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パクリ2
作者:クセミナシ
「うー……やべぇ、アクセル達の試合に間に合うか、これ」

そう言いながらバトル会場に向かっているのは、うしだ率いるチームグランド。どうやらチームホープスの試合を観戦するつもりらしいが、随分と慌てている。

「ぐぬぬ……おい貴様!せっかく今大会トップクラスのチームとの試合を見られるチャンスだというのに、遅刻とはどういうことだ!」

「うるせぇ、電気ウナギ!黙ってろ!」

うしだが「電気ウナギ」呼ばわりしているのは、シビルドンというポケモン。見た目がウナギに似ている、といえば似ていなくもないが、本当にウナギなのかは定かではない。彼の強力な電撃は相手にとって脅威となるものらしい。

「バカ、これもまた兄貴の作戦なんだよ!」

と言ったのは、頭のアフロがトレードマークであるバッファローのポケモン、バッフロン。うしだのことを「兄貴」と呼び慕っているのは、似た者同士だからなのだろうか。見た目のインパクトでは間違いなくバッフロンが上なのだが。

「……ここから会場までの移動時間は約10分。間に合わないこともない」

冷静に分析しているのは、チームグランドの司令塔とも言える存在であり、地味ながらも影でチームを支える存在でもあるポケモン、ウルガモス。炎タイプと虫タイプという珍しいタイプを持ち合わせており、大きな羽根から繰り出す技の威力は凄まじい。持ち前の知識も合わさり、その実力はリーダーであるうしだすら驚愕するレベルだ。

「んあー……そんならだいじょぶだねー」

先程のウルガモスの言葉を本気に理解しているのかいないのかはよくわからないが、そう言ったのはエルフーンという草タイプのポケモン。言動は軽い感じだが、防御力はかなり高い。得意技である「コットンガード」は、その防御力をさらに強くしてしまうため、突破するのは困難だ。ちなみにチーム唯一のメスであり、まさに紅一点なのだ。
そんなうしだの仲間達だが、彼らはうしだが必死になって協力を呼び掛けて集められたのだ。うしだがブラキオ達と合流せず、ハッサムやヨノワールと戦わなかったのは、彼らを集めるためだったのだ。

「しかしまあよくここまで個性的なのが集まったよな」

「無駄口を叩いてる暇があれば走れ、この非常食!」

……ちなみにシビルドンはうしだを「非常食」呼ばわりするポケモン第2号である。









その頃チームホープスは試合会場のベンチで、チームグラビトゥンとの試合開始を待っていた。
ホープス側の1番手はミレーヌ。素早い動きで翻弄するタイプであるミレーヌなら、ある程度相手の戦術を見ることもできるだろうということもあるのだが、ミレーヌ本人の強い希望があったからでもある。

(師匠やノエルさんはうちのチームの軸だし、クラウさん達は今回のバトルで重要なポジションなんだから……しっかりやらなきゃ)

グラビトゥン側を見てみると、既にラムパルドが気合いを入れ、試合開始を待っている。あの攻撃力を前にすれば、ミレーヌの防御力は意味を成さないだろう。彼の攻撃を避けつつ、確実に攻めることが序盤をリードするためのポイントになりそうだ、とミレーヌが考えているうちに、試合開始の時間がやってきた。

「某の相手はテメェか?随分とチビだな」

「チビチビってナメてると怪我するかもよ、おじさん」

「それでは、試合開始!」

緊迫した空気の中、試合開始の合図が送られる。それと同時に、両者がぶつかり合うかのように思われた。……だがそうではなかった。互いに相手の様子を伺い、動き出さなかったのだ。

(下手に動いて隙を見せれば、相手に先手を打たれるかも。そうなったらまずいからね……ここは慎重にいこう)

ミレーヌが1番恐れているのは、ラムパルドの攻撃をまともに受けること。むやみに飛び掛かることは命取りとなるかもしれない。慎重な行動を心掛けることは今できる最善の手だろう。

(確かに見かけはチビだが、実力は恐らくかなりのもの……何せ、あのガブリアス…たしかアクセルだったか。奴のチームにいるくらいなんだ。相当の実力に違いねぇ。だとしたら油断しないほうがいい)

