全てのいきものが共存共栄できる社会をつくることを目指して活動しています
Institute of Biodiversity in Japan
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Before Afterを写真で見比べてみると、その違いが歴然とします。

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Before 2007年7月
大阪自然環境保全協会 高田直俊氏提供
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After 2013年5月12日 小山撮影
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参加メンバーからは、「明るいなあ」、「地元では人工林の殆どが6年前の小路林のように真っ暗だ」といった声が聞かれました。
それでも高田直俊先生によると、だいぶ樹間が詰まって来ており、また間伐する必要があるとのことでした。
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現在の第二小路林の様子(2013年5月12日)

光が差し込む明るい林内。
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地面にはフユイチゴなどの植物がたくさん。
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地面には下草がしっかりと生えています。
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熱心に質問する和束町からの参加者。
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第二小路林見学後は、場所を移動し、ここ数年、太子町人工林間伐隊が間伐作業をされている山田財産区のヒノキ林に移動しました。
ここでは、間伐して空いた地面から、コナラ、クリ、ニワトコ、クスノキ、ヒヨドリジョウゴ、ヌルデ、アカメガシワ、エノキ、ヌルデ、イヌザンショウ、サルトリイバラなどが生えて来ているのが確認できました。
間伐作業中は、「ポーポー、ポーポー・・・」とツツドリの鳴き声が聞こえていました。1か月前の間伐作業時には、キジかヤマドリの巣もあったそうです。山田財産区でも、確実に豊かな生態系が回復しつつあります。
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間伐作業地で確認できた植物(一部)(2013年5月12日 小山撮影)

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アカメガシワ
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イヌザンショウ
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クリ
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コナラ
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ヌルデ
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ヒヨドリジョウゴ
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■楽しいのが一番
太子町人工林間伐隊では、玉切りにするときにはチェーンソーを使いますが、通常は間伐にはのこぎりを使います。直径20cmくらいのヒノキでも、のこぎりで間伐しようと思うとなかなかの労力がかかります。
近代以降、簡単にチェーンソーで大木を伐採したり、ブルドーザーで山を人工的に改変することができるようになって自然破壊が進んだことを考えると、のこぎりでの間伐は、生物としての本来の人間らしいスピードで行う作業なので、森への急激な影響が少ないという意味では良いのかも知れません。高田先生によると、太子町人工林間伐隊では1回の間伐作業で一人平均5本間伐しているそうです。
また太子町人工林間伐隊では、なたは危ないので使わないそうです。
高田先生によると、「楽しいのが一番。しんどい仕事をゆるゆるとやっている。積極的には活動をしないけれど、言われたらするという人は多い。そういう人に参加してもらえるように考えている」とのことでした。太子町人工林間伐隊の間伐作業には小さな子どもさんも参加しています。安全第一で、誰もが無理せず楽しく作業をできるようにすることで、毎回多くの参加者で賑わっています。多くの人に森の状況を知ってもらい、森の問題を解決するために活動してもらうということを考えると、楽しく、頑張り過ぎないということが大切なのかも知れません。
昼には食事づくりのグループの方々が昼食を用意してくださいました。森の中での出来立ての昼食は格別で、参加者同士で交流を深めることができました。
■ユニークな間伐方法
太子町人工林間伐隊の活動で興味深いのは、林業における間伐とは違い、生態系の回復を第一に考え、またボランティアがやりやすいように、独自の間伐方法を採用されているということです。
例えば、山田財産区での間伐率は6割に上ります。これでもまだ不十分で、目標は7割なのだそうです。通常は林業での間伐は2割程度で、数年おきに行います。2割では、私の実感としてはすぐに暗い森に戻ってしまい、また、空いた地面に多様な植生、特に大きく成長する広葉樹などは回復しにくいと思われます。しかし太子町人工林間伐隊の間伐場所では、先に示したとおり、数年経っても明るい状態が続き、多くの植物が回復しつつあります。
高田先生によると、最終的には林業では最初に植えた本数の2割程度しか残らないので、この間伐場所でも最終的には同じくらいのヒノキが残ることになるそうです。太子町人工林間伐隊の間伐場所では中が明るいため、残されたヒノキが元気に成長しそうです。
また、太子町人工林間伐隊では、かがまずに立った状態で、ノコギリで切りやすい高さに受け口を作ります。「林業では、少しでも収入を得るために低い位置で切るが、ここでは別に間伐材で儲けようと思っていないので、切りやすい高さで切る」と高田先生。実際に切ってみると、かがまない方が腰に負担が少なくてすみます。また切り株がある程度高さがある方が、遠くから分かりやすく、下草が生い茂る時期でもつまずくことがなく安心です。
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作業の様子
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■和束町で豊かな森をつくろうプロジェクトチーム 研修参加者が奮闘
プロジェクトチームでの研修参加者は、慣れない作業ながら頑張りました。太子町人工林間伐隊の皆さんに、熱心にいろんな質問をしていました。
「間伐材は特に活用していないのですか」という問いに、高田先生は「集成材として活用したいという企業はあったが、残念ながら傾斜が急で外に材を出せず、実現しなかった」と答えておられました。
「森を復元したら、獣害が減りますか」という問いには、「減る。実際に山の中は真っ暗で、動物にとって食べるものがないところが多いでしょう」と答えておられました。
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現場主義の高田先生はとにかく物知りで、森に関するいろんなことを教えてくださり、工夫を凝らした資材を巧みに使い、どんな掛かり木でもスムーズに対応されていました。次回の6月9日の研修でのレポートで、報告します。
お世話になった人工林間伐隊の皆さん、研修に参加していただいた皆さん、ありがとうございました。
第2回研修 6月9日のレポートはこちら
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