開演前にSNSで親しくなれた同じくバレエ好きの方達とランチして楽しいひとときを過ごした後、公演へ・・・・
リニューアル後、来るのは3度目になりますが、まだ綺麗になったフェスティバルホールに足を踏み入れるだけで
ワクワクする気持ちが高まります。
ホールの中でもまた素敵な方との出会いでテンションも上がります
フェスティバルホールにも綺麗なお花が届いていて、この日の華やぎを増してくれていました
それに、ここでも宮尾さんと浅川紫織さんの清涼感も感じさせてくれる、パネルにもお迎えされます
パネルではこんな笑顔を見せてくれてる浅川さんですが・・・・・・
二幕では怖くて美しくて目が離せない、気迫のこもった踊りで、ウィリの女王になりきってしまわれます!!
彼女が踊られるジゼルを観る事ができなかったのは、本当に心残りです
ジゼルといえば、やはりどうしても素晴らしいジゼルを踊られた女性ダンサー達の踊りがよみがえってきますが、
今回のKのジゼルで一番強烈に心に残るのはラストシーン、朝の光がさしてくる中で、ジゼルへの深いを、慟哭を、
哀しみを全身で身を震わして、時に懺悔するように、時に自分も連れていって欲しいかのように、時に祈るように、
舞台にによって見え方が違う、素晴らしい熱演をされる、アルブレヒトです
(できれば、最後に降りる幕ももう少しアルブレヒトの姿の余韻が残るように、ゆっくり降りて欲しかったです)
Kの公式サイトに掲載されてるので、ファンの方はもうご存知だと思いますが、あの百合は本物を
使われてるそうです。
本物の百合を使われるというのは、とても熊川さんらしいとも感じますが、東京公演の時もありましたが、
時折はらりと百合の花びらが散ることがあり、それはアルブレヒトの心の哀しみの現われのようで、美しくもありますが・・・
でも、舞台の真ん中の方に落ちると、その後ダンサーさんが踊る時に大丈夫?とつい心配に
なってしまったりも。
それでも本物の百合を落としながらだんだんと明けてゆく朝の光の中、崩れ落ちるアルブレヒトの姿が
ここまで心に残る『ジゼル』は、初めてのように感じています
DANZAでは、「アルブレヒトの成長物語」として新演出について掲載されてましたが、成長というような
軽い言葉では表現できないものだと思います。
環境のせいもありますが、軽薄な生き方しかできなかったマノンが死の真際にやっとデ・グリューの愛に気づき、
人を愛するという事がどういう事かを知る、魂の目覚めにも似た・・・・
人を本当に心から愛する事を知る、そして自分のしてしまった事の罪の重みを知る事ができるアルブレヒトだからこそ、
どんどんと見てる私は心が揺さ振られます。
一人の自分を真摯に愛した少女の命を落とさせてしまった事への心からの悔恨の思いを持てる心、
それは激しい苦しみではあるけれど、同時に美しい心のありようだとも思うのです。
そして、同時に彼もジゼルを本当に愛し、彼女への心からの懺悔の思いに苦しむ事で、人としての心を
取り戻しただけでなく、魂の進化を遂げられたようにも思えるのです。
過去に素晴らしい『ジゼル』は沢山みてきましたが、心に残るのはやはりジゼルを踊ったダンサーさんばかり。
50にして復帰を決断されたというフェリの十八番と呼ばれたジゼルはもちろん、この世離れした美しさで
思い切り魅了させてくれた、イザベル・ゲランのジゼルも忘れられません。
(ちなみにこの時のアルブレヒトはパトリック・デュポン!でも、その時の彼は朝まででも十分踊れそうな勢いでした^^;)
そしてギリギリ現役で踊られる舞台に間にあった、素晴らしかったイブリン・ハートのジゼル。
私が観た時には、彼女はある程度の年齢になられてたはずなのに、世界バレエフェスで彼女のジゼルに恋をして、
彼女のジゼルが全幕で来日されると知り、大喜びでホールに飛んで行き、一人で泣いた日の事は
もうずいぶんと昔の事なのに、今も心が震えるような彼女のジゼルは、心の中によみがえります。
