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【発明の名称】 |
有機性廃棄物の醗酵処理方法及びその装置 |
【発明者】 |
【氏名】高木 康之 【氏名】平田 和男 【氏名】松岡 清 |
【課題】好気性醗酵用のバクテリアの投入の必要がなく、僅かな量の醗酵助材の添加で安定した好気性醗酵による生ゴミ等の有機性廃棄物の醗酵処理を行う事のできる好気性醗酵処理方法とその装置を提供する。
【解決手段】生ゴミ等の有機性廃棄物に、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上の破砕物からなる醗酵助材を混合し、該混合物を好気性雰囲気下で醗酵させる様にした事を特徴とするもので、前記醗酵助材は、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上を加圧・混練しながら磨り潰して破砕する事により組織が破壊されて吸水性が高められたものを最適とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生ゴミ等の有機性廃棄物に、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上の破砕物からなる醗酵助材を混合し、該混合物を好気性雰囲気下で醗酵させる事を特徴とする有機性廃棄物の醗酵処理方法【請求項2】 前記醗酵助材は、前記籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上を、加圧・混練しながら破砕する事により、その組織が破壊されて吸水性が高められたこれらの破砕物である請求項1に記載の有機性廃棄物の醗酵処理方法【請求項3】 前記醗酵助材を、前記有機性廃棄物100重量部に対して5〜80重量部の割合で添加混合する請求項1又は2に記載の有機性廃棄物の醗酵処理方法【請求項4】 前記有機性廃棄物と前記醗酵助材との混合物に、攪拌力を付与しつつ醗酵させる請求項1乃至3のいずれかに記載の有機性廃棄物の醗酵処理方法【請求項5】 前記混合物を間歇的に攪拌する請求項4に記載の有機性廃棄物の醗酵処理方法【請求項6】 前記間歇攪拌の攪拌期間と放置期間との時間の比が、1:10〜1:180である請求項5に記載の有機性廃棄物の醗酵処理方法【請求項7】 前記混合物を装入してなる醗酵槽(1)内を強制的に換気しつつ醗酵処理する請求項1乃至6のいずれかに記載の有機性廃棄物の醗酵処理方法【請求項8】 正逆方向に切替え回転可能に横置された醗酵槽(1)と、該醗酵槽(1)の一端部に形成された原料投入部(2,5a)と、該醗酵槽(1)の他端部に形成された残渣排出部(3,6a)と、該醗酵槽(1)の外面を囲繞する様に配置されたジャケット(4)と、該醗酵槽(1)内を換気する強制換気手段(9,10)と、前記醗酵槽(1)内の被処理物を攪拌する攪拌手段(15,16)とを有し、前記原料投入部から、生ゴミ等の有機性廃棄物と、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上の破砕物からなる醗酵助材とを投入し前記醗酵槽(1)内で該有機性廃棄物を好気性醗酵させ、醗酵残渣を、前記残渣排出部から排出する様にしてなる事を特徴とする有機性廃棄物の醗酵処理装置【請求項9】 前記醗酵槽(1)の一端部には、該醗酵槽(1)の中心から偏位した位置に、常時開口した原料投入用開口(5a)が形成され、該開口(5a)には、前記ジャケット(4)を貫通して原料投入ホッパ(2)が接続され、該原料投入ホッパ(2)先端の原料投入口には、開閉自在な蓋部材(24)が配置され、前記醗酵槽(1)の他端部には、前記原料投入用開口(5a)と同様に前記醗酵槽(1)の中心から偏位した位置に、常時開口した残渣排出用開口(6a)が形成され、該開口(6a)には、醗酵残渣排出ダクト(3)が前記ジャケット(4)を貫通して外部に突出して形成され、前記醗酵槽(1)の逆転時に前記醗酵残渣を前記残渣排出用開口(6a)から排出する様にしてなる請求項8に記載の有機性廃棄物の醗酵処理装置【請求項10】 前記強制換気手段は、前記ジャケット(4)に適宜形成された吸気口と、該ジャケット(4)内と前記醗酵残渣排出ダクト(3)を介して前記醗酵槽(1)内とを連通するための前記醗酵残渣排出ダクト(3)の上面に形成された吸気口(7)と、排気ファン(10)を有する排気ダクト(9)と、該排気ダクト(9)と前記醗酵槽(1)内とを前記原料投入ホッパ(2)を介して連通するための前記原料投入ホッパ(2)の上面に形成された排気口(8)とから形成されている請求項8又は9に記載の有機性廃棄物の醗酵処理装置【請求項11】 前記ジャケット(4)に適宜形成された吸気口の近傍にヒータ(23)が配置されており、該ヒータ(23)によって加温された空気が前記ジャケット(4)内を通って前記醗酵槽(1)内に流入する様にしてなる請求項10に記載の有機性廃棄物の醗酵処理装置【請求項12】 前記排気ダクト(9)の適所に脱臭剤(11)を配置してなる請求項10又は11に記載の有機性廃棄物の醗酵処理装置【請求項13】 前記攪拌手段は、前記醗酵槽(1)を貫通して配置された回転軸(15)と、該回転軸(15)に配置された複数の攪拌翼(16)とからなるものである請求項8乃至12のいずれかに記載の有機性廃棄物の醗酵処理装置 |
