防水性能と腕時計の耐久性(電池交換の経験から)
腕時計の防水性能は初めにも書いたのですが、初回の電池交換までは結構防水性能は高いものなのです。既に書きましたが腕時計という物は”精密機械”です。水どころか湿気さえ大敵な訳です。よって「水を使う時は、腕時計を外す」。「汗や湿気は腕時計には大敵」これさえ気をつければ特別に防水性能は気にしなくても普通の「日常生活防水」で充分です。
しかし、それが面倒であるから「気圧防水の腕時計」を購入する訳です。問題は気圧防水の腕時計だからと、どうしても使い方がハードになる事です。各気圧防水の許容範囲であれば水に浸けても大丈夫です。これも既に書いた”最初の電池交換までは”です。一度でも電池交換すれば防水性能は落ちます。もし防水性能を維持したい場合は200m防水の腕時計はもちろん、普通の10気圧防水であっても5気圧防水であっても時計店での電池交換よりもメーカーサービスへの依頼をお勧めします。
ただ店頭で電池交換をしている経験からは200m防水の腕時計ではない限り、電池交換を「メーカーに依頼」する方は居ません。また店頭ではご要望が無い限りパッキンの交換もしません。こちらが確認して劣化が激しい場合はお勧めしますが、それでも費用が掛かるとなれば交換に応じて頂ける方は半分です。では、そういった方の腕時計は皆4・5年で壊れているか?。ところが意外にそんな事もありません。このサイトの「腕時計の電池交換」のコーナーで腕時計の内部の写真を見て頂ければ解りますが、電池交換に持ち込まれる腕時計の半数は腕時計内部のムーブメントに湿気が入って曇っています。それでも10年くらいは分解掃除もしないで使っておられます。言い換えれば10年以上持ちたい場合は電池交換ごとのメンテナンスは必要ですが、”10年持てば十分”といった場合は取り立てて電池交換の度にパッキン交換などは必要では無いと思われます。
何故その様に書くかと言えば、このサイトの「腕時計の電池交換」コーナーで腕時計のムーブメントの数々を見て頂ければ理解しやすいかも知れません。店頭で腕時計の電池交換をしている体験から感じる事ですが。私は1年で5000個くらいの電池交換をします。その中で私が見て”内部に湿気の入った形跡を見る腕時計”は全体の50%はあります。その中でも”これは動かないだろうと”思う腕時計は20%はあります。しかし実際には電池交換をして”動かない腕時計は1%も無い”のです。年に10〜20個くらいですか。しかも交換する腕時計の50%は”雑貨腕時計”なのです。それを込めても1%も無い訳です。
電池交換をしても動かない腕時計の内部は殆どは湿気ています。動かない原因を”内部に湿気が入っています”と言うと皆さん「先月、洗車した時だ」など1年以内の使用方法や状況を回想されているようです。電池交換をしている経験からは「水を使う時は、腕時計を外す」。「汗や湿気は腕時計には大敵」これを意識しないで使っておられる方の腕時計は20気圧であれ10気圧であれ2度も電池交換していれば内部はかなりの確率で湿気が入っています。しかし、止まりはしません。「ルキア5Y89-0B20」ですが、この状態でも動きます。かなり湿気が入った状態です。この腕時計はOHしましたが、おそらくOHしなくても自然に湿気が抜けていれば本来は3年は持つ電池が1年くらいで切れても動きます。
そして電池交換に持ち込むと「内部に湿気た跡がありますね」。といったくらいで電池交換すれば動くでしょう。しかし、再度あそこまで湿気が入らなくても次は少しの湿気が入る事で腕時計が止まる事になります。そこで「あれ?水に浸けた記憶も無いのに止まった」となる訳です。
つまり腕時計の内部が湿気た状態で使っていると、ムーブメントのダメージがボディーブローの様に効いて、大したことは無いと思っていたら、意外にダメージが大きかったとなります。
腕時計の使う頻度にもよりますが、私が自分の腕時計(10気圧防水で、”はめ込みタイプ”)で試した事もありますが、毎日使って10気圧だからと「洗顔はもちろん洗車」までも着けたままで使用してみました。使用後は腕時計の裏側を拭く事もしないで3月くらい使ってから裏蓋を見ますと。
この程度になっています。そして裏蓋を開けると。
この程度は必ず汚れています。内部はパッキンに守られて綺麗ですがケースの周辺部で裏蓋との密着部は汚れています。これをこのまま使用するとこの汚れが増えていき、更に洗車などをしていると裏蓋とケースの密着部の”埃に湿気が染み込みます。”この状態こそ裏蓋周りが常に湿気た状態「腕時計にとって最悪の状態」を作り出します。(裏蓋を開けないで見える汚れではありません)
