エピローグ 〜ルピア(5)



 パチンコという遊びがある。
 このチキュウの、小さな島国でやたら流行っている大人の遊び、らしい。
 銀色の玉っころを打ち出しては、釘やら穴やら風車やらが仕掛けてある板に延々と流し込む、そういう遊びだ。
 大の大人が、御天道様がテカテカ照ってる真昼間から有毒ガスの煙にまみれて夢中になっているところを見ると、それなりに楽しいものではあるようだ。
 
 銀玉が最初の釘に当たると、あっちこっちへと跳ね返り、ある時は、一番下にある外れ穴に吸い込まれる。そして、ある時は、全く同じように最初の釘に当たったはずなのに、なぜか大当たりの穴に吸い込まれる・・・。
 銀玉を撃ったニンゲンにも、銀玉の軌道を変えた釘にも、その銀玉がどの穴に吸い込まれるのかは全く想像がつかない。もちろん銀玉自身にも。


今回の自分も、そのパチンコに似ていた気がする。





 第一、はじめからボタンがどこか掛け違っていた。






 気がついたときはどこかの山の林の中だった。
 大気との摩擦熱がまだ冷めきらない脱出カーゴから外に出たとき、あたりは真っ暗だった。
 
 機器の様子を見る限り、自分たちの着陸がチキュウ人に捕捉された様子は無い。
 
 それほどの広さが無いカーゴの中には、サファイアとベリルがコールドスリープの装置に入って眠っている。本格的な冬眠状態ではないが、自分が起こさなければ、このまま昏々と眠り続けているであろう。

 自分の額を触る。
 ダリアからもらった一撃の痕は未だにタンコブになっている。
 ・・・まだあれからそれほど日が経っていない、ということだろう。

 観測機器のログを読む。彼女の乗った旗艦から発せられた電磁的な痕跡は、既に彼女が大きな位相転移を済ませていたことを物語っていた。
 観測データを使って、彼女の航跡を推測し、彼女が還ってこられる可能性を簡易シミュレータで探ってみる。だが、ゼロばかり並ぶその結果を何十回も見ていると流石に気分が滅入ってきたので、ほどなく計算は中止した。
 
 それからほぼ半日、そのカーゴの中で眠る二人を前にしてぼうっと座り込んでいたが、やがて腹の虫が騒ぎ出した。
 そう、どんなときでも腹は減るのだ。
 カーゴには食料のストックがほとんどなかった。
 餓死、という選択肢もあっただろう。しかし、餓死というのは意外に苦しい死に方である。


 餓死を避ける、という選択をする以上は、面倒だが食料の調達に向かわなくてはならなかった。



■■■■■■■■■■■■■




 いつのまにか外は昼になっていた。

 チキュウ人に変装−−前に使った学生服−−に着替えて山を降りる。しばらく歩くと舗装された道に出る。随分と深い山に着陸したらしい。
 そこに偶々止まっていたトラックの荷台にこっそりと乗り込むと、そのトラックはやがて荒っぽい運転で走り出した。

 このトラックに乗って街に出れば、何か食料は手に入るだろう。

 それほど根拠の無い希望は、数十分後、大きな衝撃と共に打ち砕かれる。

 乗っていたトラックが突然ハンドルを切り、逆車線に突っ込んで急ブレーキをかける。 その後、衝撃音。
 
 道路に投げ出されたシモンは、辛うじて擦り傷程度で済んだ。
 しかし、そのトラックは慌てたようにシモンを置いて走り去った。

 ・・・おいおい、なんて運転してるんだよ・・・。

 エンジン音を残して走り去るトラックに毒ついたその時、立ち上がったシモンの目に、飛び込んできたのは、崖にぶつかってめちゃめちゃに壊れた車の残骸だった。

 どうやら、さっきのトラックと交錯した時に、ハンドルを切り損ねて山肌の崖にぶつかったらしい。

 車の中を見る。

 運転手は即死だった。

 やれ不運なことだ、とシモンがそこから立ち去ろうとしたとき、わずかな女のうめき声が耳に入った。
 
 後部座席、めちゃめちゃに潰された車体の間で、血を流している女性がいた。

 まだ、生きている。




 今思えば放っておけば良かったのである。
 あるいは、この国のレスキュー隊だかなんだか−−キュウキュウシャとかいうんだったか−−でも呼んで、自分は立ち去ればよかったのだ。

 しかし、その流れる血の量、腹に刺さった鉄塊を見るに、どう考えてもあと数分で処置しなければ死ぬのは目に見えていた。
 
 シモンはその女の顔を見る。

 若いわけでもないが、それほど年もいっていない。そうした大人の女性だ。幸い顔や頭に傷は負っていない。苦悶に歪めてはいるが、そうでなければおそらくは美しい部類に入るだろう。

 
 シモンはポケットをまさぐる。
 緊急処置用のキットが入っている。



 まぁ、いいか。



 シモンは彼女を助けることにした。




 何とか止血し、人造血液を輸血し、薬剤を注入して、彼女は危篤状態は脱した。
 しかし、問題が一つあった。ネメシス用の緊急処置剤−−微小な生体、ある種の細菌を利用したものだが−−が、ニンゲンには強すぎた、ということだ。
 シモンが処置した数分後、彼女は発作を起こした。
 本来なら薬剤で中和するところだが、その中和用の薬剤は手持ちのキットには入っていなかった。
 やむを得ず、自分の唾液−−ネメシス人の体液はその薬剤への抗体がそもそも入っているわけだが−−を彼女に飲ませると、その発作は止まった。

 このまま、彼女をキュウキュウシャを呼んでニンゲンの病院に持っていっても発作が起こればすぐに死ぬだろう。
 かといって、自分の体液のサンプルを提供するために、お尋ね者の自分がアホ面下げて表に出て行くわけにもいかない。
 となれば、彼女の体内に入った細菌が全て分解されるまで、シモンが毎日体液を飲ませなくてはならないだろう。

