国機関など連携支援 福島医大の創薬研究事業 成長戦略に政府盛り込む
東京電力福島第一原発事故を受け、福島医大が取り組む創薬(新薬開発)研究事業は、政府が創薬研究の拠点として平成26年度に設ける「創薬支援ネットワーク」と連携して進められる。政府が16日までに決定した成長戦略「日本再興戦略」に盛り込まれた。ネットワークは、厚生労働、文部科学、経済産業各省の主要研究機関などで組織し、福島医大の研究で得た基礎データを基に新薬開発を支援する。効率的な新薬開発に弾みがつくと期待される一方、県内への産業集積にどう結び付けるかが課題となる。
福島医大と創薬支援ネットワークとの連携のイメージは【図】の通り。厚労省所管の医薬基盤研究所の創薬支援戦略室が本部機能を担う。文科省所管の理化学研究所(理研)、経産省所管の産業技術総合研究所(産総研)の研究機関に加え、創薬研究機能を持つ大学や民間企業などで構成する。基礎研究から実用化まで切れ目のない研究開発態勢を構築することで、新薬開発のスピードアップを図るのが狙いだ。
福島医大の創薬研究事業では、全国の大学や研究機関から専門家を確保し、抗がん剤などの新薬や検査薬を開発する予定。今年一月から遺伝子やタンパク質解析などの基礎研究に取り組んでおり、がん発症の要因となる遺伝子の究明とともに、副作用がなく、がんの進行を抑える新薬の開発を目指す。
ネットワークは、福島医大の基礎研究成果を基に、実際に薬にした場合、効果があるかを調べる試験や薬の結晶構造の解析、人体に害がないかを調べる毒性試験など臨床試験の前段階の研究を担う。結果は福島医大に還元し、臨床試験を経て新薬の実用化につなげる。福島医大の担当者は「国の後押しを受けることで研究に弾みがつく」と歓迎している。
県は新薬開発による製薬会社と関連産業の集積、雇用創出を目指している。ただ、新薬の開発にめどが立ったとしても、製薬会社が県内に製造拠点を設けるかどうかは不透明だ。
福島医大と創薬支援ネットワークとの連携は、政府の成長戦略「日本再興戦略」の具体的な施策である「健康・医療戦略」に盛り込まれた。平成23年の日本の医薬品の貿易赤字は約1.4兆円で拡大傾向にある。本県の医療関連産業の振興と集積による復興の加速化に加え、日本の製薬企業の国際競争力を強化したい考えだ。
※福島医大の創薬研究事業
創薬研究の拠点が入る「ふくしま国際医療科学センター」は平成27年度後半から28年度当初にかけての本格運用開始を目指し、福島医大敷地内に整備される。事業費は約258億円。研究を急ぐため、施設の完成を待たずに、福島市中心部の民間ビルに暫定の拠点を設け、今年1月から遺伝子解析などの研究を開始した。人員体制は5月1日現在、研究員ら70人。
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