米ディッシュが米スプリント買収提案見送り、クリアワイヤに注力
[ニューヨーク/東京 19日 ロイター] - 米衛星放送サービスのディッシュ・ネットワーク(DISH.O: 株価, 企業情報, レポート)は18日、米スプリント・ネクステル(S.N: 株価, 企業情報, レポート)に対する新たな買収提案を見送ると発表した。同じく買収を目指すソフトバンク(9984.T: 株価, ニュース, レポート)にとって前進だが、ディッシュは次の一手に含みを持たせた。
また、スプリント傘下で豊富な周波数を持つクリアワイヤ(CLWR.O: 株価, 企業情報, レポート)の株式取得に注力するともしており、ソフトバンクが進める米国戦略の霧は晴れない。
ディッシュは18日(米国時間)に声明を出し、「スプリントとの統合は引き続き戦略的価値があると判断している」とする一方、「期限の6月18日までに修正提案を提出することが非現実的になった」と表明した。
ソフトバンクは25日のスプリント臨時株主総会、その後に米通信当局の承認手続きを経て、7月上旬にスプリント買収完了を見込んでいるとのコメントを発表。「新しいスプリントが(ベライゾン・ワイヤレス、AT&T(T.N: 株価, 企業情報, レポート)に次ぐ)米国の重要な3番手になるよう注力していく」とした。
ディッシュの発表を受け、株式市場はソフトバンクによるスプリント買収の可能性が高まったと好感。同社株価は前日から約5%上昇した。
しかし、ディッシュは今回、スプリントに対しいくつかの選択肢を検討するとしている。さらに株式取得に向けて進めている「クリアワイヤのTOB(株式公開買い付け)に注力する」ことも表明した。
高速通信に使える周波数を大量にもつクリアワイヤは、スプリントが50%強の株式を保有しており、100%子会社にする方針を示している。ソフトバンクは完全子会社にする必要はないとの姿勢だが、米国では少数株主が尊重されるため、ディッシュの存在はソフトバンクの米国戦略にとって不透明要因となる。
「(スプリント買収は)ほぼ落ち着いたとみていいと思う。ここから先の焦点は、クリアワイヤ株の扱いに移ってくる」と、BNPパリバ証券の山科拓シニアアナリストは指摘する。
スプリントをめぐっては、昨年10月にソフトバンクが買収を発表。今年4月にディッシュも手を挙げ、買収合戦の様相を呈していたが、6月になってソフトバンクが買収額を引き上げた。
それまでディッシュ案を評価していたスプリントの第2位株主や議決権行使助言会社がソフトバンク支持に転じたことから、18日の期限までにディッシュがどのような行動を起こすか注目されていた。
一方、クリアワイヤに関しては、完全子会社化を計画するスプリントと、株式取得を目指すディッシュとの間で買収合戦に発展。クリアワイヤ取締役会は6月12日、ディッシュ案に軍配を上げたが、その後にスプリントがTOB阻止に向けディッシュとクリアワイヤを提訴し、混迷を深めている。クリアワイヤは24日に臨時株主総会を開く。
(久保 信博、Sinead Carew、Sophie Knight 編集;田巻 一彦)
*内容を追加します。
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