 若干迷ったが、ぐるる、と鳴った腹が、シモンの決断を後押しした。
 ちょうど良い。この女の家に転がり込んで、飯を食わせてもらおう。
 シモンとしても、もう少し時間が欲しかった。考えをまとめる時間が。
 彼女の命を助けたんだ。その見返りに飯をおごってもらうくらいは悪くないだろう。

 ただ、自分がネメシスだいうことを明かしたら全てがパーになる。
 となると、洗脳して、自分が彼女の家にいることを不自然と思わせないくらいのことはしておかねばならないだろう・・・。

 シモンは彼女の財布を探る。
 彼女の運転免許証には
「藤谷 悠子」
 と名前が書かれ、住所も書いてあった。

 

 彼女の家に、やっとのことでたどり着いたときは、もう夕方近かった。
 服を着替えさせ、自分の職場に連絡をさせる。どうやら出先でタクシーを使っているときに事故にあったらしい。今日は早退ということにさせる。もちろん、洗脳薬を使って彼女を洗脳して、そうするように指示したわけだ。

 わたわたと作業をして、ようやく一段落する。彼女にコーヒーの支度をさせ、シモンは一服する。
 
 藤谷悠子。まだ30代前半だ。夫と娘一人の三人家族だが、夫は単身赴任中、とのことだった。
 ということは娘を洗脳すれば、この家の乗っ取りは完了する。それほど難しい話ではないだろう。
 シモンは、自分に問われるままに全てを話す悠子の顔を改めて見やった。
 白くなめらかな肌は年齢にしては若く、まだ20代といっても通じるだろう。エプロンは豊満な乳房に押し上げられるように膨らんでいる。さっき応急処置をした時に観察したが、非常に豊かな胸、そして美しい肌だった。形の良い唇は少しだけ開いている。そして瞳は光り無く虚ろにシモンの姿を映し出している。洗脳されているニンゲン特有の表情だった。

 ・・・こんなときでも勃起するんだなあ・・・。

 シモンは自分の節操の無い生理にやや呆れた。

 まあ、据え膳喰わぬはなんとやら、と、この国の古い諺にはあるらしい。
 こうなったら彼女と彼女の娘の母娘丼も食べさせてもらおう。もっとも、娘も美人だったら、の話だが。
 何にせよこれが最後になるのかもしれない。


「・・・悠子。お前の娘の名前は?」
 シモンの何気ない問いに、悠子は虚ろに答える。
「・・・碧、と言います」
「ふうん・・・写真はあるか?」
「・・・はい・・・ここに・・・」
 悠子がキャビネットから持ってきた写真立てを見て、思わずシモンは呻いた。
 そこには、母親と並んではにかむように微笑んでいる、ルピア−−碧の姿があったからだ。



 藤谷といわれたときに、気づくべきだったか。
 いや、藤谷なんてそれこそいくらでもある苗字だ。
 でも巨乳の藤谷なんてそうそう・・・。
 いや、いや、問題はそういうことではない。
 シモンはべちっと自分の頬を叩く。


 彼女の娘−−碧の部屋に踏み込む。いかにも女の子の部屋、という雰囲気だ。あれだけ自分には凶悪な振る舞いをするヴァルキリーの片割れとはいえ、所詮は女子学生である。
 ゴミ箱にはつぶれた紙箱。よくよく見ると、それはシモンが彼女に送ったメイド服の箱だった。クローゼットには丁寧にたたまれたメイド服がしまわれていた。
 悠子の娘が碧であることは明らかだ。そして、もうすぐ彼女はここに帰ってくる。


 それからシモンは考えこむ。

 選択肢は三つ。
 1.もう、悠子は見殺しにして、ここは逃げる。
 2.碧に事情を説明して、見逃してもらうように頼む。
 3.碧もろとも洗脳する。


 ことここに至って、1の選択はどうにも選びにくい。かといって、今までニンゲンどもと敵対してきた自分が、お前のお母さんを助けてやったんだから見逃してくれ、だなんて言うのも随分ムシの良い話だ。悪のネメシスの仁義にも悖る気がする。・・・それに、たとえ碧が自分を赦しても、ローズが見逃すはずが無いだろう。
 では3か・・・。シモンの考えが揺らいだとき、外の門が開く音がする。碧が帰ってきたのだ。
「・・・罠を仕掛ける暇も無しかぁ」
 シモンは悠子をちらっと見て、
「・・・まあ・・・なるようにしかならないよなあ」
と呟き、悠子にいくつか暗示を与えた後、洗脳状態を解除する・・・。


 ドアを開ける音。
「ただいま・・・」
「あら、お帰り、碧。遅かったわね」
「・・・うん・・・少し委員会の仕事があってね・・・」

 その後、しばし沈黙。
 おそらく、自分の靴に気がついたのだろう。
 ジャラ、と音がする。彼女が玄関にかかったスダレのようなものをくぐったようだ。
「碧の学校の子がね、落し物を届けに着てくださったのよ?御礼を言いなさい」
 エプロン姿の悠子が碧に生徒手帳を渡す。これはさっき彼女の部屋に置いてあった物だ。自分はそれを拾ってこの家に『たまたま』来た。それを演出する。
「・・・ありがとう・・・・・・・・・・ございます」
 シモンは彼女を見やる。碧の表情が凍る。

 こうしてみると、胸の大きさも顔立ちの良さも母譲りなんだなあ・・・。

 なんとも緊張感の無い感想を、シモンは心の中で漏らした。





 それからはあまり多くを語ることも無い。
 自分は悠子に細菌を飲ませた。自分の唾液を飲まないと彼女は死ぬ。だからここにいさせろ・・・。
 その前提となった事故のことは語らず、そのことだけを自分は彼女に伝えた。
 碧は怒った。もちろんカーネリアのような怒り方ではなく、いかにも彼女らしい怒り方ではあったが。
 2の作戦を取ることは止めた。ここまで来て善人ぶるのは、どうにも気分がのらない。悪には悪なりの筋の通し方というものがあるのだ。

