エピローグ〜ローズ 6(後)
■(28)■
シルビアのキスで目覚めたシモンは、しばし伸びをした後、辺りを見回す。
「あれ……ここは?」
「お忘れですか?ここはシモン様の実験部屋です。シモン様のご命令で、内装を変えさせていただきました。お気に召しませんでしょうか?」
二人が居るのはシルビアがシモンを洗脳するのに使った例の実験部屋だった。機能的で清潔ではあるががらんとした空間に、さまざまな機材、さっきまでシモンが縛り付けられていたベッド、色とりどりの液体で満たされた薬瓶が並んだテーブルが点在している。
もちろんシモンの実験部屋であろうはずがないのだが、シルビアが前もってシモンに入れ込んでおいた暗示どおりの応対をすると、シモンは、しばし頭をひねりながらも、やがて納得したのか、
「ああ、そうだったな。つい忘れてた」
と鷹揚にうなずいた。
やがてシモンは椅子から立ち上がり、しばし腕をひねったり肩をほぐしたりのストレッチしては、しばし部屋を歩き回ってあれこれ備品をいじっていたが、そのうち、
「ちょっと、ローズ、私の前に立ってくれないか?」
と、彼女を呼びつける。
「はい、仰せのままに」
今は『ローズ』としてシモンに認識されているシルビアが彼の前に立つと、シモンは彼女の瞳をじっと見つめ、
「さて、ローズ。念のための確認だが、お前は私の雌犬だな?」
「はい、もちろん。私はシモン様のご命令に忠実な雌犬です」
全く心にも無い言葉を吐くシルビアにシモンは頷くと、さっきまでの戸惑いが浮かんでいたその顔に少し意地悪そうな笑みを浮かべ、
「なるほど。ところで、ローズ。お前はキスが好きだったよな?」
「え?」
シモンの唐突な問いに、シルビアが、
「あ……はい……」
と、曖昧な返事をすると、シモンは「そうか」と短く答えて、そのままシルビアの白い頬に手を添え、その艶やかな紅く柔らかな唇を再び奪う。
「んんん……!!」
さっきまでの、ただ唇と唇を触れさせるだけのキスではない。シモンの舌はシルビアの唇を割って捻じ込まれ、彼女の歯茎をなぶり、ざらざらとした舌先を擦り付けてくる。それどころか、あろうことか彼女の口の中に彼の唾液を流し込んでくる。
「んんん……!!!」
彼女はディープキスをもともと好まない。むさくるしく、暑苦しい男の分泌する不潔な体液を自分の身体に注がれることなど、彼女にとって最も忌むべき事態の一つであり、想像もつかないことである。彼女にしてみれば、男とは軽侮と玩弄の対象であり、自分の肢体と容貌を遠目で眺める程度のことは許されたとしても、それ以上の接触が許されるはずが無い存在に過ぎない。
先刻のキスですら、彼女にしてはあくまで相手が洗脳された男であるからできるずいぶんと鷹揚な戯れである――本当はすぐに唇を拭って口をすすごうとしていたくらいなのだから。
思わずシルビアはシモンを振りほどこうと身体をよじらせかけ、その動きをはたと止める。
――シモンの雌犬の『ローズ』であれば、この程度のディープキスを忌避することなどありえない。この程度でシモンを振りほどいていては、とても『ローズ』のふりをして彼を油断させることなどできはしないだろう。
そもそも油断させるためにキスをしたのは私のほうからだ。ここで舌を挿れられるくらいは計算の範囲内だったはず。
さらに不埒なこと――たとえば、今着ているスーツの上から胸を鷲掴みにしたり、タイトスカートの中に手を入れきたらキーワードを一言唱えて彼を凍りつかせればいい。
とにかく、ここは我慢のしどころだ……。
シルビアはそう割り切ると、身体の緊張を解き、むしろシモンの身体に自分の身体を密着させるようにして、その唇をシモンに積極的に押し付けにいく。
その動きを彼女の忠誠心の現れととったのか、シモンも彼女の身体全体を包み込むように柔らかく抱きしめ、彼女の唇と舌の味を一層堪能するかのようにその舌を積極的に動かしては、どろどろと互いの唾液を交換していく。
――そうだ、これでいい。この状態ならその気になれば彼の心臓を一撃で貫くこともできる。
シルビアはシモンの命が自分の掌中にあることに満足しながら、「んん……」と甘く鼻にかかった声とともにシモンとのディープキスを続ける。
そうしてどれほど時間が経った頃だろうか。シモンはようやくシルビアの唇を解放すると、論評を加える。
「うむ、懐かしいな。その柔らかな唇、きめ細かな舌の触感、まろやかな唾液の味……。お前の唇を味わうと、まるで上質の料理を味わっている気分になる。もちろん、ルピアやカーネリアの唇も悪くは無いが、やはりお前のような酸いも甘いも噛み分けた大人の女性の唇の熟成した味わいは、年端のいかない娘たちにはないものだよ」
「……お褒め頂き……光栄です……」
彼女が普段は絶対に口にすることのないような口調で辛うじてそう答えると、口の中に注ぎ込まれたシモンの唾液がねっとりと彼女の舌に絡みつく。
さっきまでは夢中でキスをしていたせいかあまり気にはならなかったが、改めてその生臭い唾液の匂いが口腔と鼻腔に充満するのを感じたシルビアは、思わず吐き気を覚え、彫りの深い端正な顔をしかめかける。
それを見たシモンは訝しげな表情で、
「おや、どうした、ローズ。私の唾液がお気に召さなかったかな?いやいや、そんなはずはなかろう。お前は私にキスされるのが大好きな雌犬だったではないか。それとも趣味が変わったか?あるいは他の雄犬の味でも覚えたかな?」
そう言って、シルビアの様子を見透かすような目つきで見つめる。
不愉快であるが致し方ない。ここでボロを出すわけにはいかないシルビアはシモンに調子を合わせることにする。
「い、いえ。そのようなことは滅相も……」
「じゃあ、言ってみろ。ローズ。お前は私とキスをするのが大好きな、はしたない雌犬だろう?」
「は、……はい、私は、……シモン様とキスをするのが大好きな、はしたない雌犬です」
シモンの言葉に気圧されるように、生まれてこの方、たとえ演技でも嘘でも吐いたことが無いような言葉を、唾が零れ落ちないようにしてシルビアは口にする。
それの言葉だけでは飽き足らなかったのか、シモンはさらに追い討ちをかけるかのように、
「それに、私の唾の味は大好きだったはずだったよな?それも何度飲み干しても飽き足らないほどに」
「は、はい……私は、……シモン様の唾の味が……大好きです……。何度飲んでも……飽き足らないほどに……」
「そうか、じゃあ、もう一度その口の中に注ぎ込まれた私の唾をよーく、よーく味わってごらん。まだ飲み干すなよ?じっくりとそのいやらしい舌で自分の唾とかき混ぜるんだ」
「は、……はい……」
そう答えると、シルビアは自分の口の中に注がれたシモンの唾と自分の唾液を攪拌するかのように、ねっとりとその舌を動かしていく。半開きになった唇の中を、濡れた薄桃色の彼女の舌が蠢くのがちろちろと見えている。
そうこうしているうちに、いつの間にか、シルビアにとってさっきまであれほど不愉快だったシモンの唾液の匂いが、不思議と気にならなくなってきている。
いや……それどころか、むしろ、いつまでもこうして味わい続けたい気分になってくる。
――悪くない。
いや、味が悪くない、ということではない。
今、シモンの油断を誘うために『ローズ』を演じなくてはいけない、というこの状況で、この下卑た男の下らない命令や、身体から出される分泌物をいちいち気にしていたら負けだ。彼の命令に従って唾液を味わうことが、むしろストレス無く、嫌な顔ひとつ無く演じることができつつあることは喜ばしいことだろう。
ローズは性来潔癖だから、たとえ演技と割り切ってはいても、つい、本音が顔に出てしまうだろう。ヒルダに至っては論外だ。演技すらできはしまい。
これは、この私、シルビアだからできることだ。いつだって成長できる、目的のためなら何でもできる私だからこそ……できること……。
シルビアがシモンの唾――というよりはもはやシルビア自身の唾液がほとんどであったろうが――を舌先で掬っては頬の裏や歯茎に塗すようにして味わいながら、むしろ少し誇らしい思いすら抱きつつそう思っていると、
「そろそろよかろう。では、飲んでご覧?」
「ふ……ふぁい……」
彼女の喉がごくりと鳴って、攪拌され泡立った二人の唾液がシルビアの食道を伝って胃に流し込まれ、鼻腔にそのむせかえる匂いが充満した。
シモンはシルビアの顎に手をあてがい、その頬と金色の流れるような髪を撫でながら、
「ずいぶんと幸せそうな表情(かお)をしているな。そんなによかったか?」
「は……はい……とっても美味しかった……です……」
ほとんど考えることなく、シルビアはそう返事をすると、
「じゃあ、ローズ。今度は自分から味わいにきてごらん?」
その言葉に、シルビアはシモンの唇を見つめた。
つい先刻まで自分の舌を、唇を貪っていたからだろう。シモンの唇はぬらぬらと濡れ、勢いで飛び散ったのか、その頬にまで唾液と思しき液体が付着している。
どくん。
シモンの唇を見た彼女は、その身体の中で何かがうずくのを感じた。
「どうした?ローズ?さっきの、私とのキス、私の唾液が大好きだ、という言葉は嘘だったのかな?」
その言葉を聞いて、彼女は思い出す。
――そうだ、私はローズだ。ローズである以上、シモンに疑われることはまずい……。さっき自分で宣言した言葉をその舌の根も乾かないうちに否定するような振る舞いはできない……。
シルビアの心の中の動きを知ってか知らずか、シモンが唇を軽く濡らすかのように舌でその唇を舐めると、それが合図になったか、シルビアはふらふらと吸い寄せられるようにして彼の胸元にしなだれかかり、そのままシモンの唇に自分の唇を寄せた。
「ん……んんんん……」
それはまるで子犬がミルクをねだるような所作だったのだが、彼女はそのことに気づきようもない。
思ったより柔らかなシモンの唇の触感を確かめるようにして、しばしシルビアは自らの唇を沿わせる。嫌悪感は彼女の中からはもはや消え失せてしまっている。やがて自分からシモンの唇を割り、子犬がミルクをねだるようなキスから、獣と獣とが交わすような荒々しいキスへと移行する。
――そう、あくまでこれは疑われないためにやるのだ。演技としてやるのだ。当たり前だ。こんな男とのキスを、誰が好き好んでやるものか……。
シルビアがそう心の中で反芻しながら、シモンの唇を貪っていると、シモンは唐突に彼女の胸元から手を滑らせてそのボタンを素早く外し、彼女の胸の膨らみをブラウスの上から押し潰すようにして鷲掴みにする。
「んんんん!」
思わず身の毛がよだち、硬直するシルビアに、シモンは唇を解放して、耳元でささやく。
「おや、どうしたのかな?いつもキスされながら、胸と、尻を揉まれるのは、大好きだったはずだろう?」