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、生ゴミ等の有機性廃棄物の醗酵処理方法とその装置に関するものであり、特に、自然界に存在する好気性醗酵菌を利用した好気性醗酵よって有機物を分解処理する方法と、その醗酵処理に使用する装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】飲食店や給食センター或いはスーパーマーケットやホテルの調理場等から生ゴミとして発生する肉類,野菜,穀類の調理残渣及び残飯等は、水分を多く含む有機性廃棄物であり、放置しておくと腐敗して悪臭を発生すると共に、衛生的にも問題がある。 【0003】そこで、これらの有機性廃棄物の処理方法としては、紙類や可燃性プラスチック類と共に、一般都市ゴミとして焼却処分されるているのが一般的であるが、係る有機性廃棄物は水分が多いため、重油バーナーで高温に保持した燃焼炉に投入して焼却する方式が一般的である。しかし乍ら、単にゴミを焼却するために重油を燃料させるのは、資源の有効活用の観点から見ても、問題の多い処理法であった。 【0004】そこで、係る有機性廃棄物を、再資源化する方策も種々提案され、既に実用化されている。その例としては、EM菌等の微生物分解による堆肥化や飼料化がある。しかし乍ら、これらの方式では、減容率は小さく且つその普及に連れて生成される堆肥や飼料も増加し、特に、都市部では生成した堆肥や飼料自体の処分が問題になっている。 【0005】そこで、該有機性廃棄物を好気性醗酵処理して分解させ、基本的には消滅させる消滅型処理法が種々提案されている。この方式は、特開平10−225673号公報や特開平9−192829号に示されている様に、基本的には、有機性廃棄物中に微生物着床材としての「おが屑や籾殻等の基材」と共に「好気性バクテリア」を投入して混合・攪拌し、好気性醗酵させる方式である。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】係る従来の方法において、先ず、堆肥化や飼料化する方法は、再資源化の道として有用な方式ではあるが、都市部では生成物の需要が少なく処理仕切れない問題がある事は前述の通りであり、又、好気性醗酵による消滅型処理法では、その方式によって異なる特定のバクテリアを使用する方法であるので、一般に、処理可能な条件範囲が狭く且つ生ゴミの特性や処理環境の影響に大きく左右される傾向が強い。特に、好気性醗酵に失敗して、一旦嫌気性醗酵が生じると、腐臭を発生するばかりでなく、元の好気性醗酵に復元して安定化させるには長時間を要する等の運転上の問題点が存在している。 【0007】又、消滅型処理と雖も、残渣は必ず発生するが、この残渣を堆肥として使用するには、使用したバクテリアの農作物に対する安全性の観点から、一般農家の同意を得るのが必ずしも容易ではなく、一般農家からは敬遠される傾向も見受けらる。 【0008】又、従来法においては、例えば特開平10−211482号公報に記載の方法によると、生ゴミ100重量部に対して生ゴミ処理用配合物を1000〜5000重量部も添加しなければならず、処理すべき生ゴミよりも、これに添加する処理材の方が数十倍も多いという不合理な面も存在していた。 【0009】更に、好気性醗酵用のバクテリアは、専門業者から継続して購入しなければならず、処理コストの面からは無視し得ない負担であった。 【0010】そこで、本発明は、係る問題点に鑑み、特定の好気性醗酵用のバクテリアの購入の必要がなく、僅かな量の添加材で安定した好気性醗酵が可能であり、更に装置の運転コストも安い、低コストで安全な処理方法とその処理方法に使用する装置を提供する事を目的とするものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明は、係る観点の元になされたものであって、その特徴とするところは、生ゴミ等の有機性廃棄物に、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上の破砕物からなる醗酵助材を混合し、該混合物を好気性雰囲気下で醗酵させる点にある。これにより、格別なバクテリアを添加混合する事なく、且つ醗酵残渣の少ない好気性醗酵処理を行う事が可能となる。 【0012】特に、本発明で使用する前記醗酵助材は、前記籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上を、加圧・混練しながら破砕する事により、組織が破壊されて吸水性が高められたこれらの破砕物が最適であり、該醗酵助材の前記有機性廃棄物に対する混合割合も、該有機性廃棄物100重量部に対して5〜80重量部の割合でよい。これにより、発生する醗酵残渣の量は前記醗酵助材の量を含めても僅かであり、しかも、該残渣は、再度醗酵助材として使用するする事も可能であり、又、そのまま堆肥としても使用可能な状態となっている。 【0013】又、前記有機性廃棄物と前記醗酵助材との混合物に、攪拌力を付与しつつ醗酵させるのが好ましく、この攪拌も、間歇的に攪拌する程度でよく、これにより装置運転コストの大幅な低減を可能となしている。 【0014】又、前記混合物を装入してなる醗酵槽内を強制的に換気しつつ醗酵処理するのが好ましく、この場合に、必要に応じて、加温した空気を送給しつつ強制換気を行える様になす事も可能である。 【0015】又、本発明に係る処理装置としては、正逆方向に切替え回転可能に横置された醗酵槽と、該醗酵槽の一端部に形成された原料投入部と、該醗酵槽の他端部に形成された醗酵残渣排出部と、該該醗酵槽の外面を囲繞する様に配置されたジャケットと、該醗酵槽内の強制換気手段と、該醗酵槽内の被処理物を攪拌する攪拌手段とを有し、前記原料投入部生ゴミ等の有機性廃棄物と籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上の破砕物からなる醗酵助材とを投入して前記醗酵槽内で前記有機性廃棄物を醗酵させ、醗酵残渣を前記醗酵残渣排出部から排出する様にしてなるものが好ましい。これにより、適宜前記有機性廃棄物と醗酵助材とを醗酵槽内に投入しつつ連続的に好気性醗酵処理を行う事が可能となる。 