Amazon.co.jp ウィジェット
コンテンポラリーアート

棚田康司作品集「たちのぼる。」

彫刻家、棚田康司は、これまで一貫して「人間」を、そして「少年少女」を彫り続けてきました。
棚田の約20 年にわたる制作活動の中でも、とりわけ重要なモチーフとして存在し続けているのは「少年少女」。
それは、すでに子どもではないけれど、まだ大人でもない、あいまいな境界線に漂う存在が棚田の制作テーマです。
不安定さや繊細さ、そして危うさを秘めた彼らは、我々が気づいていない人間としての本質的な部分を露わにした存在と言えるかもしれません。
本書は、90年代の初期作品から、最新作までを収録した棚田の作品世界を俯瞰できる本格的な作品集です。

練馬区立美術館、伊丹市立美術館開催の棚田康司展「たちのぼる。」公式カタログ


執筆者:堀江敏幸(小説家)/Lóránd Hegyi(キュレーター)/小野寛子(練馬区立美術館)/岡本梓(伊丹市立美術館)
デザイン:古平正義


プロフィール
棚田康司(たなだ・こうじ)
1968年生まれ。
2001年文化庁芸術家在外研修員としてベルリンに滞在。
05年「第8回岡本太郎記念現代芸術大賞」特別賞受賞。
08年ヴァンジ彫刻庭園美術館にて初個展を開催。


展覧会情報
「棚田康司-たちのぼる。」展
2012年9月16日(日)-11月25日(日) 練馬区立美術館 伊丹市立美術館へ巡回
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/schedule.html

棚田康司作品集
「たちのぼる。」

□判型:B5判
□ 総頁:144頁


□ 並製

□ ISBN:978-4-86152-366-3 C0071

定価:2,500円+消費税
アマゾンで購入する

書 評

たちのぼる。 芸術新潮11月号掲載

嗜虐的な雰囲気を纏った初期作から、浮遊感ただよう少年少女の身体へ。
東京の美術館で初の大規模個展でふり返る20年。


……‘90年代の棚田は、身体の怪物性やそれと裏腹の有限性を、時に露悪的で嗜虐的に感じられもする表現で訴えるかのようだった。

「まだ若くて、作っているとどうしても影響力の強い人に似た方向に表現が行ってしまう。それで作りかけた人体彫刻をチェーンソーでばらばらにして、もう一回組みなおす、というようなことをしてもがいていた時期でした」
 これらの初期作品にはいずれも、作家自身の顔から型取りしたFRPの仮面が装着されており、像全体から浮き上がったリアルさが滑稽かつ悲壮な雰囲気を醸す。身体という器と自意識の乖離感のようなものを感じることが出来よう。

 ドイツ滞在の前後には、小誌でもスターダスト欄で紹介したことのある《赤ちゃんとサメ》(1990年)や、《少年レリーフ》(2002年)など、なぜかレリーフ作品が目立っている。
「どうも作風を変えようとか、自分の中にあるものの置き場所を変えなくちゃいけないと思っている時にレリーフに走るらしい。ロジック化はできないんですが」
――レリーフは、丸彫りとはまた違う技術が要求されるんですか?
「難しいです。非常に面倒臭い。でも、出来上がると妙な面白さがある。興福寺の《板彫十二神将像》には触発されましたね。厚さ4センチくらいの板に彫っているのですが、前に突き出した腕と胴体の距離感とかばっちり表現されてて、技術的にもすごく高度なものです」

 そしていよいよ現在に続くタイプの作品が現れる。……最新作の《たかおかみ》《くらおかみ》、《たちのぼる―少年の場合》もその流れに連なる。それらの諸像は、いわゆる量塊性にきっぱりと背を向けるかのように、胴体も手足も異常に細長く、またしばしばひどく思いつめたかのように眉根を寄せた表情をしている。
「ドイツから帰ってきた時、たまたま大学の非常勤講師の声がかかり、学生たちに自分の仕事をきっちり見せていかなくてはならない状況でした。しかし、それまでのアイディアは使い果たしていてもう仮面のシリーズは作れないし、何をやっていいのかわからない。そこに『彫刻の身体』展の話が持ち上がって、展覧会が決まると俄然ガッツが出ますよね。その時考えたのは、とにかく逃げないで彫ろうということと、圧倒的に独特な身体を目指そうということでした」

――人体というモティーフも初期から一貫しています。
「人が好きなんでしょう。イコール自分が好きという部分もあるのかな。木も人も近い部分があるんですよ。年齢が見えたり、傷や癖があったり。そういう性質を持った材料に人の形を掛け合わせた時に、何か魔法のようなことが起きるのを待っているのかもしれない。ただ、僕自身は自分の作品を抽象っぽいのでは、とは思っているんですが。要するにあんなプロポーションの人間はいないわけで、構成がまずあって、その構成のなかに人型を入れ込んでいる。顔は付いてるし、腕も指も彫られてはいるけれど、構造体の方が重要ですね。その構造を、木という素材の制約のなかに見つけるのが制作の楽しみでもあります」

――しかし、一方で棚田さんの作品の背後には物語があります。《赤ちゃんとサメ》は幼児虐待のニュースから着想したと発表当時説明されていたと記憶しますし、《立ち上がった少年》はチェチェン独立派が北オセアニアの中学校を占拠して立てこもった際、テロリストに抗議して殺された少年がモティーフだとか。

「ある事件が起きた時に自分のなかで起こる『なんだこれ』というような疑問・反応から、結構それについてのニュースを観たり、記事を読むとかしてその世界に入り込んでしまうんですよ。自分にもそういう凶暴性や因子があるのかと検証したり。それを作品に具現化することでもやもやくすぶっていたものをゴクッと飲み込むような感じになる。それが自分を突き抜けて、万人に共通するものを指し示すところまで表現できていればいいんですが」

  • コンテンポラリーアート
  • 絵画
  • 写真
  • デザイン
  • 建築
  • 人文
  • 文芸・評論
  • ビジュアル文庫シリーズ
  • 京都関連
  • 趣味・実用
  • フリップブック
  • ポストカードブック

3000円以上送料無料

↑TOPへ戻る