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【発明の名称】 |
微生物による汚染土壌修復方法 |
【発明者】 |
【氏名】宮崎 英男 【住所又は居所】神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真フイルム株式会社内 |
【課題】汚染物質を分解する微生物が土壌修復に必要な濃度で土壌中に存在できて、しかも栄養物の供給によって土壌修復能が低下することのない土壌修復方法を提供すること。
【解決手段】土壌汚染物質の分解能を有する微生物を担体に担持させて汚染された土壌中に存在させ、該微生物の栄養物を徐放可能の状態で該土壌に投与することを特徴とする汚染土壌修復方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 土壌汚染物質の分解能を有する微生物を担体に担持させて汚染された土壌中に存在させ、該微生物の栄養物を徐放可能の状態で該土壌に投与することを特徴とする汚染土壌修復方法。 【請求項2】 担体が生分解性であることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌修復方法。 【請求項3】 栄養物を担持物質に包括することによって徐放可能の状態としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染土壌修復方法。 【請求項4】 栄養物の担持物質が生分解性であることを特徴とする請求項3に記載の汚染土壌修復方法。 【請求項5】 土壌汚染物質の分解能を有する微生物がEDTA分解能、フェノール類分解能及び界面活性剤分解能の少なくとも一つを有する微生物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の汚染土壌修復方法。 【請求項6】 土壌汚染物質の分解能を有する微生物を担持させた担体と、該微生物の栄養物を徐放可能状態で含む栄養物徐放剤とからなることを特徴とする土壌修復用微生物製剤。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は土壌修復方法に関するもので、とくに土壌汚染物質分解能を有する微生物を利用した土壌修復方法、すなわちバイオレメディエーションに関する。 【0002】 【従来の技術】近年、各種の難分解性有害化学物質が土壌、河川、海、空気中等において検出されており、これらの物質による汚染の進行が問題となっている。なかでも重金属や有機塩素系化合物による土壌汚染は深刻な問題となってきており、汚染の拡大を防止していくとともに、汚染された環境を再生していく技術の確立が強く望まれている。例えば、重金属化合物を扱う化学工場、ガス製造プラント、製油所、石油精製所、燃料基地、パルプ工場などの廃棄物処理サイトや跡地などにおいて土壌汚染が問題となっており、これらの汚染土壌のを浄化するための土壌修復法の改良、開発に対するニーズが高い。 【0003】また、土壌汚染は土地の再利用を妨げるばかりでなく、汚染物質が地下水に流れ込んで拡散することによる汚染地域の拡大を引き起こす危険性が大きいので、汚染された土壌の修復技術が早急に確立されることが強く要望されている。 【0004】汚染された土壌から汚染物質を取り除くことにより土壌を元の状態に復帰させる土壌修復法としては種々の方法が知られ、また試みられている。例えば、土壌中より汚染物質を吸引する真空抽出法等の物理化学的な方法がある。しかしながら、物理化学的方法には、高いコスト、低い操作性、低濃度で存在する汚染物質の処理の困難性など、数多くの問題がある。 【0005】そのため、土壌修復法のなかでも、微生物を利用した土壌浄化による修復、いわゆるバイオレメディエーションに対する期待が高まっている。微生物を利用する土壌修復方法としては、対象とされる土壌中にもともと自然に存在する微生物の機能を高めて汚染物質を分解して無害化するという生態系の自浄能力を強化する方法や、更にこの技術を一歩進めて外部から汚染物質の分解能を有する菌(以後、汚染物質分解菌又は単に分解菌と呼ぶこともある)を積極的に汚染土壌に導入し、汚染土壌の修復を促進する方法等が試みられている。 【0006】土壌汚染を引き起こしている難分解性化合物、例えば、芳香族炭化水素や有機塩素系化合物を分解する微生物は数多く知られている。しかしながら、現実の汚染土壌にこれらの菌を単にそのまま散布した場合、散布時の菌の初期濃度に対して土壌中での菌濃度は時間の経過とともに減少し、汚染現場の修復効率は低下してしまう。効率低下を防ぐには、微生物散布をたびたび繰り返す必要があって手間とコストがかかる。従って、土壌中において投与分解菌の増殖能を維持させ、その菌濃度を高く保持することが実際的である。 【0007】したがって、土壌修復を目的としたバイオリアクターに、微生物を高濃度に保持するためのさまざまな微生物の保持担体を適用することが従来から提案されている。そのような保持担体には、例えば、多孔質ガラス、セラミックス、金属酸化物、活性炭、ゼオライト、アンスラサイト等の粒子状担体、寒天、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリアクリルアミド、カラギーナン等のゲル状担体等が知られている。 【0008】例えば、特表平4−503528号には、クロロフェノール類分解性の微生物を多孔質担体に固定して汚染土壌に添加する方法が開示されている。この多孔質担体は、微生物に好ましい生育環境を形成し、微生物を捕食生物の攻撃から保護することができる。 【0009】しかしながら、土壌は一般に貧栄養であるので、土壌中に投与した土壌修復用微生物の栄養物となるような物質(以後、栄養物と呼ぶ)を更に土壌に補給する必要が生じる場合が多い。