【0016】係る装置の好ましい形態としては、前記醗酵槽の一端部には、該醗酵槽の中心から偏位した位置に常時開口した原料供給用開口が形成され、該開口には、前記ジャケットを貫通して原料投入ホッパが接続され、該原料投入ホッパ先端の原料投入口には開閉自在な蓋部材が配置され、前記醗酵槽の他端部には、前記原料供給用開口と同様に前記醗酵槽の中心から偏位した位置に常時開口した残渣排出用開口が形成され、該開口には、醗酵残渣排出ダクトが前記ジャケットを貫通して外部に突出して形成され、前記醗酵槽の逆転時に前記醗酵残渣を前記残渣排出用開口から排出する様にしてなるものがある。 【0017】又、前記強制換気手段としては、前記ジャケットに適宜形成された吸気口と、該ジャケット内と前記残渣排出ダクトを介して前記醗酵槽内とを連通するための前記残渣排出ダクトの上面に形成された吸気口と、排気ファンを有する排気ダクトと、該排気ダクトと前記醗酵槽内とを前記原料投入ホッパを介して連通するための前記原料投入ホッパの上面に形成された排気口とから形成されているものが好ましい。 【0018】又、前記ジャケットに適宜形成された吸気口の近傍にヒーターを配置し、該ヒーターによって加温された空気が前記ジャケット内を通って前記醗酵槽内に流入する様になすのも好ましい方式であり、これにより、外気温が低い場合にも、適度の醗酵温度を保持させる事が可能となる。 【0019】又、前記排気ダクトの適所に脱臭剤を配置してなる方式もあり、醗酵臭の外部への漏出を防止する様になす事も可能である。 【0020】又、前記攪拌手段は、前記醗酵槽を貫通して配置された回転軸と、該回転軸に配置された複数の攪拌翼とから構成するのが好ましい。 【0021】 【発明の実施の形態】以下に本発明について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明で使用する有機性廃棄物の醗酵処理装置の一例を示す縦断面図であり、該装置は、生ゴミ等の有機性廃棄物を醗酵処理する醗酵槽1と該醗酵槽1の外周面を囲繞する様に配置されたジャケット4と、該醗酵槽1内の前記廃棄物を攪拌するための攪拌装置15,16と、該醗酵槽1に回転力を付与する回転装置17と、該醗酵槽1内の発生ガスを強制換気する排気ダクト9とを主要構成とするものである。 【0022】前記醗酵槽1は、両端部の固定側板5,6と、該固定側板5,6に対して回転可能な円筒ドラム1aとで構成され、該円筒ドラム1aは前記固定側板5,6に対してベアリング機構等により回動自在に連結されている。前記一端の固定側板5には、該固定側板5の正面概略図である図2に示す様に、醗酵槽1の中心Oから偏位した位置に原料投入用の開口5aが形成され、他端の固定側板6には、該固定側板6の正面概略図である図3に示す様に、醗酵残渣排出用の排出口6aが前記原料投入用の開口5aと同様に前記醗酵槽1の中心Oから偏位した位置に形成されている。前記原料投入用開口5aには、前記ジャケット4を貫通して外部に開口部2aを有する原料投入ホッパ2が斜め上向きに形成され、該ホッパ2の開口部2aには、開閉自在な蓋部材24が配置されている。一方、前記醗酵残渣排出用の排出口6aには、残渣排出ダクト3が前記ジャケット4を貫通して斜め下向きに形成されており、その外部に露出した排出口3aには、残渣収容袋25が着脱自在に取り付けられている。 【0023】前記醗酵槽1内には、該醗酵槽のドラム中心軸から上側に偏位した位置で前記両側の固定側板5,6を貫通して配置された回転軸15と該回転軸15の長手方向に複数個設置された切断刃面を有する攪拌翼16とからなる攪拌手段が設置されている。この攪拌手段は、投入原料がブロック状の場合には、これを破砕すると共に、有機性廃棄物と醗酵助材とを攪拌混合する作用を有するものであって、前記ジャケット4内に設置されている駆動モータ13とこれに連結された減速機14とによって回転駆動される様になっている。尚、前記回転軸15はベースBに固定された支持スタンド26(図中左側のスタンドは省略している)によって両端部が回転可能に支持されている。 【0024】又、前記醗酵槽1のドラム1aの一端外周部にギア27が装着されており、前記駆動モータ13,前記減速機14及び前記回転軸15の端部に取り付けられたギア28,該ギア28に一端を係合されたチェーン30,該チェーン30に他端を係合されたギア29,該ギア29に接続された減速機20,該減速機20の出力軸21及び該出力軸21の端部に保持されたギア22を介して、前記ドラムギア27に回転力を付与して前記醗酵槽のドラム1aを回転させる様に構成されている。尚、該ドラム1aは、ベースBに固定された複数の支持部材18と、該支持部材18に回転自在に取り付けられた複数のローラ17によって保持されて、自由に回転する様になっている。 【0025】前記醗酵残渣排出ダクト3の上面部の適所には吸気口7が形成され、前記原料投入ホッパ2の上面部の適所には排気口8が形成され、該排気口8は、排気ダクト9に接続され、該排気ダクト9の適所に、排気ファン10と脱臭剤11とが配置されている。これにより、排気ファン10の吸気力によって、ジャケット4内の空気が前記醗酵残渣排出ダクト3の吸気口7から吸引され、前記固定側板6の醗酵残渣排出口6aを経て醗酵槽1内に流入し、該醗酵槽1内に発生したガスと共に、前記固定側板5の原料投入用開口5a及び原料投入ホッパ2の排気口8を経て前記排気ダクト9から大気中に放出される様になっている。即ち、前記排気ファン10によって、醗酵槽1内のガスを強制的に排気すると共に、新鮮なジャケット内の空気を前記排出ダクト3に形成された吸気口7から前記醗酵槽1内に供給する様になっている。尚、醗酵臭は、前記排気ダクト9内に設置された前記脱臭剤11によって除去される様になっている。又、醗酵によって生じた水分の殆どは排気ダクト9から大気中に放出されるが、外気温が低い場合には、該ダクト内で凝縮する場合があるので、ドレン抜き12から適宜凝縮水を排出できる様になっている。 【0026】又、前記ジャケット4の適所には、吸気用の開口(図示せず)が形成されており、該吸気口の近傍に、ヒーター23が配置されている。