デジタルデビルサーガ アバタール・チューナー | |
PlayStation2 | |
2004年7月15日発売 | 販売:アトラス |
PS2『真女神転生III ノクターン』の戦闘システム「プレスターンバトル」を採用しつつ、
シリーズの最大の特徴であった悪魔合体の要素を排除し、イベントシーンによるストーリー展開の比重を大きくしたという意欲作。
この真女神転生シリーズ、RPGをあまりプレイしない自分にしては結構イロイロとプレイしてる部類で、
『真女神転生III』も気になってたんだけど、丁度、今回の『アバタール・チューナー』は刷新作になるということだったので、果敢にチャレンジしてみることにした。
とりあえず、ゲームの形式を箇条書き気味にツラツラと書いておこう。 いわゆるフィールドは存在せず、ワールドマップ的なところから次々を行く場所を選択し、次々とダンジョンをクリアしていく形式。 戦闘へはいわゆるランダムエンカウント方式で移行し、 パーティは最大5人で、戦闘に参加できるのはその中の3人まで(戦闘時にも入れ替え可)。 セーブはダンジョン内にある「大カルマ端末」「小カルマ端末」で行う。 各カルマ端末からは(同じダンジョン内で既に利用した)他の大カルマ端末にワープでき、さらに大カルマ端末では体力回復ができる。 ダンジョンは客観視点で進行していく。 その操作は、左スティックを入れた方向にキャラが進み、L1&R1あるいは右スティックで視点の左右回転、×でカメラリセットというもの。 カメラは一部に固定されているところがあるものの、通常時の自動調整はかなり弱い部類なので、 基本的にはプレイヤーが視点を操作しつつ進めていくゲームということになるだろう。 それはそれで結構なんだけど、右スティックによる視点移動がLRによるそれより遅いという仕様が非常に謎。 そんなにアナログスティックを使わせたくないのか。腹立たしい。 アナログスティックなら自前で回転速度を調整できるんだから、最大速度はむしろボタンより速くするべきじゃない? まぁ、カメラが地形に押されるようにキャラに寄ったときは、 ちゃんとキャラが半透明になるようになってるし、そもそも、リアルタイムの操作を強いられるゲーム内容でもないんで、操作関係の不満はそう大きくないが。 これまでのシリーズでは悪魔を召喚して戦うという設定だったのに対し、 本作では、主人公たちが(というか登場人物が皆)悪魔に変身して戦うという設定になっている。 ということで、悪魔合体の代わりに本作のシステム的な特徴となるのが、「スキル」関連だ。 スキルは、使用時にMPを消費する「魔法スキル」、使用時に体力を消費する「物理スキル」、 そして何かの耐性であるとか装備しているだけで自動的に効果がある「自動効果スキル」などからなり、 これを予めメニューから装備しておく必要がある。 ちなみに、装備できる数は最初は4つで、レベルが上がるごとに増えていくが、それでも最大で8つまで。 これは意外にキビしいのだが、これについては後述する。 で、このゲームでは防具などの装備アイテムが(存在感がゼロに近い「弾丸」を除けば)存在しないので、 スキルの選択によって、キャラ性能が決まるわけだ。 このスキルを得るためには、まず、カルマ端末でお金を払って「マントラ」をダウンロードし、装備する。 で、敵を倒したときに得られる「アートマポイント(AP)」が経験値的な役割となり、 APが十分に溜まるとそのマントラをマスター、各マントラに応じたスキルが得られるという仕掛け(ちなみに、装備できるマントラはひとつだけ)。 マントラはいくつかの系列からなっており、あるマントラをマスターすれば、その上位のマントラがダウンロードできるようになる。 そして、このAPを効率的に得るために必要なのが「ハント」なんだけど、 これは戦闘システムと関連してくる話なので、まずはそっちから話していこう。 本作の戦闘システムは、PS2『真女神転生III ノクターン』から引き継いだという「プレスターンバトル」。 まず、ターン開始時にパーティ人数分の「プレスターンアイコン」が用意される。 