憲法と、
岐路に立つ憲法。その60年余を見つめ直します
【暮らし】高校中退者 現代の事情(下) 再チャレンジ少ない受け皿
全国で年五万人以上に上る高校中退者。中退後、アルバイトなどで働く若者も多いが、高卒資格がないと就職も難しい。「せめて高卒資格は」「転校したい」−。高卒支援会への相談件数は増加傾向で、最近は年間三百件もあるという。 ◆「いじめ」立証は困難ケイコさん(18)=仮名=も二年前、高校一年生のときに首都圏の県立高校を中退した。理由はいまだに分からないが、クラスの女子全員から無視され、あいさつもしてもらえなくなった。先生に相談すると、いじめはひどくなり、ネットの掲示板に「バカ、死ね」などと書かれるようになった。一学期が始まったばかりで不登校に。別の県立高校への転学を願ったが、難しいと知った。 県教育委員会の担当者は「いじめなら、まずは学校できちんと対応する必要がある。高校は義務教育ではないので、不登校になったからといって、簡単には転学は認められない。安易な転学は、試験で不合格になった生徒に説明できない」と言う。 公立高校への転学の制度は県や学校によっても違うが、全日制は、親の転勤などによる一家転居や深刻ないじめ、経済的な理由など、教育的配慮を必要とする特別な理由を校長が認めた場合−としているところが多い。 ただ、「そもそも学校にいじめがあると認めさせることが難しく、生徒や親にとってはハードルが高い」と、高卒支援会代表の杉浦孝宣さん。「『できれば普通の学校で、普通の高校生活を送りたい』と全日制への転学の相談が多いのに、門戸が狭く、結果的に通信制しかないというのは問題ではないか」 今月上旬、東京都千代田区内で開かれた通信制高校の合同相談会。集まった親や子どもは予想を超える約百六十人。立ち見が出る盛況で、転学の方法などについて、真剣な表情で聞き入っていた。 通信制高校は全国で約二百二十校。近年私立の新設校が急増し、十年前の二倍近くに。生徒数は約十九万人で、全日制の高校中退者や転学希望者の受け皿となっている。 相談会の主催者で、通信制高校のガイドブックを発行している出版社「学びリンク」の山口教雄社長(55)によると、中高一貫の進学校で勉強のスピードについていけず、学力不振になったという相談も目立つという。「進級のハードルがそれなりに高い。全日制に行きたいという子も多いが、学校の仕組み上、難しい」 通信制は自分のペースで学校生活を送ることができるのがメリット。自習学習が中心なので、勉強や生活を支援するサポート校に通う生徒も増えた。ただ、サポート校には法的規制がなく、さまざまな指導体制がある。二重の学費がかかり、負担も年間約百万円と高額になる。 首都圏に住むケンジ君(16)=仮名=は昨年、都内で偏差値上位の中高一貫私立校を退学した。進学志向の学校に息苦しさを感じ、自分の住む県内の県立高校への転学を願った。だが、ハードルは高く「通信制しかないと思った」と言う。 杉浦さんは「試験に受かるかどうかは別問題だが、首都圏の全日制公立は東京都を除くと、生徒の自己都合による転学を受け入れることは少ない。一家で居住していれば転学の資格がある東京都のように、転学制度をもっと柔軟にし、やり直したいという子の意欲に応えることも必要ではないか」と訴えている。(砂本紅年が担当しました) PR情報
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