ところが、そのような場合、土壌中での物質移動はきわめて緩慢であるため、土壌修復用微生物の栄養物を土壌表面より与えても、栄養物濃度の不均一や変動が多く、なかなか効果を発揮せず、このため微生物を単にそのまま土壌に散布した場合はもちろんのこと、前述した有機、無機、粒子状、ゲル状、または多孔性等いずれの担体に固定化して散布しても、投与微生物のすべてに充分な栄養物の供給が困難(過剰投与しないかぎり)で、投与微生物の増殖能の活性化、高菌濃度の維持は土壌中では未だ不十分であった。 【0010】したがって、栄養物を微生物が十分に利用できる形で供給される態様として、特開平6-212155号公報では、多孔質の微生物 担持用担体を用い、その細孔中に栄養物を充填しておく方法が開示されており、また特開平7-97573号公報では、微生物 担持用担体を形成可能で、かつ栄養物を含んだ液状組成物を土壌に注入して、栄養物を含んだ微生物担体を形成させて土壌浄化の均一な進行を期する方法が開示されている。さらに、特開平08−1181号公報には、酵母エキスなどの栄養源を微生物とともに高分子ゲル担体に混入させる方法が開示され,特開表2001−501645号公報には、微生物と微生物の栄養剤とを吸水性ポリマーに包括する方法が開示されている。しかしながら、これら先行技術は、汚染土壌修復に関して改善のあとは認められるが、その効果は十分ではない。その理由は、以下のように考えられる。栄養物の供給形態をたとえ上記のように改良しても、栄養物を供給している限り、微生物は、投与された栄養物に依存して、土壌中の汚染物質を栄養源として土壌改質を進める効率は低下してしまう。さらに土壌中にもともと存在していた微生物が供給された栄養物を消費するので、栄養物の消耗と濃度変動が著しい。さらには、もともと存在していた微生物が土壌修復能を有する微生物の生育を抑制してしまうこともある。すなわち、栄養物の供給は、土壌修復能を有する微生物の活動維持の上で必要ではあるが、土壌改質効果を低下させるというジレンマに遭遇する。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した背景からなされたものであり、その目的は、微生物を用いる土壌修復において土壌修復能を有する微生物が、土壌修復機能を維持しながら土壌中で生育できる土壌修復方法を提供することにある。具体的には、該微生物が土壌修復に必要な濃度で土壌中に存在できて、しかも栄養物の供給によって土壌修復能が低下することのない土壌修復方法を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した本発明の目的は、第一に土壌修復能を有する微生物が土壌中に長時間持続して生育するためには、該微生物は担体に 担持された状態にあることが必要であり、第二に、活動維持の必要上栄養物を投与するが、その投与レベルは該微生物の生存・活動維持に足りるが、土壌修復機能を低下させない投与レベルであることを満たすことによって達成できることを見出し、その具体化を以下の本発明によって実現させることができた。すなわち、本発明は以下の通りである。 【0013】(1)土壌汚染物質の分解能を有する微生物を担体に担持させて汚染された土壌中に存在させ、該微生物の栄養物を徐放可能の状態で該土壌に投与することを特徴とする汚染土壌修復方法。 (2)上記(1)における担体が生分解性であることを特徴とする汚染土壌修復方法。 (3)上記(1)又は(2)において、栄養物を徐放可能の状態で該土壌に投与することが栄養物を担持物質に包括して投与することによってなされることを特徴とする汚染土壌修復方法。 (4)上記(3)における栄養物の担持物質が生分解性であることを特徴とする汚染土壌修復方法。 (5)土壌汚染物質の分解能を有する微生物がEDTA分解能、フェノール類分解能及び界面活性剤分解能の少なくとも一つを有する微生物であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の汚染土壌修復方法。 (6)土壌汚染物質の分解能を有する微生物を担持させた担体と、該微生物の栄養物を徐放可能状態で含む栄養物徐放剤とからなることを特徴とする土壌修復用微生物製剤。 【0014】すなわち、本発明の要諦は、土壌修復能を有する微生物を担体に担持させることと、栄養物の供給を徐放によって、微生物の活動維持と土壌修復効率低下抑止とが両立する低レベル,低変動の状態で持続させることにある。担体を用いることによって汚染土壌中の微生物濃度を高めることができ、栄養物の供給を徐放方式で行なうことによって微生物濃度が高濃度でも、栄養不足とはならず、しかも汚染物質分解機能を維持できる供給速度の範囲に制御することが可能となった。さらに、微生物担持用の担体が生分解性であると、修復された土壌は一層環境負荷の少ないものとなる。また、栄養物の徐放の方式としては、包括法が特に効果があり、作業の面からも実際的である。栄養物の包括に用いる担持物質も生分解性であることによって、上記と同様、修復された土壌は一層環境負荷の少ないものとなる。 【0015】本発明の土壌修復法は、EDTAなどの難分解性のアミノポリカルボン酸型の金属キレート化剤やそれらが重金属と錯結合した重金属キレートなどに対して生分解能を有するいわゆるEDTA分解能を有する微生物を用いて、上記重金属キレートやキレート化剤で汚染された土壌を修復する際に特に顕著な効果を発揮する。これらのキレート及びキレート化剤は、難分解性であるが故に、一般的な土壌修復法では分解されにくく、本発明の方法、即ち担体によって微生物濃度を高めて、かつ徐放によって微生物の栄養供給を制限した本発明の土壌修復方法が効果を発揮する。また、本発明の土壌修復法は、土壌細菌が生育しにくいフェノール類化合物で汚染された土壌や、難分解性の界面活性剤で汚染された土壌に対してフェーノール類分解性菌や界面活性剤分解性菌 担持体を栄養物徐放剤と共に適用して土壌修復効果を上げることができる。本発明の方法を汚染土壌に適用する具体的な実施態様としては、微生物を担持させた担体と、微生物の栄養物を徐放可能状態で含む栄養物徐放剤から構成された土壌修復用微生物製剤の形態を採用する方法が微生物管理し易く土壌修復操作も省力的であって実際的である。とくに徐放可能とする手段として包括法を用いた栄養物徐放剤が実際的である。