『少女幻想奇譚』～『Murderer』～Murderer




あたしが描（えが）く物語（ものがたり）の中（なか）では
あたしが　か弱（よわ）いお姫様（ひめさま）なの
寄（よ）り添（そ）い歩（ある）く王子様（おおじさま）に守（まも）られ
幸（しあわ）せに暮（く）らすお姫様（ひめさま）だった


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でも夢見（ゆめ）たよりずっと王子様（おおじさま）は頼（たよ）りなく
あたしを守（まも）ってなんかくれなかったから、今（いま）
望（のぞ）んだお姫様（ひめさま）じゃなく英雄（えいゆう）として生（い）きている
魔女（まじょ）を殺（ころ）したこの手（て）で愚（おろ）かな家族（かぞく）を守（まも）るわ





継母（まま）に従（したが）い、逆（さか）らわなかった偽善者（ぎぜんしゃ）
魔女（まま）に捕（と）らわれて何（なに）もしない王子様（あに）
“たのしく、幸（しあわ）せに暮（く）らした”だなんて
それこそ真（ま）っ赤（か）な語（がた）り部（べ）の嘘（うそ）
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全（すべ）て忘（わす）れたかの様（よう）に気楽（きらく）に生（い）きる彼（かれ）らは
確（たし）かに幸（しあわ）せでしょう
目（め）を背（そむ）けているもの
だけど罪（つみ）に染（そ）まりきった不器用（ぶきよう）な小（ちい）さな手（て）じゃ
幸（しあわ）せなど掴（つか）めない
これがきっと科（か）された罰（つみ）


悪夢（あくむ）はもう慣（な）れてきたは
断末魔（だんまつま）の幻聴（げんちょう）ももう大丈夫（だいじょうぶ）
二人（ふたり）の死（し）
見（み）届（とど）けるまでは
きっと継母（まま）の代（か）わりができる

「憧（あこが）れの王子様（おおじさま）を　助（たす）けたかっただけなの」
涙（なみだ）を零（こぼ）し呟（つぶや）いた
あの日（ひ）の少女（しょうじょ）は今（いま）
死（し）ぬことすら許（ゆる）されず
深（ふか）い森（もり）の奥（おく）ひとり
魔女（はは）の面影（おもかげ）を宿（やど）し
誰（だれ）かの訪（おとず）れ、待（ま）ってる