ホープス側のベンチで試合を見守っているアクセルの姿を見ながら、ラムパルドは考えていた。

「おじさん、悩んでるね」

「あ゛ん?」

荒い口調のラムパルドに対しても、澄ました顔で話し掛けるミレーヌ。どんな相手にも決して退かない彼女の姿は、彼女自身の強さを表しているようにも見える。

「今攻めれば罠に掛かるかもしれない……そんな恐れがあるんでしょ?」

「……それは挑発か、それとも拙者に対する哀れみか…返答次第じゃあ考え直さねぇとな。だがあえてその質問に答えるとすれば……」

ラムパルドは構える。

「拙者は罠なんぞ恐れねぇ」

あるかも分からない罠になど恐れることは、彼の本能が許さない。罠だろうが攻撃だろうが、相手の思考を越えた手段で捩伏せる。それが彼の持つ特性「型破り」の意味である以上、罠ごときで恐れてはいけない。どうせ当たらなくても砕けるかもしれないのなら当たって砕けてしまえ、そういうものなのだ。
ラムパルドの返事を聞いたミレーヌはにっこりと笑う。「罠など恐れない」という言葉は、彼女が最も求めていた言葉だった。たしかにあのまま攻撃のチャンスを伺っているのも良いかもしれない。だが相手と力のぶつけ合い、相手を越えることこそが「勝利」だとミレーヌは考えた。もしラムパルドが罠に怯えるようなポケモンだったなら、ミレーヌは納得しなかっただろう。ラムパルドを本気を越え、本当の意味での勝利を手にしたいのだろうか。

「まずはもろ刃の頭突きだ!」

ラムパルドの十八番とも言える、強力な頭突き攻撃。まともに受ければまず耐えられないであろう。

「影分身!」

もろ刃の頭突きが命中する直前にミレーヌが分身したことで、もろ刃の頭突きは本物とすり替わった分身に命中する。当然ミレーヌ自身へのダメージはなく、攻撃は失敗に終わる。

「今度はこっちからだよ、気合いパンチ!」

ラムパルドの背後を捉えたミレーヌの渾身の一撃が、彼の背中に命中する。しかしダメージは意外と少なく、ラムパルドは平然としている。

「効かねぇな」

「だったらこれはどうかな?」

ミレーヌは頭部の口を開くと、そのままラムパルドのほうに向ける。

「火炎放射!」

口から高温の炎が吐かれ、ラムパルドに浴びせ掛けようとする。物理的なダメージに期待できないなら、特殊攻撃で攻めるのはどうだ、と考えての行動だ。

「甘い!その程度の攻撃が某に通用すると思ったか!」

「げっ!」

ところがラムパルドの行動はミレーヌの予想を大きく上回っていた。彼はもろ刃の頭突きで炎を打ち破り、突進してきていたのだ。

「おらおらおらおらぁ!」

「くっ……」

どれだけ炎を浴びせてもラムパルドの勢いは衰えず、ミレーヌはやむを得ず火炎放射を中断し、体制を立て直すことにした。

「そこだ!吹雪を喰らえ!」

しかしラムパルドはそれをも許さない。猛烈な吹雪がミレーヌに襲い掛かる。

「これじゃあ前が見えない……」

吹雪の中では視界が悪く、相手の出方が伺えない。十分に警戒しておかないと、思いがけない方向から攻撃されるかもしれない。

(でも凄い……ここまでレベルの高いバトルができるなんて)

本格的なバトルが始まってからここまで、僅かなぶつかり合いだったはずだがかなり疲労している。ラムパルドという強力なポケモンを相手にしていて、普段以上に神経質になっているせいだろう。こちらの攻撃にはびくともせず、強力な技で反撃をしてくる彼を「強敵」と呼ばずに何と呼ぶか。しかしミレーヌも負けてはいられない。あの強靭な肉体を少しでも疲労させておきたい。そうしなければ、彼の猛攻は終わらないのだから。