「あ……はい……大好きです……私は……キスされながら……胸と……お尻を揉まれるのが……大好きな……雌犬です……」
シルビアは反射的にそう答え、その後から、慌てて自分に弁解する。
――これは演技だ。演技だ。ディープキスと比べたら、胸と尻くらい触られるのは何でもない。何でもない。自分は感じてもいないし好きでもない。ただ、これは演技としていってるだけなんだ。……だって、私は『ローズ』なんだから……。
シモンは、そんなシルビアの内心を知ってか知らずか、うれしそうに微笑むと、
「そうだろうそうだろう。それでは、ご褒美に続きをしてやろう」
と言うと、シルビアとキスをしながら、今度は優しくやわやわと、しかも胸だけでなくタイトスカートの上から肉付きのいい尻までも撫で回し、揉みしだいていく。
先刻は思わずぞっとしたシルビアだったが、今度は彼のタッチがソフトなせいか、全く嫌悪を感じることはなく……いや、むしろ、時折下腹の方からぞくぞくとした快感が走り始める。あわせて、舌と舌が乱舞し、絡み合い、さすりあい、シモンの唾液が注ぎ込まれるたびに、彼女の身体の中に稲妻のような衝撃がしばし走る。その痙攣のたびに、彼女はのめりこむようにシモンと身体を密着させ、朝顔の蔦が添え木に絡みつくかのように、その両腕とストッキングに包まれたすらっとした美脚をシモンに絡みつかせていく。
そんな交歓がどれほど続いたろうか、シモンは彼女の唇を解放すると、その潤みきった瞳を見つめる。一方、シルビアも惚けたような表情でシモンを見つめ返している。
やがて、シモンがシルビアの柔らかで豊満な身体を抱きしめながら、艶やかで眩いばかりの光に溢れたその髪の乱れを整えるかのように梳いていくと、シルビアの方もまるで恋人に抱かれているような不思議な満足感に満たされながら、為されるがままになっている。
彼女の髪が整ったところで、シモンは言葉を続ける。
「では、ローズ。いつものとおり、奉仕してもらおうか?」
「え……」
「何をかまととぶっている。いつもしていることではないか」
そう言いつつ、シモンはシルビアから少し距離を置いて仁王立ちになる。
自然、彼のズボンの前の膨らみに嫌でも目が行く。
――なるほど、『奉仕』というのはそういうことか。
もちろん、一言キーワードを投げかけて彼の意識を飛ばし、暗示をかけて彼を止めるのは簡単だ。
なんなら自慰でもさせて、記憶だけ書き換えて私が『奉仕』をしたことにしてやってもいい……。
彼女がキーワードを口にしようとして、ふと、その動きを止める。
――まだ誘導してから間もないこの段階で、彼の暗示にさらに別の暗示をかけたり、記憶操作を行っては無理が出る。
できれば、避けるに越したことはないが……。
もう一度、シルビアはシモンのズボンの膨らみに目をやる。ズボンの上からでもわかるその膨らみの大きさ……。
「どうした、ローズ。らしくないな。『いつものお前』なら、すぐに咥えこんだではないか。お前は私のものをしゃぶるのが大好きだろう?」
その言葉に、シルビアは突き動かされる。
――そうだ、私はローズなんだから……。
覚悟を決めたシルビアは、ゆっくりとシモンの前に跪くと、腰のベルトを緩め、彼の黒いズボンをずり下げていく。ズボンが足首までずり下ろされた後、さらに下着を慎重に下ろすと、赤黒く屹立する肉棒が、シルビアの眼前に勢いよく突き出された。
彼女は戯れにサディスティックに男を痛めつけることで精神的な快楽を得ることはあったが、そんな時でも男の肉棒を正面から見た事はなく、こうもまじまじと観察するのは生まれて初めてのことである。……もっとも、シモンはニンゲンではないが。
改めて、シルビアは目の前のグロテスクな物体を見つめる。
シモンの脈拍とともに、少しだけぴく……ぴく……と震える勃起した陰茎。その太い茎の表面にはまとわりつくような静脈が走り、グロテスクな文様を形作っている。
赤黒く膨れ上がった亀頭の先の亀裂からは、うっすらとぬめりのある濁った液が染み出してきている。
はじめて見るネメシスの男の性器……。おそらく人間の男の平均よりは大きいのではないだろうか。
これが、カーネリア、ルピア……そしてローズをも突き挿していったのか……。
思わずごくりと唾を飲み込むシルビア。
「ほら、いつものおねだりはどうした?『私はシモン様のお○んちんが大好きな雌犬です。お○んちんが舐めたくて舐めたくて仕方がありません。是非舐めさせてください』だろ?」
シモンはそう言うと、シルビアを冷ややかに見下ろす。あたかも、彼女の忠誠心をテストするかのように。
シルビアには、もはや彼の言葉に服従する以外の選択肢を思いつく余地は無かった。今まで口にしたことがない卑猥な単語の交じった口上を、彼女は言われるがままに口にする。
「は……はい……私は……シモン様のお○んちんが大好きな……雌犬です……シモン様の……逞しいおち○ちんが舐めたくて舐めたくて仕方がありません……是非…………舐めさせてください……」
その宣言の後、ごくり、と唾を飲み込んでシルビアはシモンのモノに口を近づけ……、やがて、紅く濡れた唇がゆっくりとその亀頭を咥え込んだ。
途端、雄の勃起した性器が孕む独特の蒸れた青臭い匂いが彼女の鼻腔と口腔の粘膜を刺激する。
えずきそうになりながら、彼女はその意志力でもって辛うじてそれを堪える。
――そう、こんなところで嫌な表情をするわけにはいかない。
私はローズ。シモンに忠誠を誓った牝犬のローズなのだから……。
舌と陰茎が濡れそぼった表面をこすれ合い、粘液と唾液がはぜる淫靡な音とともに、シモンの赤黒い醜悪な肉塊は、シルビアの唇にずず……と飲み込まれ、シモンのゴワゴワとした陰毛が彼女の端正な白い顔をチクチクと刺激する。
実のところ、彼女はフェラチオは初体験であった。
普段から男性を見下している彼女にとって、男の不潔な排泄器官である陰茎を咥えこむなどということは想像することすらできないことだった。
にもかかわらず、初めて男の肉棒を咥え込んでいるうちに、シルビアに不思議な感情が沸き起こる。
――いつまでも、この肉棒を咥えていたい……。
ここから飛び出すであろう汁を、すべて飲み干したい……。
何より、『ご主人様』に気持ちよくなってもらいたい……。
それは、まさに牝犬となった『ローズ』が持った感情……正確には、ローズの痴態――恭しく捧げ持ったシオンの陰茎を幸せそうにしゃぶっていた――の動画をつぶさに鑑賞したシルビアの推定したローズの感情であった。
自分にその気持ちが湧き上がっていることに、シルビアは気付いていたが、決してそれは忌むべきことではなかった。
自分はローズを演じているのだ。だからローズが持っていただろう感情を持つのは当たり前。
第一、たかが肉棒を咥えるくらいで嫌悪感を抱いていたのでは、シモンを油断させるには至らない。
徹底的に、行動も、心も、ローズに同化させる。させなくてはならない。私はローズそのものだ。ローズとなって、シモンに身も心も尽くす。そう、身も心も……。
そう考えるだけで、シルビアの下腹に熱いものがこみ上げてくる。無意識のうちに腰と尻をくねらせ、ガーターストッキングに包まれた太ももと太ももをこすり合わせてしまっている。乳首もおそらく勃ちあがっているのだろう。身体を揺らすたびにブラジャーに刺激されるのをシルビアは感じてしまう。
「ん……んふ……んあ……」
唇、頬の裏、舌……口腔全体を使って慰撫し、転がし、その先から滲み出る汁を唾と一緒に嚥下するうちに、その醜悪で饐えた臭いのする肉塊に不思議な愛着すら芽生えてくる。あたかも自分の下腹にその肉が突き刺さっているかのように、じんわりとした熱が彼女の下腹にふつふつと湧き上がり、その勢いで赤く充血しきった淫らな花弁からは汁が染み出ていく。ショーツを着用していなければ、淫液が滴り落ちて、雪のような白さとハリを兼ね備えた太腿を伝って落ちていったことだろう。
そんなシルビアの奉仕する姿を満足そうに見下ろしながら、シモンはさらに腰を動かして彼女の喉奥に陰茎を突き出しながら、空いた手で彼女の襟元からボタンを外していく。
鋭角的なエッジを持つスーツの下の、そのまたブラウスとレース地のブラジャーのフロントホックが外されると、その自重に耐えかねたように、白く豊かな、それでいて張りのある乳房がまろびでる。
じゅっじゅっじゅ……という音とともにグラインドする白い顔と連動して揺れる乳房を、シモンは大切なものを拾い上げるように掬うように撫でさする。
時折、乳首をつまむと途端に、シルビアの眉根がより、
「んん!んふ……」
悩ましげな声とともに、赤黒い陰茎となまめかしい紅い唇との間から溢れた唾液とカウパーの混合物が、床につっと銀糸を引いて垂れ落ちる。
だがそれでもなお、シルビアの舌の動きはとどまることなく、さらにシモンの肉棒から精を搾り出そうと動き回る。
初めての口舌奉仕にもかかわらず、次第にコツをつかんできたのだろうか、彼女の舌は、幼子が甘いキャンディーを舐めるように、ただ、その肉が帯びる熱とグロテスクな異形を味わいつくすかのように無心に舐めている。
やがてシモンは彼女の頭を両手でつかむようにして、その喉奥にねじ込み、彼女の口腔はもちろん喉奥までも犯していく。
「いくぞ、ローズ……」
「んんん!……んん……ぷは……あふ……あひ……」
シモンが激しく打ち付けるたびに、シルビアの表情に眉根が寄るが、それは苦悶だけではなく、快楽の入り混じったものであった。
じゅ……じゅ……じゅ……じゅ……。
赤黒い怒張が出し入れされるたびに、彼女の唇が、頬の裏が、歯肉が、喉が、歓喜の悲鳴を上げる。彼女の頭は思考停止状態に突入してしまったのか、もはや自分がローズを演じていることすら忘れ、ただ自分の口の中の何もかもを削り取らんばかりの勢いで陵虐する肉塊に、むしろ愛おしさを覚えていく。
「……ん……出すぞ……受け取れ……!!」
「ん……んんんんん!!!」
どく……びゅく……びゅく……びゅく……びゅく……びゅく……。
最後にシモンが彼女の口腔を深々と貫いた瞬間、シモンの茎がびくっと跳ね、その先端からびゅるる……と激しい音を立ててシルビアの喉に熱い白濁液がほとばしった。
「けほ……ごほ……」
途切れることなく大量に噴出す白い精を受け止めきれず、思わずシルビアが咳き込んだ途端、唾液と精液に塗れたシモンの赤黒い肉棒がシルビアの口から飛び出してその顔にたたきつけられ、白濁液と唾液の飛沫が彼女の苦悶にゆがんだ白く端正な顔と金色の髪をどろどろに汚していく。
「おやおや、粗相をしてしまったようだな。ダメだな、そんなことでは。罰としてきれいに舐めるんだ。お前は私の精液が大好きだったろう?そして私の精液を身体に入れられると、気持ちよくてたまらなくなるのだろう?前にそう言っていたではないか?
