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【発明の名称】 汚水浄化用の微生物担持単体及び汚水浄化装置
【発明者】 【氏名】岡本 峰雄
【氏名】伊藤 潤郎
【課題】構造が簡単で容易に組み立てることができ、設置個所に応じて形や大きさを自由に変更することが可能で、個別の微生物担持単体の交換もできる汚水浄化用の微生物担持単体及び汚水浄化装置の提供。

【解決手段】微生物担持単体1は、セラミックを素材とし、板体2の表面に連結凹部3を形成し、裏面に連結突起4を設け、連結突起4を連結凹部3へ挿入可能な形状とし、連結突起4の基部に連結凹部3よりも径大の鍔部7を形成し、外面に汚染物質分解微生物を付着させる。汚水浄化装置は、微生物担持単体1を、連結突起4を連結凹部へ挿入することにより、板体2間に隙間をあけて複数積み重ねて成る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックを素材とし、板体の表面に連結凹部を形成すると共に、裏面に連結突起を設け、該連結突起を前記連結凹部へ挿入可能な形状とし、前記連結突起の基部に前記連結凹部よりも径大の鍔部を形成し、外面に汚染物質分解微生物を付着させたことを特徴とする汚水浄化用の微生物担持単体。
【請求項2】
前記板体の外周縁の3箇所以上に、連結ロッド係合切欠を等間隔で形成してある請求項1に記載された汚水浄化用の微生物担持単体。
【請求項3】
請求項1に記載の微生物担持単体を、前記連結突起を前記連結凹部へ挿入することにより、前記板体間に隙間をあけて複数積み重ねて成る汚水浄化装置。
【請求項4】
請求項2に記載の微生物担持単体を、前記連結突起を前記連結凹部へ挿入することにより、前記板体間に隙間をあけて複数積み重ねて成る柱状体を複数本並べ、これら柱状体の両端に一対の挟持板を配置し、各柱状体ごとに前記微生物担持単体の連結ロッド係合切欠を一致させると共に、この連結ロッド係合切欠に連結ロッドを通し、該連結ロッドの両端を前記挟持板に止めつけた汚水浄化装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数積み重ねて用いる汚水浄化用の微生物担持単体及びこれを用いた汚水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生活廃水や産業廃水は、汚水処理槽において含有されている汚染物質を微生物により分解処理し、浄化してから一般下水として排出することが多い。
そして、微生物濃度を高めて処理速度を増大させるために、汚水処理槽内に設置される微生物担体を備えた汚水浄化装置が種々提案されている。
微生物担体としては、網状固定化担体、ひも状固定化担体、ハニカム状担体、回転円板、波板担体、平板担体等の非流動型担体や、スポンジ状担体或いは繊維状担体等の流動型担体が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、流動型担体は汚水処理槽から流出したり、底に沈殿する虞があり、流出予防のスクリーン等を汚水処理槽の上部に設置しなければならなかった。
また、非流動型担体は、汚水処理槽の規模や形状に応じて大きさや形を変えなければならず、網状やヒモ状のように不定形のものは、適当な位置に設置するための特別な装置が必要となる。さらに、1個の分解不能な担体では、微生物が剥離したり破損した場合に、担体全体を交換しなければならなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−197078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、構造が簡単で容易に組み立てることができ、設置個所に応じて形や大きさを自由に変更することが可能で、個別の微生物担持単体の交換もできる汚水浄化用の微生物担持単体及び汚水浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の汚水浄化用の微生物担持単体は、セラミックを素材とし、板体の表面に連結凹部を形成すると共に、裏面に連結突起を設け、該連結突起を前記連結凹部へ挿入可能な形状とし、前記連結突起の基部に前記連結凹部よりも径大の鍔部を形成し、外面に汚染物質分解微生物を付着させてある。
また、本発明の汚水浄化装置は、この微生物担持単体を前記連結突起を前記連結凹部へ挿入することにより、前記板体間に隙間をあけて複数積み重ねて成る。
【0007】
微生物担持単体は、前記板体の外周縁の3箇所以上に、連結ロッド係合切欠を等間隔で形成しても良い。