 かといって積極的な洗脳工作をする気にもならなかった。
 自分の命を、あるいはネメシスの命運をなんとか保たせるのであれば、目の前の碧を洗脳するしかないはずだった。
 しかし、シモンの中から、何かを支えていたハリのようなものが欠けてしまい、何もかもやる気が起こらなかった。

 碧がその気になれば、ローズにリークして自分を捕まえることもできるだろう。
 あるいは殺すこともできるだろう。
 まあ、それならそれでもいい。それまでの運命だ。
 ただ、・・・折角もらった時間だ。せめて、ダリアの命運がどうなったのか、それを自分のこの手で確かのものにする・・・。それだけは行おう。

 シモンは、自分を睨みつける碧を眺めながら、ぼんやりとそう考えていた・・・。
 

 




 それから。


 彼女はぶつくさと文句を言いながらも指示されたとおりメイド服を着て、自分を睨みながら食事を作っていた。
 自分が依頼した計算についても、流石に優秀な頭脳をもっている彼女だけあって、真綿が水を吸うように学習し、素晴らしい能力を発揮した。


 最初の数日間。
 母を人質にとり、自分に破廉恥な服を着させ、下僕のような作業を強要する卑劣なネメシスの男に対する敵意。
 それが碧からビンビンと飛んできた。

 シモンとしてもその視線は心地よかった。
 それが、今の自分にはふさわしい気がしたからだ。



 だが、いつしか、彼女の雰囲気が、少しずつ変わっていった。

 時々、自分を眺めながらぼうっとしている。
 シミュレーションについて、とっくにわかっているはずの質問を自分にして、自分と会話する時間を取ろうとする。
 たまに彼女の作った料理を褒めると、一瞬はにかんだような嬉しそうな表情をして、慌ててその顔を見せないようにそっぽを向く。
 自分と悠子のキスに対して、嫉妬に満ちた視線を送り、その後自室で激しく自慰をする・・・。


 もちろん、自分は彼女に洗脳していない。

 しかし、以前洗脳されていた頃に着用させられていたメイド服に袖を通し、再び強要される奉仕・・・。
 さらに、自分の目の前で母親に注がれる、愛情表現としてのキス・・・。

 それらがいつしか、彼女の心の奥底に深く刻まれた、隷従の印−−自分に対する『愛情』を、浮かび上がらせていったのだろう。
 傍から見てもそれはいじらしいくらい可愛らしく、切なげで、哀れだった。



 シモン自身、その効果を全く期待しなかったわけではない。
 同じ衣服を着て、同じ行動を強要され、そして自分が近くにいるという環境におかれれば、あわよくば・・・。そういう期待もあった。
 しかし実際に、自分に対する『恋愛感情』を『思い出してしまった』碧を、決定的に堕とし、犯し、自分の奴隷にする。そこまでの覚悟もできてはいなかった。


 ある日、自分に質問した後、バランスを崩して碧は自分に押し倒される形になった。
 白い肌に紅潮した頬。乱れた短いスカートの裾からは艶かしい色の太腿と白い下着。長い睫毛は震え、瞳は潤み、息が乱れている。
 あの時、自分が彼女にちょっと触れるだけで、彼女は堕ちただろう。
 しかし・・・。
 彼女の潤みきった瞳と、切なげな吐息が、最後のダリアの姿を彷彿とさせ・・・シモンの中で、それ以上のことはできなかった。



 ・・・今思えば、彼女がおかしかったように、自分もまたどこかおかしかった気がする。
 



 そんな捻じれが捩れて捩れて一回転した挙句、さっきの戦いの最後の段階でようやく元に戻り・・・何はともあれ正々堂々勝負して−−こっちとしてはあらゆる姑息な手段を使うことも『正々堂々』の範疇だが−−そして、矢果て弾尽きた。
 最後の洗脳薬はやけっぱち以外の何者でもない。洗脳薬で始まった戦いだ。たとえ効かないと分かっていても、最後の締めはこれで、と決めていた。


 そして晴れて正義は勝ち、物語は皆が泣いて喜ぶハッピーエンドを迎えた・・・と、思ってたのだが・・・。


 
 シモンはちらっとベッドの上を見る。


 すぅすぅと、静かな寝息を立てているのは、魔法衣姿のルピアだ。


 ・・・何だかまだ長引きそうな気がするなあ・・・。


「・・・そろそろ起こすかぁ・・・」
 シモンは自分に言いきかせるように呟いた。



■■■■■■■■■■■■■




 パチン。

「あ・・・」
 指を鳴らす音が小さな部屋に響き渡る。
 ルピアが目を開くと、単調な模様の天井が視界に入ってくる。
 ルピアは身体を起こすと、辺りを見渡す。
 自分が横たわっているベッド。薬瓶が並べられている棚。少しだけにおう消毒薬の匂い・・・。

「・・・ここは・・・保健室?」
「・・・よう、目が覚めたか」

 ルピアが声のする方に振り向くと、そこにはシモンが椅子に座っている。上半身は裸になっており、あちこちに包帯が巻かれている。頬には絆創膏、膝には赤チンが塗られている。どうやら応急措置を自分でしたようだ。

 シモンは、コップに淹れた水をぐびっと飲むと、
「・・・手短に現状を説明する。ここはお前の学校の保健室。今は夜の2時。お前は俺の洗脳薬を吸って寝込んだ。その間に俺はお前に俺を攻撃できない暗示をかけたから、お前は俺に攻撃できない。ただし、他には暗示は入れていない」
「・・・・・・そう」
 ルピアは短く返事をした。



 しばしの沈黙の後、ルピアはシモンに問いかける。
「・・・なんでお母さんにしたみたいに・・・私を奴隷にするような・・・私を人形にするような・・・そういう暗示をかけないんですか?」
「俺はお前の母親にそんな暗示をかけてはいないがな。それはともかく、俺だっていきなりそんなことはしない。夢見が悪いし、第一気持ち悪いったらありゃしない」
「・・・気持ち悪い?」
「当たり前だ。第一、洗脳薬、なんで効いてるんだ?お前たち、あの洗脳薬を無効化する薬、作ったんだろ?」
 