「あ……はい……おっしゃるとおりです……私はシモン様の精液が大好きです……シモン様の精液を……飲みたくて……舐めたくて…………匂いを嗅ぐだけで……感じてしまう……生き物です……」
そういうとシルビアはうっとりとした表情で従順に自分の顔にぶちまけられた精液を指で拭い、更にはその指に付着した精液を、あたかも蜂蜜を舐めるかのように、ちゅぱちゅぱと舐めとっていく。
「髪の毛にも飛び散ってるだろう?」
「ああ……髪に……髪にも……んん……こんなに……」
シモンの指示のまま、彼女は自分の髪の毛にへばりついた精液も、舐めとっていく。
凄まじく濃厚な精臭が漂う中、スーツの胸元をはだけて美乳を曝け出し、ずり上がったタイトスカートの下からは美脚を包むガーターストッキングはもちろんのこと、黒いショーツまでも半ば剥き出しになった状態で、シモンの樹液を痴呆のような虚ろな表情で、顔と髪の毛をベトベトにしながら舐める姿は、とてもあの傲慢なヴァルキリー司令と同一人物とは思えないものであったが、彼女はその精液の粘りと濃厚な味に夢中になっている彼女にとっては、自分がそのような姿をしていることは気づく暇もない。
やがて、一通り舐め終わったと見て取ったのか、シモンはさらに彼女に指示を与える
「さあ、ローズ。そのベッドの上で伏せのポーズをしろ」
「え?」
「ローズ、お前は私の何だ?」
シモンの探るような目とその矢継ぎ早の問いに、シルビアは思わず、
「わ、私は……シモン様の雌犬です……」
「そうだな、雌犬なら、ご主人の前で四つんばいになるのは当たり前だろう?」
――そうだ、私はシモンの雌犬なのだから……。
「……はい……」
シルビアはシモンが指差したベッド――さっきまでシモンが縛り付けられていたそれ――に上がると、シモンの指示に従順に、シーツの上に腹ばいの状態で伏せ、シモンの方に尻を突き出す。そのたおやかなカーブを描く双臀のボリュームのせいか、もともと丈が長いとは言えないタイトスカートがずり上がる。刺繍の縫いこまれた網ストッキングとガーターが剥き出しになり、さらにその上に黒いショーツのデルタが露わになってシモンの前に曝け出される。
「おやおや、もう濡れてるな」
「うぁ……」
シモンが指を彼女のショーツにぐいっと押し込むと、ショーツから特有の匂いのある液体が滲み出し、シモンの指を湿らせる。
「どうだ?ローズ、ここに挿れられたいんじゃないのか?」
シモンがシルビアの淫壷と肉芽をショーツの上からすりすりと刺激を与える。
「ん……あ……あああ……」
「ほら、言ってみろ?『私はシモン様の雌犬であり、肉人形です。シモン様のその逞しいモノを哀れで淫らで卑しい雌犬の、人形の肉壷に挿れてもらいたいです』ってな?」
シモンの執拗な攻撃に、シルビアの身体がびくびくと跳ねる。既にこれまでさまざまな愛撫を加えられ、きわめて敏感になっている身体を縦横無尽に走る快感。
彼女は思わずシモンの言葉にうべなう口上を述べかけそうになるが、彼女の擦り切れ掛けた理性が危険信号を発する。
……さすがにまずい。このままだと……このままだと……本当に、彼の奴隷に……『ローズ』になってしまう……。
彼女はベッドから起き上がると、シモンを決然と睨みつけて口を開き、
「イスカリオテの……」
キーワードをそこまで言ったところで、シモンはいきなりシルビアに飛び掛る。
「きゃあ!!」
彼女はシモンに仰向けに組み伏せられ、その唇をシモンの唇にふさがれる。
「んんんん!!!!……んんん……ん……んふ……んんんん……ぅん……」
最初は激しく抵抗していた彼女だったが、シモンの舌にその唇を陵辱され、舌であらゆる口の中の粘膜を刺激され、唾液を注がれるうちに、その触感、唾液の匂い、びりびりと身体を稲妻のように走る官能、その全てが彼女の理性を麻痺させ、意識を朦朧とさせていく。
既にシモンの唾液は彼女にとって麻薬であり、媚薬であるかのように、そして彼とのキスは、彼女の理性を全て麻痺させ、思考停止に追いやるスイッチとなっているかのようだった。彼女の抵抗しようとする意志は、無残に愛欲の赤黒いペンキに塗りつぶされ、彼女は人形に成り果てていく。
やがてシルビアの瞳から抵抗の意志の光が消えうせ、完全に快楽の渦に飲まれ昏く染まったのを見計らうと、シモンは彼女の唇を解放して、右手の指でその唇を撫で回しながら、左手で剥き出しになったショーツの上から肉芽をつつき、優しい声で問いかける。
「さあ、ローズ。自分の心に正直に言ってごらん?さっき私が言ったことを繰り返してみなさい」
「あ……ああ……私は……」
「……だって君は『ローズ』だろう?」
シモンの言葉に、シルビアの思考は自動的に『ローズ』になる。
――そうだ、私はローズだ。ローズなんだから……肉人形なのは……当たり前だ……だから、シモンとセックスをするのも……当たり前だ……。
これは演技だ。演技なんだから……。私は穢されない……私は汚れない……。私は『ローズ』としてやるんだ。私がやりたくてやるのではないのだ……。
精液と唾液で、あたかもソースに和えられたような彼女の唇が、何かに操られたかのようにゆっくりと動き、隷属の言葉を吐き出していく。
「私は……シモン様の……肉豚です……肉奴隷です……肉人形です……シモン様の……肉棒で……卑しい雌豚を……串刺しにしてください……どうか御慈悲を与えてください……」
虚ろな表情のままそう口上を述べる彼女に、シモンは嬉しそうに、
「そうか。じゃあ、遠慮なく犯らせてもらうぞ」
シモンはそう言うと、彼女のショーツをずりっと足首までずり下げる。愛液でぐずぐずに濡れてもはや用を為さない黒いショーツの下からは、そのまばゆい髪と同様に金色に輝く陰りが、そして薄ピンク色にひきつく充血しきった肉襞と肉芽が露わになる。
抜けるように白く、ギリシャの名匠の手によって彫られた大理石の彫刻のようにたおやかな流麗なカーブを描く腰と美脚のフォルム、その荘厳ともいうべき美しさの中にあって、しとどに濡れた秘所の肉色、溢れ出す愛液、そして肌をてらてらと照らし出す汗が、その肢体が愛欲に身を灼かれた女の生身であることを示している。
シモンにまさに犯される、そんな状態にありながら、あたかも自分の宣言に自分の行動を呪縛されているかのように、シルビアはもはや虚ろな瞳でただシモンの暴虐を見つめるだけで、抵抗する素振りも見せない。いや、それどころか、彼女にゆっくりと近づく凶悪で醜怪な陰茎を見つめる彼女の瞳は、犯される悦びを知る雌だけが持つ熱っぽい闇に満たされている。
やがて、シモンは、彼女の両手首を掴み、彼女をベッドの上に押し倒すと、その金色の髪が絨毯のように白いシーツの上に広がる。ほんの少し、シルビアが抵抗すれば、彼をはじきとばすことなど容易であろうが、もはや彼女にはそんなことは思いをつかないかのように、虚ろな表情のままシモンになされるがままになっている。
やがて、シモンは勿体をつけるかのようにゆっくりとその腰を前に突き動かし、――その赤黒い怒張を彼女の肉襞に突き挿した。
「ん……ああああ!!!」
その途端、いままで人形のように虚ろだった彼女に生気が戻ってきたのか、まるで生娘の破瓜の際の絶叫のような響きをもってシルビアは叫ぶ。
もちろん、シルビアは処女ではない。かといって、そこまで経験豊富なわけでもない。たまに男と交わることはあったが、それはあくまで「洗脳」した男を相手にしたものだった。彼女にとって「男」とは、しょせんディルドーやバイブレーターと変わるものではない。自分が玩弄したいとき、ストレスにより快楽を貪りたくなるときに、適当な男――もちろん自分の眼鏡にかなった、それなりに端麗でレベルの高い男だけだったが――を洗脳し、弄び、そして、洗脳して記憶を削除する、という行為のための「道具」に過ぎなかった。
もちろん、今回は、「シモン」はあくまでシルビアが「洗脳」した相手だ。だが、今のシチュエーションは、シルビアもまた「シモンに洗脳されたローズ」として犯される役回りになっている。ある種の倒錯的な、マゾヒスティックなシチュエーションプレイとも言うべきものであり、常に一方的にサディスティックなセックスをストレス解消に行う程度の彼女にとっては、初めて『犯される』体験をしていることになる。
それが、決して嫌悪ではなく、むしろ彼女に絶対的な倒錯的な快楽と幸福感をもたらしているのだが、あまりにその刺激が強烈過ぎて、彼女はまだ気づいていなかった。
シモンは、だが、彼女の膣の半ばまで挿入したのはいいものの、それだけで満足してしまったかのように全くそれ以上動こうとしない。
シルビアは、時折身体に走る痙攣を抑えながら、シモンを上目遣いに見つめ、問いかける。
「……なんで、動いていただけないのですが?シモン様……」
シモンはそのシルビアの顔を嘗め回すように見ながら、ぽつりと言う。
「動いて欲しいかね……『シルビア』」
「……な……」
その言葉にシルビアの身体がこわばった。その彼女の表情を見て、シモンは満足そうに笑うと、
「いやいや、なかなか献身的だったな、シルビア。とても演技で『ローズ』のフリをしているとは思えない雌犬っぷり……いや、マゾぶりというべきかな。正直、ローズよりもすさまじかったぞ」
「な、なんで……貴方は……間違いなく薬で……『イスカリオテのシモン!!』」
シルビアはシモンに埋め込んだキーワードを叫ぶ。
が、
シモンはそのキーワードもどこ吹く風、とばかりにヘラヘラとした笑いを顔に貼り付かせたままだ。
「イスカリオテのシモン、ね。たしかキリスト教の聖典の中の裏切り者の親父さんがそう言う名前だったかな?」
「な、なんで……」
全くキーワードが利いてないシモンを見て、愕然としながらもシルビアは記憶をたどる。
――シモンには洗脳薬を、それも通常の配合のものではなく、より強烈な効果を生む配合で注射した。注射後もシルビアが自ら念入りに暗示を掛けた。なのになぜ……。
そんなシルビアの内心を見透かすようにシモンは目を細めると、
「なぜ、薬が効いてないのか、かな?よく思い出すんだな。今までの過程を」
よく思い出せ、だと?シルビアの自問自答は続く。
――フィロメアに指示を出し、シモンに注射をさせた。彼に念入りに暗示をかけ、キーワードを埋め込んだ……。
その過程において、彼女の記憶にある限り瑕疵は無いはずだ。
シルビアはシモンを睨みつけ、
「そんなはずはない!私の洗脳は完璧だったはず!貴方に使った薬の配合はローズを尋問したときよりも強力で、これ以上体内に注入したら命に関わるレベルのものだった。なのになぜ…………。さては、解毒剤……………………いや、この薬剤の配合比だったら有効な解毒方法は無いはず……」
「うわぁ、おそろしいな。頼むから未知の星から遠路はるばるやってきた生物にはもう少し優しくしてくれよ。こちとらレッドデータブックに載ってるんだから、殺したら環境保護団体が黙ってないぞ?」
嘯くシモンを無視して、さらにシルビアは記憶を辿る。
やがて、フィロメアに指示を出し、シモンに洗脳薬を注射させた場面の記憶に辿りつくと、彼女は突然稲妻が走ったかのような衝撃とともに一つの事実に思い当たる。
「……薬……いや、注射……」
洗脳薬を投与するようフィロメアに指示は出した。だが、……その中身は誰が選んだ?誰が『洗脳薬』であることを確かめた??