ここでいう包括法は、JIS K3600で定義されている 通常の意味で用いており、菌体などの生体触媒を高分子ゲルの中に取り込んだり、膜などにマイクロカプセル化して閉じ込める生体固定化方法で、その詳細は適当な成書、例えば日本化学会編,化学便覧、応用化学編II、1197頁に記されている。以下、本発明をさらに具体的に詳述する。 【0016】 【発明の実施の形態】[土壌汚染物質分解能を有する微生物]本発明の担体に保持させる土壌汚染物質分解能を有する微生物は、汚染物質に対して生分解能を有する限り、特に限定されないが、芳香族炭化水素系化合物(例えば、フェノール類)有機溶剤(例えば、トルエン、トリクロロエチレンなど)、有機塩素化合物(例えばダイオキシン、PCBなど)等を分解するPseudomonas属に属する細菌の他に、上記を含む各種有害物質の分解能を有することが知られているMethylosinus、Methylomonas、Methylobacterium、Hethylocystis、Alcaligenes、Mycobacterium、Nitrosomonas、Xanthomonas、Spirillum、Vibrio、Bacterium、Achromobacter、Acinetobacter、Flavobacterium、Chromobacterium、Desulfovibrio、Desulfotomaculum、Micrococcus、Sarcina、Bacillus、Streptomyces、Nocardia、Corynebacterium、Pseudobacterium、Arthrobacter、Brevibacterium、Saccharomyces、Lactobacillusの各属に属する微生物等を用いることがきる。 【0017】また、EDTAなどの金属キレート化剤やそれらが重金属と錯結合した重金属キレートなども重金属による土壌汚染誘引物質であるが、これらを分解する能力を有する微生物には、バチルス属に属する細菌として、バチルス エディタビダス(Bacillus editabidus) 、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis) 、バチルスメガテリウム(Bacillus megaterium) 、バチルス スファエリカス(Bacillus sphaericus) などがあげられる。これらは、例えば、Bacillus edtabidus-1(微工研菌寄 第13449号)、Bacillus subtilis NRIC 0068 、B. megaterium NRIC 1009 、B. sphaericus NRIC 1013 などとして容易に入手することができる。 【0018】別のEDTA分解能を有する微生物としては、特開昭58−43782号に記載のシュードモナス属やアルカリゲネス属、Applid and Environmental Microbiology vol.56,p.3346-3353(1990)に記載のアグロバクテリウム属の菌種、Applidand Environmental Microbiology vol.58,No.2,Feb.1992,p.671-676に記載のGram-negative isolateが挙げられる。これらのうち、例えば、シュードモナス・エディタビダス(Pseudomonas editabidus) は、Pseudomonas editabidus−1(微工研菌寄第13634号)として入手できる。 【0019】さらに別のEDTA分解能を有する微生物としては、海洋性菌類であるバチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus)及びメソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus) が挙げられる。この有機アミノカルボン酸類分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus)は、Bacillus editabidus −M1(微工研菌寄第14868号)及びBacillus editabidus −M2(微工研菌寄第14869号)の属する種である。又、有機アミノカルボン酸類分解菌メソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus)は、Mesophilobacter editabidus−M3(微工研菌寄第14870号)の属する種である。 【0020】また、フェノール類やクレゾール類化合物を分解する微生物としては、例えばUSP4352886号及び4556638号に記載のシュウドモナスプチダcb-173(atcc31800)を挙げることができる。これらの微生物の適用対象となる汚染土壌は、例えば、フェノール樹脂工場排水、クレゾール樹脂工場廃水、ビスフェノールAなどから得られるポリフェノール類の工場排水や、それらのフェノール系樹脂を扱う製版工程やフォトレジスト形成工程から排出されるフェノール類含有排水に汚染された土壌である。界面活性剤分解性菌としては例えばUSP4274954号に記載のシュウドモナスフルオレッセンス3p(atcc31483)を挙げることができる。これらの微生物の適用対象となる汚染土壌は、例えば、アニオン系、ノニオン系あるいはカチオン系の界面活性剤含有排水、とりわけいわゆるハードな界面活性剤と呼ばれる生分解性に乏しい界面活性剤含有排水、なかでもスルホン酸基含有界面活性剤含有排水で汚染された土壌である。 【0021】なお、投与微生物としては、既に単離されているもののほか、土壌等から目的に応じて新たにスクリーニングしたものも利用でき、複数の株の混合系でもよい。なお、スクリーニングにより分離したものの場合それが未同定のものでも良い。 【0022】[微生物担持用担体及び担持方法]次ぎに、微生物担持用担体及び担持方法について説明する。