 ルピアは布団をじっと見つめていたが、しばらくして、彼女はぽつり、と呟いた。

「・・・薬、今日は飲まなかったんです」

 やや長い沈黙の後、
「・・・その年で粉薬は駄目でシロップ薬しか飲めないのか。難儀な奴だな」
「・・・・・・・違います」
「・・・・・・じゃあ飲み忘れか。よくあることだな」
 ルピアはシモンを殺人的な視線で睨みつける。
「・・・・・・・・・違います。わざと飲まなかったんです・・・」
「・・・何でまた」

 ルピアはシモンの質問には答えず、ぽつんと言った。

「・・・わたし、わたしがわからない」

 彼女は自分の身体に掛けられている薄い布団をぎゅっと握り締める。しばらくの沈黙の後、ルピアは俯いたまま、ゆっくりと言葉を吐き出しはじめた。

「・・・人を操って、気持ちをぐしゃぐしゃに踏みにじって、犯して、ローズ司令を罠にはめるのに利用して・・・・・・・・・・あんたみたいな卑怯で卑劣な男・・・今まで見たことありません・・・」
「そんなにほめられると照れるかなあ」
「・・・ほめてません」
「はぁ、左様ですか」

 ルピアの冷たい声音に気圧されたシモンは、口をつぐむと机の上にあったペンを所在無さげに弄びはじめる。

「でも・・・・・・あなたたちが宇宙に消えてから・・・これでもう普通の生活ができるんだって・・・そう思ってたのに・・・・・・・・・・あなたが突然来て・・・お母さんを操って・・・キスして・・・うちに居座り始めて・・・」


 さすがのシモンも彼女が真剣だということを察して、余計な茶々を入れない。


「・・・あ、あなたなんか・・・もう・・・嫌いな・・・はずだったのに・・・顔もみたくないはずだったのに・・・」

 しばらくそこで沈黙があったが、彼女は手を震わせ、固く目を瞑り、

「い、いつの間にか・・・あなたのこと考えると、あたまがぐしゃぐしゃになっちゃうの!胸はどきどきして、顔は真っ赤になって・・・あ、アソコだって・・・もう・・・ぐしゃぐしゃになっちゃって・・・」

「お母さんと貴方がキスをしてるのをみると、・・・とめさせたくなる・・・。悔しくて・・・私にしてくれないでなんでお母さんとはキスするんだろうって・・・」

「でも、わたしはヴァルキリーだから・・・シモンのことを捕まえなくちゃいけないし・・・場合によっては・・・倒さなくちゃいけないのに・・・そんなことはわかってるのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・飲むか?」
「・・・いただきます」
 シモンが突き出したコップを飲み干して息を整えた彼女は、少し落ち着いたのか、前よりは静かな声で語り始めた。

「・・・私が本気を出したら、あなたなんか敵ではない・・・。それはわかっていました」

 若干傷ついた表情を浮かべるシモンにルピアは気づかず、話を続ける。

「・・・もう・・・私は自分がわからなかったから・・・だから・・・もしあなたが、最後に、本気を見せてくれるなら・・・・・・それならもう、あなたに操られても構わない・・・・・・そう思って・・・薬は・・・飲みませんでした・・・」

 硬いリノリウムの床に、彼女のの声だけが跳ね返る。
 しばらくシモンは黙っていたが、やがて水をくぴっと飲み、口を拭ってから、静かに説明する。

「・・・おそらく、だ。お前は以前、俺を好きになるように暗示を受けた。その当時の服を着て俺に奉仕しているうちに、脳裏の暗示が表層に出てきたんだろう」
「・・・・」
「だから、その気持ちは、お前の本当の気持ちではないはずだ」
「・・・・・・・・・」
「・・・前回はあわただしくて、暗示を解くのが不十分だったようだが・・・なんなら、もう一度、今度は完全にその感情を消すことができる」
「・・・・・・・・・・・・!」
「俺がやってもまた別の暗示を入れられかねないと思うだろうから、ローズ司令あたりにこの薬を渡して洗脳を解いてもらえ・・・」
 シモンがポケットから液体−−洗脳薬−−の入った瓶を取り出そうとしたその時、

「いや!!」
 激しく、短い拒絶。
 あたかもそこにある大事なものが奪われまいとするかのように、彼女は胸に手を当てる。
「この気持ち、今のこの気持ち・・・。・・・この気持ちは私のものなの・・・。きっかけは・・・きっかけは歪んでたのかもしれないけど・・・でも今はこの気持ちが私なの!これが無くなったら、もう私じゃないの!」
 
 シモンは、んー、と唸り、頭をかいて、
「・・・って。じゃあどうすりゃいいんだって・・・」
 
 しばしの沈黙の後、ルピアは口を開く。
「シモン・・・。お願い。もう一度私を洗脳して・・・」
「・・・・・・あ?」
「こんな苦しい気持ちにならないように・・・。私の心を素直にさせてほしい・・・」

「今はシモンのことが大事・・・。シモンのことが好き・・・。でも・・・多分また、私は私の使命を思い出してしまう・・・」

「だから・・・私に・・・あなたのことだけを・・・あなたを一番大事だと思わせて欲しい・・・」

 シモンはルピアの顔を見据える。
 その瞳には全く濁りが無い。
 
 シモンはルピアに尋ねる。
「・・・そうしたら、お前は一生俺の奴隷となるんだぞ」
「・・・・・・」
「俺が人間を殺せとお前に命じたら、お前はなんの疑いもなく嬉々として人間を殺す・・・そういう操り人形になるんだぞ。それでもいいのか?」

 俯きながらルピアは返事をする。
「・・・・・・・私は、貴方を信じています。貴方はそういうことをしない人だって・・・」

 その彼女の言葉を嘲笑うかのように、シモンは軽く口元を歪めた。
「・・・随分とアマちゃんだな。俺は確かに好き好んで殺すことは趣味ではないが、普通のニンゲンよりはよっぽどそのあたりの自制心は低いぞ。せいぜいお前達が蚊を殺すことに躊躇するかどうかのレベルだ」