「あなた、フィロメアを……」
彼女は憤怒の表情でシモンを睨みつける。そんな表情でも美しいな、と場違いな感想を抱きながらも、シモンは解説を加える。
「ようやく気づいたか。もっとも、気づかなかったところを含めて暗示の効果だからな。別にお前さんを馬鹿にするつもりはないよ。……ただ、少し慢心したかな?」
「何を……んん……!」
さらにシモンへの難詰を続けようとしたシルビアの声が唐突に鼻にかかった甘いものになる。シモンが腰をひねり、彼女の肉壷奥深くに到達せんが勢いで、膨れ上がった怒張を挿したからだ。
シモンの肉棒を受け入れた彼女の蜜壷は、その主人の意思に関わらずあたかも歓喜の悲鳴を上げるかのようにちゅぷ……と水音を立てる。充血し、熱を帯びた肉襞は、シモンのものを離すまいとその怒張を圧迫し、吸い付き、蠕動する。
「んあぁああ……な……こんな……くぅ……」
いかに強固な意志を持つシルビアとはいえ、燃え盛る官能の炎を全て消し尽くせるものではない。勢い唇からは熱い吐息とともに悩ましげな声が漏れ、雪のような白さと肌理細かさを持つ肢体と巨乳といっていいサイズの双丘が震える。そんな彼女の肢体をたわわに実った芳醇な果実の出来を確かめるかのようにねちっこく撫でさすりながら、シモンは続ける。
「いつもギリギリピンチからの大逆転!だったこれまでの反省を踏まえて、お前とフィロメアを分断して彼女を洗脳、そして洗脳したフィロメアをお前の手元に戻した上で隙を見てお前を洗脳する、という実に戦略的に合理的な、ゆとりある楽勝な作戦を取ったつもりだったんだが……。ま、さ、か、あの内向性爆発型巨乳娘が既にお前に洗脳済みだったとはな。さらにルピアだけでなくサファイアまで洗脳されてしまっていたのは誤算以外の何者でもない。確か、お互いに相手の駒を自分の手駒にする能力がある、というのがジャパニーズ・ショーギのルールだったな。自分だけが相手の駒を洗脳できる、と思ってゲームのルールを忘れていた俺にも油断があった。そこは素直に反省しなくてはな……。まあ、幸い最後の駒が生きてくれたが」
シモンはそう言いながらも、その豊かな、しかしそれでいて張りがありみずみずしい乳房を揉みほぐしつつ、勃ちあがった色素の薄い乳首を指で摘むことをやめようとしない。西洋人の女性としても平均以上のボリュームを持ちながら、体型とのバランスや形のすばらしさにかけては、おそらくこれほどのものは、世界のトップモデルや女優を並べてもそうはいないだろう。それだけの逸品だった。シモンが執着するのも当然である。
そんなシモンの内心のレビューを知るよしもなく、シルビアは乳房から、そして膣と子宮からぞわぞわと自分を蝕んでいく快楽のうねりをこらえつつ、理性を振り絞ってシモンに絶望的な確認の問いを投げつける。
「じゃ、じゃあやっぱり……あの……注射が……んんぁ……」
「そう、ご明察。答えはフィロメアが俺にした注射だ。彼女が俺に注入したのはただの生理用食塩水だよ。いや、助かった。これでカラフルな洗脳薬をお前がチョイスした日にはさすがにごまかしが利かなかったらな。いくらなんでも血管に入るものに食紅を混ぜるわけにもいかないし……。幸いお前さんが用意していた『超強力洗脳薬』はみんな透明だったから、注射器の中身をフィロメアが前もって全部ただの塩水と入れ替えてくれたわけだ」
「な……で、でも私は……貴方に洗脳なんて……」
自分自身がこうもシモンにいいようにされてしまうような……それこそ、自分を『ローズ』と思い込んでシモンを篭絡する行動を取らされてしまうような……そんな洗脳をされる機会がなかったはず、と言いかけて、彼女はふと思い出す。自分がシモンを洗脳してから、一回うたたねをしてしまったことを……。
そんな彼女の内心を先回りするかのように、シモンは続ける。
「そう。あの時、フィロメアはお前に飲み物を渡したろう?その時一服盛って眠り込んだ隙に洗脳薬をかがせたわけ。で、その間に俺はお前に洗脳処理を施したってこと。……だが、洗脳といってもたいしたことをしたわけじゃない。『自分はローズの演技をしてシモンの油断を誘わなくてはいけない』『シモンの雌犬なのだから、シモンに攻撃はできない』『雌犬なのだから、ローズになりきっている間にご主人様であるシモンに宣言したことは「全て本当になる」』……せいぜいそれだけだ。いろいろ試したが、限られた時間の中で洗脳のプロのお前にそんなに強烈な暗示は入れられなかったよ。だからこの程度の暗示が関の山だったが……それでも、ローズの破廉恥なビデオを見て、自分がローズだと思い込んでくれたお前には、その程度のトリガーで十分だったみたいだな」
そういうとシモンは再び彼女のはちきれんばかりの白い乳房をもむ。勃ちあがった乳首をくりくりとシモンがつまみあげ、ワイングラスの口を撫でるかのように彼女の薄紅色の乳輪の淵を撫でながら、その掌で彼女の胸を弾ませるように揉みしだくたびに、暗示で乳房への快感を数倍に引きずり出されている彼女は、意識が引きちぎられそうな錯覚に襲われる。
「んあ……あああ。で、でも、もし私が直接注射をしていたら?私が直接注射をしたら……いや、薬剤の準備をしていたら、貴方のトリックは敗れたはずよ!そんな危ない橋を渡ったというの?ギャンブルもいいところじゃないの!」
シルビアの言葉は、シモンには想定の範囲内だったようだ。出来は良いがやや頭の固い優等生に指導する老練な大学教授のようないい振りで、シモンは答える。
「そこは最初から見切ってた。ローズが言うには、お前は自分では洗脳薬を相手に注射しない、ということだったからな。でも念には念を入れる必要があるから、サファイアにはお前の『腕』を集中的に攻撃させることにした。サファイアの目的はお前をひきつけることもあったが、お前の腕を彼女お得意の電撃鞭で麻痺させることにもあったんだよ……。さて、腕の加減はいかがかな?まあ四つんばいになったりフェラをする程度には問題はないだろうが、注射器はまだ扱えないだろうよ」
シルビアは憤怒の表情でシモンを睨む。今、シモンに肉棒を挿入されているという屈辱よりも、全てがシモンの手の平の上で踊らされていたという事実に、怒り狂っているのだろう。
「もっとも、洗脳薬のすり替えは、最悪のケースが起きて、俺が洗脳されそうになった場合の保険だったんだけどね。その保険が効いて救われてるようじゃ、俺の作戦もまだまだ粗いな。反省反省。……さて、種明かしはこれくらいでいいかな?そろそろ仕上げにいきたいのだが」
そう嘯くと、シモンはピストン運動をゆっくりと再開する。
「ふわ……あ……ン…………んん…………!!」
シルビアは唇を噛み、必死で抵抗するが、胎の中で踊るシモンの肉棒の熱さに、既に敏感になった身体は燃え盛り、主の意思に背いて嬌声が漏れる。
シモンはじらすようにゆっくりと腰を前後に動かす。その動きは、今のシルビアにとってはあまりに刺激が不足しているものであり、それでいながら、炭火に空気を吹き付けるように、快楽に過敏になった身体にぞわぞわと刺激を与えるものであった。
「……は、はなれなさい……さもないと……」
「さもないと……さて、どうするのかな?……シルビア、お前は覚えてないのか?今まで自分が宣言したことを。そして……これは覚えてないだろうが、自分で宣言したことは、『全て本当になる』んだ……これがどういうことだか、わからないわけじゃないだろう?」
シルビアははっと目を見開く。
今まで……今まで宣言したことだと?
……シモンとキスをするのが大好きなはしたない雌犬であること?
……シモンの唾液の味がいくら飲んでも飽き足らないほど大好きなこと?
……キスされながら胸と尻を揉まれるのが大好きな雌犬であること?
……シモンの陰茎が舐めたくて舐めたくて仕方がないこと?
……シモンの精液が美味しくてたまらなくて、匂いをかくだけで感じてしまうこと?
……シモンの肉豚であり、肉奴隷、肉人形であって命令に従うだけで幸せになってしまうこと?
……い、いや、もっと自分は宣言しているのではないか?
だって、自分はローズなのだ。あの首輪をかけられただけで恍惚となったローズになりきっていたのだ。記憶が曖昧ではっきりしないが、もっとすさまじいことを口走ってたのではないか?
そこまで考えて、はたと彼女は気づく。
これこそシモンの術中だ。余計なことは考えてはまずい……!