そしてキャラが並んでいる順番に順々に行動していき、1つの行動でこのプレスターンアイコンを1つずつ消費、 全てのプレスターンアイコンを消費したら敵のターンに移行する、というのが基本的な流れ。 で、相手の弱点を突いたり、クリティカルヒットするとプレスターンアイコンの消費は1/2で済み、 逆に敵が耐性を持ってる攻撃を出すと、ブロックされた場合は2個、吸収・反射された場合はその場で敵のターンに移行してしまう (ちなみに、何もせずに次のキャラに行動を移す場合は1/2だけ消費)。 つまり、弱点を突けばさらに行動ができ、逆にヘマをしたらさらに痛い目に会うという、かなり極端な戦闘システムであることがわかると思う。 よって、こちらの攻撃は敵の弱点を突き、敵の攻撃はブロックを狙うのが基本となるんだけども、攻撃はまだしも、防御に関してはあまり効果的ではない感じ。 スキルは攻撃&ハント&回復だけで一杯一杯で手が回らんし、そのターンだけ有効なブロック系スキルは、必ずしも成功率が高くないし、 どうせなら、なるたけ先制で弱点を突いて一気に倒してしまいたいところ(早く倒すとそれだけ戦闘後に得られる金が増えるし)。 ここらへんを狙っていくのは、目立った弱点がなく、さらに体力も多い敵が出てくる終盤だけの話だと思う。 この戦闘システムに大きく関わってくるのが前述の「ハント」。 こちらのプレスターンの消費を減らしたり、相手のプレスターンの消費を増やしたりした場合、時折、敵が「おびえ」状態になる。 ハント系スキルはこのおびえ状態の敵に有効な攻撃で、さらに、これで敵を倒すと大量のAPがゲットできる。 特に即死系ハントスキルは、おびえ状態の敵を間違いなく即死させるので、非常に有効。 このハントを狙うというのも、相手の弱点を突く大きな理由になるわけだ。 他にこのゲームの戦闘の特徴を挙げると、まずはこのシリーズの伝統である状態変化系のキツさ。 状態変化のバリエーションが多く、それを使った攻撃も非常に多い。 また、能力上昇・低下系の魔法は重ねがけがきく上に、その能力は打ち消されるまで継続するので、 対処法を装備しておかないとドツボにハマる可能性が大きい。 敵の先制の頻度が高いのもシリーズを通じた特徴か。 今回はプレスターンバトルの性質上、敵の先制は時として致命的な結果に繋がってしまう。 さらに今回は、一般的な先制の他に変身前の遭遇というものがある。 変身前のキャラには、銃器での攻撃、悪魔時より防御力が低め、魔法使用不可、破魔系耐性といった特徴があり、 基本的には悪魔時より能力が低いので、大抵の場合、まず変身してから戦うことになるんだけども、 変身前+敵の先制攻撃という場合もあって、なかなかキツい。 その代わりということでか、非常に逃げ易くなっているのも特徴。 特に専用のスキルを装備しなくとも8割方成功するし、2回連続で失敗した記憶はない。 ヤバくなったら(できればヤバそうだったら)サッサと逃げてしまうが吉。 そこらへんを割り切れるようになれば、ザコ戦で全滅することはほとんどなくなるに違いない。 この肝心要のスキルに関しては、あらゆる要素をスキルでまかなわなければならないにしては、力不足な感じが否めず。 まず、スキル自体のバリエーションが物足りない。 使えないスキルもちょっと目立つ。 例えば物理スキルはいくら付属の状態変化能力があっても属性が物理なもんで、あえて使うようなものが見当たらない(当然、ハント系は例外)。 状態変化の回復・防御・耐性も、睡眠・混乱・魅了を回復するパトラ系を除けば、 1つの状態変化に対して1つずつあって、あまりにもピンポイントすぎてスキルとしては装備しづらい。 結局、かなりパターンが限られてくると思うんだけども。 そして、使えるスキルが限られてるにも関わらず、装備できるスキルの数は少ない印象。 通常時は、攻撃魔法、回復魔法、ハントスキルで手一杯で、ピンポイントで使うスキル(各種防御系、ブースタ系、状態回復系など)まで手が回らない。 でも、大抵のボス戦では(状況に応じた)それらがほぼ必須なもんで、 結局どうしても、初回はほぼ全滅(あるいは勝てても大量にアイテム消費)、 (もちろんボスのパターンを把握した上で)スキルを整えて挑戦すれば楽勝、ということになる。タルい。 一応、2人のリザーブキャラまで含めれば、スキルの選択肢の幅も増えるんだけども、正直、焼け石に水な感じ。 