アーサー: では、メガテンに対するあなたたち二人の意識の深層を探ってゆきたいと思います。
メガテンに関わった最初の頃と今とでは、かなり月日も経ているので、不変のことともあれば、変わってきたこともあると思われます。その点を明確にしてください。
金 子 : 僕は、まだこの会社に入ってない時に、一番最初ナムコで出てた「デジタル・デビル・ストーリー(※1)」ってのやって面白いなと思ったんですよね。他のゲームと全然違うムードだったんで。悪魔合体とかが新鮮なのと、その悪魔に他には出てこないような神話の神様がいたんで。
ロールプレイングって安い金額で長く遊べるんで、5,6千円くらいで30日くらい遊べますよね。で、遊び方によっては自分でマップ書いたりして、すごく遊べるわけですよ。没頭できるっていうか。
6千円なんて飲みに行ったら一発で終わりじゃないですか。一晩どこじゃないよね。はっきり言って無駄だよね。もう行かない方がいいよね。もうゲーム買った方がいい(笑)
まあ、そう思って凄い好きになって、この会社入って作りたいって言って、作って、っていうのがあるんで、まずは長く遊べるものであって欲しいですよね。
アーサー: それでは、石田さんはどうでしょうか。「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」のディレクターとして作品を作り上げて、いろいろな感想が蓄積されていると思われますが。
石 田 : やっぱり自分もユーザーだったんですよ。「真・女神転生」を遊んで、ちょっと毛色が違う、つまり現代が抱える問題を扱いつつも奇想天外なものを描けるっていうのは、小説とか映画にはあるけどゲームにはなかったんで、切り口が新しくて面白いなって思いました。
そこが一番インパクトのあったところだったんで、今回もそういう所はブレずにやりたいと思ってました。
現代を舞台に、これから人類どうなっちゃうんだろうみたいなことを、ユーザーが膨らましたり選んだりしながら、ドキドキしながら遊べるっていうのは、絶対入れたいなと思ったので。そこは全然変わらないなと思いました。
合体の遊びに関しても、やっぱり同じですね。システム的には大きいところは一切変えずにずっときているので。
オカルトチックな楽しさとテクノロジーが融合したような雰囲気は絶対維持したいなと思って、そこは変わらないですね。
であの、変わったことは何かっていうと、ちょっと難しいですね。実はあまりないですね。
アーサー: 最初の頃の気持ちをずっと維持し続けているということですね。
石 田 : でもやっぱり、システムが面白ければかなり引っ張れるっていう感じで自分としては思ってたんですけど、システムだけじゃないなっていうのは、今回作っていてすごく実感しました。
面白い舞台設定と、面白いシステムがあれば、後は膨らましながら遊べるんじゃないかと思ったんですけど、やっぱりテーマがないとダメだなと。
金 子 : 骨抜きな感じするよね。
石 田 : そうですね。最初起案したときは、正直あんまり重いテーマとかシナリオはそんなに僕自身の中にはなくて、まあ無くても面白いんじゃないかなと。で、真Ⅰのころにあったような、ああいう雰囲気があればと思ったんですけど、やっぱり雰囲気だけでは作れないだということに気づきましたね。
そういう意味では、シナリオの礒貝さん(※2)とかずっとメガテンやっていらっしゃる方に助けていただいたりして、僕の持っていない部分をそこで出していただけて、すごく良かったなと思いました。
金 子 : 僕も、変わってないのは、散々話しているんだけど、アナーキズムというか、ぶっ壊してやれみたいなのが基本としてあるんで。よそと違うムードのものをやりたいっていうのが基本的に変わってないですね。
まあ、変わったことについては、それこそ石田さんとか、ライドウ(※3)では山井さん(※4)とか、僕からすればヤングなスタッフたちとその都度都度いろいろと仕事することが多くなってきてるんですね。やっぱりその人たちの考え方もわかるし、それは最近の世の中のブームなんてものにも通じるものがあるんじゃないかなとも思うんで、まあそういったところに合わせて変えていくというか。
無理して合わせてる訳じゃないけど、共感したり納得したりとかがあるので、変われるトコだなっていう気がするんで。これはありがたいとこですね、むしろ。
もちろん喧嘩することだって一杯あって、全部が全部オーケーじゃない。
彼らは彼らなりの考え方があって、例えば悪魔合体をどこでもやりたい、みたいなことがあるわけです。やっぱりわざわざ帰ってきて面倒臭いから面白いんだと思うんだよね。だから、いやいやホントにいいと思ってるのって言ってると、でもやりたいって。そういう細かいところで全て喧嘩するんだけど、でもやってみると、まあわかるところがあるんですよね。
やっぱりじっくり話していくと自分だけじゃだめなところが見えてくるんですよね。そういうとこが面白いし凄い変われるとこだなという感じですよね。
 

※1 デジタル・デビル・ストーリー: 1987年にファミコン用ソフトとしてナムコから発売された「デジタル・デビル物語 女神転生」。開発はアトラス。1990年には「デジタル・デビル物語 女神転生II」も発売された。

※2 礒貝さん: 礒貝正吾。「真・女神転生III NOCTURNE」「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」のシナリオを手がける。

※3 ライドウ: プレイステーション2用ソフトとして2006年に発売された「デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団」、および2008年に発売された「デビルサマナー 葛葉ライドウ対アバドン王」。

※4 山井さん: 山井一千。「デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団」「デビルサマナー 葛葉ライドウ対アバドン王」のディレクター。