しかし、彼女がそのことに気づいたのは、既に全ての『隷属の宣誓』を思い出した後であった。
シモンはそんな彼女の内心を知ってか知らずか、にやりと笑うと、
「さて、これから私が一突きするごとに、お前の身体はすさまじく敏感に反応する。どんどんどんどん気持ちよくなる。だけど、イカなければ大丈夫。イカなければお前は私に支配されることはない。……だが、もしイってしまったら、そのときはお前の意識は全て私に飲み込まれ、支配される。だが、それはとてつもない快楽をお前に保証するだろう。永遠に隷属する喜びに身体を打ち震えさせて生きる日々が待っているんだ。悪くはあるまい……」
冗談ではない。こんな男にいかされてたまるか、いかなければなんとかなる。そう、イキさえしなければ……。
普段のシルビアならこの程度の初歩的な思考誘導には乗らなかっただろうが、既にシモンの術中にはまっている彼女にとっては、シモンの言葉にはむかうことによってしか活路を見出すことができない心理状態に陥っていた。
「さぁ、どれだけ我慢できるかな?ローズは10回で堕ちた私の突きだが……くっくっく、いいことを教えてやろう。ネメシスの男の分泌物はヴァルキリーの雌の愛液と混ざると特殊な化学変化をするらしくてな、それがヴァルキリーにとっては凄まじい快楽を引き起こす媚薬になることがわかってる」
「な……」
「考えてもみろ。そうでもなければあのローズが、そして年端もいかないカーネリアやルピアが色情狂といってもいいほど、悦楽に身を奮わせたと思うのか?」
シモンはそういうと腰をひねりながら、ぐいっと押し出す。途端、彼女は腰を思わず浮かせる。
シモンの言ったことは口からでまかせだったが、既にシモンの唾液や精液で感じさせられている彼女にしてみれば、そしてローズの痴態を見ている彼女にしてみれば、シモンの言葉を荒唐無稽と笑い飛ばすことができない。「もしかしたら」「ひょっとして……」てその疑心暗鬼の芽が生えてしまえば、彼女の心はその方向に自然と縛り付けられていってしまう。そして縛り付けられた彼女には、シモンの肉棒のほんのちょっとした動きにすら、焼きつくような官能を憶えてしまう。
「んあああああ!や、やめ、やめなさい!あ、貴方、こんなことして……ただで済むと……」
彼女はそういうと右手を突き出し印を結ぶ。オーラがその白い指に、手に、腕にまとわりつき、眩いエネルギーの塊――"魔法"をシルビアがシモンの顔面目掛けて発動させようとした途端、シモンはその彼女の抵抗をせせら笑うが如く、更に一突きした瞬間、
「んあああ……」
彼女の腕から光が霧消する。
「無駄だな。ヴァルキリーの魔力は一定の集中とエネルギーの集約が必要だ。犯されるとそのどちらも乱される。もっともお前には私を攻撃できないよう暗示もかけてあるがな。……ほら、もう感じてきてるんだろう?」
「だ、黙りなさい!お前などに、ネメシスの……一兵士ごときに、……この私が…………感じるわけ……ない……」
シモンはそのまま彼女の手首を掴み、組み伏せる形になって、再びゆっくりと腰を動かす。膨れ上がった怒張が彼女の肉襞をえぐるたびに、ちゅぷ、ちゅぷ、と音が立つ。その音は、シルビアの言葉とは裏腹に、彼女の淫裂の中は既にどろどろのジュースで満たされ、シモンの突きにその肢体がわなないていることを雄弁に物語っている。
シモンは彼女のふるふると震える乳房の頂点でその存在を主張せんばかりに勃ち上がっている乳首を唇で咥え、舌先でその窪みを刺激する。
「んあ……あ……く……」
必死で声を上げないように歯を食いしばっているが、白い頬は紅潮し、細い眉はしかめられている。それは一見苦悶しているように見えるが、その実、快楽に意思まで犯されないように、せめて苦しんでいるフリをしなくてはならないようでもある。
シモンは陰茎を彼女に深々と突き刺したまま、彼女の乳房を伝い、首筋を舐め、やがて再び彼女の唇をちろちろと舐める。
先刻までの直截的な刺激ではない、迂遠な責め。しかし、そのもどかしさが却って彼女の下胎の獣欲のマグマを活性化させていく。噴火にはまだいたらないものの、その赤黒いマグマの動脈が、地殻深く、永年割られること無かった土塊を割り突き進んで、じりじりと地表に迫ってきつつあることを、彼女は今はっきりと認識している。
「くっくっく、いい表情(かお)をするようになったじゃないか。我慢できなくなったら乞い願うがいい。いつでもイカしてやるぞ?」
「だ、誰が……ん……お前なんかに……ぁぅ……媚びへつらうものですか…………んん……」
ともすれば惚けそうになる表情をまなじりを決して立て直そうとするも、シモンに身体をさわさわと愛撫されるたびにそのなまめかしい唇から熱っぽい吐息が漏れる。瞳に意志の光を点そうとするも、すぐさまその光は情欲の煉火に取って代わり、瞳がしどけなく潤み始める。シモンが小刻みに腰を震わせば、彼女の意志の如何に関わらず、あたかも操り人形のように、彼女の身体はひきつき、びく……びく……と全身が震わせてしまう。
「く……あ……は……」
シモンが腰を突き動かすたびに彼女の体はわななき、そのたおやかなカーブを描く太腿はシモンの体にむしろ押し当てるように突き出される。モデル並の長さとフォルムの美しさを誇るその脚は、思わずシモンを挟み込もうとしては、それを緩めるを繰り返すが、次第にその動きも鈍重になり、やがてシモンの体をがっちりと組み込んだままになる。だが、既にシモンの肉棒に突かれるたびに下胎の赤黒い疼きに意識をのっとられそうになっている彼女にとっては、そこまで配慮する余裕すらなくなっている。
「さて、シルビアは『キスされるのが大好きで』『唾を飲むのが大好きで』『キスされながら胸と尻をもまれるのが大好き』だったよな」
そういうとシモンはシルビアの唇にその唇を近づける。
「や、やめて。お、お願い、それは……だめ……」
彼女の懇願にも関わらず、シモンの唇は彼女の唇に押し当てられる。
その瞬間、彼女の意識が白く炸裂した。
「んん……ん……あ……く……ちゅ……ちゅる……じゅるる……んく……んふ……」
先刻までの抵抗も途端に弱々しくなり、シモンに唇を蹂躙されるがままになるシルビア。
その隙を突いて、シモンは更に腰の動きを激しくし、それにともなってシモンに唇を押し当てられている彼女の咽奥から溢れ出した快楽の嗚咽が漏れ出てくる。既に甘い喘ぎを隠すことができていない。
シモンは唇を引き剥がすと、シルビアの頬を撫でながら、
「さあ、誓え、永遠に闇に堕ちると。私の肉人形になると誓えば、お前はいくことができる。だが、言わなければ、一突きごとにどんどん快楽が倍になる、一突きで2倍、二突きで4倍……だが、絶対にいくことができない。私のモノになると心の底から誓わなければ、な……」
「ふ、ふざけ……」
ずんっ。
「んなあああああ!」
シルビアの抗弁は、シモンの一突きの前に微塵に砕かれる。
ずりゅ、ずりゅ、ずりゅ、ずりゅ……。
「うぁ……あ……く……」
シモンが腰を打ちつけるごとに、彼女の眉根がより、白い肌が跳ね、シーツに広がった金色の髪の毛が絨毯のように波打つ。
「あ……あ……んあ……」
シモンが一突き、また一突きするごとに、彼女の身体を官能の炎をが駆け巡り、その身を焼きつくさんが勢いで脳裏の理性を焦がしていくのだが、その一方で、彼女はアクメに達することができない。
そうしたことがどれほど繰り返されただろうか、ついに彼女の口から隷従の言葉が零れ落ちる。
「あ……な……なる……なります……貴方のものになります……なりますから……どうか……」
「………………」
彼女がそう述べた後も、シモンは休めることなく腰を打ち据え続ける。
「んあ……あああ……あ……あれ……」
狼狽するシルビアをよそに、シモンは皮肉めいた笑いを浮かべ、
「…………どうした?いけないのか?くくく。それはお前が口先だけで言っているからだよ。本当に心の底から叫んだら、とてもそんなゆとりある素振りではいえないだろうと思っていたが、やっぱりだな。……やれやれ、嘘つきにはおしおきが必要だ。さっきまでは2倍4倍だったが……次からは一撃ごとに快楽が……………………10倍になる!」
そう言うと、シモンは一撃、間髪置かずにさらにもう一撃、激しく彼女の子宮口めがけて怒張を打ち付けた。
「んあああああああああああああああああああああ!!!!……ああ……うぁあ……」
もはや彼女の口からは声とも嗚咽ともつかない悲鳴が、かすれかすれ聞こえるだけだ。その白い大理石の彫像のような肢体は痙攣し、口元からは唾液が垂れ落ち、目からは涙が溢れだし、体中からは汗と淫臭が発散している。
さっきまで延べ十数回の挿入に耐え忍んでいた彼女だったが、もはやたったの二突きで、彼女は許しを乞い始める。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………お、お願い……お願いします……なります、なりますから……」
「ん?何になるって?」
「あ、あなた……んん……あなたの……奴隷に……なります……から……」
「………………」
シモンは黙ったままさらに腰を一往復させる。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
絶叫とともに、彼女はえびぞりに体を反らせるようにして腰を浮かせ、シーツに爪を深々と突きたて、涙を流しながら掠れた声で、
「ほ……ほんと……ほんとなの……うそ……じゃない……ん……だから……おねがい……いか……ひぃぅ……いかせて……こ……このままじゃ……く……くるっちゃう……おかしくなる…………んぅ……」
泣きじゃくるシルビアの表情には、傲慢で冷酷で嫉妬深い、だが、間違いなく誇り高く有能であったヴァルキリーの司令の面影は、どこにも残されていなかった。
鉄壁の城砦のように堅牢だったプライドを、生まれて初めて味わう被虐と屈従の悦楽、そして官能の業火に焼き尽くされた彼女は、なりふり構わずシモンに隷従の言葉を繰り続ける。
「……おねがい……わたしを……どれいにして……なんでも……いうこと……きくから……なんでもします……わたしのぜんぶ……あなたの……ものだから……おねがい……だから……おねがい……いかせて……しんじゃう……ひぅ……このままだと……こわれる……こわれちゃう…………んぁああ……」
彼女のすがりつくような乞いに、
「……よし、そうしたら、今から私が三回お前を突き挿す。もしお前が本当に永遠に私のものになると心の底から誓うのなら、お前はイクことが許される。……しかし、もし少しでも迷いや嘘が混じれば、お前は永遠にその絶頂に達することの無い快楽の海におぼれたまま生きるんだ。わかるか?」
「あ……ぁは……おねがい……わかった……わかったから……はやく……」
「それではいくぞ。……ほら!」
ずちゅ……。
肉襞がめくれ、シモンの肉棒が彼女の奥底深くにのめりこむ。
「んあああああああああ!なる。なります、私、シモンのもの、身も心も、シモンのもの……うそじゃない……うそじゃない……」
シモンはさらに、今度は腰をひねりながら、さっきよりも更に奥底に叩き込むように突き刺す。
「ああああああああああああああああああああああ!!おねがい、おねがい、はやく、はやくして……なるの、なるの、しもんのにんぎょうに、なるの……ずっと、ずっとそうなの……しもんのものなの……」