この微生物担持単体を用いた汚水浄化装置は、微生物担持単体を、前記連結突起を前記連結凹部へ挿入することにより、前記板体間に隙間をあけて複数積み重ねて成る柱状体を複数本並べ、これら柱状体の両端に一対の挟持板を配置し、各柱状体ごとに前記微生物担持単体の連結ロッド係合切欠を一致させると共に、この連結ロッド係合切欠に連結ロッドを通し、該連結ロッドの両端を前記挟持板に止めつけてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微生物担持単体は、セラミックを素材としているので水中にあっても腐食する虞が無く、構造が簡単で大量生産が可能なためコストが低廉で済み、別体の接合具等を用いずに、板体間に隙間をあけた状態で簡単に積み重ねることができる。
また、予め、汚染物質分解微生物を付着させてあるので、発生するまで1週間から数ヶ月を要する自然の有効菌を利用するものに比べて即効性が高い。
【0009】
本発明の汚水浄化装置は、微生物担持単体が発揮する効果に加えて、組み立てが容易であり、複数の微生物担持単体を積み重ねてあるので、微生物担持単体の数や組み合わせ形態を変えて設置場所の規模に対応することが可能であるばかりか、微生物による被覆が剥がれたり、破損した微生物担持単体を容易に交換することができる。
また、板体の外周縁に3個以上の連結ロッド係合切欠を形成し、汚水浄化装置を組み立てる際に、この連結ロッド係合切欠に連結ロッドを通して挟持板に止めつければ、積み重ねた微生物担持単体が側方に移動するのを規制するので、柱状体を安定して支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3に示すように、汚水浄化装置に用いる微生物担持単体1は、セラミックを素材とし、板体2の表面に連結凹部3を設けると共に、裏面に連結突起4を一体に設け、外面に汚染物質分解微生物を付着して成る。
板体2は、直径40mm、厚さ7mm程度の円板であり、微生物付着面積を増やすために、外面に放射状溝5等の凹凸を形成してある。
また、板体2の外周縁には4個の連結ロッド係合切欠6が形成される。連結ロッド係合切欠6は平面視で直径4mm程度の半円であり、周方向に等間隔で配置される。
【0011】
連結凹部3は板体2の表面中心部に設けられ、底部に近づくに従って次第に径が小さくなる断面円形のテーパー穴であり、最大径12mm、深さ15mm程度とする。
連結突起4は板体2の裏面中心部に設けられ、その基部に鍔部7が形成される。連結突起4は先端に向かって次第に細くなっている断面円形の棒状を成し、先端部の直径が4mm、長さが10mmとしてある。即ち、連結突起4は連結凹部3へ挿入可能な形状・寸法となっている。
鍔部7は、先端に向かって次第に径が小さくなる円錐台形に形成され、先端面の直径は連結凹部3の最大直径よりも大きい15mm程度としてある。また、鍔部7の高さは約10mmとする。
【0012】
微生物は膜状に付着して微細な窪みの内部には付着しないので、微生物担持単体1の外面に細かくて深い凹凸を形成したり、内部に細かい空隙を形成することは意味が無いばかりか、加工に手間がかかってコストを引き上げる要因となる。
また、微生物担持単体1の外面に細かい凹凸を形成せず平滑に仕上げると、細菌膜で厚く覆われていても簡単に剥がすことができて、清掃しやすい。
【0013】
汚染物質を分解微する生物を付着させるには、微生物の培養液に未処理の微生物担持単体1を浸し、短時間で引き上げて乾燥させる。
微生物の培養液としては、塩素処理を施していない水(例えば井戸水)200リットルに対して糖蜜30リットルを溶かして培地とし、この中に市販されている微生物(EM菌等)の原液2リットルを投入して、循環ポンプで軽く攪拌しながら40℃で1週間培養し、さらに塩素処理していない水(例えば井戸水)で10倍に希釈したものを用いる。
実際に市販する場合には、このように微生物を付着させて乾燥した微生物担持単体1をパックし、輸送及び販売することができる。
【0014】
微生物担持単体1を用いた汚水浄化装置は、図4に示すように、複数の微生物担持単体1を積み重ねて成る柱状体8を複数本並べて形成される。
図5に示すように、柱状体8を構成する微生物担持単体1は、連結突起4を裏面側に隣接する微生物担持単体1の連結凹部3へ挿入することにより、多数段に積み重ねられる。
連結突起4を連結凹部3へ挿入すると、連結突起4の基部に形成された鍔部7が隣接する微生物担持単体1の表面に当接するので、微生物担持単体1の板体2間にはそれぞれ鍔部7の高さに相当する隙間が形成される。
【0015】