「火炎放射」

炎が吹雪を溶かし、消し去る。吹雪によって遮られていた視界は元通りになり、こちらに向かってくるラムパルドの姿も確認できた。

「気合いパンチ!」

ラムパルドの拳がミレーヌに向かってくるが、彼女はそれをギリギリで避け、ラムパルドの下に潜り込む。

「こっちも気合いパンチ!」

隙だらけとなったラムパルドの下顎に、気合いパンチを叩き込む。

「んがぁっ!……ちっ、やるじゃねぇか」

気合いパンチで吹っ飛ばされたラムパルドだったが、それでもすぐに立ち上がる。一見するとダメージがなかったように思えるが、ミレーヌはそれなりの手応えを感じていた。ダメージを与えられたのは確かだった。

「だったらこれはどうだぁ!」

そう言うとラムパルドは地面を力いっぱい踏み鳴らし、揺らし始める。地面タイプの技でもトップクラスの性能を誇る強力な技、地震である。

「おっとと…これは…」

地震の衝撃を防ぎつつ、バランスを崩さないように耐える。

「まだだ!もろ刃の頭突きぃ!」

それとは対照的に、ラムパルドは揺れる地面をものともせずに攻撃を仕掛けてくる。

「くぅっ……もうダメ!」

ミレーヌが諦めた様子で声を上げた。

「………なんちゃって」

「なっ!?」

もろ刃の頭突きが命中しようとした瞬間、ミレーヌの右手が光る。そして頭突きが命中したその時、それは力を発揮する。

「……まさか!」

「そのまさか。いくよ…カウンター!」

もろ刃の頭突きの威力を受け止め、右手にその力を込めて殴り付ける。

「うがあああああっ!」

カウンターによって倍返しにされたもろ刃の頭突きの威力、そしてもろ刃の頭突きを命中させたことによる反動に耐え切れず、ラムパルドはその場に崩れ落ちる。

「ふう……なんとか耐え切れたから助かった…」

ため息をつき、ミレーヌはその場に座り込む。どうやら彼女の体力もかなり消費しているようだ。

「ぐっ……まんまとやられちまった……」

まだ痛む身体を起こし、ゆっくりと立ち上がるラムパルド。

「なかなかやるな。まさかあそこでカウンターされるとは思わなかったぜ」

「へへっ……まあね」

「だが……1つ聞きてぇことがある。試合が始まった後、テメェが聞いてきたあの問い……」

「問い………ああ、あれ?うーん、なんだろ。おじさんとは、本気のバトルがしたかったから…かな。もし存在もしない罠に怯えるほどの相手なら、がっかりするだけだから」

「………あのカウンターは罠じゃねぇのな」

初めは納得できない様子だったラムパルドだが、ミレーヌが楽しそうに話し掛けてくる姿を見ているうちに、笑みを浮かべはじめる。彼は言動が荒く、怖いイメージを持たれる場合もあるのだが、本当は優しいポケモンなのだ。この笑みも、彼の優しさから生まれたものだろうか。

「……おもしれぇ奴だ」

そう呟いてフィールドを離れていったラムパルドだが、途中でミレーヌのほうに振り返り、一言こう言った。

「言い忘れてたがよ…おじさんは勘弁してくれ」

それを聞いたか聞いていないかは知らないが、ミレーヌもフィールドを離れ、ホープス側のベンチへと向かう。

「んじゃ次はワタシが行こうかしら」

「………ああ、頼む」

グラビトゥン側からガブリアスが出てきたのを見てきぬは言った。どう考えても狙っていたとしか思えないのだが、反論する理由もないためアクセルは彼女のバトルを許可した。

(ううむ……大丈夫だとは思うが……同族として無事を祈る)

何故無事を祈らなくてはならないのか……やはり深く考えるのは止めたほうがいいのだろうか。









「スッゲェ!スッゲェよな兄貴!あのラムパルドをあんな小さな子が倒しちまったよ!」

観客席で興奮状態になっているのは、チームグランドのバッフロン。

「ああ……正直オレも、ミレーヌがあそこまで強いとは思わなかったぜ」

と、うしだ自身も驚いているようだった。

「こんなバトル見せられちゃあ、オレ達も頑張らなきゃな」

「ふん、当然だ!」

うしだの視線は、ベンチで仲間の様子を見ているアクセルのほうに向けられていた。

(アクセル……そしてブラキオ。お前らを越えたいという想いが、オレをここに連れて来させた。その想いは今も変わらない。バトル、楽しみにしてるぜ)
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