そして、優しい余韻でアルブレヒトを包むこむ慈愛に満ちたユカリューシャのジゼル。
そして!狂乱の場では、一幕なのにミルタの気配まで感じさせて観客を凍りつかせた、凄まじかったギエムのジゼル。
大好きなジゼルについて書き出したら止まりそうにありません
同じようにさまざまなジゼルに感動されてきた方と話すと、やはり皆様、心の宝物のようなジゼルがそれぞれ
いらっしゃいます。そんな観客にとってもダンサーにとっても大事なジゼル・・・・
そして、もちろん素晴らしいアルブレヒトの思い出も多々あります。
ヴィヴィとラブラブだった昔の熊川さんのアルブレヒトも印象的でしたし、やはり一幕からジゼルにメロメロのマラーホフ
陰影のある雰囲気と高貴さを感じさせながらも、見てると切ない気持ちをつのらせたルジマートフ。
ヌレエフ版をしっかり継承した、あくまでも貴族らしさを崩さないルグリ・・・などなど。
でも、そういう色々な舞台を思い出しても・・・・
今回の熊川さんの新演出のアルブレヒトは、格別なのです。
こんなに終演後に「アルブレヒトはこの後どうなるの?」なんて言葉が飛び交うことも初めてかもしれません。
昨日のアルブレヒトは一幕では少しジゼルへの思いが曖昧にも見えたのですが、彼の正体が露見した時に
初演の頃は、バチルド姫の手の甲にキスしていたところを昨日は、唇にキスされるように変更されていました。
(どうも、東京公演の最終日の頃からの変更だそうです)
こちらの方が、バチルド姫こそが本物の自分の結婚相手だと思ってる事を伝えられるからなのか?
それともばつが悪い状況をごまかす為の行為としてだったのか??
どちらにせよ、やはり彼はしっかりこの時はまだ貴族意識が強く、ジゼルよりバチルダ姫の気持ちを
(立場上とはいえ)立ててたのだという事は、以前以上に伝わってきました
それだけに、その後のアルブレヒトの変化から目が離せなくなるのです。
ジゼルの命が失われた後、別人のように変わってゆくアルブレヒト。
(ただ、一幕の終わりのアルブレヒトの嘆きは東京で見た金曜の夜の迫力には叶いませんでした。
あの日のアルブレヒトは、本当に涙されていらしたそうです・・・)
舞台というのは、本当に生きものだと思います。
たとえば、同じ共演者、同じホールであってもその日の体調や気持ちなどでも変わってしまうとはよく聞きます。
それは他の舞踊や音楽公演、お芝居なども同じなのだとも読みます。
人間は、機械ではないのですから。
もちろん、観る私達の心境や体調、またそれぞれの経験や環境から受けてるものからも感じるものも感動のツボも
それぞれ違うとも思います。
そういえば、昨夜のNHKの対談番組の中でも熊川さん、「公演に行く足が重い時も軽い時も・・・・」とか、
「でも、今日はいいだろうと思っても全く駄目な時も・・・」とかぶっちゃけトークされてましたが、彼の
その正直さは、カテコでの表情や仕草にも自然に現れてるように感じます
本当に率直で正直な人だとも思いますが、それだけに生き難くなる事もあるかもしれません・・・・
それでもあそこまでバレエへ心身を捧げる、その姿は、本当に美しい!!
あの番組の中で、特に感動させられたのは彼のバレエへの年々深くなるような強い強いバレエ愛と情熱です。
youthを育てようとする時の彼の強い情熱の熱さを見てると、彼のバレエへの凄い愛には頭が下がる
ような思いでした
教わる若いダンサーの卵さん達は、熊川さんの気迫であんな指導を受けるのは辛かったり、
悔しかったり凹んだり、色々な思いの日が多々あると思いますが、それでもとても恵まれた環境であり、
またチャンスだとも思うので、どうかいいダンサーさんが育ってくれる事を願っています
それに熊川さんはエモーショナルになると英語になるようにも見えましたが、でも、あえてそうする事で
将来、海外留学されたり、海外の方と踊れるベースを少しでもつけるように意識されてるのかもしれない?
