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難解な科学 分かりやすく伝えるには
6月16日 22時37分

難解な科学 分かりやすく伝えるには

iPS細胞や放射線それにウイルスなど、とかく「難しい」とか「分からない」と考えられがちな科学を、どうすれば一般の人たちに分かりやすく伝えることができるのか。
そのノウハウを研究者や技術者などが学ぶという講座が16日、東京で開かれました。
「身近なものに置き換える」とか「専門用語などは数を絞る」といったことが説明されました。

背景に理科離れや科学への不信

背景に理科離れや科学への不信

なぜ研究者などが科学を分かりやすく伝えるノウハウを学ぶのか。
その背景には、いわゆる理科離れのほか、原発事故や公害などが起きた際に生じてきた科学への不信などがあります。
これらを避けるには、一般の人たちに、科学を分かりやすく伝え、科学への意見などを聞きながら、科学と社会の在り方をともに考えることが必要だと考えられていて、こうした取り組みは「科学コミュニケーション活動」と言われています。

研究者などが伝え方を学ぶ

研究者などが伝え方を学ぶ

東京・江東区の日本科学未来館では、昨年度から3か月に1回程度、科学を分かりやすく伝えるにはどうすればいいか考えてもらおうという講座を開いています。
16日は研究者や技術者のほか、学校の教員や大学院生など20代から60代の男女26人が参加しました。
多くは、一般の人たちに科学を説明する立場にあります。
参加した人たちは、少人数のグループに分かれて、「食物連鎖」や「遺伝」それに「酸化と還元」といった科学の専門用語を、3分間で説明し合う練習をしました。
また、科学館を訪れた一般の来館者向けの講演を想定して、自分自身の研究などを紹介するための練習もしました。

分かりやすく伝える工夫

分かりやすく伝える工夫

講座では、分かりやすく伝える初歩的な工夫として、次のようなことが説明されました。
1、数値は直感的に理解してもらう。
(1ナノメートルは「10のマイナス9乗メートル」と言うよりは「1ミリの1000分の1のさらに1000分の1」などと言う)。
2、身近なものに置き換えて説明する。
(大気圏の幅は「およそ100キロ」ではなく「地球がりんごの大きさだとすると、その皮ほどもない」などと言う)。
3、比喩(=例え)を適切に使う。
4、大事な概念や専門用語は、数を絞ったうえで丁寧に解説する。
5、分かりやすさと正確さをてんびんにかける。
(正確さを追求すると話が分からなくなってしまうなら思い切って単純にする)。

科学者自身の「責任」と考える

科学者自身の「責任」と考える

参加した人の1人で、電子部品関係の会社の男性エンジニアは、「社員教育のほか、小学校などに『出前授業』に行く機会もあるが、聞いてもらう相手のレベルに合わせることが難しい。どうすればいいか悩んでいたが、参考になった」と話していました。
日本科学未来館は、今回のような講座をことし9月上旬にも開くほか、外部への出張講義も検討しているということです。
難解な科学を分かりやすく伝えるのは科学者自身の「責任」だと考えたうえで、科学者と社会がコミュニケーションを図る。
こうした取り組みが、科学への関心を高め、理科離れの解消や科学への信頼回復、さらには、科学技術政策への市民参加などのきっかけになるかどうか、注目されそうです。

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