従って、前記排気ファン10が作動すると、前述の通りジャケット4内の空気は醗酵槽1内に吸引されるが、その際に、該ジャケット4に形成された吸気用開口部から外気が吸引されると共に、前記ヒーター23で加温されてジャケット4内に流入する事になる。この加温空気が醗酵槽1のドラム1aの周囲を流れて前記醗酵残渣排出ダクト3に形成された吸気口7から吸引される事により、醗酵槽1を外部から加温すると共に、醗酵槽1内に加温空気を供給して醗酵槽1内の温度を所定の温度に保つ役割がある。 【0027】次に、上述の処理装置を用いて生ゴミ等の有機性廃棄物を醗酵処理する処理操作について説明する。先ず、生ゴミ等の有機性廃棄物は、適宜原料供給ホッパ2の開口部2aに配置された蓋部材24を手動で開け、該ホッパ2内に有機性廃棄物を投入すると、該ホッパ2内を滑り落ちて、前記固定側板5に形成されて常時開口している投入口5aから、既に醗酵槽1内に存在している好気性醗酵中の有機性廃棄物の上に落下堆積する。一方、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上の破砕物からなる醗酵助材を、同様にして前記原料投入ホッパ2から適宜投入する。この様にして、適宜投入された有機性廃棄物と醗酵助材とは、前記醗酵槽1のドラム1aが回転される事により混合され、且つ、前記有機性廃棄物がブロック状態で投入されている場合には、前記攪拌翼16の回転によって、ブロックが解砕されると共に有機性廃棄物と醗酵助材との混合が促進される。 【0028】次に、該醗酵槽1内での生ゴミ等の有機性廃棄物の挙動について、図2,3によって説明する。図2は、醗酵槽1内の状態を原料投入口5a側から見た該略図であり、醗酵槽1内に原料投入口5aから投入された生ゴミ等は、醗酵槽1の矢印33に示す方向への回転(正転)によって、図中A1で示す様に回転方向に向かって上り勾配を有する状態に堆積しており、同時に、醗酵槽1の回転によって矢印34に示した方向に循環している。これにより、生ゴミ等の有機性廃棄物と前記醗酵助材との混合と共に、前記堆積物中に滞留している醗酵ガスの放出と新鮮な空気の巻き込みが行われる。 【0029】図3は、醗酵槽1内の状態を醗酵残渣排出口6a側から見た該略図であり、醗酵槽1が矢印33で示した方向への回転(正転)の場合には、前記排出口6aの位置は、前記堆積物A1から離れているので、醗酵残渣は該排出口6aから外部に排出される事はない。そこで、醗酵槽1の回転方向を、図中の矢印35に示す方向への回転(逆転)に切り換えると、該堆積物は、図中A2に示す様に前記A1とは逆勾配の堆積物となる。この結果、堆積物の上面は、前記排出口6aの下端面より高い位置となり、該排出口6aから醗酵残渣は醗酵槽1外に排出される事になる。 【0030】次に、前記醗酵助材は、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上から形成されているので、比較的固く、それ自体の形状を保持し易い特性を有しているので、生ゴミ等の湿潤な有機性廃棄物と混合されても、該有機性廃棄物の間に存在して空間を形成し、空気を該有機性廃棄物間に保持させる役割を有している。しかも、該醗酵助材の原料となる前記籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草は、それ自体は乾燥物であって水分含有量が少なく、しかも破砕される事によって組織が破壊されて水分を吸収し易くなっているので、湿潤な有機性廃棄物と混合されると、該有機性廃棄物中の水分を吸収して、該有機性廃棄物が前記醗酵槽内面や前記攪拌翼等に付着しない様な適度の乾き度を与えると共に、該有機性廃棄物との馴染みもよく、適度に乾いた前記有機性廃棄物の粒子間に適度の空隙率を形成して空気の流通を促進し、嫌気性醗酵を抑制する作用がある。 【0031】この様にして順次投入・混合された有機性廃棄物と醗酵助材との混合物は、空気中に存在する好気性醗酵菌や前記醗酵助材に付着している各種好気性醗酵菌によって好気性醗酵が進行し、有機性廃棄物は基本的には炭酸ガスと水とに分解されるが、この際に空気を適宜供給すると共に、発生したガスを適宜排気する必要があるので、前述の排気ダクト9に配置された排気ファン10を作動させて強制排気を行うと同時に新鮮な空気を醗酵槽1内に適宜供給して好気性醗酵の環境を維持する。 【0032】上記混合物の有機性廃棄物と醗酵助材との配合割合は、有機性廃棄物100重量部に対して5〜80重量部程度の醗酵助材の添加でよい。該醗酵助材の配合割合が5重量部以下では、有機性廃棄物の粒子間に形成される空気相の割合が小さくなって、好気性醗酵の維持のための混合や排気が頻繁に必要になると共に、湿潤な生ゴミ等の有機性廃棄物の場合には、該有機性廃棄物に適度の乾き度を保持するのが困難になる。一方、80重量部を越える配合は、醗酵助材の無用な増大と醗酵残渣の量が増加し、醗酵残渣中の籾殻や稲藁や麦藁等の分解し難い残渣が増えて、堆肥としての有効性が小さくなる可能性があるからである。尚、該醗酵助材の一般的な配合比率は、有機性廃棄物100重量部に対して10重量部前後即ち5〜15重量部であるが、原料となる生ゴミ等の有機性廃棄物の水分含有量によって、適宜増減する必要がある事は言うまでもない。即ち、水分含有量が多い場合には、醗酵助材の添加量を増やし、水分含有量が少ない場合には適宜減らして、有機性廃棄物と醗酵助材との混合物が好気性醗酵し易い状態に管理する必要がある。 【0033】次に、前記醗酵槽のドラム1aは、前述の要領で回転されるが、この回転は連続的に緩やかに回転させる事も可能であるが、間歇的に回転させる方が、運転コストの観点からは好ましい方式である。