6月5日(日)東京新聞24面記事「こちら特報部」について

【見出し】
 核燃 開発の亡霊 鳥取「ウラン残土」
 “核のごみ”搬出先迷走
 夢の後始末 1日75万円
 環境、健康被害 監視区域外の科学的データなし

【記事概要】
 岡山県と鳥取県にまたがる人形峠で1955年、ウラン鉱床が発見された。原子燃料公社(現核燃)が方面地区でウラン探鉱を始めたのが1958年。当時はウラン鉱山の町になれば、経済的にも潤うとの期待があったが、ウラン含有率が低いことが分かり、探鉱は3年で終了。そして88年「方面地区で放射線の高い残土が放置されている」との報道により撤去要求が噴出。
 90年、方面自治会と核燃は3,000m3を撤去するための協定を締結。両者とも撤去先は、人形峠環境技術センターを念頭に置く。ところが「関係自治体の協力を得て」との条件をめぐり搬出先選びは迷走。
 住民側は核燃に対し、早期撤去を促すため、今年3月10日を期日とし、不履行の場合は、撤去完了まで毎日75万円の制裁金を科す「間接強制」を鳥取地裁に申し入れ、認められた。
 核燃は、制裁金を避けるため、昨年11月、麻畑地区への搬出を決定。ところが今度は鳥取県当局が、麻畑地区は県立自然公園条例に基づく県立自然公園内にあることを盾に、禁止命令を出す。核燃は、禁止命令の取り消しを求めて提訴。鳥取県は、あくまでも人形峠への搬出を主張。岡山、鳥取両県の話し合いすらない現状は、「核のごみ」を押し付けあっているようにも見える。
 しかし、そもそもの問題は、残土が周辺の環境や人間の健康にどのくらい影響を及ぼすかという点である。核燃によると、周辺監視区域内では最高で年間被ばく線量限度の36倍が測定されているが、一般の居住区については、危険性を示す明確な科学データはない。
 忘れてならないのは、地元自治体に支払われる制裁金は、国民の税金で、この状態が1年間続けば、2億7千万円以上になる。
 ここは、知恵を絞って解決してほしい。

【事実関係及びサイクル機構の見解】
1.うち捨てられた残土が亡霊のようにさまよっている
 方面捨石堆積場敷地内のウラン残土は、機構が管理しているところでありますし、他の所から同敷地内に持ち込んだというものではありません。放置しているかのごとく誤解される表現は適当ではありません。

2.「土の中に青く光る粒があるでしょう。これがウランを含んだ残土です。」・・・足元のウラン残土から掘り起こした土の塊を示しながら言った。との文中記載と「掘り起こされたウラン残土は、粒々が不気味に青く光っていた」との写真のキャプション
 「方面1号捨石たい積場」及び「方面2号捨石たい積場」の放射線量を1メートルの高さで測定した結果は、最大0.62マイクロシーベルト/時間です。この程度の線量では、ウランの鉱物が肉眼で観察されることはありません。また、方面地区で肉眼あるいは顕微鏡で観察されたウラン鉱物は、非酸化帯で閃ウラン鉱、コフィン石、人形石が産出することが知られています。これらはいずれも黒色です。なお、酸化帯では、燐灰ウラン石、メタ燐灰ウラン石、ウラノフェン、ベータウラノフェン、ボルトウッド石、カルノー石、ウィークス石が知られていますが、いずれも、黄色ないし黄緑色であり、青色のウラン鉱物は知られていません。
 したがって、土の塊を指し示した方が、指し示した先の青く光る粒がウラン残土であると特定して表現することは適当ではありませんし、また、東京新聞記者の方が、青く光っていた粒々がウラン残土であると特定して表現することも適当ではありません。

3.「核燃によると、周辺監視区域内では最高で年間被ばく線量限度の36倍という高い放射線が測定されているが、・・・」
 当機構が東京新聞記者の取材に応じて、方面捨石堆積場敷地内の貯坑場跡にあったウラン残土を保管場で保管するためにフレコンバッグに収納した際の当該フレコンバッグの表面の最大線量率が4.2マイクロシーベルト/時であることを説明しました。
 上記記事は、東京新聞記者が、当機構の説明した最大の線量率が4.2マイクロシーベルト/時という値を、無批判に、独自に年間換算(24時間×365日)して約36ミリシーベルト/年という値を求め、これに基づき、上記記載をしたものと推察されます。
 しかし、そもそも、4.2マイクロシーベルト/時という値は述べましたとおり保管場上の放射線量ではありませんし、また、年間換算することが合理性を有するためには、4.2マイクロシーベルト/時という値を示した最大線量率のフレコンバッグを、24時間、365日、ひとときも離さずに抱き続けていた場合に計算される値であり、およそ現実的な値とはいえません。
 機構は、このような年間換算が不合理であることを記者に説明するため、24時間、365日、ひとときも離さずに抱き続けていた場合に計算される値が36ミリシーベルト/年という説明をいたしましたが、併せて、このような計算が不合理な計算であることを理解していただくため、
現実には、
  周辺監視区域境界には、柵を設けて一般の方の立入を禁止していること。
  フレコンバッグを24時間、365日、ひとときも離さずに抱き続けているようなことは、およそ現実には考えられないこと。
などについても説明しており、実際に人が1年間に36ミリシーベルトの放射線を受けることはありえません。

4.「ウラン残土問題の経過」と題する年表中の「90.9岡山県知事が搬入に反対表明」
 岡山県知事が1990年9月に上記記事にあるような「搬入に反対表明」をしたという事実は当機構は承知しておりません。上記記事は、1989年(平成元年)の岡山県知事の岡山県議会での答弁を指しているものと推察されます。したがって、上記記事は、この点において適当な記載とはいえません。
(岡山県知事は、1989年(平成元年)9月28日開催の岡山県議会において、「・・・鳥取県で危ないと思われるものを岡山県が受け入れるなんちゅうことは、これはもう考えられないことでございます・・・」との答弁をなされたものと承知しております。)
以上

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