もはやシルビアはシモンの隷属の言葉だけを吐き出す人形と化した。
「……これで最後だ」
シモンの最後の一撃は、彼女の子宮口に激しく撃ち当たる一撃となり、彼女の身体を貫き、その途端、シモンの精液がどくどくどくどく……と凄まじい勢いあふれ出す。
「ああ、あああああああああああああああああああああああああ!!!」
凄まじい絶叫とともに、彼女は身を反らせると、やがて、糸の切れた人形のよう、くたん、とその身から全ての力が抜け落ちた。その体中からは玉の様な汗が噴出し、その汗と愛液、そして精液独特の匂いが交じり合って独特の芳香が漂う。荒く息をつくたびに、ふくよかな白い乳房は大きく揺れ、それでいて全く贅肉のついていない腹部がふいごのように動く。
シモンはそんなシルビアの耳元で、最後の仕上げの言葉をささやく。
「さあ、もう頭が真っ白になってしまった。もう何も考えることができない、何も感じることができない、だけどお前の最後の心からの誓いは、私のモノになる、という言葉は、永遠にお前の心と身体を縛り付ける……その言葉を永遠に心の中で繰り返すことがお前の幸せ……その言葉のとおり行動することがお前の悦びなのだ…………そう……今はその誓いだけをただ繰り返して…………深く深く眠れ……」
「あ……わたし……わたし……シモンのモノ……私はシモンのモノ…………私の全ては……シモンノモノ……」
虚ろな瞳をしたシルビアは、そう繰り返しながら、やがてゆっくりと瞼を閉じ、安らかな微笑みを浮かべて、真っ白な闇の中にただ堕ちていった。
■(29)■
シモンはしばらくシルビアに囁きかけ続けていたが、彼女の意識が完全になくなったことを確認すると、ぬぽ……と粘液と粘液がすれる音とともに自分のイチモツを彼女の秘裂から抜き取った。
シモンはベッドの脇に座り込んで、ほっと一息をつく。
「ふぅ……なんとかなったか、な。……やれやれ、それにしても疲れた。喉がカラカラだよ、全く……」
シモンがそうひとりごちると、シモンの頬に、ぴと、っと冷たいものが押し当てられる。
「うひゃああああああああ!……って、なんだ、フィロメアか。……って、お、お前、そういつもいつもいつも音もなく後ろから現れるなよ、びびるじゃないか!お前、いつから居たんだ!!」
「ずっと」
よく冷えたミネラルウォーターのペットボトルをシモンの背後からその頬に突き出しているのは、いつものようにふわふわとしたレース地をふんだんに散らした衣服に身を包んでいるフィロメアだった。彼女は何着もこうした服装――ゴシックロリータ、というのだったろうか――を持ち合わせているのだろうか。毎回服装が違うのは感嘆すら覚える。
それはさておき、彼女はいつものようにいつものごとく無表情だが、なんとなく不機嫌そうに見えるのはシモンの気のせいだろうか。
「……いらない?」
「いや、ありがたく頂戴する」
シモンはフィロメアからペットボトルを受け取ると、カラカラになった喉を潤した。ようやく人心地つけると、ちらりとフィロメアの方を見やる。
こんな年端もいかない少女にえらく情操上悪いことを見せてしまったなあ、と思いつつ、ちょっと前にはこの少女に情操上悪いことを直接やってしまっているわけである。
なんともいえない妙な罪悪感を覚えながら、シモンは彼女から視線をはずして、
「あー、彼女を綺麗にしてやってくれ。しばらくは眠ったままだろうが、あんなに全身ベトベトじゃさすがに気持ち悪かろう」
シモンがそう言うと、
「わかった……でも、…………パパは?」
フィロメアは身体を重ねて洗脳して以来、二人っきりになるとシモンのことを『パパ』と呼ぶことがしばしばだ。普段は彼女はですます調のことが多いが、こういうときは、子供が親に甘えたような口調になる。
「だからパパじゃないっていうに……って、え?」
思わず教育的指導をするシモンを気にすることなく、フィロメアはベッドの上に座ったままのシモンの前に跪くと、そのまま精液と愛液でぬめるシモンの肉棒をはむっと咥え、小さな紅い舌でちろちろと舐め回す。
「おい、お前……」
「?」
フィロメアは「いけないの?」といわんばかりに首をかしげながら、それでも舐め回す舌の動きは止めず、シモンを上目遣いに見つめる。
シモンはフィロメアの銀色の髪を撫でながら、いさめるように、
「別に俺のほうは綺麗にしてもらわなくてもいいんだ。よしんば綺麗にするとしても、無理して口で綺麗にすることはないんだぞ?そんなうまいものでもなかろう?」
そのシモンの言葉を受けて、フィロメアはその唇から、ぬぽ……と赤黒い陰茎を引きずり出す。白い人形のような顔立ちの少女の口元の傍で、唾液でぬめるグロテスクな形状の亀頭が揺れる。
「…………フィロメア、もういらない子?」
その瞳に少し翳りを浮かべ、フィロメアはぽつりとつぶやく。
「……フィロメア……シルビア様みたいにおっぱい大きくないし、シルビア様がいるから、…………………………………………もう、フィロメア、いらない?」
小首を傾げて、上目遣いでシモンを見つめるフィロメア。
あわててシモンは、
「いや、そんなことはないぞ。大小の問題ではない。古の昔よりこのクニでは、『大は小を兼ねるというが、タキギはヨウジの代わりにならぬ』という箴言があるくらいだからな」
「…………………………………………………………………フィロメア、幼児?」
「あああ、それは微妙にイントネーションが違う……じゃなくてとにかく、フィロメアはずっとここに居てもいいんだから、余計なことは気にするな。それ以上言うと怒るぞ」
シモンの言葉に、フィロメアはこくりと頷くと、シモンの陰茎を再び咥える。
心なしか、その舌の動きがさっきよりもゆっくりと落ち着いたものになり、慈しむような動きになった気がするが、気のせいだろうか。
無心に飴をしゃぶる幼子のような表情でシモンの怒張を頬張るフィロメアを見下ろしつつ、その銀色の髪を撫でながら、シモンは彼女の気の済むまで舐めさせることにした。
……。
…………。
………………。
「……さて、どうしてくれようか」
シモンはベッドの上で深い眠りについたシルビア――フィロメアにシャワーを浴びさせて清潔になったその体は、検査用の白い薄手のワンピースで包まれている――を見据えながら、ひとりごちた。
膝の上では、フィロメアが体を猫のように丸くして眠っている。きっとシモンがシルビアと交わっているところを影でずっと見ていたのだろう。彼女が今回の殊勲賞なのだから、後でご褒美を上げる必要があるだろう。
それはともかく、まずはシルビアの後処理だ。
もう彼女は自分の術中だ。普段なら、洗脳薬で仕上げの洗脳をして終わりにするところだが……。
シモンは自分の膝の上で眠る少女の頬を撫でる。くすぐったそうに、幸せそうな表情をしたまま、少女は鼻に掛かった声を少し出して、寝返りを打った。
シルビアがフィロメアにしてきた仕打ちを思えば、そして、普段は小うるさいが、いざ「洗脳モード」になったときは自分に愚直にまで忠実に従ってくれるルピアとサファイアを一時とはいえ奪われたことを思えば、簡単に楽にさせてはつまらない気もする。
「……さすがに、ちょっとおしおきが必要だよな」
シモンは多少頭をひねり、彼女に相応しい手法を用いることにした。
■(30)■
「……なるほど、それはすばらしいシステムだ」
「ええ。このシステムは深層意識に働きかけ、神経細胞の可塑性のレベルにまで作用することで、本人の深層意識から書き換えることができます。しかもその効果はほぼ半永久的といっていいでしょう」
――ここは、ヴァルキリーの総司令部。
私は自分の研究の成果を発表している。聴衆はたった一人。ヴァルキリーのスポンサー、というよりも欧州統括本部の幹部だ。
警察、軍隊……外見がいかにいかつい固そうな機関であったとしても、所詮は公の組織ヒエラルキーの中にぶらさがっているに過ぎない。現場での活動のほか、予算獲得、人員配備……。そういったバックオフィスの泥作業なくしては、日々の活動にすら支障を来たす事になる。
私以外のヴァルキリーの殆どは、二言目には「使命」やら「大義」やらを口にするが、こうした泥作業には疎い。いや、疎いだけならともかく、むしろ『汚らしい作業』として軽視する傾向があるから困ったものだ。
世界の敵はネメシスだけではない。むしろニンゲン同士のいさかい、病魔、貧困……そういった人災・天災による死者の方がはるかに多いのだ。こうしたさまざまな『外敵』と戦う有象無象の『ジンルイの味方』同士が、人員・予算といった有限のパイを、『外敵』と戦う前に取り合わなくてはならないのだ。
セイギのミカタの華々しい活躍の裏にはこんな皮肉な作業がある、ということを、いとおしいまでに純朴で愚鈍な彼女たちが少しでも理解してくれれば、私の仕事ももう少し楽になるのだが……まあ、だからこそ、私の価値が余人を持って代えがたいものになっているとも言える。
少し愚痴っぽくなってしまったが、この活動もその一環。
今まで、自分が研究し、練磨し、蓄積してきた「洗脳技術」。
この一端をちらつかせることで、これまでの数倍の予算を一気に獲得し、『中央』への影響力を増大させて、足がかりをつかむ。
それが今回のプレゼンの要諦だ。
ネクタイにシャツ、そしてスラックス、という実に無個性な着こなしの目の前の男は、脚を組みなおして、
「なるほど。確かに説明を聞いている限りは大変すばらしいシステムだ。このシステムがあればネメシスとの戦いを厭わないすばらしい戦士を何人も短時間で養成することができるだろう。何せヴァルキリーの訓練は苛烈を極めるからね……適性があったとしても強い意志を持たなければとてももたない。それを意志をむしろ完全にこそげ落とすことで養成するとは……逆転の発想だね」
「恐れ入ります」
その発想の成果として見せたのがフィロメアだ。彼女は正にこの私が作り上げた「芸術作品」といってよい。彼女の身のこなし、知能、そして魔力は、この男を驚嘆させ、最初は気乗り薄だったこの男をして、すぐさま私との「密約」を交渉に乗り出させてきたくらいだ。
おそらくこの男では、とてもフィロメアのレベルのヴァルキリーは「製造」できないだろうが、そこまで親切に教えてやることもあるまい。もっとも、この男は「工業用品」を求めているようだから、その程度はこの男の器量でもこなせるだろう。
「しかも、このシステムを使って養成すれば、決して裏切ることがない、と。いや、実際、ヴァルキリーの養成コストもさることながら、その後の監視コスト、これが馬鹿にならない。所詮ネメシスとの戦いなど一過性のものに過ぎないはずだが、その後の彼女たちが余計なことをしでかさないようにチェックしなくてはならないからね。一種の不採算公共事業に近いわけだ」
「そのとおりです。このシステムでしっかり心の奥底まで組織への忠誠心を植えつけておけば、決して余計な行動をすることも、その能力を悪用することもありえません」
――思ったより話の理解が早い男だ。普段、統括本部の背広組など、100を教えてやってもせいぜい10理解するかどうかだが、この男は常に先回りして理解していく。それは、さすがにこの危ない橋を渡る「商談」を一人で専決できるだけの権限を持っているから、ということになるのだろうか。
……あれ?