 しかし、そんな次元の話は、彼女はとっくに通過しているようだった。

「・・・大丈夫です」
 ルピアの声は静かだが、明晰な意思が宿っている。そして彼女の瞳はシモンを真正面から見据えている。



「万一、貴方が命令をして、・・・・そして私が貴方の命令で人を殺しても・・・その時は、私が地獄に堕ちるだけですから」



 窓から煌々と照らす月の光が、彼女のきめの細かい肌とつややかな髪を照らす。あたかも彼女の周りの夜気が、古の戦乙女の纏う霊気を受けて浄化され、白く染まっているかのような錯覚すら引き起こす。



「ネメシスである貴方は、自分が生き残るために人を殺しても良いんです。ううん・・・いい悪いを判断すること自体が意味がない。だから私が人を殺すのは、それは私だけの罪」



「ヴァルキリーでありながら、そしてニンゲンでありながら、自分から貴方の奴隷を願い出た・・・・・・そして仕えるべき主人を見誤った・・・私の罪ですから・・・」



 ルピアは柔らかく微笑みながら言った。
 それは狂気から来る笑いでもなく、冷笑でもなく、自嘲でもなかった。



「・・・うーん・・・」
 シモンはしばらく苦虫を噛んだ様に口をヘの字に曲げ、目をつむり唸っていたが、やがて頭をごしごしと掻く。
「・・・よく分からん話だ。神だの地獄だの、抹香臭い話は俺は好かない。神父か坊主とでもやっててくれ、その手の禅問答は」
「・・・そうさせてもらいます・・・」
 ルピアが小さく笑いながら言うと、シモンはさらに不機嫌そうに、
「あー、もう、めんどくさいなぁ」
「・・・何がですか?」
「大変なんだよ、洗脳。やったからには面倒みなくちゃいけないし、メンテナンスも大変だし・・・」
「・・・それが狙いなんです」
「?」
「シモン、洗脳した相手には面倒みますからね・・・おかあさんにもあれこれ面倒みてたし・・・」
「そりゃこっちの義務ってもんだ」
 ルピアはクスクスと笑った後、
「・・・だから、貴方に洗脳してもらいたいんです・・・」
「言ってろ」
 シモンはむすっとした声をあげ、そのまま不貞腐れたように窓の外を見ると、ルピアもつられて窓を見やる。


 秋の澄んだ空気のせいか、夜空には星が充満している。


 彼女は、ふと、呟くように、静かに言った。
「あの娘が還ってきたときのために、美味しいうどんを用意しないといけませんね・・・」
 シモンは更に不機嫌な口ぶりになって、
「・・・お前も頭がいいのか悪いのかわからんな。お前も計算しただろう。確率は無い、と。来ない待ち人のためにうどんをこさえてどうするかね?」

 そんなシモンに、いらずらの成功した子供のような笑いをルピアは浮かべる。
「・・・あれ?『確率なんて知ったことじゃない』って大見得切ったのは、どこの誰でしたっけ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 古い借金の証文を突き出され、シモンは苦虫どころか青汁の原液を煮詰めて飲んでいるかのような表情をする。


 やがて、いろいろなものを諦めた顔をして、シモンはつぶやく。

「・・・まあ、いいさ。所詮俺はこうやって虐められるのが指定席な下っ端だからな。今更何でもない。・・・さて、こんな場所にそう長居をするわけにもいくまい。そろそろ引き払うぞ」
「え!?・・・あ・・・うん・・・そうですね・・・」

 頷きつつも、そのベッドから一歩も動こうとしないルピア。

「・・・ってお前、いつまでそこに居るつもりなんだ?」
「え?あ、あの・・・先に家に帰っててもらえませんか?」
 いつもの彼女らしくなく、妙にあたふたしている。
「・・・・・・・」
「きゃ、きゃ、やめ・・・」
 シモンはルピアの膝小僧をつかむと、ずずっと押し出す。
 
 ルピアが座っていた部分のシーツには、染みができている。

「・・・」
「や、やめて・・・」
 シモンはその染みに指で触れ、その指先の匂いをかぐ。
「・・・・・・・」
「あ・・・あの・・・シモン・・・?」
「・・・・・・・・ルピア、お前・・・」
 シモンは彼女の魔法衣のスリットから手を差し込み、彼女のショーツに触れる。
「・・・・・い、いや!」
「・・・・・・・・・」
 抵抗するルピアを無視し、シモンはショーツをまさぐる。ショーツはぐしょぐしょに濡れており、しかも周りの太腿の辺りも、乾きかけの液体で微妙なごわつきと湿り気が交じり合った感触がある。
「・・・・・・・おもらしか?」
「ち、ちがいます!!」
 ルピアは噛み付かんばかりの勢いでどなる。
「・・・じゃあ、これはなんだ?」
 シモンはルピアの前に、ねばっこい液体のついた自分の指をつきつける。
「・・・これは・・・その・・・」
 ルピアは言葉に詰まりながらも、続ける。
「・・・さ、さっき・・・シモンと闘ってるとき・・・シモンが・・・ずっと私のこと・・・真剣に見てくれるから・・・ぬ・・・濡れちゃって・・・」

 シモンが沈黙していると、ルピアは顔を真っ赤にして更に慌てて続ける。

「だ、だって・・・シモン、今まで・・・ずっと一緒にいるときも・・・計算してるときも・・・キスしてるときも・・・・・・私がフェラチオしてるときも・・・全然私のこと見てくれてなくて・・・・・・。たとえ私のことを見てても・・・シモン・・・私のことなんか見てなくて・・・別のこと考えてるんだ・・・って・・・分かっちゃって・・・」
「・・・・・・」
「・・・だけど・・・さっきの戦いの時に・・・初めて・・・初めて私のことだけ考えて戦ってくれてる・・・私のことに・・・真剣になってくれるって・・・。・・・そう考えたら・・・もうそれだけで・・・私・・・ぐしょぐしょに・・・なっちゃって・・・」