と思ったりも。
youthの『スワン』のクライマックスのオデットの踊りから「I here sink」という叫びが観客が感じられる舞台になり、
そしてその後の美しいエンディングに大きな拍手で包まれるようにと、応援しています
そんなyouthにも情熱的に真摯に指導される熊川ディレクターにどんな指導を受けられたのか、
相変わらず音のしない綺麗に合ったジゼルの二幕のコールドは昨夜も素晴らしかったです
このコールドを見てるだけで『ジゼル』を見てる醍醐味を感じさせてもらえます。
そして・・・ジゼルを求め続け、哀しみにくれながらも彼女の気配を感じられた事で、生きたいと願ったような
アルブレヒトですが、なんとか命は救われたとものの、ジゼルとも永遠の別れの哀しみが痛い程に
伝わってくる圧巻のラストの渾身のアルブレヒトの姿は、今も心の中に深く残っています
朝の光がさしてくるというのに、その光とはうらはらにアルブレヒトは絶望にくれるように百合を落としきった後、
再び崩れ落ちるその姿は、この新演出の中でも私の一番大好きな場面です。
貴族がひとときのたわむれ恋の相手にした村娘の死、でもそれが尊い命である事を知り、彼女がいかに
深く自分を愛してくれてたかに悔恨し、自分も知らないうちに彼女を愛していたと知った後の衝撃、
後ろめたさとか後悔なんていう軽い言葉ではすませない、その事実にここまで哀しみ、自らを責め、
自らが生きる続ける事はもう苦しみのような姿を見せるアルブレヒトの思いが観客に伝わる熱演は、
大阪の舞台の中でも深く重いものを感じさせてくれました
新しいフェスティバルホールでの1つだけの不満はカテコの時にカーテンの隙間からダンサーさんが
少しずつご挨拶に出られない作りになってることです・・・・((+_+))
カーテンの隙間が開き、メインのキャストの方達が登場して下さるとより近くダンサーさん達を感じられるので、
フェスティバルホールさん、次からまたあのスタイルでのカテコができるようにお願いしますっ<m(__)m>
また、急に湿度が高かったり猛暑が来たりする不安定な気候の中、移動しながらこのツアーを続けて
いかれるディレクターをはじめ、ダンサーの皆様もスタッフの皆様も大変だと思いますが、まだまだ続く
この独特の余韻を心に深く残してくれるこの舞台が、成功を続ける事を祈っていますっ
それから・・・・・ちょっと楽しい余談ですが・・・
昨夜はフィギュアスケートの高橋大輔選手が歌子コーチと一緒に鑑賞されていました。
私達は、彼が幕間にお席に戻る時に至近距離で彼を見かける事ができたのですが、彼の鑑賞の邪魔は
したくなかったので、静かにお席に戻る大ちゃんの姿をそっと見ていましたが、眼鏡かけても思い切り
大ちゃんのままなので(笑)、彼は、やはり彼の周囲の方達からは思い切り視線を集めつつも、小さく手を振るファンには
ちゃんと控えめながらも笑顔も見せつつお席に戻られていました
感受性の強い大ちゃんにとってもこの舞台は去年の『海賊』とは全然違う、いい刺激になったのではないでしょうか。
(友達情報によると、彼も歌子コーチと一緒にスタオベされていたそうです)
また、大ちゃんにとって『ジゼル』は、メリチャリやゆかりんや美姫ちゃんが滑ってたプロの印象が
おそらく強いでしょうから、本来のストーリーやちゃんとした流れでの音楽も知る事や、またジゼルという作品を
知る事で彼の心に残ったもので、彼の表現の幅につながるようにも願ってます。
彼にとっても今年は集大成になるシーズンになると思いますが、40すぎてなお、踊りや肉体の動きだけでなく、
凄い気迫や演技で全幕ものをしっかりとひっぱってゆかれる熊川さんの姿に感銘を受ける事で、
彼の引退後の指針にもなれば・・・とまで思ってしまいました