微生物担持用担体としては、微生物を 担持して汚染土壌に投与できる材料であれば、いずれの公知材料をも使用できるが、有用微生物の効果的な担持という点から、担体表面に微生物が強く吸着するもの、微生物を微小孔隙中へ侵入させることにより保持力を高めることができるような多孔性のもの、ミクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸蔵表面を増大させたものが望ましい。具体的には、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなど包括担体に用いられている高分子化合物などがあげられる。 【0023】また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等からなるものも利用できる。これらの材料からなる担体は、微生物の保持が比較的穏やかで増殖した微生物の脱離も容易であり、安価であり、場合によっては投与微生物自体の栄養源、とくに徐放形態の栄養源ともなりうるので好ましい。 【0024】本発明においては、土壌汚染物質分解能を有する微生物を担体に担持、すなわち固定化した状態にして、土壌中に分散する。微生物固定化方法としては、担体から生分解菌が流出しないように固定される方法ならばその種類、形式を問わない。具体的な固定化法としては、例えば、微生物が付着して生物膜を形成するような担体を用いる付着生物膜法、担体と培地を混合して微生物を培養する担持培養法、減圧下で孔隙内に微生物を封入する方法、微生物をゲル内部に閉じ込めた包括固定化法などを用いることができる。中でも、付着生物膜法及び包括固定化法が好ましく,とりわけ包括固定化法が優れている。 【0025】付着微生物膜法の特徴は、微生物を高濃度化することができ、処理効率を向上させることができる。また、通常は系外に洗い出されてしまうような増殖速度が遅い菌を系内に留めることができる。また、微生物が安定して棲息できる状態に保てることも特徴としてあげられる。 【0026】包括固定化法の特徴は、菌体を高濃度に保持できるため、処理効率を向上させることができ、増殖の遅い菌を固定化できる。また、pH、温度等の条件変化に対する耐性が広く、高負荷状態にも耐えることができる。包括固定化法としては、アクリルアミド法、寒天−アクリルアミド法、PVA−ホウ酸法、PVA−冷凍法、光硬化性樹脂法、アクリル系合成高分子樹脂法、ポリアクリル酸ソーダ法、アルギン酸ナトリウム法、K−カラギーナン法等、微生物を閉じ込めることができ、土壌の中で微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば種類を問わない。 【0027】包括固定化法の代表例としてアクリルアミド法の場合の微生物固定化ゲルの調製法について説明する。固定化ゲルは、架橋剤(例えば、N,N'−メチレンビスアクリルアミド)を含有したアクリルアミドモノマー溶液と細菌(MLSS 20,000ppm程度の濃縮菌体)とを懸濁し、重合促進剤(例えば、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)を添加し、3mm径の塩化ビニル製チューブ等の成型形に入れ、20℃で重合し、重合終了後、成型形から押し出し、一定の長さに切断して得られる。固定化ゲルの表面の細孔は、細菌より小さいため、包括固定化した細菌はリークしにくく、内部で増殖し、自己分解する。土壌中の汚染成分のみが細孔よりゲル内部に入り込み、内部の細菌により処理される。 【0028】これらの固定化法のより具体的な方法については「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究,vol.13,No.9,1990,p.563-574、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水,vol.34,No.10,1992,P.829-835 などに記載されている。 【0029】更に、担体自体を生分解性の材料から形成することは、残留担体による2次汚染や投与微生物による土壌生態系への影響が問題となる場合に、かかる問題を回避できるという点から好ましい。このような生分解性の担体としては、土壌の投与微生物による修復処理後に徐々に分解されて消失するものが好ましい。このような担体を用いれば、担体の消失によって土壌中に放出された投与微生物は、土壌中の優勢な土着微生物との競争、原生動物の捕食、あるいは生育にとって苛酷な環境下に置かれることによって駆逐されてその数が徐々に減少し、やがて消滅し、その結果土壌中の生態系をもとの状態に戻すことができる。 【0030】土壌修復処理後に担体及び導入した微生物が土壌中に残存することが問題となる場合には、担体をバクテリアセルロース、セルロース・キトサン複合体のフィルムや発泡体、微生物ポリエステル、ポリ乳酸、ポリラクトン、ポリグリオキシル酸、ポリリンゴ酸、デンプン添加プラスチック、ポリカプロラクトン、(ヒドロキシ酪酸)−(ヒドロキシ吉草酸)共重合体、ポリアミノ酸、多糖類ポリマー等の生分解性の高分子材料で少なくとも一部を構成することで、保持させた微生物によって、あるいは土壌中の微生物によって担体の全体または基本形態が分解されるので、同時に導入した微生物も徐々に死滅していき、このような問題を解消することが可能となる。なお、この場合、担体の分解が土壌処理とほぼ同時かそれより遅くなるように担体構成材料等を選択する。好ましい生分解性担体としては、セルロース系担体、例えばビスコパール(レンゴー(株)製)及びキチンキト酸を用いた担体、例えばキトパール(富士紡績(株)製)を挙げることができる。 【0031】好ましい担体の形状としては、ほぼ球状、ほぼ立方体状、ほぼ直方体状、円筒状あるいはチューブ状であり、なかでも製造し易いほぼ球状、あるいは比面積を大きくできるほぼ直方体状であることが好ましい。担体の製造方法としては、既知の任意の方法を用いることができる。