んまぁ、こういう位置取り的な要素の無い戦闘で、特色を打ち出しつつ面白いものに仕上げるのが難しいのは理解できるんだけどさ。 マントラ関係もねぇ・・・。 APを集める手間以上に、ダウンロード時のお金がハードルになってしまったのが気にかかるが、 ここらへんもスキルのバリエーション不足が根本的な原因だろう。 もちろん、直にスキルを得られない(対応できない)ことによる不自由さもある。 あるいは、マントラを装備した時点でその魔法を使えるようにしてしまった方がよかったかもしれない。 スキルを使えるようになるということと、キャラの成長をちょっと区別する、と。 そうすれば(というか、そういうシステムを前提とすれば)、もうちょっと全体にバランスの取れた調整が行われていた(せざるを得なくなった)んじゃないだろうか。 あと気になったのは、スキルを上手くやりくりしようとすると、 どうしてもアイテムの比重が高くなるにも関わらず、ショップのある場所が限られていること。 大体、ダンジョンの開始場所にはあるんだけど、無いこともあるし、ダンジョンの途中には皆無だったはず。 これなんかは、完全に大カルマ端末と共用でよかったんじゃないかね。 各ダンジョンにはそれぞれ趣向が凝らしてある。 あまりにもゲーム的な仕掛けが多く感じられたけど、良いアクセントにはなっていたと思う。 立体的な構造が多い点にも好感が持てる。 大ボスや中ボスが現れる前には、ドアを開ける時に「この先に人の気配がする」といったメッセージを出して、 いきなり遭遇しないように配慮されてるのは良かったが、それが終盤になってやや反故にされてしまったところがあったのは残念。 メニュー関係はもうちょっと上手くまとめられたんじゃないだろうか。やや使い勝手が悪い。 一番腹立たしかったのは、スキルの装備と使用が別枠のメニューになっており、非戦闘時も、いちいちセットしてからでないとその魔法が使用できなかったこと。 つまり、魔法をセットし、使用した後、また元の魔法をセットし直すということになり、状態変化の回復をするたびにこの作業を行うことになる。 細かいところでは、スキルの一覧が表示される場所は、 穴埋め的に表示されるわけじゃないのに、使用可スキルの下に延々と空欄が続く。 意味がわかんね(もちろん、穴埋め的に表示しろというわけじゃないぞ)。 そもそも、スキルを選ぶときは、 他のキャラクターの装備してる(あるいは装備できる)スキルとの兼ね合いや、 「リンケージ」(複数人が特定の魔法を組み合わせることで強力な魔法を使うシステム。 スキル装備数節約のため、自分は複数対象攻撃魔法は大抵このリンケージを使って行った。 ステータス相殺も終盤を除けばリンケージ頼みになるはず)を参考にしたいわけなんだけども、そういうのが参照し難い。 ゲームシステムをスキルのみに特化したのであれば、もうちょっとメニュー関係をまとめられたんじゃないだろうか。 より細かいところでは、悪魔百科みたいなものがないので、ちょっと間を置いてゲームを再開するときなどに、 敵悪魔の特性をいちいち調べ直さなくてはならないのが、記憶力に自信のない自分的にはツラいところだった。というか、メンドクサ。 グラフィックに関しては、金子悪魔のデザインそのものの秀逸さは言うまでもないが、 金子一馬氏デザインの悪魔&キャラクターの3Dとの相性の良さも非常に印象的だった。 やはり金子氏はイラストレイターというよりデザイナーという人なんだろうな、と。 トゥーンレンダー処理されたそれぞれのキャラは、イラストとのギャップがほとんど感じられず、 かといって、必要以上にはアニメっぽくなってない独特の仕上がり。 背景も、よーく見ると雑なとこもあるんだけど、そのシブい色調とデザイン的な統一感によって、その質以上の印象を残してると思う。 光源処理で手を抜いてないことも、大きいんじゃないかな。 最後に、ストーリーとイベントシーンについて。 本作のイベントシーンはシリーズ初のフルボイスとなっており、その演出は“板野サーカス”で有名な板野一郎氏が監修。 かなりイベントシーンの比重が大きいRPGと言えるだろう。 物語の設定&導入からして唐突っていうか「ハァ?」