三菱重工業神戸造船所（神戸市兵庫区）でアスベスト（石綿）を含んだ断熱材などを扱う作業に従事し、肺がんで死亡したのは会社側が安全対策を怠ったためとして、下請け会社の元男性従業員（当時６２歳）の遺族が、三菱重工業（東京都港区）と下請け会社「河原冷熱工業」（神戸市中央区）に計２２５０万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。

　提訴は５月１５日付。訴状によると、男性は１９５１年から約４０年間、船の配管やタンクに断熱材などを取り付ける作業に従事。高濃度で大量の石綿が舞っていたが、会社側はマスク着用や換気などの対策を取らず、じん肺の健康診断も受けさせなかった。

　男性は退社後の９３年４月に肺がんと診断され、翌月に死亡。２００６年に石綿健康被害救済法により特別遺族年金の支給が認められた。遺族側は「会社は従業員の安全を守るよう配慮すべき義務を怠った」と主張している。

　三菱重工業は「係争に関わるのでコメントは控える」とし、河原冷熱工業は「弁護士と相談して対応を検討する」としている。【椋田佳代】