例えば微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を不溶解性液体中に滴下して液体中で液滴を固化させて微生物 担持担体粒子の分散物を作る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を低温化、ゲル化剤や固化剤の添加などの方法で固化させた後、固化体を適当なサイズに裁断して微生物を 担持した直方体粒子を得る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を押し出しノズルから不溶解性液体中に注入して液体中で固化させて微生物 担持担体の糸状の固化物を得てこれを適当に裁断して円筒状粒子を作る方法、またこのときの押し出し成形のダイを環状として円環状(チューブ状)の微生物 担持担体粒子を得る方法を挙げることができる。 【0032】担体粒子の大きさは、外径0.1〜70mm、好ましくは0.5〜40mm、より好ましくは1.0〜10mmであり、粒子サイズが大きければ比面積が少なくなって非効率となり、小さいとすぐに分解・消滅して 担持体の意味をなさなくなる。したがって、適用対象に応じて好ましいサイズが選択される。 【0033】担体の含水率は、1〜99質量%、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%である。含水率が低すぎると微生物の生存に支障があり、高すぎると担体の物理的強度が低下して取り扱いの際に支障をきたす。 【0034】土壌修復の際の温度は、微生物の活動に適した温度であることが必要で、3〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは18〜40℃である。この温度に維持するためには、状況に応じて温水を撒布又は注入するなどの加温を行なってもよい。また、寒冷地などでは、熱伝導体を土壌中に挿入して熱源からの伝熱あるいは直接の通電によって加温することもできる。熱伝導体としては、金属、セラミックスなど熱を伝えることができる物質であれば材質は問わない。 【0035】土壌修復における土壌のpHは、通常2〜10であり、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8.5であって、微生物の至適pHであれば最も好ましい。pHの測定方法は、土壌分析における通常のpH測定方法を用いるのがよく、基本的には土壌試料に2.5倍の十分に脱気した純水を加えて十分攪拌したのち、水浸液pHを測定する方法が採られる。 【0036】微生物を担持した担体を土壌に投与する方法は、散布処理、土壌との混合処理、等常法によって行うことができる。また、土壌の比較的深部の投与には、掘削孔を【0037】生分解性担体を用いた場合の担体自体の分解速度は、その材質や性状等を選択することで制御可能であり、例えば、材質を考慮して、孔隙の孔径、孔隙の形態、担体の形状及び大きさ等を適宜選択する。本発明においては、栄養物の供給が徐放形式で行なわれることが必要なので、生分解性の担体の分解速度は、徐放条件が保たれる範囲の遅い速度であることが必要である。なお、これらの要件の選択に際して、分解速度に影響を及ぼす因子として考慮すべきものとしては、担体を分解する微生物(土壌中の土着微生物または投与微生物)の種類、量及び分解活性、あるいは処理土壌の体積等を挙げることができ、どのくらいの期間で汚染物質が分解するか、どのくらいの期間で担体が分解するかをあらかじめフィールド実験で確認し、その上で担体を設計すると良い。 【0038】[栄養物及びその徐放形態]次ぎに、栄養物及びその徐放形態について説明する。栄養物としては、炭素、窒素、リンを含むものが好ましく、微生物の生育に適した培養液などが挙げられる。培養液としては、例えば、肉汁、酵母エキス、麦芽エキス、バクトペプトン、グルコース、無機塩類、ミネラルなどが適当な割合で混合したものが良く用いられているが、微生物の種類に応じて適当な配合比のものを選べば良い。また、本発明に用いる栄養物としては、上記の培養液以外にも有機、無機栄養物を適当に含むものであれば、どのようなものでも利用可能である。例えば、自然界より採取した、あるいは培養を加えた任意の微生物を乾燥、粉砕し、粉砕微粉体を栄養物として用いてもよい。さらに、分解菌を活性化する共存微生物を用いることもできる。この共存微生物は、それ自身が分解菌の栄養源となったり、その微生物が分泌する物質が分解菌を活性化する成分を含んでいる.。好ましい微生物としては、いわゆるEM菌として市販されている微生物混合体や光合成細菌が挙げられる。とりわけ、Rhodepseudomonas capsulataやThiobacilluse definitricansをはじめとする光合成細菌が好ましい。 【0039】本発明においては、栄養物が徐放形態で供給されることが特徴であり、徐放化方法としては、栄養物が担持物質から放出される濃度が、該微生物の生存・活動維持に足りるが、土壌修復機能を低下させない低濃度で濃度変動の少ない投与レベルに維持される方法である限り、いかなる方法でもよい。具体的な徐放形態としては、例えば、栄養物を徐放条件を満たすように粒子分散した担持物質表面に吸着させる方法、より効果的には栄養物を徐放条件を満たすように 担持物質表面に化学吸着させる方法,栄養物を徐放性を満たす条件で担持物質と混合造粒する方法、栄養物を徐放性を満たす条件で担持物質に吸蔵させる方法、栄養物を徐放性を満たす条件で担持物質、例えばゲル内部に閉じ込めた包括法などを用いることができる。この中でも、包括法が特に優れている。本明細書における「包括法」は、文部科学省編、「学術用語辞典」及び日本化学会編「標準化学用語辞典」に記載の「包括法」の定義に沿って用いられている。 【0040】包括法の特徴は、栄養物担持物質が栄養物を高濃度に内包できて、その放出濃度を十分に低濃度に制御できるので、微生物が汚染物質分解能を維持し、しかも微生物自体の生活条件が確保され、且つその放出が長時間にわたって安定に持続できるので、生物管理も容易であることにある。包括法は、微生物を反応系内に固定化するのに効果的な前記の微生物の包括固定化法と原理的には同じで、実施形態も実質的に準拠している方法である。