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popress【Work & Life】働き方や生き方を考える
 

「ホワイト企業」発掘→お墨付き 大阪の若者 動きだす

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 若者に劣悪な労働環境を強いる「ブラック企業」が社会問題化する中、若者が生き生きと働ける企業を若者自身の手で発掘し、認定しようという取り組みが始まっている。「ブラック企業は避けたい」という若者の不安も、「良い人材が集まらない」という中小企業の悩みも、両方を同時に解決する試みとして注目が集まっている。

雇用基本宣言を作成中

 「有給休暇を取る理由は問いません」「残業手当は明確にします」−。大阪市北区の「はたらぼ」(NPO法人の認証申請中)は、こうした内容をまとめた「雇用基本宣言」案=表=の作成に取り掛かっている。若者の働きやすい職場づくりにまじめに取り組む会社に「宣言」してもらい、社会に広く発信する狙いだ。

 NPOは労働組合の活動に携わってきた経験のある20〜30代の若者らでつくる。代表理事中嶌聡さん(30)は「『○○はブラック企業だ』という情報ばかりでなく、若者が安心して働ける企業はどこかという観点にも関心が高まっている」とみている。

「雇用基本宣言」の案作りに取り組む中嶌さん=大阪市北区で

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 宣言案の内容は「透明な採用活動」「明確な雇用ルール」など大きく分けて五つの柱があり、それぞれに細かく1〜4項目ずつ、全部で15項目に上る。全てを満たした会社だけが「宣言」できる仕組みだ。どれも時間やお金を掛けずともできるものばかりで、客観的に検証できる内容にもこだわった。

本来は当たり前の権利

 個人で加入できる労働組合に関わってきた中嶌さん。若者の労働相談に乗ったり、団体交渉したりした経験から、「経営者も従業員も実は労働法をよく分かっていないのでは」という問題意識を持ち、「宣言」に取り組むきっかけになったという。だから「宣言」に盛り込まれた項目は、本来は労働基準法などで定められた従業員の当たり前の権利だ。

 例えば「採用面接段階で労働条件明示書の要件を満たす内容を明示します」という項目。少し難しい文面だが、要は残業や休日出勤はあるのか、手当はいくらになるのかはっきりさせておくということ。これは「使用者は(中略)労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定める労働基準法15条の内容そのものだという。

 労働法の理解が乏しく、経営者も従業員も違法な労働環境を容認してしまう日本の企業風土を、中嶌さんは「ルールを知らずにスポーツをしているようなもの」と表現する。「労働基準法のエッセンスみたいなものとして、経営者側も労働者側も見える形にすることが重要」と「宣言」の意義を強調する。

 宣言案の作成に当たっては、大阪の経営者団体や、労務管理の専門家の社会保険労務士にも意見を求め、おおむね評価を受けたという。今後は大学の学生課などからも意見を聞きつつ、夏ごろをめどに事業を開始する予定だ。

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中小企業にもメリット

 若者は一般に大企業志向が強いとされ、人材確保に苦労する中小企業にとってもメリットがある。いずれは「宣言企業を集めた就職説明会の開催へつなげていきたい」と意気込みを語る中嶌さん。「ブラック企業が淘汰(とうた)されないのは、人を採用し続けられるから。ブラック企業に人を行かせない仕組みが必要なんです」

厚労省も若者応援事業

石川、富山の17社が「宣言」

 「はたらぼ」と同様に、若者の雇用や育成に積極的な企業に目を向けてもらおうという取り組みは、厚生労働省も「若者応援企業宣言」と題して本年度から始めている。北陸地方でも石川、富山両労働局がホームページで「宣言企業」を公表しており、採用活動のPRに協力していく。

 若者対象の求人をハローワークに出していることや、過去3年の若者の採用実績や定着率、有給休暇の取得率を開示すること、労働関連法令の違反がないことなどが条件。4日までに石川管内で14社、富山管内で3社が「宣言」している。

 石川県内の「宣言企業」のうち、ある機械製造業の会社は、年間を通して好きな時期に2日取れる「リフレッシュ休暇」や、誕生月の中で好きな日を1日選べる「バースデー休暇」の制度を設け、有給休暇の取得を後押ししている。採用の担当者は「若者がきちんと働けることは、社会にとっても大切」と話す。

 若者には、中小企業に対して「なんとなく労働条件が悪そう」などと漠然とした思い込みも強いという。石川労働局の担当者は「やはり中小、中堅企業は人材確保に苦労されていることが多い。労務管理に優れた地元企業を若者に紹介でき、企業側にもメリットがある」と期待している。

 担当・角雄記 ※次回は19日付Attention!「山伏」の生き方を取り上げます。

 

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