 シモンは何も言わず彼女の肉襞にへばりつくショーツに浮かんだ割目をさする。

「ふわぁ・・・」

 ルピアはその瞬間、びくっと身体をこわばらせ・・・しかし抵抗せずに・・・いや、むしろそのシモンの指に自分の裂目がさらに深く触れるように腰を小刻みに震わせる。

 その艶姿を見て、シモンのスイッチが入った。

 シモンは、にやりと笑ってルピアを見据える。
「・・・やれやれ・・・ニンゲンどもの正義の使徒が、倒すべき相手に見つめられてここまでぐっしょり濡らすとはな・・・今度からヴァルキリーの資格に『淫売ではないこと』とでも規定を作るべきじゃないのか?」
「・・・い、いやぁ・・・。そんな風にいわないで・・・」

 ルピアは瞳を潤ませた。その瞳には、自分のふしだらさを指摘され、その不純を恥じる潔癖な戦乙女の羞恥と、劣情に心を灼かれ醜悪な肉棒に貫かれることだけを望む淫婦の情欲が同居している。
 彼女の四散させる雌の芳香は、保健室特有の消毒液の匂いと相まって、彼女自身の理性を麻痺させつつあった。
 
 シモンは彼女の頬を手のひらですぅっと撫で、髪の毛をかき上げる。
 そうして、彼女の濡れた唇を指でなぞり、顎をくいっと少しだけ上げると、ルピアはされるがままに顔を上げる。
 
「・・・どうして欲しい?」
 上目遣いのルピアは、無意識なのか意識してなのか、赤く濡れる舌で少し唇を湿らせてから、
「・・・シモン様に・・・私の体中を・・・犯してもらいたい・・・です・・・口も・・・アソコも・・・胸も・・・乳首も・・・顔も・・・。・・・どうか・・・お願いします・・・。私を・・・私のすべてを・・・シモン様のものに・・・してください・・・」
 そんな台詞を口にしている間にも、彼女の液で変色したショーツから、愛液が染み出てきている。おそらく、彼女も隷従と奉仕のモードに入ったのだ。その証拠に・・・彼女は無意識のうちに『シモン様』と呼んでいる。


 シモンは彼女に口付けをすると、彼女の方からシモンの頭を激しく掻き抱き、大きく口を開いて、シモンの舌に自分の舌を絡みつけていく。
「んふ・・・うん・・・ん・・・むふ・・・ちゅ・・・」
 シモンの手は彼女の胸を服の上から揉みしだく。ふにゅふにゅとした弾力のある彼女の胸は、シモンに嬲られるままに形を変える。彼女は自分からシモンの身体に身体を押し当て、より激しい刺激が得られるように身体の角度を変える。
「んふ・・・んふぁ・・・」
 長い長いキスを終え、シモンとルピアの口が離れる。ルピアの唇からとろっと二人の唾液が混ざり合い、彼女の肌を伝って胸の谷間へと零れ落ちる。

 シモンは彼女の服をゆっくりと胸元からはだけさせる。
 彼女のふくよかな胸がシモンの目の前に晒され、つんと立ち上がった乳首が彼女の熱い吐息と共に震える。
「きゃふぅ!・・・あ・・・い・・・そんな・・・きゃ・・・ああぁ・・・」
 シモンが指で彼女の乳首を弾くたびに、彼女は身体をよじらせ、甲高い哭き声をあげる。

「クク・・・今までこんなにいやらしい身体、どうやって鎮めてたんだ?」
 ルピアは夢を見るようにトロンとした目をしたまま、
「え・・・あ・・・自分で・・・いじって・・・」
「・・・何を考えながらいじってたんだ?」
「あん・・・シ・・・シモン様に・・・おっぱい舐められて・・・アソコをいじられて・・・キスされて・・・お尻の穴もぐしょぐしょにいじられて・・・うん・・・おち○んちんを・・・おち○んちんを、思いっきり深く、深く刺されてるのを考えながら・・・体中をいじってました・・・」

 空ろにそうしゃべると、彼女はそのままシモンのズボンをずりおろし、シモンの肉棒を引きずり出す。

「あ・・・お・・・お○んちん・・・」
 赤い舌を伸ばして舐めようとするルピアをシモンは制止する。
「・・・舐めるときには、挨拶するのが礼儀だろう?」
「あ・・・はい・・・シモン様の・・・たくましいお○んちんを・・・どうか・・・この卑しい女に・・・舐めさせてください・・・」
 口上の途切れるたびに、シモンの赤黒く膨れ上がった陰茎にルピアの吐息がかかる。
「・・・いいだろう・・・存分に舐めるがいい」
「あ・・・ありがとうございます・・・あふ・・・」

 彼女の小さな口から舌が突き出され、蛭のようにシモンの肉棒に絡みついていく。はじめは唇全体で亀頭を包み込むようにしながら、舌先で鈴口をちろちろと舐めていたが、やがで陰茎全体を喉奥に飲み込み、竿を唇で、亀頭を舌腹と頬の裏で、ちゅぷちゅぷと音を立てながら刺激する。同時に陰嚢と蟻の門渡りを指で刺激するのも忘れない。

「・・・ん・・・ずいぶん上手いじゃないか。俺が居ない間にずいぶん男を咥えこんでたんじゃないのか?」
 ルピアはそのシモンの言葉にふるふると首を振り、唇を肉棒から離す。カウパーと唾液が混ざった粘液が、とろっと彼女の唇から垂れる。
「ち、違います・・・。本当に・・・本当にシモン様だけです・・・。ま、毎晩・・・シモン様のお○んちんを想像して・・・指とか・・・舐めてたから・・・それで上手くなったんだと思います・・・」

「・・・まあいい、続けろ・・・今度は胸も使え」
「・・・はい・・・」
 とろんとした瞳をそのままに、彼女は仰向けになったシモンの股間から屹立する肉棒を両側から包み込むように乳房で挟みこむ。たわわな胸が陰茎の形にいびつに歪む。目の前に来た、自分の唾液でぬらぬらと濡れる亀頭を、彼女は再び愛おしそうにちろちろと舐め、しゃぶり、同時に竿を胸の谷間でしごき上げる。
 じゅる・・・じゅる・・・じゅ・・・じゅ・・・。
 その激しい動きに、次第にシモンの中も昂ぶってくる。
「・・・ルピア・・・出すぞ・・・」
「・・・は・・・はい・・・」

