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【芸能・社会】

映画「蜩ノ記」で芽生えた師弟愛 初共演の役所広司と岡田准一

2013年6月19日 紙面から

 俳優役所広司(57)とV6の岡田准一(32)が初共演する映画「蜩ノ記(ひぐらしのき)」(来年公開予定)で、岩手県遠野市の撮影現場が18日、報道陣に初公開された。師弟愛がテーマの時代劇を故黒澤明監督のまな弟子、小泉堯史監督(68)が、師匠への尊敬の念を込めて丁寧に撮り進めている。初体験の「黒澤流」に刺激を受けた役所と岡田にも、物語を超えた師弟関係が芽生えたようだ。

 「初めての経験が多い刺激的な現場」。岡田が驚く小泉監督の演出は、黒澤流そのものだ。カット割り通りに細かく撮る通常の方法ではなく、常時2、3台のカメラでワンシーンを一気に撮りきる「マルチカム撮影」。特定のカメラを意識させないため、役者は全身の演技が引き出される。フィルム撮影のためモニターチェックもない。

 岡田は「基本的に『1回戦』で終わる。最初の1回にすべてをかけてやるという独特な緊張感があります」、役所も「昔はこうして映画を作っていたんだな、と肌で感じています」と、一発勝負のやりがいを語る。

 無実の罪で切腹を待つ身の男(役所)と、監視役でありながら、気高い生き方にひかれていく若き武士(岡田)の物語。故三船敏郎さんと加山雄三(76)が師弟の医師を演じた黒澤作品「赤ひげ」(65年)にほれ込んで黒澤組に入った小泉監督は、本作の2人と「赤ひげ」の対比をきかれると、「僕の中でも重なるところがあります」とうなずいた。

 演じる側は、そこに黒澤さんと小泉監督の師弟愛も感じている。役所は「小泉監督が黒澤さんから学んだことを違う形で表現できるのは、幸せです」としみじみ。岡田がうれしそうに「僕はもう自分の役は小泉監督だと思って演じてます」と言うと、黒澤さんの立場になってしまった役所は、「まいったなぁ…」と照れ笑いを浮かべた。

 岡田は子供のころから役所のファン。「付き人になってでも勉強したいと思わせていただける先輩。間近で役所さんの芝居を見られてラッキーです」。役所は「時代劇はチャンバラ遊びをしたことのない世代はしっくりこないんだけど、岡田君は着こなしも立ち回りも本当によくできてすばらしい。これから時代劇をたくさんやってほしい」と、お墨付きを与えた。

 昨年の直木賞に選ばれた原作者の葉室麟氏も見学に来訪。自身も師と仰ぐ作家、故上野英信(えいしん)さんへの思いを込めて書いただけに、2人のたたずまいを見て、「うらやましい」とうっとり。「尊敬する人を持つことができた幸せが、映画になっている。(岡田君が)生きていく中でずっと大事なことになっていくんだろうな、と思いました」。新たに生まれた“師弟”のきずなに目を細めていた。

◆“黒澤組”野上さんも視察

 黒澤映画の名スクリプター(記録係)として知られる野上照代さん(86)も現場を訪問。岡田がアイドルでもあることは「知らなかった」そうだが、「『赤ひげ』の加山と違う、割と自然なところがある。顔は甘い美男子だけど、中身がしっかりしている」とバッチリ評価していた。

 ◆あらすじ 側室と不義密通し、刃傷沙汰を起こしたとの罪で7年前に幽閉された戸田秋谷(役所)は、3年後の切腹までに藩史を編さんするよう命じられている。監視役として派遣された檀野庄三郎(岡田)は、事件の真相を探るうちに気高い秋谷にひかれていく。やがて藩政を揺るがす重大文書を入手した庄三郎だったが、そこに家老の陰謀が迫る。

 

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