即ち、好気性醗酵の反応速度は、一般の化学装置による化学反応に比して極めて緩やかに進行するものであるから、前記空気相を保持した混合物を放置していても、好気性醗酵が維持される範囲の適当な時間であれば、前記ドラムの回転による混合を行わなくても、何等問題は生じない。同様の意味において、前記強制排気も連続的に常時同レベルの排気を行う必要はなく、前記ドラムの回転に併せて排気に強弱を付ける事も可能であるが、勿論、該ドラムの回転とは独立して適宜間欠的に強制排気する事も可能である。 【0034】これら、醗酵ドラムの間歇回転と強制排気のレベルについて、図4に示すタイムチャートの一例によって説明する。図4(A)は醗酵ドラムの間歇回転のタイムチャートであり、同図(B)は強制排気の排気レベルを示すタイムチャートである。先ず、図(A)において、t1は醗酵ドラムの回転を行っている時間帯であり、t2は醗酵ドラムの回転を休止している時間帯である。ここで、t1とt2の比、即ち、t1:t2は、一般には1:10〜1:180の範囲で選択されるが、実用的には1:30〜1:100程度が好ましい範囲である。具体的にはt1を2〜3分とした場合には、t2は60分〜150分程度の時間を選択するのが好ましい。 【0035】次に、同図(B)において、t1,t2は、上記醗酵ドラムの間歇回転に合わせた強制排気の強弱の時間帯を示しており、醗酵ドラムが回転している時間帯t1では、内部堆積物が強制混合される結果、内部堆積物中に滞留していた醗酵ガスが醗酵ドラム中に放出されるので、この期間は前記排気ファン10を強回転させて強力に排気を行い、醗酵ドラムの回転が休止している時間帯t2では、前記排気ファン10を弱回転させて弱排気状態にしておく。ここで、強排気状態における排気量w1を100とした場合の弱排気状態における排気量w2は、10〜30程度、好ましくは20程度に設定しておくのが一般的であるが、強制排気操作には、醗酵ガスの放出と共に、原料中の水分を除去する乾燥作用もあるので、生ゴミ等の原料有機性廃棄物中の水分含有量が多い場合には、弱排気状態の排気量w2のレベルを若干高めに設定しておく事が好ましい。 【0036】次に、好気性醗酵が進行して有機性廃棄物の分解が進み、投入物は次第に減容されてくると、前述の如く、醗酵ドラム1aの回転方向を逆転させる事により、醗酵残渣は前記固定側板6に開口している排出口6aから排出ダクト3に排出され、該ダクト3の先端に取り付けられている残渣収容袋25内に落下する。該残渣収容袋25が所定量に達すると、該袋25を新たなものに取り替える。尚、前記醗酵ドラム1aの回転方向の逆転の頻度の設定は、醗酵槽1内における原料投入物の滞留時間と醗酵槽内の滞留量を決定する事になる。即ち、逆転頻度を高めると、醗酵残渣の排出頻度が高くなって投入物の滞留時間は短くなり、同時に醗酵槽内の滞留量も少なくなるが、逆転頻度を低くすると、投入物の滞留時間は長くなり、同時に醗酵槽内の滞留量も多くなる。従って、生ゴミ等の有機性廃棄物の特性や環境条件に応じて、適宜設定する事になるが、一般には、投入原料の大まかな特性が略一定であれば、初期の試運転段階で設定した正転/逆転の頻度を変化させる必要性は殆どない。 【0037】次に、前記残渣収容袋25内に落下する醗酵残渣は、前記有機性廃棄物の醗酵残渣と醗酵助材の混合物であるので、これを有機性廃棄物の醗酵残渣と醗酵助材とに篩い分け、有機性廃棄物の醗酵残渣のみを堆肥として使用し、回収した醗酵助材は再使用する事も可能であるが、これらを分離する事なく、全てを堆肥として使用する事も可能である。特に、醗酵助材は、籾殻,稲藁,麦藁,干し草或いは枯れ草の破砕物であるが、その組織が破壊されて吸湿性を有している上に、前記醗酵槽内で部分的に分解が進んでいるので、堆肥として使用しても何等問題はない。特に、本発明の方法によると、投入原料(有機性廃棄物)の殆どは分解して消失しており、前記排出された醗酵残渣の60〜70重量%は醗酵助材であるので、全量を新鮮な醗酵助材に混合して再度醗酵助材として使用する事も可能である。 【0038】次に、本発明で使用する前記籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の1種以上の破砕物からなる醗酵助材の製造方法について説明する。図5〜図8は、特開平10−113548号公報に示されている繊維質材料混練装置であり、本発明で使用する醗酵助材は係る装置により前記籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の1種以上を破砕して繊維質組織の破壊された破砕物を製造する事により得られるものが好ましい。尚、図5は、本発明で使用する繊維質材料混練装置の一例を示す要部断面説明図であり、図6は、図5のII−II部矢視図、図7は、図6のIII −III 部断面、図8は、繊維質材料混練装置の動作説明図である。 【0039】この繊維質材料混練装置は、図5に示した様に、ケーシング41,スクリュー42,スクリュー支持部材43,トップカバー44及びカッター45からなり、前記ケーシング41の後端側には原料投入ホッパ46が設けられ、前記トップカバー44には、排出孔47が設けられている。尚、溝49はトップカバー44の内側表面に設けられている。前記原料投入ホッパ46から投入された前記籾殻,稲藁,麦藁の1種又はこれらの混合物は、スクリュー42によって、加圧されて圧縮されると共に摩擦による高温と磨り潰しによる破砕作用及び混練作用を受ける。 【0040】前記カッター45は、トップカバー44の内側表面に接触又は近接する様に設けられており、スクリュー42の回転軸48の先端48aに取り付けられ、該回転軸48と共に回転する。前記トップカバー44の中心には、スクリュー支持部材43が設けられており、スクリュー42の先端48aは、スクリュー支持部材43に回転自在に支持されている。又、スクリュー42の回転軸48の後端48bは、コネクタを介して適宜駆動源に取り付けられ、回転軸48はケーシング41に回転自在に支持されている。 