栄養物を内包させる包括法の担持用材料としては、アクリルアミド法、寒天−アクリルアミド法、PVA−ホウ酸法、PVA−冷凍法、光硬化性樹脂法、アクリル系合成高分子樹脂法、ポリアクリル酸ソーダ法、アルギン酸ナトリウム法、K−カラギーナン法等、栄養物を内包することができ、処理槽(リアクター)の中で微生物の活性を維持できる程度に栄養物を放出し、効果的且つ長時間にわたって安定に放出を持続するものならば種類を問わない。 【0041】包括法の代表例としてアクリルアミド法の場合の栄養物ゲルの調製法について説明する。栄養物内包ゲルは、架橋剤(例えば、N,N'−メチレンビスアクリルアミド)を含有したアクリルアミドモノマー溶液と栄養物(例えば 20,000ppm程度)とを懸濁し、重合促進剤(例えば、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)を添加し、3mm径の塩化ビニル製チューブ等の成型形に入れ、20℃で重合し、重合終了後、成型形から押し出し、一定の長さに切断して得られる。栄養物の放出を調節するには、ゲル化体の粒子サイズとゲル中の内包濃度の調節などによって行なわれる。 【0042】これらの包括法は、より具体的には、前記した「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究,vol.13,No.9,1990,p.563-574、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水,vol.34,No.10,1992,P.829-835 などの微生物の包括固定化法に準拠して行なうことができる。 【0043】また、包括法とは別の徐放形態の栄養物担持方法として、カラギーナン、アルギン酸などの、ゲル状包括担体に栄養物を含有させて徐放効果を発揮させることもでき、その方法としては、1)栄養物を含む溶液とゲル化材料(カラギーナン、アルギン酸など)を含む溶液と混合した後、2)ゲル化とともに担体形状を制御して担体を得る工程を含む方法などがある。 【0044】さらに別の徐放形態の栄養物担持方法としては、生分解速度が遅い天然高分子を栄養物質兼担持物質として用いることもできる。例えば、リグノセルロース系やキチン系の天然高分子を、適当な徐放速度が得られるように10μm〜3mm程度に粉砕して投与してもよい。 【0045】栄養物を内包した担持物質を土壌に投与する方法は、散布処理、土壌との混合処理、土壌の比較的深部の投与には、掘削孔を設けてそこから投与・分散させる方法など前記した微生物担体の投与と同じ方法が利用できる。また、徐放条件が満たされるなら、微生物担体と混合して投与してもよい。 【0046】微生物を担持した担体と徐放状態で栄養物を供給する別の実際的な形態としては、微生物担持担体と徐放可能状態の微生物用の栄養物とを含む複合型の製剤を汚染土壌に投与する方法が挙げられる。微生物製剤は、目的とする微生物をバイオリアクター中で培養して通常担体に担持させた形で製剤として供給される。本発明においては、そのような微生物製剤にさらに上記した徐放可能状態の栄養物を加えた構成とした複合型の微生物製剤であって、本発明の対象としている難分解性汚染物質で汚染された汚染土壌の修復には微生物管理の安定化、作業の簡単化において優れている。微生物担持担体としては、上記した担体のほかに土壌浄化用微生物製剤BiotrackDOLや SurfCleanなど,界面活性剤で汚染された土壌にはDC1738CW、また、メチルフェノール類を含むフェノール類やクレゾール類化合物を分解する能力を有する製剤としてDC1002CG及びDC1738CWなどの製剤(いずれもサイブロンケミカルズ日本(株))を用いることができる。微生物担持担体と組み合わせる徐放状態の栄養物供給体としては、上記した各手段で徐放化した栄養物のいずれをも対象とする汚染土壌に応じて適用できる。 【0047】 【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。なお、実施例中の「菌体」は、本明細書中に述べた「微生物」に分類される「菌体」であって、実質的に同義に解してよい。 【0048】実施例1特開平6-261771号公報記載のEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus-1、微工研菌寄 第13449号)の1白金耳を、ポリペプトン(極東製薬工業)0.5%、酵母エキス(和光純薬工業(株)製)0.1%及びNH4Fe(III)EDTA(和光純薬工業(株)製)0.01%(いずれも質量%)を含む1/30Mリン酸緩衝液(pH5.8)の基本培地200mlで37℃にて1日静置培養し、本菌体を高濃度に含有する培養物を得た。この培養物を遠心分離により、本菌株の湿菌体と培養上清に分離した。日本薬局方で純度規定された精製水による洗浄と遠心分離による湿菌体の回収を3回繰り返し、培養上清を十分に除去した洗浄湿菌体を得た。これを80mlの精製水に再分散し、さらに再分散液に微生物保持担体として修飾ビスコパールAZ4200-cc(レンゴー(株)製)10gを加え、1時間振盪攪拌した後、ろ過、洗浄により未担持の菌体を除去した。ここで得た菌体担持体をAとする。 【0049】一方で、上記操作にて精製水の代わりに上記培地を用いた以外は上記と同じ操作で調製した菌体担持体を得た。得られた菌体担持体を菌体担持体Bとする。この菌体担持体Bには栄養源である培地成分が含有されている。 【0050】また、菌体担持体Aの調製操作において、担体を加える直前の段階の洗浄湿菌体を洗浄湿菌体Cとした。 【0051】上記基本培地150mlに寒天を3%濃度となるように加え、加熱溶解後、冷却した寒天ゲルを凍結乾燥後、ボールミルで質量平均粒子径10μmまで粉砕し、栄養物徐放剤Dを得た。ここで調製したA〜Dは、下記汚染土壌1試料(200g)への投与分量に相当するものである。 【0052】富士写真フイルム(株)足柄工場内の緑地帯から採取した土壌を室温で1週間放置乾燥後、2Kgを写真処理用(4ツ切りサイズ)バットに均一に広げ、NH4Fe(III)・EDTA(和光純薬工業(株)製)1%溶液100mlを噴霧後、良く混合した。この調製汚染土壌を室温にて1週間放置乾燥した。上記のEDTAで汚染された土壌各200gに、表1に示すように上記で調製した各菌体と栄養源を接種(土壌に分散する際150mlの精製水または基本培地液を使用し良く混合した)し、25℃のもとで、50日間に渡ってEDTAの分解状況を観測した。容器はコニカルビーカーを用い、質量測定により求めた蒸発水分量に相当する精製水を5日おきに添加調整した。 【0053】観測は、各試料から土壌を5gずつ採取し、50mlの精製水に懸濁後、超音波洗浄器にて良く分散・洗浄したのち、孔径0.45μmのミクロフィルターでろ過した液についてイオンクロマトグラフィーにより溶存するEDTA量を定量する方法で行った。試験結果を図1に示す。 【0054】 【表1】