この男、どこかで会ったことが……。
私の頭の中でふと沸き立った疑問は、すぐさまその男の言葉にかき消される。
「それにしても、君ほどの優秀な頭脳と美貌を持っている人間は、そうなかなかいまい。ヴァルキリーにも美しい女性は数多くいるが、その中でも抜きん出ている。……それに、ヴァルキリーの女性は職務精神が高潔であるせいか、こうしたどろどろした話は鼻から受け付けてもらえない場合が多くてね。こちらもいつも苦労しているが……君のような人がいてくれてありがたいよ」
「恐れ入ります」
普段なら背広組のおべんちゃらなど適当に受け流すところだが、この男に言われると、本当に誇らしい気分になってくる。おそらく、自分の能力を正当に理解してくれていると感じることができるからだろう。
そこまで男はにこやかに言った後、ふと眉根をひそめる。
「だが……」
「……何か?」
「いや、君の話はすばらしいのだが……はたして、『本当に』そんな効果があるのかな?という疑問が、どうしても拭えない」
「そんな……実験データもお見せしましたし、フィロメアという『実物』もご覧にいれましたが」
思わず私の声が高くなる。
男は両手を挙げて「まあおさえておさえて」といわんばかりのジェスチャーをし、
「いや、わかる。わかるよ。ただね、この話は私にとっても、いわば人生の転機であるし……君にとっても同じだろう?話は慎重に運びたい。後で『いや、実はめったに成功しません。副作用もあります』じゃ済まないわけだ」
「だから……この薬剤による洗脳は副作用はなく、成功率も、きちんと手順を踏めば100%に限りなく近い、と……」
「でも、そんなに人間に試したことはなかろう?いくら君がアンダーグラウンドと多少通じているとはいえ、さすがに身寄りの居ない『ニンゲン』をそこまで調達できるツテがあるわけでもあるまい」
私は沈黙した。そう。どうしても人間を対象とした実験は隠密裏に開発を行っている今の自分の立場からすれば限られてしまう。サンプルが少ない、といわれればぐうの音もでない。
男は口を少し曲げて、私に正対する。
「だからね、聡明な、意志のしっかりとした人間にも効果があるかどうか、試してもらいたいんだ」
「……それは、私の体で証明しろ、とでも?」
私は冗談で言ったのだが、その男にとっては冗談ではなかったようだ。
「察しが良くて助かるよ。君ほどの人格者にも効果があるのであれば、それは最大のプレゼンテーションだ。1も2も無く、この洗脳システムを信用しよう」
「……」
さすがに私は躊躇する。
もちろん、このシステムは私にも効果がある。私とて、このシステムにかかってしまえば、意志は火にあぶったチーズのように溶け、どろどろに変成されてしまうだろう。
だが、ここで私が首を横に振れば、今までの苦労は全て水泡に帰す。
「私のことが信用できないかね?」
その男が私の瞳をじっと見つめる。
意外に澄んだその瞳が美しく、私は一瞬見とれる……いけないいけない。何を馬鹿なことを考えているんだか。
……そう、言われてみれば、今までいろいろな男を見てきたが、この男は極めて信用に足る有能な男だ。老獪さと堅実さ、清濁併せ呑む度量、そして自分の力量と知識を評価するだけの理解力……これらを兼ね備え男はそうはいない。正直、今まであってきた下種な男どもとは一線を画す。
それに……私はちらと横を見る。そこにはフィロメアが先ほどから私の傍に控え、直立不動のまま待機している。
この部屋には目の前の男と、フィロメアしかいない。
もし、万一この男がふしだらなことをしようとすれば、彼女が彼を攻撃するだろう。私の危機には万難を廃して私を助けるよう、彼女にはプログラムをしてあることだし……。
私は心を決めた。
「わかりました。どうぞ私を実験台としてご活用ください。それで全てが証明されるでしょう」
「さすが、司令殿。果敢な決断と状況判断にかけては、おそらく誰よりもすぐれていることだろう……。では、この機械の能力を実証してもらおうか……君の身体でね」
「……はい……」
私はシステムの中央のリクライニングシートに座り、シートベルトを締める。あたかも宇宙船のコックピットさながらの風体のちょっとした規模の機材だ。ちょうど私が座った頭の高さには、高性能のヘッドホン、そして頭全体にかぶさるような形状の半透明のバイザーが備え付けられている。ここから視聴覚を通じたさまざまなサブリミナルメッセージ、あるいは明示が流れ込む仕掛けになっている。
「このバイザーとヘッドホンを取り付け、あとは点滴を腕に刺し、このスイッチを入れて点滴を通じて洗脳薬が体にしみこんだ段階で、お好きな暗示を与えていただければ。……どのような暗示をなさいますか?」
私がそういうと、男は、しばらく考える素振りをした後、
「いろいろな洗脳パターンがあるだろうが、君にとって一番ありえない洗脳を施してみよう。他の安易な暗示ではダメだ。君が絶対にかからなような暗示でなければ意味がない……そう思わないかね?」
「はい、おっしゃるとおりです。……でも、それは?」
「そうだな。…………例えば、君が、あの悪の『ネメシス』の下級兵士の雌奴隷となる、という暗示はどうかね?」
「め、めすどれい……」
余りにも聞きなれない言葉に、何かの冗談かと鸚鵡返しに問い返してしまうが、男はいたってまじめに重々しく頷くと、
「そうだ。君はネメシスと相対しているわけだが、そのネメシスの、しかも下級兵士の男の、いうなればペットになるわけだ。彼に隷属し、彼を悦ばせることを自分の悦びとし、その男の命令に従うことに快楽を感じる肉人形とでもいうべき存在に成り果てる、という暗示だ。とても君には耐え難かろう」
「それは当然ですが……」
もちろん、そんなことは冗談ではない。ネメシスでなくても、たとえニンゲンであっても、いや、同性であっても願い下げだ。私は支配する側の人間だ。逆ではない。
男は私の表情に拒絶の色が浮かんだのを見て取ったのか、肩をすくめ、
「それとも、さすがの君のシステムでも、こんな暗示は君には利かないと?なるほど、全てを穿つ矛と全てを護る盾との戦いは、盾の勝利で終わる、というわけか。まあそれならそれで……」
男は席を立って、踵をかえし、ドアのほうに歩きかける。
「ま、待ってください!」
私の洗脳技術は完璧だ。たとえ、それが誰であろうとも、絶対的な効果を生む。
それを否定されては、私の野望も、露と消えるだろう。
この機会をセットするまで、どれほどの努力を費やしたことか。それをむざむざ喪ってなるものか……。
私はその男の前に回りこみ、訴える。
「もちろん。可能です。そちらのマイクシステムルームで、貴方が暗示を語りかければ、その内容をコンピューターが自動的に分析してサブリミナル音楽とビジュアルパターンが生成されます。私が特別に調合した洗脳薬を点滴で投与された状態で、バイザーとヘッドホン越しに長時間晒されれば、いかに屈強な意志を持つ人間でも、その心の底を塗り替えるように洗脳することができます」
「それがいかなる暗示だとしても?」
「はい、もちろん」
「では、セットしてもらおうか」
男の声が多少圧力を増した気もするが、男が部屋から退出しなかったことにほっとした私は、そのことがあまり気にならなかった。
私はシステムの準備を始める。まずはヘッドホンを取り付ける。そこからは単調な音楽が聞こえてくる。単調ではあるが飽きることのない、ヒーリング系の音楽だ。だが、その音楽の高周波成分には、人間の可聴域を超える部分で、メッセージが流れている。
さらに私はバイザーをつける。全視界をすっぽり覆うそのバイザーの画面は、穏やかな光に包まれている。これもサブリミナルメッセージを与えるものだ。
私は腕にアルコールを塗布し、そこに点滴針をさす。今まで他人には何回もやった慣れた動作だ。その点滴管の先にある袋には、洗脳薬とリンゲル液の混交物がある。
低濃度でも一定度合い血管内に含まれれば効果を発揮するものだが、今回は8時間の洗脳プロセスを通じてこの液体が継続的に私に流し込まれる。
この洗脳薬の血液濃度が一定値を超えた状態になると、大脳皮質中の自我を司る部分、そして生理的な好悪をつかさどる偏桃体が部分的に麻痺をする。すると、その間に命令を与えられると、仮にどんな命令をされたとしても、なんら疑問を持つことも無く人形のように唯々諾々としたがってしまう。
さらに、この洗脳薬には、神経細胞の可塑性を一時的に向上させる薬物と、人間の情報処理能力を数十倍に高める一種の麻薬が含まれている。麻薬といってもいわゆるアップ系のもので、しかも副作用はない。
……それらを体内に服用した状態で、数千倍のメッセージ量を持つサブリミナルメッセージを視聴覚を通じて叩き込む……。
私の洗脳技術の結晶とも言うべき装置――そこに、今私が「被験者」として横たわっている。
……まさにその点滴のスイッチを押しかけたその時、一瞬躊躇する。
……あれ……。
……これを……押したら……私は……。
一瞬激しく沸き立つ疑問。強烈な不安。
しかし、それが何であるのか、私にはその正体がわからない。
その時、男は、優しく諭すように……そして追い込むように、私に言葉を投げかける。
「シルビア君。何を躊躇しているのかね。君の能力の、君の技術のすばらしさを証明する機会をむざむざ逃すのかね?」
そうだ、何をためらうことがあろう。
私は、指に力を込め、
スイッチを、押した――――。
こぽ……。
点滴袋の中から液体が輸管を通じて流れ、点滴針を通じて私の身体に入ってくると、すぐさま、私の意識は、薄闇の中に追い込まれていく。
しかし、それは忌避すべきものではない。私の新しい成功への旅立ちなのだ。
わたしは、そこはかとない満足のうちに、夜の帳よりも深い闇の中に、滑り込むように堕ちていった…………。
……。
…………。
………………。
「……どうかね、フィロメア」
「視聴覚と触覚刺激。両方で調整中、です」
「どれどれ」
シモンが覗くと、そこには椅子にくくりつけられたスーツ姿のシルビアの姿があった。
目はバイザーに囲まれ、その表情はわかりづらいが、口元は緩み、唾液が垂れている。スーツとブラウスの胸元ははだけさせられ、その白く豊かな胸は剥き出しになり、乳首の先にはバイブレーターが医療用テープで貼り付けられている。
ヴァギナには極太のバイブレータが突き刺され、クリトリスにもローターが貼り付けられている。
他にも、身体のいたるところに電極が押し当てられている。これらがモニター用のものなのか、それとも彼女に刺激を与えるためのものなのかは、シモンにはわからない。
時折、そのローターやバイブレーターが震えては、そのたびに彼女は「あ……あぉ……うぁ……」と、くぐもったうめき声を上げる。
このシステムは、実際にシルビアがフィロメアを洗脳するのに用いていたシステムだ。
彼女自身を、彼女が作り上げた洗脳システムで洗脳する、これが彼女にふさわしい懲罰になるだろう、と思ったシモンは、洗脳状態のシルビアに彼女の研究の成果を全て発揮できるシステムをセッティングさせた。
後は、「予算獲得のためには自分が被験者にならなくてはならない」というシナリオに従って、茶番劇を打ち、彼女自身にスイッチを押させる。
自分が被験者になって成功させなくてはいけない、と思い込んだ彼女は、「ネメシスの一兵士の奴隷になる」という普段の彼女には受け入れがたい暗示であっても、嬉々として受け入れることだろう。ましてや彼女の特注の薬とシステムを使っているのだ。おそらく、いかなる方法を用いても、この洗脳を解くことはできないだろう。
そんなことを考えているシモンの表情を見て取ってか、フィロメアは、システムの仕組みを淡々と説明する。
「……視聴覚のメッセージに対応してバイブレータが反応します。あと、耳からのメッセージの問いかけにすばやく反応して正しく反応した場合も同じです」
「なるほど。仕掛けとしては強化学習の応用だな。さて、シルビア……聞こえるか?」
シモンの問いに、シルビアは緩慢に反応する。これは薬物の効果だろう。
「……はい……」
「お前は誰だ?」
しばらくの沈黙の後、シルビアは虚ろな瞳をしたまま、茫洋たる口調で答える。
「私は……シモン様の……肉人形です……シモン様に全てを捧げるために……生まれてきました……んあぁ……」
