第一章前半
これは勇者の物語(ポエム・ネタバレ注意・短い)
透明な銀、――、――、――、――銀の――の物語。
とてもとても美しい、静かに滴る雨のような、瞳を覆う涙のような透明な銀。
赤々と輝く金色の光と薄暗い灰色の闇の澹から生まれました。
周りを取り囲むのは恐ろしい黒。
灰色の黒に魅せられた漆黒に住まう者たちに染められて、
澄んだ銀の色がおぞましい穢れに犯されていきます。
絹に墨が滲みこむように侵食されても、銀は最後まで透明さを失いはしませんでした。
けれど、その穢れを自身で払う力はありませんでした。
その力を持つ機会は、色のない色によって永遠に失われてしまいました。
とてもとても美しい、幼い子供のような、すべてを悟った老婆のような透明な銀。
銀を湛えた瞳の夜に帳は下りて、来る闇を静寂の中に待っています。
忍び寄るのは始まりの邪悪。
神の創作物の美しい模造品を作りあげては
封じられし赤金に捧げて凄惨なる戦いへと備えます。
理の背骨が捻じ曲げられ、しなる痛みに悲鳴をあげていることを知る人は僅かでした。
精霊に愛された者たち。精霊を愛する者たち。
そして精霊に鎖付けられた、生まれるはずのなかった色のない色。
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