【0055】図1が示すように、基本培地で培養した比較例の試料3,6及び9は、いずれも50日の試験時間後でも高い残留EDTA濃度を示しており、また、栄養源を投与しなかった比較例の試料1,4及び7はさらに若干高い残留EDTA濃度を示しており、いずれもEDTAの生分解はほとんど起こらないか、起こっても生分解率が50%に満たない不完全なものであった。一方,菌体を担体に担持させ,その上で栄養物を徐放剤Dの形で投与した本発明例の試料2及び5は、いずれも試験期間内にEDTA残留濃度が実質的に検出されなくなるまで分解された。この2例は、菌体が栄養供給を制限された条件のもとで、EDTA分解効果を持続して生存していることを示したいる。また、栄養物を徐放剤Dの形で投与しても、菌体を担体に担持させない試料8は、試験期間中のEDTA残留濃度の低下は少なった。以上の試験の結果、生分解性微生物が担持されており、しかも栄養源が徐放状態で与えられる本発明の態様が、土壌中のEDTAを効果的に生分解できることが示された。なお、参考までに付言するなら、本実施例に用いた担体ビスコパール1AZ4200−ccは、生分解性であって、試験後の汚泥から徐々に分解消滅する性質のものである。 【0056】実施例2実施例1において使用したEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus-1、微工研菌寄 第13449号)を特開平6−335386号公報に記載のEDTA分解菌シュードモナス・エディタビダス(Pseudomonas editabidus -1、微工研菌寄 第13634号)に変更した以外は、実施例1と同じ試験を行なった。生分解菌の種類を変更した以外は実施例1の9試料と同じ操作で得られた実施例2の9水準の各試料からえられた試験結果は、EDTA残存濃度値の差はあっても、9試料間の相対的な差は対応する実施例1の9試料間の差異と同じであり、その意味で、実質的には実施例1の各試料間の差異と同じであった。 【0057】実施例3実施例1において使用したEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus-1、微工研菌寄 第13449号)を特開平8−289778号公報に記載のEDTA分解菌バチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus-M1、微工研菌寄 第14868号)に変更した以外は、実施例1と同じ試験を行なった。生分解菌の種類を変更した以外は実施例1の9試料と同じ操作で得られた実施例3の9水準の各試料からえられた試験結果は、EDTA残存濃度値の差はあっても、9試料間の相対的な差は対応する実施例1の9試料間の差異と同じであり、その意味で、実質的には実施例1の各試料間の差異と同じであった。 【0058】実施例4実施例1において使用した微生物保持担体、修飾ビスコパールAZ4200-ccをキチンキト酸を基体としたキトパール(富士紡績(株)製)に変更した以外は、実施例1と同じ試験を行なった。微生物保持担体の種類を変更した以外は実施例1の9試料と同じ操作で得られた実施例4の9水準の各試料から得られた試験結果は、EDTA残存濃度値の差はあっても、9試料間の相対的な差は対応する実施例1の9試料間の差異と同じであり、その意味で、実質的には実施例1の各試料間の差異と同じであった。 【0059】実施例5実施例1において、菌体担持体Aの調製に際して用いた修飾ビスコパールAZ4200−ccを等量のセルロース微粉末担体(旭化成社製マイクロキャリア)に変更した以外は、菌体担持体Aの調製と同じ操作によりセルロース粉末担持の菌体担持体を作製した。これを菌体担持体Eとする。一方、1リットル精製水に、酵母エキス(和光純薬工業(株)製)0.1質量%、Na2HPO4 6.2g、KH2PO4 3.0g、NaCl 0.5g、NH4Cl 1.0gを溶解させたpH7.0の水溶液500mlに上記セルロース微粉末3.0gを加えた後、蒸発濃縮と凍結乾燥によって粉末化し、質量平均粒子系10μmに粉砕して栄養物徐放剤Fを得た。この徐放剤は無機栄養物を徐放するほか、セルロース粉末分解物とセルロースに吸蔵された酵母エキスも徐放される。実施例1の試料2の菌体担持体Aを菌体担持体Eに変更し、徐放剤Dを徐放剤Fに変更した以外は、試料2と同じ操作でEDTA除去操作を行った。50日間の試験ののち、汚染土壌からEDTAは検出されなかった。 【0060】なお、比較試験として上記の栄養物徐放剤Fの作製において、酵母エキス(和光純薬工業(株)製)の量を0.1質量%、から0.5%に増量した栄養物 担持剤を作製し、これを栄養物 担持剤Gとした。栄養物徐放剤Fの代わりに栄養物担持剤Gを使用した以外は、上記実施例と同じ操作で50日間の試験を行なったところ、EDTAの残留率は30日時点で66%、50日において35%であった。 栄養物の供給が多いとEDTAが分解されにくく、栄養物が消費されてきた試験期間の後半において、EDTA分解速度が高くなっていることを示した。 