(2013年6月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
保守強硬派に対して予想外の地滑り的勝利を収めたハサン・ロウハニ師〔AFPBB News〕
イラン国民は6月14日の大統領選挙で唯一の穏健派候補に票を投じ、強硬派の指導部に劇的な敗北をもたらした。
有権者は、非妥協的な核問題の交渉責任者で、イランの最高指導者のお気に入りと目されていたサイード・ジャリリ氏ではなく、中道派の聖職者で、2000年代初頭に核外交の責任者を務めた時に核濃縮を中断したことでよく記憶されているハサン・ロウハニ師を選出した。
ロウハニ師が今回、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師の反対にもかかわらず勝ったのか、それとも土壇場で承認を得て勝利を収めたのかは、永遠に分からないかもしれない。
だが、ロウハニ師の勝利は、経済運営であれ、諸外国との関係であれ、イラン国民が過激主義的な政策にうんざりしているという強力なメッセージを送る。
過激主義にうんざりしたイラン国民
ハメネイ師が改革派大統領候補に投じられた票を無視し、扇動的なマフムード・アフマディネジャド大統領に2期目の任期を与えてから4年。今回の選挙は、イラン国民が抑圧に屈しないことを裏付けた。ロウハニ師が強硬派の大統領候補5人を相手に第1回投票で圧勝したのは、2009年に盗まれた改革派の票のおかげだ。
ロウハニ師の選出は、折しもイランの核開発計画やシリアのバシャル・アル・アサド政権に対する政治的、軍事的支援を巡って緊張が高まっている時に、国際外交に新たなチャンスをもたらす。イラン政府は濃縮度20%のウランの貯蔵量を減らしたものの、引き続き高度な遠心分離機の能力を高めており、これにより、早期に核爆弾を手に入れる可能性もある。
イランで再び勢いを増す穏健派を強くする一方、精鋭集団の革命防衛隊をはじめ、強力な組織機構を今後も支配し続ける強硬派をさらに弱めるためには、西側外交を慎重に調整する必要があるだろう。
ロウハニ師を支持する票は、イラン国民が核開発計画を拒んだことを意味するわけではない。大統領に選ばれたロウハニ師自身、核開発の忠実な支持者だ。だが、今回の選挙結果は、イラン国民がさらなる抵抗のために制裁の代償を払う気はないことを物語っている。
イランの核政策については、ロウハニ師に意思決定権はないが、以前より穏健な外交のトーンは、イランとの関与を容易にする可能性がある。ロウハニ師の影響力は、今年再開する核問題の交渉に柔軟性をもたらすかもしれない。
とりわけイランの好戦性を和らげるうえで、ロウハニ師はその力を試されることになる。だが、ロウハニ師の大統領就任は、イランの国際関係に新たな1ページを加えるチャンスをもたらす。
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