【0041】前記カッター45の形状は、図8に示される様に、略角柱状のものであり、その中央に回転軸48に取り付けるための取付部55が形成されている。又、トップカバー44側の面の両端に刃45a,45bが設けられている。 【0042】次に、図7に示す様に、トップカバー44に設けられる排出孔47は貫通孔であり、図6に示す様に、中心に位置するスクリュー支持孔50の周りに多数設けられている。該排出孔47の外径及び数は、処理する材料の種類によって適宜設定すればよく、又、前記トップカバー44は交換可能で、適当な外径と数の排出孔を有するものを適宜選択する事ができる。 【0043】該トップカバー44の内側表面44aには、2つの正三角形の一方の上下を逆にして重ねた形状の溝49aと、最外側の排出孔47aを連結させた溝49bとが形成されている。前記溝49は、排出孔47と連結させずに独立して設ける事も可能であるが、カッター45の圧縮により繊維質材料より絞り出される水分等を溜めて自己潤滑(他から潤滑用の水分を補給する必要がないので特に自己潤滑という)の役割をさせ得る大きさにする事が必要である。本装置では、これにより、カッターの刃の焼付き及び磨耗が防止され、耐久性及び押出量を増大させる事ができる。又、前記溝を排出孔47と連結させた場合には、溝に溜まった水分と繊維質材料を排出孔47から外部に押し出させる事もできる。従って、該溝内で繊維質材料が滞留する事もなく、又、押出量の増大を図る事もできる。この他に、取り外して清掃する際、溝の掃除がし易くなる等の効果もある。 【0044】前記溝49aは、回転するカッター45と鋭角に交差しており、約60°回転すると、刃の全ての面が全長に渡って、溝49a上を通過できる。従って、万遍なく刃の全ての面に水分を供給する事ができ、効率よくカッターの刃の焼付き及び磨耗を防止する事ができる。又、溝49aは、途中に排出孔47を含んでいるので、溝49aに導かれた繊維質材料をそのまま排出孔47から排出させる事ができる。 【0045】この様な機能を有する溝としては、少なくとも一回転の間に刃が全長に渡って溝上を通過する様に構成されておればよいのであって、この他に、格子,螺旋や放射線等、又、対称の他、非対称,不特定形状等多数考えられる。しかしながら総面積はトップカバー44の強度を損ねない範囲内である事が好ましい。 【0046】溝49bは、一番外側の排出孔47aを連結させており、回転するカッター45と略垂直に交差しており、前述の様に万遍なく水分を刃に供給する事はできないが、排出孔47aに直に向かわない繊維質材料を溝49bを経由させて排出孔47aに導く事ができるので、押出量の増大を図る事ができる。押出量の増大を図るには、一番外側の排出孔7aの他、それよりも内側の排出孔47も含めて、溝が少なくとも1つの任意の排出孔47と連結していればよい。 【0047】溝49の断面形状は、矩形の他、排出孔に向かって傾斜した三角形状(図8参照)のものであってもよいが、矩形の場合は幅広で浅いものが好ましい。溝の深さおよび総面積は、トップカバー44の強度と、潤滑に必要な水分の量により決定される。例えば、図3に示される溝49a,49bの断面形状を矩形とした場合、ケーシング41の内径:約150mmで、溝49a,49bは、深さ:2mm,幅:4mm、トップカバー44の厚さは、20mmで、押出量は約3割程増大する。 【0048】次に、図8に基づいて、上記繊維質材料混練装置の動作を説明する。図8に示されるように、矢印61の方向に押し出されてきた繊維質材料は、直に排出孔に向かっており、スムーズに排出される。一方、矢印62の方向から溝49に押し出されてきた繊維質材料は、スムーズには排出されず圧縮されて水分を絞り出される。この水分はカッターの刃に供給され、潤滑の役目をする。又、溝49に一旦溜まった繊維質材料は、更に溝49から排出孔47へと押し出される。従って溝49に繊維質材料が滞留する事なく、水分が腐るなどして、混練する繊維質材料の品質を変化させてしまうおそれもない。又、水分を供給される事によりカッターが焼付きを起こす事もなく、繊維質材料がスムーズに破砕される。更に、これにより溝49から排出孔47への押し出しもスムーズになるので、押出量が大幅に増大する。 【0049】又、直接、排出孔47や溝49に押し出されずに、一旦トップカバー44の内側表面44aに当たった様な繊維質材料も、回転するカッター45の刃の側面45cに押される事により、排出孔47だけでなく、溝49にも押し込められる。これによっても押出量の増大が図れる。又、本装置では、両面に刃45a,45bが設けられており、万一排出孔が目詰まりしてもスクリューを逆転させる事によって簡単にこれを解消する事ができる。 【0050】上記した繊維質材料混練装置を用いて製造した前記醗酵助材について、以下に説明する。図9は、籾殻を上記繊維質材料混練装置を用いて圧縮,混練の操作を経て破砕され、前記排出孔47から排出された破砕物の外観写真であり、図10は処理前の通常の籾殻の外観写真である。両写真から明らかな様に、破砕処理を受けた籾殻は原型を留めないまでに破砕されている事が分かる。 【0051】この破砕物の体積は、元の籾殻の体積に比べて、約1/2程度に減容されている(嵩密度は2倍程度に大きくなっている)が、細胞組織が破壊されて含有水が絞り出されているので、吸水性は、破砕処理前の籾殻では絶乾重量に対して約120%の吸水率であるのに対し、上記破砕物の籾殻では、約400%の吸水率を示している。この事は、前述の通り、生ゴミと混合された際に、生ゴミ中の水分を吸収して生ゴミに適度の乾き度を与えて醗酵助材である籾殻との混合を容易にすると共に、籾殻自体の有する固さによってその形状を保持する結果、生ゴミ粒子間に適度の空間を形成して好気性醗酵に必要な空気を保持させる事が可能である事が理解される。