 じゅ・・・じゅ、じゅ、じゅ、じゅ・・・。

 ルピアの動きがさらにいっそう激しさを増したその瞬間、
「ん・・・く・・・」

 どぴゅ・・・どぴゅ・・・どく・・・どくどく・・・。

 シモンの精が彼女の顔と、口の中に放出された。

「あふ・・・熱い・・・」
 ルピアはその端整な顔にかかった精液を、神聖なものを扱うかのように大事そうに指で集め、その指先を舐めていく。


 シモンは改めて彼女を見やる。

 ヴァルキリーの神聖なる衣は、いまや申し訳程度に彼女の素肌を覆うのみだ。本来は強く、美しく、穢れない女戦士を神の名の下に言祝ぐための髪飾り、首にかかっているアクセサリーすら、供物として、そして奴隷としての彼女を淫靡に飾り立てているようにしかみえない。
 ふるん、と震える大きな乳房は剥き出しになり、たちあがった乳首の先から、さっきシモンが放出した精液がとろっと垂れ落ちている。白くなまめかしい胸と首筋には玉のような汗が浮いており、揮発するその香りすら彼女にとっては媚薬として働いているのだろう。
 普段ならば理性と意志の強い輝きを秘めているその瞳も、いまや彼女のもつシモンに対する限りない愛情、そして肉欲に潤んでおり、かつ精液と唾液の香りに朦朧としているのか、焦点すらあっていないように見える。
 下半身に目をやれば、ショーツと白いハイニーソックスだけが彼女の肉付きの良い身体を包むのみだ。そのショーツも、おそらくは触っただけで滲むほどに愛液を吸っていることだろう。

 おそろしく猥雑でありながら、美しさと純粋さが同居して、危ういところでバランスを保っている。

 シモンが彼女をただ見つめていると、やがて、彼女はシモンににじり寄ってくる。
「・・・シモン・・・お願い・・・。もう・・・こんなになってる・・・さっき戦ってるときから・・・ずっと・・・シモンが私のことを考えてくれてるって思うだけで・・・わたし、ぐしょぐしょになっちゃうんだよ・・・それくらい・・・私・・・もうあなたのことしか考えられないんだよ・・・」
 そういいながら、彼女は自分の足を広げ、ぐしょぐしょに濡れたショーツをずらして、自分の秘裂をシモンに晒す。

 今すぐ抱きたい欲情を抑え、シモンは冷ややかな声で彼女を嘲弄する。
「・・・くっくっく。やれやれ、何のかんのいっても雌は雌だ。どんな男相手にもちょっと弄られたら股を開く・・・。そういう女なわけだ、お前は」
「ち、ちがうよ・・・シモン・・・違う・・・・・・違うよ・・・」
 ルピアは激しく抗議する。
「・・・シモンに・・・シモンに見せたいよ・・・。私の心が・・・私の頭がどんなにシモンで一杯なのか・・・。体中がどんなにシモンで一杯なのか・・・。シモン・・・私の頭を壊して覗いて見てよ・・・。私の身体を切って私の血を見てよ・・・。私の身体は・・・どこも・・・シモンで溢れてるんだよ・・・」

 ルピアが目を瞑ると、その目尻から涙がぼろっと零れ落ちる。

「・・・貴方だけなんだよ・・・シモン。・・・お願い・・・今だけで・・・今だけでいいから・・・私の心も・・・身体も・・・シモンで一杯にして・・・」

 シモンはそんな彼女をただ見つめている。

 瞼を開いたルピアは、潤んだ目をシモンに向けながら、弱々しく呟く。
「・・・駄目ですか・・・?」

 シモンは黙ったまま彼女の胸を軽く揉む。
「んあ・・・ぁ・・・」
「・・・ふん・・・こんないやらしい身体・・・確かに、そこら辺のニンゲン如きの技術ではおさまらないだろうな・・・」
「あふ・・・あ・・・あはぁ・・・」
 少し乳首を吸われただけで、彼女の身体は痙攣をし始める。

「・・・構わない、くれてやるぞ」

 シモンは彼女の濡れそぼったショーツをずらすと、固くいきりたった肉棒を奥深く突き挿す。ぐしょぐしょに濡れている彼女の膣穴は、シモンの亀頭が入り込むと歓喜するかのように蠕動し、シモンのモノを刺激する。
「あ・・・あああ・・・」
 ルピアは思わずシモンの頭を自分の胸に抱き寄せ、シモンの耳を甘噛みし、舌で舐る。シモンも彼女の胸をぐしゃぐしゃに揉み、乳首をつまみ上げ、乳房に噛み跡をつけながら、さらに深々と一物を挿し込み、ゆっくりとグラインドしはじめる。

 ずりゅ・・・ずりゅ・・・ずりゅ・・・ずりゅ・・・。
 粘液と粘液、粘膜と粘膜が絡み合う音、互いが互いの膚を舐めあう音、二人の声にならない呼吸音だけが、この小さな部屋を満たしている。

「もっと・・・もっときて・・・おくまで・・・・おくまで・・・」
 うわごとの様に繰り返すルピア。シモンはその彼女の要求に応えるかのように腰を捻り、深々と肉棒を打ち付けていく。そのたびにハイニーソックスに包まれた彼女の太腿が打ち鳴らされ、乾いた音を立てる。
「・・・いい・・・いいよ・・・シモン・・・。シモンが・・・シモンが熱くて・・・私の中で一杯に膨れ上がってる・・・」