【0061】実施例6Novozyme社から市販されているフェノール分解菌製剤Bi−Chem1002CGをP1培地(組成:酵母エキス0.05%、フェノール0.05%、リン酸二水素ナトリウム0.62%、リン酸二水素カリウム0.3%、塩化ナトリウム0.05%、塩化アンモニウム0.1%、pH7.0)300mlを用い34℃で2日間振盪培養し、フェノール分解菌体を高濃度に含有する培養物を得た。これを遠心分離により、本菌株の湿菌体と培養上清に分離した。精製水による洗浄と遠心分離による湿菌体の回収を3回繰り返し、培養上清を十分に除去した洗浄湿菌体Aを得た。 【0062】37℃の精製水160mlにκカラギーナンを4%濃度となるように溶解し、その溶解液に上記Aの1/2量を加え、均一になるようによく攪拌、分散した。1リットルのビーカーに2%KCl溶液を20℃に保ち、そこに上記κカラギーナン溶液を滴下した。κカラギーナンは37℃では液状であるが、20℃ではゲル化するので、この操作により、フェノール分解菌を包括固定したビーズが得られる。このビーズをP1培地中に入れ、1日培養して、ビーズの表層部位に菌体が密集増殖した活性の高いビーズを得た。更にビーズを精製水でよく洗浄し、余剰の培地成分、および固定化されていない菌体を除去したビーズBを得た。菌体が生育するのに必要な成分の包括化は、フェノールを除外したP1培地150mlを37℃に加熱し、κカラギーナンを4%濃度となるように添加溶解し、この溶液を20℃の2%KCl溶液に滴下する方法で行った。この方法で上記の菌体を包括したビーズと同様の形状のビーズCが得られた。 【0063】富士写真フイルム(株)足柄工場内の緑地帯から採取した土壌を室温で1週間放置乾燥後、1.5Kgを写真処理用(4ツ切りサイズ)パットに均一に広げ、2%フェノール水溶液100mlを噴霧し良く混合した。この調製汚染土壌を室温にて1週間放置乾燥した。上記汚染土壌各200gに表2のように菌体、栄養源を接種(土壌に分散する際100〜150mlの精製水を使用し、良く混合した)し、25℃、30日間に渡ってフェノールの分解状況を観測した。容器はコニカルビーカーを用い、質量測定により蒸発水分量に相当する精製水を5日おきに添加調整した。生分解進行の観測は、各試料から土壌を5gずつ採取し、50mlの精製水に懸濁後、超音波洗浄器にて良く分散、洗浄したものを孔径0.45μmのミクロフィルターでろ過した液について液体クロマトグラフィーによりフェノール量を定量することによって行った。 【0064】なお、表2において菌体の欄のaは上記Aの1/20量、bは上記Bの1/10量であり、栄養源の接種の欄におけるCは50gを使用した。 【0065】 【表2】
【0066】試験結果は、フェノール残存率(%)を生分解効果の尺度として表3に示す。 【0067】 【表3】
【0068】実施例7実施例1に述べた菌体担持体Aと栄養物徐放剤Dとを質量比1:1で混合して水不透過性の容器に充填して菌体担持担体と栄養物徐放剤の複合微生物製剤を調製した。一方,比較用として実施例1の菌体担持担体Bを用いた。この菌体担持体Bには栄養源である培地成分が含有されている。 【0069】富士写真フイルム(株)足柄工場内の緑地帯から採取した土壌を室温で1週間放置乾燥後、2Kgを写真処理用(4ツ切りサイズ)バットに均一に広げ、NH4Fe(III)・EDTA(和光純薬工業(株)製)1%溶液100mlを噴霧後、良く混合した。この調製汚染土壌を室温にて1週間放置乾燥した。上記のEDTAで汚染された土壌各200gに、上記複合微生物製剤及び菌体担持担体Bとをそれぞれ接種(土壌に分散する際150mlの精製水を使用し良く混合した)し、25℃のもとで、実施例1と同じ試料の採取,分析方法で50日間に渡ってEDTAの分解状況を観測した。 【0070】本発明例の微生物担体と徐放化した栄養物源とを含んだ微生物製剤は、汚染土壌中のEDTAを試験期間内にEDTA残留濃度が実質的に検出されなくなるまで分解した。また、その分解速度は実施例1の試料2と実質的にほぼ同等であった。一方、比較例に用いた菌体Bでは、50日間の試験時間後でも高い残留EDTA濃度を示しており、実施例1の試料4の結果を再現していた。すなわち、栄養物徐放機構を組み込んだ微生物製剤は、微生物担体と徐放化した栄養物源とを汚染土壌に別個に投与した場合と同等の持続性のある土壌修復能力を有していることが示された。また、比較例(菌体担持体B)の結果から、栄養物が含まれていても徐放機構を有する形でなければ、汚染物質の分解除去能力を有しないことも示された。 【0071】 【発明の効果】土壌汚染物質の分解能を有する微生物を担体に担持させて汚染された土壌中に存在させ、かつ微生物の栄養物を徐放状態で投与する本発明の汚染土壌修復方法は、栄養物の過剰供給によって土壌修復能が低下することもなく、逆に栄養不足によって微生物が減少することもなく、効果的に汚染途上を修復することが出来る。また、本発明の上記の効果は、微生物担持担体と微生物の栄養物を徐放状態で含む栄養源とを併せ有する微生物製剤の形態においても発揮させることができる。
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【出願人】 |
【識別番号】000005201 【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社 【住所又は居所】神奈川県南足柄市中沼210番地
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【出願日】 |
平成14年4月1日(2002.4.1) |
【代理人】 |
【識別番号】100105647 【弁理士】 【氏名又は名称】小栗 昌平 (外4名)
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【公開番号】 |
特開2003−154352(P2003−154352A) |
【公開日】 |
平成15年5月27日(2003.5.27) |
【出願番号】 |
特願2002−98801(P2002−98801) |
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