って感じ全開なので、 ここであらすじを説明しようとすら思わないが、 とりあえず、主に描かれるのは、主人公たちの感情の覚醒とそれに伴った戸惑いみたいなもん。 何より自分が理解しかねるのは、こういうイベントシーンにしたにも関わらず、 主人公「サーフ」が全く喋らないという形にこだわってしまったことだ。 イベントシーン自体が凝ってるだけに、そして、感情の覚醒ってのをメインに描いてるだけに、これが非常に浮きまくり。 有能なリーダーという設定にも全く説得力が生まれなかった。 何度か書いていることだけども、 主人公を無色にすれば物語へのシンクロ度が高まるなんていう幻想からは、早く脱却してくれよ・・・。 何のために、どういう効果を狙ってイベントシーンに力を入れるのか、ちゃんと考えてるんだろうか。 ただ、それを除けばイベントシーンの演出・バランスは悪くなかったと思う。 プリレンダムービーとはいえ、ゲーム画面との違和感もさほどなかったし、 結構クドくはあるんだけど、それがあまり気にならなかったのは、 キャラクターが全体的に魅力的だったからだろうし、特に女性キャラがあんまり鬱陶しくなかったからでもあるんだろう。 音声も無難にまとまってたと思う。 一点、リップシンクのレベルが低いのは気になったけども。 一応、ほのめかすように語られるけど、明らかに映画「マトリックス」的な二重構造が感じられる世界観で、 肝心のストーリーは、本作の中で語られる限りにおいては特に文句ナシ・・・というより、良し悪しを判別できる前に終わってしまったというのが正直なところ。 んー、そこまで「マトリックス」を狙わんでも・・・。 パッケージ裏の解説には、 「謎の鍵を握る黒髪の少女・セラと、真の敵の影を追うサーフたちを待ち受ける驚愕の事実とは…。」 ってあるんだけど、 それらが全然(は言い過ぎかもしれないが)明らかにならないまま終了。ビックラこいたわ。 せめて、もうちょっとこの1本の中で起承転結を考えるなり、 あらかじめ「エピソードI」なり「第一章」なり「Vol.1」なり「第1巻」なり付けといてくれい。 ただ、話的にはここまでが悪魔が出てくる限界という感じもするので、先が作れるかどうか、結構疑問だったりもする。 まぁ、この時点でも気になる点がないわけじゃない。 全体的に、唐突かつ説明不足気味ではあるし、イベントシーンに力を入れるのは結構なんだけど、 イベントシーン以外でどう物語を表現するかっていう点で工夫が感じられなかった。 また、舞台の現実感(存在感)の無さは、おそらく狙いでもあったんだろうけど、 必要以上にその背後に潜む二重構造を匂わせてしまっていると思う。 感情の覚醒っていうテーマがあるからこそ、世界設定の方にはむしろ現実感(存在感)を出すような工夫をしてほしかったところ。 あと、歌をキーにするのは結構ありがちなパターンなんだけども、その歌声にやや説得力が欠けたな。 自分のクリア時間は32時間弱ということで、 まぁRPG的には普通のプレイタイムだと思うけど、話の方はさほど進まず、 相変わらずダンジョン探索の比重が大きい印象。 確かにこれまでのシリーズは、ストーリーより育成、悪魔合体、戦闘、つまりダンジョン散策がメインだった。 でも、本作はそうじゃないゲームにしようとしたんじゃなかったわけ? そういう意味では、イベントシーンの質的な充実だけじゃなく、 その使い方というか、ダンジョン探索の途中にもそういうものを上手く散りばめてほしかったな。 ゲームとしては、肝心のスキルに悪魔合体に取って代わるだけのパワーがなかったのが致命的。 結局、このシリーズのある意味での戦闘バランスの極端さは、 悪魔合体というもうひとつの極端さによって相殺されていたからこそ、成り立っていたんだと思う。 よって、本作は戦闘前の準備の比重がムダに(面白くないのに)大きすぎて、ボス戦の繰り返しが単に面倒なだけなことが多すぎ。 かといって、全体的な流れ(作り)がストーリーを語るゲームに特化できてないので、非常に中途半端な印象が残ってしまった。 この後、PS2『真女神転生III』をプレイすることはあっても、本作の続編をプレイすることはないだろう。 |
2004年8月12日記載 |