最後のうめきは、彼女に与えられた「ご褒美」の刺激に反応した言葉だ。
すでにシステム開始から7時間半が経過した。彼女の頭にはサブリミナルメッセージが、何万回と繰り返されている。彼女の鋭敏な知覚状態で換算すれば、それは一生分以上、耳元で、そして視覚的に暗示を与えられたことと同じ効果を持つ。
しかも、さらに触覚を通じた愛撫。自分が隷従を宣言することによるパブロフ効果、オペラント条件付け、連想記憶……心理学の技術の粋を凝らした暗示が、彼女の意識を蝕み、ついばみ、彼女の人格を変容させている。
シモンは、最後の仕上げにかかる。今まではフィロメアにまかせていたが、最後の仕上げは自分でやらなくてはいけない。何せ、自分に隷属する『ペット』の調教の仕上げなのだから。
「では、まずは私のモノの形と味を覚えさせるとするか」
シモンはそう言うと、ズボンを脱いで、シートに身を沈めた彼女にまたがるようにする。自然、シモンのイチモツはシルビアの眼前にぶらさがる。
シモンはシルビアのバイザーとヘッドホンをはずすと、
「さあ、シルビア、大好きなお○んちんを舐めさせてあげよう」
と言うと、彼女の前に腰を突き出す。
途端、シルビアの虚ろな瞳の中に悦びの光が宿る。
「あ……お○んちん……」
というや否や、彼女は唇を突き出して、シモンのものをはむ……と咥える。
「ん……ん……んん……」
サブリミナルメッセージで性的な技術をも教え込んだせいだろうか、はたまた、先ほどの実践経験の効果が早くも現れているのか、彼女の舌の動きはさきほどローズになりきっていたときよりもはるかに上達しており、シモンの陰茎はみるみるうちに膨れ上がる。
くちゅ……くちゅ……くちゅ……。
「うお……これは……」
シモンも負けずと彼女の顔を手で掴んで、その口腔の感触を愉しむかのように、怒張を捻じ込んでいく。
そんなシモンの動きにも、シルビアは苦悶の表情を浮かべることなく、その肉棒に口腔を犯される悦びに身をゆだね、無心にしゃぶっている。シルビアの唾液とシモンの先走り液と交じり合ってできた熱いどろどろのスープの中で、シモンの肉棒が踊り、そのたびに彼女の口の中でじゅぷ……じゅぷ……と淫猥な音が立つ。
シモンはそんな彼女の様子を見ながら、暗示を入れ込んでいく。
「シルビア、よく覚えるんだ。これがお前のご主人様の肉棒の形だ。お前はこの肉棒が大好物だ。この臭い、感触、カウパーの味……みんな憶えるんだぞ?」
「ん……んん……」
朦朧とした意識の中、シルビアは頷いているようではあるが、なかなか首が自由に動かず、かろうじてくぐもった声を出すだけだ。そして彼女が頷くと、「御褒美」なのか、乳首のローターと陰裂に差し込まれたバイブも反応して振動する。
「んんんん!!!」
彼女はびくんと体を跳ねさせた。軽くイってしまったのだろう、口元から唾液が垂れ落ちるが、それでも口腔の奉仕は止めようとしない。
やがて、シモンの腰の動きが激しくなる。
「んんん……ん……」
「さあ、シルビア、今から出てくる私の精液の味をよーく、よーく憶えるんだぞ?お前の大好物の味だ、お前のご主人様の味だ。しっかりその魂に刻み付けろ……」
そういうと、シモンは激しくえぐるように腰を動かし……精を放つ。
どく、どくどくどく……どく……。
すさまじい射精音とともに、彼女の喉奥にその白濁液が叩き付けられる。
「んんん……んあ……あむ……ごく……ごく……ん……」
シルビアは、ねっとりとその白いねばつく液を舌先でかき混ぜ、味わいながら、ゆっくりと飲み干していく。
すっかりシモンの精液を飲み干してしまったところを見計らって、シモンはシルビアの耳元で囁く。
「シルビア。私の肉棒の味、そして私の精液の味はちゃんと憶えたか?」
「はい……憶えました……」
洗脳薬の効果で、被暗示状態になっているだけでなく、知覚能力まで通常より増大させられている状態でこれほど濃厚な精液を味わったのだ。彼女の言葉は口先だけのものではなく、確実に彼女の神経細胞のレベルにまで刻み込まれたことだろう。
「よし。お前が気持ちよく感じられるのは私の肉棒、そして私の精液だけだ。他の男のではダメ、私のだけだからな、よくその味を憶えておけ……いい子にしていれば、毎日味あわせてやろう……」
「あ……はい……毎日……いいこにします……」
これからの精液に塗れる日々に思いを馳せたのか、虚ろな表情のまま幸せそうに答えるシルビアに、シモンは、
「よろしい。では、改めてお前の真の使命を確認しよう……お前は私に犯されるために生まれてきた肉人形だ。お前が今まで鍛え上げてきた肉体、その精神、知性、美貌……それは全て私に捧げるための、私にただ犯され、奉仕し、奪われ、捧げるために今までのお前の人生はあったのだ……そしてこれからもそうだ……。お前は私の悦びこそ自分の悦びと感じるようになる。ヴァルキリーの力を持つ女性は、全てネメシスのこの男であるシモンにその身を捧げる、そういう星の定めにあるのだよ……既にルピアはその使命に再び目覚めた……お前の配下であったフィロメアも、真実に目覚めた……次はお前の番だ……わかるな?シルビア」
「はい……」
シルビアは緩慢にうなずく。その瞳は霞がかかり、何も見つめていない。ただ口元は緩み、どこかしら幸せそうな表情で微笑んだ。
■(31)■
シモンはそれからしばらく直接暗示を入れ込んだ後、細かな調整は全てフィロメアに一任し、別の部屋でくつろいでいた。
どれほどの時間がたっただろうか、ドアがノックされる。
「入れ」
「……失礼します」
その声とともに現れたのは、フィロメアだった。
フィロメアは、先ほどから着替えたのか、白いレース地をベースにした服装に変わっている。白いほっそりとした肢体に羽衣のようにまとわりつく上着と、そして膝上までの短めのレーススカートにニーソックスといういでたちだ。肘から先は薄手のシルクの手袋で包まれている。
「なんだ、着替えたのか。白もなかなか似合うな。フィロメア」
フィロメアは、「うん」と喜びの表現とも照れ隠しともつかない曖昧な頷きをすると、
「あのね、『出来上がったから』、連れてきたの」
「ほう」
フィロメアはドアの外に向かって、「入って」と呼びかける。
すると、フィロメアの背後から、シルビアが現れた。
先刻までの鋭角的なフォルムのスーツ姿とはうって変わって、シルビアは、まるでフィロメアと対になるような黒いレース地の衣装を身にまとっている。胸は開いて白い肌が見え、その豊満なふくらみの頂点を包み隠すように、黒いレース地がまとわりついてる。しかし、薄いため、乳首は透けて見えており、また、手でひっぱれば簡単にその双胸はまろびててしまうだろう。
その下に目をやれば、やはりレース地を幾重にも重ねたふわふわのスカートから白い太ももが伸び、その流れるような脚をガーターベルトで吊り上げられた網タイツが包んでいる。スカートは膝上数十センチという代物で、さすがに脚の長いシルビアとはいえ、デルタゾーンのショーツがちらちらと見えている。
よく手入れのされた、つやややかで流れるような金色の髪には、レースの髪飾りが添えられている。小さなアクセサリーだが、見る者が見れば、それが大変高価なものだと気づくだろう。さまざまな技法で織り込まれた髪飾りが、彼女の髪の美しさをさらに映えたたせている。
首には赤い革の首輪。5センチほどの短い鎖がついており、その鎖は彼女のたわわに実った胸元に垂れ下がっている。物理的に彼女を縛り付ける用にはとても足りる長さではないが、かえってその短さが、象徴としての呪術を以って彼女を束縛しているかのように見える。
肘から先は、これまたフィロメアと対になるかのように、薄手の黒いシルク地の手袋で包まれ、その表面はシルク独特のツヤと光沢で彩られている。
高級なアンティークドールのような、それも、夏季のバカンスの避暑地で戯れている有閑階級の幼女が着るような衣装を、成熟した女性が着用している。そのアンバランスさが、えもいわれぬ隠微さと倒錯を醸し出している。
そしてなによりも、その瞳の色は虚ろに、その黒いレース地の色よりも深い闇に沈んでいる。藍色の瞳は、幾億年もの昔から光を受けることなくそこにたゆたい続ける深海の底の海水のように、静謐な深い翳りを宿している。
シモンは椅子から立ち上がると、生まれ変わった彼女に向かって最初の言葉を告げる。
「おいで」
シモンの言葉に、シルビアはゆっくりと歩を進め、やがてシモンの前に立ち止まる。
シモンは彼女よりわずかに背が高い、が、ほとんどその視線の高さは同じだ。卵型の彼女の均整の取れた顔が目の前に来て、シモンの顔を虚ろな瞳で映し出している。
「……お前は誰だ?」
シモンの問いに、虚ろな瞳のまま、彼女は答える。
「私は……シルビアです」
「シルビア。お前は私の何だ?」
「はい……私は…………シモン様の人形です……」
「なるほど。さて、ただの人形なのかな?」
「いえ……ただの人形ではありません……私はシモン様にいたぶられることに感じ入ってしまう、淫らで卑しい人形です…………」
「……では、私の卑しい人形ということは……私がお前の体をどのようにしようと、構わないわけだな?」
シモンはそういうと彼女の胸をむんず、と掴む。レース地の向こうの豊満な白い乳房が、大きく歪むが、彼女はそれに苦悶の表情すら見せず、いや、むしろ、恍惚の表情を浮かべて、
「……はい。私の心も体も、シモン様のものです。どうぞ、私をお好きなときにお好きなように、私を、弄んでください……」
そう答えながら、彼女は既に顔をほんのり紅潮させている。
シモンの質問に答えるだけでも、彼の命令に従うことによって快楽が得られるよう、しかもそれが彼女の羞恥心をそそり、被虐的なものであればあるほど、大きな快楽が得られるよう条件付けがされている彼女は、そんな些細なことですら快感を覚えているのだ。
「よろしい。では、私のズボンを脱がせて私の脚を舐めたまえ。……フィロメアは、もう一つの脚を」
「……はい……」「……喜んで……」
黒衣の金髪の美女と、白衣の銀髪の美少女は、そう答えると、シモンの足元に跪いてシモンのズボンと靴を脱がせ、その足指をちゅぷ……と口唇と舌で愛撫し始める。
足指を丁寧に、汚れを拭い去るように舐め取った後、二人はそのままシモンの足の甲、くるぶし、足首、そして脛、膝へとその舌を動かしてく。
なめくじの跡のように光る軌跡をシモンの毛脛に残しながら、二人の白い顔は、やがてシモンの太腿からその股に向かう。二人の両腕がのび、白魚のような指がシモンの下着――いわゆるトランクス型のものだが――を丁寧に下ろすと、二人の間に既に準備万端となった陰茎が姿を現す。
「あ……」
思わず声を上げたシルビアはその細い指でシモンの陰茎をそっと包み込み、亀頭に整った彼女の顔を寄せる。先ほどの激しい交わりの残滓ともいうべき精液やら愛液やら唾液やらは、風呂で既に洗い落とされているのだが、二人の夢中で奉仕する姿を見て、節操なくもシモンの鈴口からは先走りの汁が染み出しており、それが石鹸の匂いと相まって、トランクスを下ろした途端にシルビアの鼻をくすぐる。
まるでこの世のものとは思えない妙なるかぐわしい芳香を放つ華を目の当たりにしているかのように、彼女は陶然とした表情を浮かべている。その一方で、その白魚のような白い指は、希少な華の茎を握り締める手弱女のようにそっと赤黒い熱を孕んだ茎に添えられている。
こいねがうような表情を浮かべ、シルビアは上目遣いにシモンを見つめ、
「どうか……この卑しい女に……御奉仕を命じていただけませんでしょうか……」
「よろしい、舐めたまえ」
「はい、ありがとうございます……」
彼女はうっとりとした表情をうかべると、そのままシモンの亀頭に吸いつく。フィロメアもそれに負けまいとするかのように、シモンの陰嚢に舌を伸ばし、そのしわの一つ一つを舐め広げるように舌先を器用に動かしていく。
シモンはそんな二人の姿を見下ろしながら、これから二人に与えるに相応しい「報酬」と、残るヴァルキリー――ローズと、もう一人のヴァルキリー――ヒルダの処遇について思いを馳せていた。
続く
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