一方、籾殻自体も、吸錘性が大幅に向上する結果、それ自体の醗酵性も向上し、生ゴミの好気性醗酵処理過程で同時に籾殻の醗酵も進行する事になる。 【0052】又、図9の写真から明らかな様に、破砕された籾殻の粒径は一定ではなく、細かい粒子から略原型の粒子までの広い粒径分布を有しており、これが、上述した様に体積を約1/2に減容させる理由と考えられる。又、この破砕物を生ゴミと共に攪拌・混合した際には、種々の粒径を有する生ゴミの各粒子間に充分に混ざり込んで、小さな生ゴミ粒子の表面にも好気性醗酵に必要な空気を供給させることが可能となっている。 【0053】尚、本発明において、前記醗酵助材は、上記籾殻の他、稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上が原料として用いられ、これを上記繊維質材料混練装置を用いて破砕したものが使用されるが、これらの原料の共通する特徴の一つに、何れもそれ自体が乾燥している乾燥物である点がある。これは、未乾燥の状態や青草状態のものをそのまま前記装置で破砕した場合には、これらの含有水、即ち、「青汁」が破砕工程で発生し、この青汁が破砕物に付着する。この青汁の付着した状態の破砕物を醗酵助材として使用すると、生ゴミに青汁を混合した状態となって好気性醗酵は生じず嫌気性醗酵、即ち腐敗が進行する事になる。この意味から本発明では、乾燥状態にある前記籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草或いは干し草の一種以上を醗酵助材の原料として選定している。 【0054】次に、本発明の実施例について説明する。 【0055】〔実施例1〕図1に示した装置を用いて生ゴミの醗酵処理試験を行った。試験条件及びその結果は表1に記載の通りである。因みに、生ゴミは給食センタから排出される生ゴミをそのまま用いて一日に1回試験装置内に投入した。従って、生ゴミ中の含有物は、その日によって異なり、牛肉,豚肉,鶏肉,魚肉等の肉類の残渣,魚のアラ,魚骨,海老殻,卵の殻,野菜屑,食料油等の通常の調理場から排出されるあらゆる廃棄物が含まれているが、何等の分別を行う事なく、そのまま試験に使用したため、投入量も、その日の給食センタからの排出量によって異なるが、実用運転試験であるので、投入量の調整も行う事なく処理試験を実施した。又、使用した装置の醗酵槽の直径は100cm,長さは150cmである。又、生ゴミ投入後、2〜3週間は、前述の醗酵槽の逆転を行っても醗酵残渣の排出が認められなかったので、醗酵残渣の排出が認められる様になった状態を定常運転状態に達したものと判断し、その状態からの試験状態を表1に示している。又、醗酵槽は、120分毎に2分間回転させる間歇回転方式とし、攪拌装置の作動も醗酵槽の回転時にのみ作動させる様にした。醗酵槽内の排気は、醗酵槽の回転時には、排気ファンの排気能力の100%の排気量に設定し、醗酵槽の回転停止時には、20%の排気量に設定した。尚、醗酵助材としては、図9の写真に示した籾殻の破砕物のみを使用し、好気性バクテリア等のバクテリア類は一切添加していない。 【0056】 【表1】
【0057】表1において、醗酵槽から排出される排出物は、生ゴミの醗酵残渣と醗酵助材の残渣の合計量である。この排出量からも分かる様に、排出物の殆どは醗酵助材の籾殻破砕物であり、排出物の20〜30%が生ゴミ醗酵残渣であり、これは投入生ゴミ量の約5%程度であった。一方、排出物中の醗酵助材は、生ゴミ中の水分を吸水して数倍の重量に増加していた。醗酵残渣の中には、魚骨も原型を留めておらず、魚骨までも分解されていることが判明した。又、処理中の臭気はあるが、腐蝕臭ではなく、イースト菌による醗酵の如き臭気であり、不快感はないが、前記装置の排気ダクトのライン中に配置した活性炭のよる除臭を行った。処理中に混合物を手に取って見たが、全体的に湿気を帯びているものの、手に付着する事はなく、又、手で強く握って塊状体を作って見たが、粒子間の付着力は極めて弱く、手を離すと直ぐにばらばらに分散してしまった。この事は、醗酵助材が生ゴミ中の水分を吸収して生ゴミに適度の乾き度を与えると共に、生ゴミ粒子の凝集をも防止している事が分かる。 【0058】〔実施例2〕醗酵助材として上記籾殻と同様に図5〜図8に示した装置によって破砕した稲藁の破砕物を用いる以外は実施例1と略同一条件で生ゴミの処理を行ったところ略同様の好気性醗酵が進行し、生ゴミの分解が行える事を確認した。 【0059】〔比較例1〕醗酵助材として、オガクズを投入生ゴミの量に対して重量比で約1/10の量を投入する以外は、上記実施例と同一の条件で醗酵処理を行ったところ、初期は順調な好気性醗酵が進行していたが、途中から腐臭が発生し始めた(嫌気性醗酵に移行)ので、装置内の内容物を観察したところ、全体的にベタ付いており、生ゴミ内への空気の流通が不十分と判断した。そこで、攪拌しながらオガクズを投入し、ベタ付きが解消する程度まで大量投入して実施例1,2と同様の運転を継続したところ、しばらくして再び好気性醗酵に戻った。しかし、この状態も長続きせず、しばらくして再度腐臭が発生し始めたので、再度上記と同様にオガクズの大量投入を行って好気性醗酵に復元させたが更に再び腐臭の発生が生じた。この「腐臭発生」→「オガクズ大量投入」→「好気性醗酵に復元」→「腐臭発生」の繰り返しを数回行って試験運転を終了した。因みに、上記腐臭が発生している状態における醗酵槽内容物の水分量を測定したところ、約60重量%であって、この値は、前記実施例1における好気性醗酵が順調に行われている状態での水分量と大差はなかった。 【0060】排出された醗酵残渣には、キャベツの芯,大根や人参の切れ端は殆ど原形のままで排出され、御飯の一部も団子状になって排出されていた。又、順調に好気性醗酵が行われている過程で、醗酵槽内の原料混合物を手に取って見たが、実施例1,2の場合の様な、サラサラ感はなく湿っぽい状態であり、手に少量付着するのは避けられなかった。