日本のREITについて書いたので、5月21日に送った原稿の要約を紹介しておきたい。「不動産経済ファンドレビュー」(不動産経済研究所)の6月5日号の巻頭に掲載されたものだ。
既に発刊されているので、要旨程度はいいだろう。原稿を書いたのはと東証株価指数(TOPIX)の大幅な下落が始まるほんの少し前、発刊されたのはその後という、微妙なタイミングだったが。
原稿では分析として、東証REIT指数とTOPIXの価格変動をとりあげた。
その結果、相場の大きな転換点(底と天井)ではREIT指数が先行しているように見える。もっとも、まだ事例が少ないので、確たることは言えない。もう1点、REIT指数の変動率の方が大きい。すなわち、REITのリスクは高い。こちらは、ほぼ確かなようだ。
原稿から離れるが、REITの収益は賃料であり、これは比較的安定している。このため、REITは安定的な投資収益をもたらすと思われがちである。たとえば、モーニングスターのHPには、「J-REIT投資の魅力」として「一般の株式会社と比べて収益予想の確度が高く、分配金が安定しており・・」と書かれている。微妙な表現ではあるが、「価格変動が少ない」と読者に受け取られかねない。
http://morningstar.japan-reit.com/page/guide02.html
現実の価格変動が大きいのは、土地の値段が大きく変動するからだろうと思える。この点、暇があればアメリカのREITと比較してみたいと思っている。
原稿に戻ると、結論として次のように書いた。引用しておく。
現在、REITの予想平均利回りは4%程度である。東証上場株式の場合、現時点での「予想当期純利益と株価の比率(益利回りと呼ばれ、株価収益率=PERの逆数)」は約6%である。REITの方が株式よりもリスクが高いことを考えると、REITの4%の利回りは相対的に低い。すなわち、収益に比べて価格が高いと評価できる。この意味で、新年度に入って以降の価格調整は当然かもしれない。
一方の日本の株価であるが、PERで評価すると、欧米と比べて相対的に高値圏にある。「異次元の金融緩和」と円安で買われてきたわけだが、ここから先は企業業績が伴わないといけない。REITの価格調整(高値は3月)が株価(TOPIX)に先行したのかどうか、注目される。
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京都大学大学院経営管理研究部教授