ここから本文です
[PR] 

さしこを「女王」にした“角栄流選挙”

産経新聞 6月16日(日)19時52分配信

さしこを「女王」にした“角栄流選挙”

第5回AKB48選抜総選挙のフォトセッションで笑顔を見せる指原莉乃(右)と大島優子=8日夜、横浜市港北区の日産スタジアム(大橋純人撮影)(写真:産経新聞)

 第5回AKB48選抜総選挙で、HKT48の指原莉乃(20)が史上最高の15万570票を獲得し初の「女王」となった。「奇跡でも番狂わせでもない。勝つべくして勝った」と永田町関係者。芸能マスコミは触れていないが、「さしこ」を国民的アイドルグループのセンターに押し上げる要因の一つとなったのは、あの田中角栄元首相流の「どぶ板」選挙戦術だったという。

【フォト】 さしこ次は市長選に!?「大分壊れちゃう」

 今回のAKB48選抜総選挙でも、大分市出身の指原に対し同市の釘宮(くぎみや)磐(ばん)市長(65)が全面支援を宣言していた。

 釘宮氏は昨年4月に指原を市の観光大使に任命した縁で同年の第4回選抜総選挙でも側面支援し、さしこが前々回の9位から4位に躍進することに一役買った。「今回は3位以内を目指す」。指原のベスト3入りに向けて釘宮氏はこう決意を示していた。

 それが3位どころか、2位の大島優子(24)に1万4千票余りの差をつけた、ぶっちぎりのトップとなった。「事件」ともスポーツ新聞に書かれた、投票開始翌日5月22日の速報1位の勢いをそのまま維持してゴールした。

 指原は昨年6月、研究生時代のこととはいえ御法度とされる男性との交際が発覚し、AKB48から福岡・博多を拠点とする姉妹ユニットのHKT48への移籍を余儀なくされた。事実上の“左遷”だった。

 それでも指原は腐らず、博多で懸命に汗をかいたと言われる。そんな、さしこの姿勢が従来のファンを奮い立たせるばかりか、また新たなファンの輪を拡大させたようだ。

 12日、筆者は釘宮市長に電話で直撃した。

 −−指原さんが選挙前の大方の予想を覆して堂々の1位となった

 「15万票なんて私も選挙でとったことがない。彼女自身は謙虚で、けなげなキャラクター。どこか突っ張った感じがする大島優子さんとは違う。一年間大変苦労しただろうが、それがファンの共感を呼んだ。ファンも放っておけなかった。とにかく指原さんは『ぶらない』そのへんのおネエさんだから」

 −−大分市にとっても大きな財産となるのではないか

 「やはり選挙といえば一番力になるのは地元だ。指原さんはいつも大分のことをPRしてくれていた。市民挙げて『おめでとう』というムードだ。彼女の頑張りが相乗効果で市の発展につながる。具体的なことは決まっていないが、これからも観光大使の仕事をやっていってもらいたい。市としても精一杯応援していく」

 「釘宮市長が指原を支援する」との情報が総選挙前にネットに流れるや、ネット上で炎上する騒動もあったという。市長の対応への「非さしこ」勢力の反発が大きかったようだが、「むしろ指原ファンの結束を固めた」と大分市関係者はいう。

 もっとも、空前の「15万票超」を果たした指原にとって心強い援軍となったのは、地元の首長だけではない。釘宮氏が国会議員時代から「政治の師」と仰ぐ羽田孜元首相(77)サイドも釘宮氏の要請を受けて指原を全面支援した。そして大島優子にダメを押したのは「羽田−釘宮ライン」だったようだ。語るのは永田町関係者だ。

 「たとえAKB総選挙といっても、長年“本物”の選挙をこなしてきたプロが真剣に取り組めば負けない。羽田氏サイドと釘宮氏が信奉してきた田中角栄流選挙手法で指原さんが、大島さんを寄せ付けない相当規模の票を乗せできたのではないか。指原さんは決して組織票で勝ったわけではない」

 羽田氏周辺も「手ごたえは十分だった」と胸を張る「角栄流選挙」とは…。羽田氏の「師匠」である田中角栄氏は、地元・新潟で山奥の一軒家まで訪ね、辻立ちをし、握手をしたことで知られる。

 「まず個別訪問3万軒、辻説法5万回。続いて沢の奥まで行き、30軒、40軒しかない集落にも足を運ぶ。そして心を込めて名刺を差し出す」

 「地道な選挙運動を行なえ。手を抜くな。徹底的に有権者と接しろ」

 「流した汗と振り絞った知恵の分だけ結果が出る。選挙に僥倖(ぎょうこう)はない」  

 いずれも角栄氏の選挙にまつわる語録だ。「角栄学校」の門下生、羽田氏もこれを可能な限り実践してきたが、その手法がAKB総選挙でも生かされたというのだ。羽田氏に近い永田町関係者は打ち明ける。

 「言うまでもなく指原さん本人が個別訪問したわけではない。しかし指原さんに代わって羽田氏サイドはこの1カ月間以上、知人はじめ会う人、会う人に『何とかAKB総選挙で指原さんをよろしくお願いします』と頭を下げ続けた。フェイスブックでも支持を呼びかけた。これが効いた。波及効果で、ざっと最低2万人に声をかけた計算。AKBのほかのどのメンバーもそんな手法はとらなかったはず。勝つためには空中戦だけでなく、『どぶ板』と言われるような地道な運動も必要だ」

 政界・芸能界双方の事情に詳しい政治・歌謡ジャーナリストの北澤英男氏はこう指摘した。

 「挫折を経験して原点から出発した指原さんは従来のAKBファンにとどまらず、広く支持を集めた。永田町からの応援もあり、AKB総選挙から縁遠い層、つまりAKBに対する『無党派層』の票が最も多かったのではないか。来年以降も、単なるアイドルの人気投票と考えて、普通のことをやっている『候補』は1位にはなれないだろう」

 たかがAKB総選挙、されどAKB総選挙である。(高木桂一)

最終更新:6月17日(月)9時5分

産経新聞

 
PR

注目の情報


PR

注目の商品・サービス

PR