更に、手で強く握りしめて塊状体にしたところ、手を放してもその状態が維持され、生ゴミ粒子が凝集し易い事が判明した。 【0061】〔比較例2〕醗酵助材として破砕していない籾殻を用いる以外は実施例1と略同一条件で生ゴミの処理を行ったところ、オガクズの場合と同様に、初期の段階では順調な好気性醗酵が認められたが、途中から腐敗臭が漂い始めたので、オガクズの場合と同様に、「籾殻の大量投入」→「好気性醗酵に復元」→「腐臭発生」→「籾殻の大量投入」の繰り返しを数回行って試験運転を終了した。排出された醗酵残渣の特性もオガクズの場合と略同様であり、固形物の分解は不十分であった。 【0062】以上の実施例及び比較例から明らかな様に、本発明の方法においては、一切の好気性バクテリアを添加する事なく良好な好気性醗酵が行われている。この事実は、籾殻や稲藁等の醗酵助材に付着している好気性醗酵菌や空気中に存在する各種好気性菌及び生ゴミに付着している好気性醗酵菌等が作用して自然醗酵が生じたものと考えられる。この事は、同一条件にて実施したオガクズや未破砕の籾殻でも、当初は順調に好気性醗酵が生じている事からも窺える。しかしながら、オガクズや未処理の籾殻では粒子径が略均一であり、且つ吸水性が前記籾殻等の破砕物からなる本発明の醗酵助材に比べて著しく低いため、継続的に生ゴミ中の水分を吸収して生ゴミに適度の乾き度を与える事ができず、従って、原料混合物がベト付いた状態になり易く、このために塊状化し易くなって、生ゴミ粒子間に適度の空気の供給が困難となり、充分な好気性醗酵条件が整わなかったものと推測される。 【0063】尚、上記実施例では、醗酵助材として籾殻と稲藁の破砕物を用いているが、麦藁や枯れ草や干し草を図5〜8の装置を用いて破砕した破砕物を用いた場合のも同様な効果がある事を確認している。この事実から、本発明においては、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草及び干し草の1種以上の破砕物は、醗酵助材として使用可能であるが、破砕処理していないものでは効果がなく、又、従来一般に好気性バクテリアの基材として添加するオガクズ単独では、一時的な好気性醗酵は達成できるが、その継続的な維持が困難である事が分かる。 【0064】 【発明の効果】以上説明した通り、本発明によると、籾殻,稲藁,麦藁,干し草,枯れ草の1種以上の破砕物を醗酵助材として生ゴミに混合するだけで生ゴミ処理装置の好気性醗酵を生じさせる事ができるので、従来一般に使用されている特別な好気性バクテリアの添加が不要となる。従って、生ゴミ処理に要する費用が大幅に軽減される事になる。 【0065】又、醗酵槽から排出される排出物の量は、投入原料の約15%程度であり、この内の約1/3が生ゴミの醗酵残渣であり、残りの約2/3は、吸湿して重量が増加した醗酵助材であって、従来の醗酵処理法に比しても、生ゴミの減容化の面では遜色はなく、しかも全ての排出物は、生ゴミと天然物である醗酵助材の残渣であるから、そのまま堆肥としての使用も可能である。特に、腐敗し難いとの理由から主として焼却処理されていた籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草等も、醗酵助材製造の過程で組織が破壊され吸湿性が増大しており且つ生ゴミの処理過程で部分的に醗酵分解が進行しているので、これら醗酵助材自体も堆肥として畑に散布した場合の分解速度も速くなっており、籾殻,稲藁,麦藁,枯れ草等の堆肥化をも可能にする点で一石二鳥の効果がある。 【0066】更に、特別な好気性バクテリアを使用していないので、醗酵残渣を堆肥とする場合においても、該好気性バクテリアの畑や農作物に対する安全性を論ずる必要がなく、一般農家においても抵抗なく受け入れ易い利点を有している。 【0067】又、特別な好気性バクテリアを使用する場合には、そのバクテリアに最適な環境でなければならず、生ゴミの種類や地域環境による特性が問題となる場合が多く、装置の運転条件に柔軟性を欠く場合が多いが、本発明では、その地域や環境に自然に存在する好気性菌を用いるものであるから、処理装置の運転条件は極めて柔軟であり、特殊な専門家や特殊な運転条件を必要としない点は、汎用性が要求されるこの種装置においては、大きなメリットである。 【0068】従来一般的にバクテリアの菌床として使用されているオガクズでは、順調に好気性醗酵していても、その継続維持が困難であり、常時監視が必要であったが、本発明においては、醗酵助材の吸水性により、生ゴミの水分が吸収されると共に生ゴミに適度の乾き度を与え、且つ、生ゴミ粒子の凝集を防止して生ゴミ粒子間に適度の通気度を確保する事が前記醗酵助材の作用によって極めて容易に達成する事ができるので、装置の運転管理が極めて容易となり、夜間の無人運転を含めて省力化も可能となり、係る生ゴミ処理装置の導入を容易にする顕著な効果も期待される。
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【出願人】 |
【識別番号】391037571 【氏名又は名称】神鋼造機株式会社
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【出願日】 |
平成11年3月30日(1999.3.30) |
【代理人】 |
【識別番号】100089196 【弁理士】 【氏名又は名称】梶 良之
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【公開番号】 |
特開2000−279929(P2000−279929A) |
【公開日】 |
平成12年10月10日(2000.10.10) |
【出願番号】 |
特願平11−89816 |
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