写真の様にこの汚れを綺麗に拭き取ってパッキンにシリコンを塗布しなおして、また裏蓋を閉めます。しかし、それはたった3ヶ月での話です。そこまで頻繁に掃除すれば5気圧防水でも洗車に使用しても問題は無いでしょう。しかし実際に皆さんがご自分の腕時計を3ヶ月ごとに裏蓋を開けてケースの掃除をするのは難しい話です。
自分で出来るようになればそれに超した事はないのですが。しかし裏蓋を開ける行為は我々慣れた者でもリスクは付きものです。またいくら私は自分で掃除が出来ても実際には年に一度です。いくら自分で出来るからと言って腕時計をハードに使って毎月、裏蓋を開けて掃除する行為はしません。それは裏蓋という物はそんなに頻繁に開閉するものとして作られていないからです。おそらく毎月開閉して掃除すれば”裏蓋の食い付きが甘くなって防水性が落ちるでしょう。”現に私の店でも新人の練習用の腕時計ですが、10万円以上はする腕時計で無い限り100回も開けた腕時計の裏蓋は工具無しで爪でも開ける事が出来ます。
スクリューバックならそうでも無いかも知れませんが。スクリューバックならそこまで頻繁に掃除しなくても大丈夫なのです。”腕時計の裏蓋は頻繁に開閉する物ではない”。以上の性質から結局の所は。
「水を使う時は、腕時計を外す」。「汗や湿気は腕時計には大敵」これしか対象法が無くなる訳ですね。
余談ですが昔、父の店の店頭に「50cmくらいのアクリルの筒」に水がはってあり、その中で腕時計が浮いたり沈んだりするディスプレーがありました。1年浸けたままの腕時計を開けて見せて貰いましたが全く綺麗。子供ながらに”凄い!”と思いましたが、今考えたら10気圧防水ですし”汗と埃”が無い訳ですから当然の結果だった訳ですね。
それと腕時計の防水性能は「裏蓋とそのパッキン」のみではありません。「竜頭」と「ガラス」も影響します。(購入後2・3年はあまり関係しませんが)。購入後期間が経過すれば「腕時計の修理質問コーナー」でも説明した「これがガラスの外れる前兆です」。ここにも記載していますが防水性能に与える影響は大です。また「竜頭」ですが、これも自身で気が付かない間に何処かにぶつけて目に見えない隙が出来ている可能性もあります。また竜頭のパッキンが傷んでいる可能性もあります。腕時計の電池交換コーナーですが「セイコーDolce」こういった事や「シチズンFORMA」こういう例もあります。
メーカーに電池交換の依頼をすると以上の様な事はすべて調べます。よってメーカー側の電池交換を承ける姿勢としては「本来の防水性能が維持出来きるか。出来ない無い場合は元の防水性能が維持できる状況に修理する。その承諾がなければ電池交換の受付は出来きません。」こうなります。そうである以上は電池交換で送っても「パッキンの交換」はもちろん。状況によっては「ガラス交換及び接着し直し」「竜頭の交換」「分解掃除」など請求される可能性はあります。私などから見れば「このパッキンの状況ならまだ2年は大丈夫であろう」状況でも無条件で交換されます。また腕時計は動いていてもムーブメントが湿気ていれば分解掃除もされます。
これは腕時計メーカーとしては受付が「電池交換のみ」であっても「メーカーが電池交換した限りは、その後に電池切れ以外の原因で止まってはいけない」のです。場合によっては回路の消費電流が正常値で無い場合は回路交換もあり得ます。よって電池交換が¥10.000くらいになる可能性は十分にあります。
(交換された腕時計の回路)
長々と記載して来ましたが”まとめ”です。
※腕時計は水が入っても直ぐには止まらない。
※腕時計は直接の水の侵入よりも裏蓋周りの湿気が大敵。
※10年も持てば充分の場合は取り立ててメンテナンスは要らない。
※
殆どの腕時計はすでに湿気が入ってる。止まった時に入ったのではない。
(ただし上記は腕時計メーカーが規格に準じて作った腕時計のみで雑貨腕時計は含まれてはいません)
この腕時計の防水性能についてはメーカー規格のみで説明すれば”×気圧防水はここまで出来る”。です。ただ実際に腕時計の電池交換をしている現場の声としては、とても規格だけで納得の行く解説などは出来ないと思います。5年も使えば新品と同じ感覚で使用してはダメです。規格のみ信用して使用したが為に壊れた腕時計(壊れては無くても瀕死状態)を数々見て来た事とそれに対応してきた経験からの話ですが。
細かい能書きは誤解も招きます。だからといって使用者の都合を考えないで”電池交換をする所”が規格に準じた電池交換しかしなくなるのも困ります。その結果「防水腕時計難民」を作りだしているのも事実です。
腕時計を熟知した方にとっては既に承知の内容であろうかと思いますが、初心者サイトと言うことご勘弁を。m(..)m
次は「腕時計のカレンダー」へ。