現在、うつ病はアメリカ精神医学会が定めた精神疾患の分類指針であるDSM-IV(ディーエスエム・フォー)の診断基準をもとに診断がなされています。DSM-IVにおけるうつ病の診断基準には9つの症状が記されています。それらは具体的にどんな状態を指すのでしょうか。思い当たる点がないかひとつずつ確認してみましょう。
- 「ゆううつだ」「何の望みもない」「落ち込んでいる」「悲しい」など、思い悩んだ状態。本人の言葉もしくは、今にも泣き出しそうな表情や、憔悴しきった雰囲気が見て取れるため、周囲の人が気づく場合がある。こうした症状は午前中にひどく、午後から夕方にかけて改善することが多いとされている(これを日内変動という)。
これまで楽しんできた趣味や活動に、興味や喜びを持てなくなった状態。「何をしても面白く感じない」、「人と話すのが好きなのにかえってうっとうしく感じる」、「毎朝読んでいた新聞を読む気になれない」、「週末は必ずゴルフの練習に行っていたがつまらなくなって行けない」など、関心や欲求が著しく低下する。その変わりぶりは周りから見ると、人が変わってしまったように思えるほど。
- 一般的に、うつ病では食欲が低下することが多い。そのため体重が1ヶ月で数キロも落ちてしまうことも珍しくない。「何を食べてもおいしくない」「お腹がすかない」と言いながら、何か食べないといけないと思うため、食べ物を無理やり押し込んでいることもある。それとは反対に食欲が増して、甘いものなど特定の食べ物ばかりをほしがる例もある。
うつ病では、不眠がよくあらわれる。寝付きが悪くなるばかりでなく、夜中あるいは早朝に目が覚めてしまうことがある。特に、自分が起きるつもりではない早朝の時間帯に目が覚め、そのあと眠れないことが頻繁にある(これを早朝覚醒という)。このため熟睡感がなく、体調も優れないため、すぐに起き上がることもできない。患者さんによっては反対に、夜の睡眠が極端に長い、あるいは日中も寝てばかりいるといった過眠になるケースもある。生命を維持する上で欠かすことのできない食事と睡眠に異常をきたしてしまうため、生きるためのエネルギーがどんどん低下する。
- 体の動きが遅くなったり、口数が減り、声も小さくなるなど、周囲の人から見ても分かるほどの症状が見られる。また反対に、じっとしていられず、落ち着きなく体を動かしたり、歩き回るようなこともある(焦燥感という)。焦燥感が強いときは、本人はつらさを解消するために焦って話し続けるなどといった行動に出ている場合がある。表面的には元気に見えてしまうので、周囲の方は注意が必要。
何もしていないのに、ひどく疲れを感じたり、体が非常に重く強い倦怠感を感じる症状が見られる。気力が低下して何もする気がおきず、洋服を着るといった日常的なことにさえ時間がかかってしまう。本人は、何とかしなければならないと気持ちは焦るが、どうしても気力が湧いてこないといった状態。
- 典型的なうつ病では、特に理由もなく自分を過剰に責めたり、過去の些細なことを思い出しては悩むといった症状が見られる。自分を責めるあまり、「自分はこの世からいなくなった方がよい」と思いこんで、会社の業績が落ちたことまでを妄想的に自分の責任だと思い込むようになったりする。
注意力が散漫になり、集中することができなくなるため、仕事や家事が以前のように進まなかったり、できなくなったりする。また、決断力が低下し、あれこれと考え込んでしまうために何も決められない状態に陥ることがある。このため、うつ病の患者さんは悲観的な決断をして会社を辞めてしまったり、離婚をしてしまうことがある。決断しないようにすることが重要となるため、周りの配慮も不可欠となる。
- 気持ちが沈んでつらくて仕方がないため、死んでしまった方がましだと考える症状が見られる。うつ病で最も気をつけなければならないのは、患者さんの自殺。一般的に、気分が沈みきって何もする気力がない状態では、自殺をする気力も行動力もわかない。しかし、少し症状が良くなると、死にたいという感情が湧けば、すぐに実行に移してしまう。治療の経過の中で死んでしまいたいという気持ちは、繰り返し患者さんの気持ちの中に湧いてくる。自殺念慮がある場合は、すぐに専門医の診察を受けること、そして主治医および家族など周囲の方との間で絶対に自殺はしないことを約束することが重要になる。自殺念慮が非常に強い場合は、入院して治療する必要がある。