図4に示すように、縦横に並べた柱状体8の両端には一対の挟持板9,10を配置し、挟持板9,10の四隅部には、挟持板9,10どうしを連結する支柱11が設置される。
また、各柱状体8ごとに、積み重ねた微生物担持単体1の連結ロッド係合切欠6を一致させると共に、この連結ロッド係合切欠6に連結ロッド12を通し、連結ロッド12の両端を挟持板9,10に止めつけてある。
なお、微生物担持単体1の裏面側に位置する挟持板9には、柱状体8の設置個所の中央に、連結突起4を係合するための孔を形成してある。
また、挟持板9,10、支柱11及び連結ロッド12は、水中でも腐食し難いアクリル樹脂等の合成樹脂を素材とするのが望ましい。
支柱12及び連結ロッド12を挟持板9,10に止めつけるには、直接ねじ込んだり、クリップ等の適宜止め具を用いる。
【0016】
汚水浄化装置を組み立てるには、挟持板9に柱状体8設置個所を取り巻くように連結ロッド12を起立させておき、連結ロッド12で囲まれた空間に微生物が付着された微生物担持単体1を、連結ロッド係合切欠6と連結ロッド12とを係合させながら順次落とし込み、下段の微生物担持単体1の連結凹部3へ上段の微生物担持単体1の連結突起4を差し込んで積み重ねる。
所定数の微生物担持単体1が積み重なって柱状体8が形成されたら、挟持板9の四隅部に支柱11を立設させ、連結ロッド12、柱状体8及び支柱11の上方から挟持板10を被せ、連結ロッド12及び支柱11の端部を挟持板10に止めつけて、挟持板9,10により柱状体8を挟持する。
【0017】
組み立てた汚水浄化装置は、一般的な曝気式浄化槽等に沈めて使用する。すると、板体2間に形成された隙間が水の流路となって、汚水が広面積の微生物付着面に接触する。
なお、設置する槽の大きさに応じて、積み重ねる微生物担持単体1の数、及び、並べる柱状体8の数は適宜変更することができる。
また、排水路のような細長い場所に設置する場合には、多数の微生物担持単体1を積み重ねた1本の柱状体8によって汚水浄化装置を構成することもできる。
【0018】
微生物担持単体1の大きさ及び各部の形状は上記実施例に限定されない。例えば、板体2の平面形状を角形としたり、連結凹部3、連結突起4及び鍔部7の断面形状を角形とすることもできる。
また、板体2の外周縁に形成した連結ロッド係合切欠6の数は、係合した連結ロッド12が積み重ねた微生物担持単体を安定して支持できる数であれば良く、3個或いは5個以上とすることも可能である。
【0019】
さらに、汚染物質分解微生物の有効性は地域によって異なり、例えば、EM菌は仙台以北では有効に機能しない。従って、微生物担持単体1をすでにその地域で機能している浄化槽へ短時間浸漬した後に乾燥させたり、或いは、機能している浄化槽内の汚染物質分解微生物や液体を培養して浸漬後乾燥させることにより、微生物担持単体1へ汚染物質分解微生物を付着させることもできる。
もちろん、汚水浄化装置を組み立ててから、汚染物質分解微生物を付着させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】微生物担持単体の側面図。
【図2】微生物担持単体の表面図。
【図3】微生物担持単体の裏面図。
【図4】汚水浄化装置の斜視図。
【図5】柱状体の斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 微生物担持単体
2 板体
3 連結凹部
4 連結突起
5 放射状溝
6 連結ロッド係合切欠
7 鍔部
8 柱状体
9,10 挟持板
11 支柱
12 連結ロッド
【出願人】 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】506043435
【氏名又は名称】株式会社ジェイエフ
【出願日】 平成18年2月7日(2006.2.7)
【代理人】 【識別番号】100082304
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 松司

【識別番号】100088351
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 秀雄

【識別番号】100093425
【弁理士】
【氏名又は名称】湯田 浩一

【識別番号】100102495
【弁理士】
【氏名又は名称】魚住 高博

【識別番号】100112302
【弁理士】
【氏名又は名称】手島 直彦
【公開番号】 特開2007−209855(P2007−209855A)
【公開日】 平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願番号】 特願2006−30014(P2006−30014)