥中の微生物低減方法としては、杉本、水処理技術43巻12号14〜15頁に記載されている、微生物処理水にオゾン曝気を施し、曝気した廃水を微生物処理槽に返送する後処理方法を挙げることができる。
【0055】
<超音波印加処理>
余剰汚泥低減処理は、微生物処理水に超音波を照射することによっても可能である。超音波のキャビテーション効果によって処理済み廃水中の微生物が物理的に破壊されて凝集して沈降し、浮遊物量が減少するとともに、返送された破壊微生物も固定化微生物処理槽で代謝されて消滅する。効果的に浮遊物量を低減するには、10〜30kHzの超音波振動を液流の局部に集中させてキャビテーションを起こさせ、かつキャビテーションに伴うマイクロジェット液流が処理水全体に亘って均一に発生するような超音波印加が好ましい。このような超音波印加手段としては、例えば日経メカニカル、570号、28頁(2002)に紹介された装置を挙げることができる。
【0056】
<好熱性微生物処理>
好熱性微生物処理によっても余剰汚泥量を低減させることができる。余剰汚泥低減処理槽中で高温好気性処理条件下で生物処理し、その汚泥を微生物処理槽に返送する。好熱菌は、細胞外酵素を分泌し、その酵素によって汚泥が可溶化されて生物分解され易い形に変換されるとされているが、実際に微生物処理槽に返送された汚泥は生物分解が行われて汚泥量が減少する。より詳細は、塩田ほか、環境技術、28巻8号532頁(1999)に記載されている。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
[実施例1]
デジタルミニラボFRONTIER350(富士写真フイルム製)から排出されたカラーペーパー処理CP−48S廃液1リットルを、中心部に450W高圧水銀灯(UM−452型、安定器としてUM−453BA型使用、ウシオ電気製)が設置された容量2リットルの光化学反応用石英セルに注ぎいれ、セル上部より差し込まれた2個のボールフィルター(孔径グレード2G、25mmφ、木下理化工業製)付ガラス管からオゾン発生装置(FM−300N、ニッコー金属製)で発生させたオゾンを全量で廃液COD値の0.5当量以上になるように100mg/hrの速度で通気しながら紫外光を照射し12時間処理を行なった。この操作を繰り返し、生物処理用試料廃液を調製した。
【0058】
海水魚介類水槽の浄化装置内の浸漬ろ床から剥離した生物膜を植種し、5リットルの処理槽を用い平均滞留時間を10日毎に20日、10日、5日、2日、1日と順次短くして汚泥の馴養を行ないながら、活性汚泥法により上記生物処理用試料廃液の連続処理を行なった。この間、リンをリン酸水素二カリウムの形で廃液COD値の1%に相当する量を添加し、更にカルシウムイオンとマグネシウムイオンを各々10ppm、2ppmになるよう添加した。曝気槽にはpHコントローラー(東京理化製)を設け、硫酸または水酸化ナトリウムの添加により槽内のpHを7.5±0.1に保った。またDO(溶存酸素量)を0.1mg/リットル〜3mg/リットルに保つよう、ガラスボールフィルター(木下理化工業製)を通じてエアコンプレッサーから空気を送り込んだ。平均滞留時間1日での運転を開始してから1ヶ月後の活性汚泥はMLSS43,000mg/L(ppm)であった。このようにして馴養した活性汚泥を以下の方法でアルギン酸により包括固定した。
▲1▼アルギン酸ナトリウム(和光純薬製)2%溶液500mlを調製する。
▲2▼上記の馴養した活性汚泥を10,000rpmの遠心分離(12分)によ沈降し、湿潤汚泥を得る。この湿潤汚泥250gを取り、3%食塩水250lを加え懸濁する。
▲3▼上記▲1▼と▲2▼を混合し、均一になるまで攪拌する。
▲4▼5リットルのポリバケツ容器に塩化カルシウム(和光純薬製)5%溶液を4リットル調製する。
▲5▼塩化カルシウム溶液をマグネチックスターラーで攪拌しながら▲3▼の混合液滴下する。
▲6▼ 滴下終了後1時間攪拌を続け、冷暗所で1晩放置後、ろ過しながら3%食塩水で良く洗浄する。
【0059】
上記のようにして調製した包括固定活性汚泥を、内径50mm、1000mm長のガラスカラムに充填し、下部より廃液を注入し、上部に流出する液が再び下部に戻り循環するような装置とした。循環は、ペリスタポンプ(ATTO製)により300ml/hrの速度で行なった。この循環経路途中に内径30mmのセルを設け、セル内に超音波ホモジナイザーUS−50(日本精機製作所製)の振動棒を設置した。なお、ガラスカラム内には上記と同様のボールフィルターを入れて曝気を行ない、好気的雰囲気に保った。
【0060】
上記生物処理用試料廃液3.5リットルをpH7.0に調整し、この循環系で処理した。カラム上部で処理廃液を採取し、「水質汚濁に係る環境基準について」(平11環告14)の付表8に定められている浮遊物質(SS)の測定方法に従ってSSを測定した。超音波ホモジナイザー運転時と、停止時のそれぞれについて上記の固定化活性汚泥の循環付きガラスカラム処理と、それに代えて簡単な沈降槽を設けた活性汚泥連続処理槽(汚泥槽容量4リットル、沈降槽容量1.5リットル)を設置した循環系による処理とについて比較実験を行なった。循環1日後のSS値を表1に示す。
【0061】
【表1】


