アーサー: 前回のミッションに引き続き、「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」の真相を探索していきましょう。
そこで、今回のミッション「クリエイターのこだわりを解析せよ」を発令します。
ちなみに、今回のミッションもワタシが自ら調査を行います。

アーサー: 今回の作品はニンテンドーDSでの発売となりますが、何故DSで開発・発売しようと思考したのか。「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」のディレクター石田さんから詳しい事実関係を報告してもらえますでしょうか。
石 田 : いろいろ検討して、一番望んだ形のモノを作れそうなのがやっぱりDSだったということですね。
いちプレイヤーとして感じることは、社会人になると遊びに割ける時間がすごく減ってくるし、自分が遊べるのがないなっていうのがあります。
前回のミッションで金子さんも言ってましたけど、短い時間でスカッと遊べる、でも物語がちゃんとあるロールプレイングゲームを自分で一本作れないかなと。
いろいろ考えると、やっぱりボリュームも出てきてしまうので、やりたかった遊びとボリュームを両立させて実現できるのはDSだったな、と。
あと、一番普及しているハードなのと、久しぶりの新作ってこともあって、新しいユーザーさんはもちろん、かつてのメガテンユーザーさんにもすごくアピールしたいっていうのがあって、みんなが持ってるハードはどれなんだろうって考えると、やっぱりDSが一番いいかなと思いました。
アーサー: 現在最も普及しているゲーム機であるDSで発売するからには、新しいファンを獲得していくことが必要だと思われます。このあたりの可能性に関して言及してください。
石 田 : そうですね、前回、何でナンバリングタイトルじゃないかって話があったんですけど、僕の理由としては、ここから遊んでくれればいいよっていうのもちょっとあって。
シリーズファンに喜んでもらえるお約束要素がちゃんと入りつつも、これを知ってないと楽しめないのかなみたいな雰囲気を、なるべく払拭した形で出したかったんです。I、II、IIIとはお話しにつながりが無いので、過去作を遊んでいなくてもここから楽しめるように設定したところもありますね。
やっぱり、ペルソナであったり他のゲームでロープレを始めた人達が、もう少し歯ごたえがあるものをやりたいとか、システマチックなゲームをやりたいとか、ちょっと毛色の違ったのをやりたいねってなったときに、じゃあこれどうぞって感じでお皿に載せられればいいなって、凄く思ってました。
DSだったら若い子も持ってるし、年配の方も持ってるし、これはちょっとチャンスなのかなと。
アーサー: ゲームに登場するワタシの分析なので確実性が高いと推測されますが、「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」のゲームバランスは絶妙だといえます。
ミッション発令のタイミングなどもプレイヤーのゲーム心理に適合していて、ストレス負荷が多量でもなく少量でもないところで見事なバランスが取れていると思われます。
石 田 : アーサーにそう言ってもらえると嬉しいですね。
やっぱり、携帯機でやりたかった理由はチューニングしやすく作れるっていうのが大きいですね。
もちろん据置機でもチューニングしやすく作ることはできるんですけど、グラフィックの要素は大きいので何かいじるにしても結構時間がかかっちゃうんです。でも、携帯ゲームだったらイベントってすぐ作れちゃうんですよね。
なので、テンポのチューニングに関しては、DSで作ったことによってかなりうまくいったと思います。ここ何か欲しいね、わかりました、って感じで、開発自体がテンポよくチューニングしてたんで、それはゲームに出てるんじゃないかと思います。
アーサー: 真・女神転生を初めてプレイするユーザーにも取り組みやすいことは間違いありません。
石 田 : RPGのわずらわしい部分に大量の情報を把握しつつ、それを適切に扱わなくてはならないというのがあると思うんですが(それがRPGの楽しさなんですが)、その扱うべき情報量が増えれば増えるほどゲームの難易度って高くなっちゃうんですよね。実際人間って忘れちゃうし…。
ですがDSって2画面あるので、覚えなきゃいけなかったりすることを下画面に常に出しておけるんですね。これって最強のメリットなんですよね。
例えば、バトル中で言えば戦いで得た敵の情報を常に出しておけるとか。マップで言うとオートマップを常に表示しておけるとか。
これまでそういうのってボタンや画面を切り替えないと出なかったんですけど、常に出しておけるのでプレイヤーはいい意味で負担がなく遊べるところがDSのメリットだなと思います。
逆に、出るものは全部画面に出ているので、いい意味で手心を加えずに難しくしてやるぞって感じもあって、結構難しいんだけど不条理感がない絶妙な感じになっているかなと思います。
やっぱり人間って切り替えれば出るじゃんとか言っても切り替えてくれないんですよ。でも下に出ているものは見てくれるので、「あっそうか、こいつはこれが弱点なんだ、じゃあオレが悪かったんだ」とか、そういう風になってくれるんですね。
ユーザーが難しいことに納得してもらえる感じっていうのも、2画面あることでかなり恩恵にあずかれてるなとは思いますね。
加えて上画面がプレイヤーの視点で下画面がデモニカのハンドコンピュータに映ってる画になっている事が、いち人間として超自然に立ち向かう感じ、つまりなりきり感も強化してくれていると思います。ってこれは余談でした。
アーサー: 悪質なストレスをなくして、ゲームの本質的な面白さや歯ごたえを追求することが可能になったわけですね。
石 田 : やっぱりマップが出てないと同じ落とし穴に何度も落ちるんですよ。それって人の記憶力の問題なんですけど、やっぱりゲームのせいになっちゃう。そういうところは2画面出ていると納得性が高いんで、凄いメリットだったなと思います。
作る前にわかっていたメリットじゃないんですけど、作った後にこれは意外といいぞって。
結構難しくしても大丈夫だっていうのが分かってきて。難しい難しいって言うと敬遠されそうですけど・・・。
金 子 : 歯ごたえがある。
石 田 : 歯ごたえですね。達成感が高かったりするのは、そこにつながっているんだろうなと思います。インターフェイスの設計も含めてうまくいったなって。
金 子 : 思わずDSを投げる、投げたくなるって時はない?
石 田 : 相性の悪いパーティーでうっかりボス戦に挑んだりしたときなんかは、投げつけたくなる事はありますけど…。全然勝負させてもらえないですから。まぁそれは自分のせいですね。でも投げたくなるくらいのゲームの方が僕は好きなんで、DSの本体投げれないんで辛いなと思うんですけど(笑)
金 子 : 投げたら壊れちゃいますね。
アーサー: 質量のある物体をある程度の速度を保ちながら空中に放つと周囲に危険が伴います。
また、物体自体の損傷も懸念されますので、精巧に製造された機器の取り扱いにあたっては、慎重さを最優先してください。
金 子 : でもホント、ゲームユーザーは様々なんで、結構ゲームのせいにしちゃう人が多いんだよね。何だよこのゲームって投げてる人がいるから。
ま、そこの微妙な具合が面白いか面白くないかが、惹きつけてずっとやってもらえるかどうかのポイントだよね。
マリオ(※1)あたりが一番すごいんじゃない。ポンポンッポンポンポンって、次ジャンプしちゃうと落ちちゃうのが分かってんだけどリズムができちゃってるからついつい押しちゃって。ここで一拍おくんだよってのを覚えたときには、オレすげーじゃんクリアしたぜ、みたいな。
 

※1 マリオ: 1985年、ファミコン用ソフトとして発売された「スーパーマリオブラザーズ」。マリオが登場するゲームはその他多数存在する。