アーサー: 続いて、今回のゲーム開発の中で、特に注力して取り組んだ点を明らかにしていきます。
まずは石田さんから、個人的な注力点を報告してください。
石 田 : 短い時間で達成感があるように作るのは起案時の大名目でしたね。ダンジョンを探すのが楽しいとか、集めるのが楽しいとか、合体させるのが楽しいとか。
遊んでいると小さい目標設定がポンポン出てきて、ゲームを進める動機が大きい目標設定、つまりシナリオへのモチベーションだけにならない、システム的なモチベーションが強いゲームにしたかったんです。
ミッション制を導入したのもそういった理由からです。まぁ、洋ゲーのオブリビオンとかの影響もあるかと思うんですけど。
アーサー: 「オブリビオン」とは、ベセスダゲームスタジオが開発したエルダースクロール4作目に当たるタイトルで、2006年に…
石 田 : ア、アーサーさん。詳しい解説ありがたいんですが、話の腰を折らないでいただけませんか?
で話をもとに戻しますと…、ちょっと遊ぶだけでも、今日はレアなモノを手に入れたとか、レアな武器作ったぞとか、面白いスキルを持った悪魔を作れたぞとか、いろいろな種類の快感がテンポ良く味わえる様なゲームを作りたかったんですね。それはかなり実現できたかなと思います。
ゲームってやっぱりテンポが大事だなって思っているんですね。
あとテンポって事で言うとプレイヤーのコントロール外の時間が一杯あるものは、やっぱり遊んでいて凄いストレスなんですね。なんで、細かい個人的なこだわりでいうと、演出関係をほぼ全部スキップできるように作ったっていうのは思い入れがありますね。さすがにバトル中のエフェクトはカットできたりはしないんですけれど、オートバトルにするとエフェクト表現が一切なくなるとか。
合体もホントはあんまりカットさせないのがベストだとは思うんですけど、もう何回も見たからってイライラする人もいると思うんですよね。そういうところを全部カットできるように作るのは結構大変なんですけど、カットできるように作って、もうオマエの気持ちいい時間で進められるようにしてやったぜ!っていうのはありますね。
金 子 : 凄くリズミカルで、なんていうんだろ、凄くシンプルにそぎ落とした結果、そうなったっていう。
石 田 : やることは割と一杯あるんですけど、複雑なゲームじゃないんで、ちょっと絶妙な感じに結果的になったんですけど。
金 子 : ホントにシンプルな目的の連続なんで、やめ時がないというか、自分もテストプレイしててうっかり寝れないってことがしょっちゅうあるというか。
まあ、それのせいで時間が狂っちゃうわけですよね。ちょっと僕らクリエイターという名前で怠けてるところもあるので、思いっきり時間がずれたり、夜と昼が逆転しちゃったりとか。それは仕事が忙しいんじゃなくて、遊んでたからなんだけど。ストレンジ・ジャーニーで遊んでだから。あっ、でもこれも仕事だ、なんだよ、みたいな、よかった俺みたいな(笑)あ、ここバグ見つけちゃった、みたいな(爆笑)
石 田 : いずれ何らかの形でちゃんと帰ってくると思えばこその、夜更かしですよね。
金 子 : そうそうそう。あっヤッベー次これ出来る、っていうのがメガテンのずるいところ。
何か仲魔にしちゃうとこれが合体できるっていうのはすぐわかっちゃうから、じゃあこれが合体できるまでやろう、ってやってると、また別の悪魔を仲魔にしちゃって、今度これができんじゃん、って。で、合体したらしたでこれで何できるのかな、わっこれできるじゃん、またやろうみたいな。
悔しいことに、ブラブラしてると変なもの拾っちゃうんですよいっぱい。それ持ち帰っちゃうと、これでこれが作れるぞなんてアーヴィンに言われてね、わっなんだよこれヤッベーとかって。
何かやってきてくれよって言われると、また意地になってやっちゃったりして。すごいよね。だから、良く出来てるな、携帯機としては、と思いますね。
アーサー: では、金子さんの個人的なこだわりを報告してもらえますか。
金 子 : どうでしょうね。真・女神転生I、IIってあって、IIIの頃からイメージしてたものなんで。その当時もカオスな世界を旅するんだって話にしたかったっていうのがあって、必然的にそれをそのまま持ってきちゃって。
カオスをテーマにしているとは言わないけれども、カオスっぽい内容になってるよね。
石 田 : ひいては今ある社会の縮図みたいなのがシュバルツバースの中にあるんだけども、カオスっぽいっていうのが、ある種の暗喩になっている。
金 子 : 例えば、ヒメネスってキャラクターは、凄いわかりやすいけど一番素直な子なんですよね。素直の出方の違いって言うのかな。
ストレートに嫌なことは嫌って言うやつと、これはルールだから嫌って言っちゃいけないじゃんっていうのがゼレーニンの考え方で、双方間違ではないんだけれども。
石 田 : 心で嫌って思うか、教典にそう書いてあるので嫌って思うかとか、嫌に関しても人それぞれ拠り所が違うと思うんですよね。そんなことが、遊ぶ人の分岐になればいいと思います。
金 子 : 結局、やればやるほど、噛めば噛むほど味が出るって感じなんだよね。一番言いたいのは、たぶんそこなんですよね。
よくなぞらえるのは、ブラックジャック(※10)を小学生の時に少年チャンピオンで読んでて、奇想天外な手術をするところがカッコイイなとか、そういうところが凄い印象に残ってる。あと人面瘡の病気とか、そういうわかりやすいところを覚えてるんだけど、大人になって読むと全然違うんですよね。あっ、ブラックジャックって怨み晴らすために医者やってんだとか。
そういうところが意外に見えてきて、全然違うところでフックしてくから、その幅を持った作品を作れないとやっぱり歳を経てきた意味が無いというか。
石 田 : はっきりとわかりやすい結論もこのゲームで出てないし。そこは想像してもらえるといいなと思うところが随所にありますよね。
なんか、言っちゃうと引っかからないというか。実はこうだったんですよって言っちゃうと、その瞬間消化できちゃうんでつまらないものになっちゃうと思うんで、そこは人それぞれに思えばいいのかなっていう風に感じますけど。
なので、ぜひ最後まで遊んで欲しいなって思います。
金 子 : まあ、そういう意味ではウチのファンてね、たぶんそういうの凄く高度だし、品もあるというか。品格を持ってるファンが多いのが何かちょっと自慢だなというのがありますよね。
アーサー: あなたたち二人の意識の輪郭が明確になってきましたので、ここでミッションを完了とします。「クリエイターのこだわりを解析せよ」の終了を承認します。
次回は「メガテンの深層に潜入せよ」、これをミッションとして発令します。
では、次回に期待してください。
 

※10 ブラックジャック: 1973年から週刊少年チャンピオンで連載された手塚治虫の漫画。