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【社会】

ミツバチの群れ 農薬で消滅 ネオニコチノイド系 金沢大確認

ミツバチの巣箱を使った農薬影響の野外実験の様子。巣箱の手前に並ぶのは計数用のカメラ(金沢大・山田敏郎教授提供)

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 国内外で広く使われているネオニコチノイド系農薬をミツバチに摂取させると、比較的低濃度でも巣箱の中のミツバチがいなくなり、群れが消える「蜂群(ほうぐん)崩壊症候群(CCD)」に似た現象が起こるとの実験結果を金沢大の山田敏郎教授らのチームが十七日までにまとめた。

 山田教授は「ハチが即死しないような濃度でも、農薬を含んだ餌を食べたハチの帰巣本能がだめになり、群れが崩壊すると考えられる」と指摘。養蜂への影響を避けるためネオニコチノイド系農薬の使用削減を求めている。一方農薬メーカーは「科学的根拠が明らかでない」と否定的な見方を示した。

 山田教授らはセイヨウミツバチの群れを使用。ネオニコチノイド系農薬のジノテフランとクロチアニジンを、糖液と花粉ペーストに加えて投与、群れの中の成虫と幼虫の数の変化を四カ月間、写真を使って調べた。

 イネの害虫のカメムシ防除に推奨される濃度をさらに百倍に薄めた比較的低濃度の農薬を与えた場合、いずれの農薬も約一万匹いた成虫が投薬から五週間程度で半減、十二週間後には群れが消滅した。

 より高濃度(十倍に薄めた)の場合、投与直後から死ぬハチが見られ、十二日後には多数が死ぬなどしてクロチアニジンの農薬では約13%、ジノテフランでも約33%まで激減した。最終的に十五〜十八週後に群れが消失した。

 山田教授によると、実際の環境中でも、ミツバチが農薬で汚染されたミツや花粉、水などを巣に運び込むことで同様の問題が起きると考えられるという。

 ネオニコチノイド系農薬はミツバチへの悪影響が指摘され、欧州連合(EU)がクロチアニジンなど三種の農薬の二年間の使用禁止を決めるなど規制が進んでいる。

<ネオニコチノイド> タバコに含まれる天然成分のニコチンから、人体への毒性を低減させて開発された物質。有機リン系の化学物質に代わり、1990年代から一般家庭での殺虫剤などを含め、さまざまな用途で使われている。神経伝達をかく乱し、異常な興奮状態を起こさせて昆虫を殺す。近年、各国で多発しているミツバチの大量死や消滅との関連が指摘され始めた。

 

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