【0062】
表1の結果は、オゾン酸化の前処理と微生物処理とによる写真廃液処理において、微生物を固定化する(試料3と4)ことによって浮遊物量が顕著に減少することを示している。また、固定化生物処理に加えて超音波処理を行う(試料4)ことにより浮遊物量は更に減少することも示されている。いずれの場合も下水道法による一般公共下水道の浮遊物に係る排水基準値(600mg/L)以下となっている。
また、参考としてオゾン酸化による前処理を省略した以外は上記実験3と同じ処理を行ったが、CODの減少率が僅かであり、また浮遊物も多く、いずれも排水基準を満たすことができなかった。
【0063】
実施例2.
実施例1の原水としたカラーペーパー処理廃液12リットルを、廃液電解装置BC−9(日本テクノ製)により12時間電解処理(5.2V、650A)を行なった。この電解処理後の廃液を、BC−9の電解槽から直接、実施例1と同様に調製し、直列に接続したガラスカラム5本に送液するようにし、固定化微生物を充填したガラスカラムと、電解槽の循環系を組んだ(試料3と4)。これらのうち一つは循環時に通電(4.8V、500A)を行ない(試料3)、もう一つは電解処理することなく直接固定化微生物を充填したガラスカラムに接続した(試料4)。廃液のpHは7.0に調整し、循環速度は500ml/hrとした。なお、ガラスカラム内にはボールフィルターを入れて曝気を行ない好気的雰囲気に保った。
また、実施例1と同様に簡単な沈降槽を設けた活性汚泥連続処理槽(汚泥槽容量4リットル、沈降槽容量1.5リットル)を設置した循環系による処理にて比較実験を行なった。。循環3日経過後、生物処理後の液を採取してSSを測定した。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】


【0065】
表2の結果は、電解酸化と微生物処理の組み合わせの写真廃液処理においても微生物を固定化することによって浮遊物量が顕著に減少することを示している(試料3及び4)。その中でも、微生物処理の後に、電解酸化処理をさらに行うと浮遊物量は一層減少することも示されている(試料3)。いずれの場合も下水道法による一般公共下水道の浮遊物に係る排水基準値(600mg/L)以下となっており、下水道基準を満たさない比較例(非固定化試料1と2)と顕著な差を示している。
【0066】
【発明の効果】
酸化による前処理を施した後、担体に固定化された微生物によって該廃液に微生物処理を施すことを特徴とする本発明の写真廃液の処理方法は、余剰汚泥量が低減され、下水道法の一般下水道排水基準の浮遊物基準を満たすことができる。さらに、微生物処理の後に余剰汚泥低減処理を施すことにより、浮遊物質量を一層減少させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施形態を示す工程ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態を示す工程ブロック図である。
【符号の説明】
1:調整・貯留槽
2:前処理槽
3:微生物分解槽
31:分解槽1
32:分解槽2
4:余剰汚泥低減処理槽
5:沈降槽
6:余剰汚泥貯留槽
a〜d:送液部
e: 排出系
f、h1、h2: 還流系
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【住所又は居所】神奈川県南足柄市中沼210番地
【出願日】 平成15年3月12日(2003.3.12)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平

【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳

【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光

【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛

【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子

【公開番号】 特開2004−275804(P2004−275804A)
【公開日】 平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願番号】 特願2003−67044(P2003−67044)