 ぎゅう・・・とシモンを一層強く抱きしめるルピア。涙が目からこぼれ、ぬらぬらと光る舌が激しくシモンの首筋を舐め回す。

「・・・まだまだ、これからだ・・・」
 シモンはさらに強く打ち付けていく。

 じゅく、じゅ、じゅ、じゅ、じゅ、じゅ・・・。
 次第にテンポが速くなり、二人の息も荒くなっていく。
 柔らかい肉襞がシモンの棒を包み込む。シモンが彼女の身体を揺らすたびに、彼女の胸がふるふると揺れる。彼女の舌が切なそうに空を泳ぐ。シモンが彼女のその舌に唇を寄せると、たちまち彼女の舌はシモンに吸い付いてくる。シモンはその間にも彼女の乳首を捻り、乳房を揉みしだく。そのたびに彼女はくぐもった声で反応し、シモンのペ○スを搾り取るかのように膣肉がぎゅっと収縮する。

 ぎし、ぎし、ぎし・・・。安物の鉄パイプのベッドが悲鳴を上げる。
 しかし、ベッドの限界が来るより先に、ルピアが上り詰めつつあった。

「シ、シモン、わ、わたし・・・もう・・・もう・・・・・・あ・・・あ・・・」
「いいぞ・・・イクんだ、ルピア・・・・・・そして、お前がイッた瞬間・・・お前の心も身体も、すべてが俺のものになる・・・」
「わ・・・私の・・・全てが・・・シモンの・・・・シモンのモノ・・・心も・・・身体も・・・シモンのモノ・・・」

 何か夢見るような表情で、空ろな声でシモンの言葉を繰り返すルピア。

「そうだ・・・お前は・・・俺のものだ・・・だから・・・俺に尽くすことで・・・お前の罪は赦される・・・ヴァルキリーでありながら、ネメシスの男に隷属する・・・お前の罪が、な・・・それだけがお前の赦しへの道だ・・・」
「あ・・・ああ・・・あああ・・・」
 彼女の心の中に、シモンの言葉がどんどん吸い込まれていく。
「さぁ・・・繰り返せ・・・ルピア・・・そしてイクんだ・・・」 
 シモンが一気にグラインドを激しくする。
 ずちゅずちゅずちゅずちゅずちゅずちゅ・・・。

「あ・・・あふ・・・わ・・・私は貴方のもの・・・私はシモンのもの・・・ずっと・・・シモンに・・・シモンの・・・あ・・・好き・・・好きだよシモン・・・大好き・・・シモン・・・ずっと私を・・・貴方のものに・・・し・・・して・・・・・・あ・・・ああああ・・・ああああああああああああああああああああああぁああ!!!」

 隷従の誓いは、やがて言葉にならない絶叫へと変わる。

 その瞬間、ルピアの身体がびくん、と跳ね、弓なりになり、

 どく・・・どくどくどくどく・・・どく・・・。

 白濁する精液がルピアの子宮に注ぎ込まれ・・・身体を硬直させてそれを受け止めた彼女は、そのまま糸の切れた操り人形のように、ベッドに落ち・・・、


 ・・・永久にシモンの愛奴として生きる幸せが、心の奥底に刻みこまれた・・・。







■■■■■■■■■■■■■








 窓の外がうっすらと白みはじめている。
 今日は休日で学校は無い。とはいえ、いつまでも保健室でいちゃついているわけにはいかないだろう。シーツも床も彼女の愛液やらシモンのザーメンやらでべとべとだ。
 そろそろ片付けるか・・・。
 シモンがベッドの上でそんなことをつらつらと考えながらぼうっとしていると、隣に居るルピアがおそるおそる尋ねてくる。
「シモン様?」
「なんだ?」
 ルピアは少しためらっていたが、意を決したかのように続ける。
「・・・シモン様はとっくにお気づきだと思うのですが・・・その・・・あのシミュレーションで、一つだけ動かさなかったパラメータがありましたよね・・・」
「・・・」
「・・・あのパラメータ・・・。もし最大の数字まで動かせれば、50%まで確率を上げることができます」
「・・・いつ計算した?」
「・・・あ、その、すみません。シモン様には無断で計算していました・・・」
「・・・いや、もう少し無理な裏技を使えば78%まで上がる」

 シモンはさらっと返事をする。

「・・・やっぱり知っていたんですね・・・。なんで他のパラメータはあれだけ隈なく試してみているのに・・・あの数字だけ変えなかったんですか?」
「あの数字は変えられないからだ」
「・・・でも、最大値の設定があるのになんで・・・」
「めんどくさい事情があってなあ・・・」

 シモンは淡々とその『事情』を説明する。

「だからあの数字は変えられないわけだ」
「・・・・・・・」
「まあ、でも、お前が『確率なんてどうでもいい』っていうくらいだからな、まあ確率のことは気にしないで、のんびり待つことにするさ」
「・・・・・・・・・・シ、シモン様!」
 突然ルピアは正座をしてシモンに相対する。
「な、なんだ、藪から棒に」
「・・・そ、その・・・すみませんでした・・・根性無し呼わばりしてしまいまして・・・」
 ルピアはシモンに土下座をする。
「・・・・・・・いや、そこで謝られると・・・なんというかこっちも困ってしまうんだがなあ・・・」
「で・・・でも・・・それじゃ絶対に・・・」
 シモンは開こうとする彼女の口に指を立てる。
「・・・まあ、なんとかするだろ、あいつのことだから」
 シモンは白みかけた空を見ながら、なんでもないように軽く言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・シモン様が、そうおっしゃるなら・・・」
 まだ少し微妙な表情を見せるルピアに、シモンはにやっと笑いかける。
「おいおい、そんな顔してる暇は無いぞ。これからヴァルキリーの残りの二人も堕とさなきゃならんし、お前の母親の面倒もみなきゃならんし、チキュウでの生活も長引きそうだから何か飯のタネを探さなくちゃならないし・・・」
「・・・・・・私もお手伝い、いたします・・・」
「ああ、頼りにしてるぞ」


 そう、これから忙しくなる。
 こっちはこっちで、やるべきことをやるだけだ。
 あとは人事を尽くしてなんとやら、だ。

 シモンがルピアの髪の毛を撫でると、彼女は心地よさそうにシモンの胸板に額を摺り寄せた。







<終>→おまけへ





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