洗脳戦隊


 

 
第十話 岐路



 シモンがドアを開くと、ローズがいた。この部屋はネメシスの会議室で、椅子、テーブルが並んでいる。壁にはホワイトボードがかかっており、テーブルには様々な性具が無造作に置かれている。
 ローズは後ろ手に縛られて椅子にくくりつけられている。服装は・・・メイド服ではなく、白く輝くヴァルキリーの司令官服だ。首はうな垂れ、目は長い髪に覆われて表情はわからない。口はぶつぶつと何かをつぶやいている。
 ・・・カーネリアとルピアは洗脳されてからもう数日経っている。様々な快楽、そしてそれを命令を破った時に与えた恐怖により、最早暗示は完全に脳髄の奥底まで埋め込まれているといってよい。しかし、ローズはまだ浅い。無論、今日自分からメイスの柄で自分の媚肉を突き刺したのだから、それなりにはかかっているのだが・・・。
 シモンはローズの耳からイヤホンをとった。イヤホンからは様々な波長の音と、その音の中にサブリミナルで埋め込まれていた服従を強制するメッセージが流れている。
「・・・私は・・・ネメシスの・・・忠実なる・・・僕です・・・。ベリル・・・総帥には・・・絶対の・・・忠誠を・・・誓います・・・。私は・・・ネメシスの・・・忠実なる・・・」
 ローズは、そのサブリミナルメッセージをただ繰り返す。このメッセージテープはダリアお手製のものだ。このテープを聴かせておくだけで、洗脳が深まるようになっているらしい。・・・もっとも、その効果の検証を今から行うわけだが。
 シモンはローズの前髪をかきあげた。眼は薄く閉じられている。ローズの顎に手をやって自分の方を向かせる
「ローズ・・・目をゆっくり開けろ・・・」
 ローズは呟くのをやめ、ゆっくりと目を開ける。目の焦点は最初は定まらなかったが、しばらくするとシモンの瞳をぼんやりと見つめてくる。しかし、弛緩した表情と曇った瞳は、彼女が被暗示性の高い状態にあることを示している。
 シモンは彼女の腕と身体の拘束を解く。腕の手錠を外すと、金属で擦れた部分が赤くなっている。シモンはその手首をとって揉みほぐしてやる。ローズはそんなシモンをただぼんやりと眺めている。ローズの力量を以ってすれば、素手でもシモンを倒すことは容易だろう。しかし、両腕が自由になった今となっても、彼女の腕は力なくシモンに委ねられたままだ。
 ローズに対して調べることは二つ。一つはこの洗脳テープの効果を見ること。もう一つは、ネメシスに抗う勢力の体制や、機密情報を聞き出すことだ。
「・・・ローズ、お前は何者だ?」
「・・・私は・・・ネメシスの・・・忠実なる・・・僕です・・・」
 ローズはテープの内容をおうむ返しに繰り返す。
「・・・私の命令には従うのか?」
「はい・・・シモン様はネメシスの幹部であらせられます。私は末端に過ぎません。・・・何なりとご命令を」
 ダリアは瞳孔の開き具合と触覚に対する反応から洗脳の深度を測ることができるらしい。しかし、シモンにはそんな芸当は出来ない。勢い、非常識な命令に従うかどうかでその深度を調べることになる。
「では、そのテーブルの上に乗って股を開け」
「はい」
 ローズは何ら迷うことなく、テーブルの上に乗ると股を大きく開き、その奥をシモンに晒した。短いスカートは捲りあがり、シルクの下着が照明の光を受け白く光る。ガーターストッキングと下着の間には肉付きのいい太腿が見える。
「胸をはだけろ」
「はい」
 ローズは上着の止め紐を解くと、ショーツと揃いのブラが露わになる。虚ろな目をしたまま、ブラジャーのホックを外す。ボリュームのある白い乳房と、ピンク色をした乳頭が飛び出す。
「・・・うつ伏せになって尻をこっちに向けろ」
 ローズはそのまま床にうつ伏せになり、尻をくぃっと上にあげた。剥き出しになった下着の上からシモンはローズの秘部に触れる。しかしローズは何の反応も示さない。横から見ると、テーブルとローズの身体に板ばさみになったローズの乳房はたわんでいる。
「テーブルから降りてこっちにこい」
 ローズはテーブルから降り、シモンに近づく。瞳は虚ろだが、足取りはしっかりしている。
「キスだ」
「・・・失礼します」
 ローズは会釈をすると、眼を閉じてシモンの唇に唇を合わせた。シモンはローズの身体を抱き寄せて、胸と尻をこねあげる。ローズはそれには反応しない。ただシモンの命令に忠実に、唇を唇で丹念になぞるキスをする。
「いい、止めろ」
「・・・はい」
 ローズはシモンの身体から身体を離し、直立不動となった。捲れあがったスカート。はだけた乳房。光の無い瞳。それでいて均整のとれた顔立ち。シモンが感じろといえば感じ、命令しなければ決して濡れない、猥褻なプロポーションの肢体。ヴァルキリーの司令官は、単なる肉人形と化している。
 シモンは、更に問いを重ねる。
「お前は俺の命令には従うのか?」
「はい」
「では、俺がベリル様を殺せ、といったら、殺すのか?」
「・・・ネメシスのためにならない命令には、従えません」
 なるほど、ネメシスの下僕であって、俺の下僕ではないわけだ。
「・・・冗談だ。今の質問は忘れろ」
「はい」
 ローズは無表情なままだ。
 彼女に施された洗脳は、知覚、記憶、人格の全レベルを押さえた完璧なものだ。ダリアのテープに何が仕掛けてあったのかは全くわからないが、シモンがあれだけしんどい目をみながらようやく陥としたレベルをはるかに凌駕している。シモンの洗脳では、どんなに深いようにみえても知覚だけは残るのだ。・・・もともと、性感を介して洗脳の深度を深めていくシモンの洗脳方法の特質上、仕方が無いともいえるのだが。
 無論、この状態で訊けば、何でも訊き出せるだろう・・・。しかし、それでは彼女の洗脳を深める効果が生まれにくい。何よりも面白みに欠ける。
 一つ趣向を凝らしてみようか・・・。
 シモンはポケットからライターを取り出す。
「・・・ローズ、この炎を見ろ」
 ローズがぼんやりとその炎に眼を向ける。
「・・・お前は・・・誰だ・・・」
「・・・私は・・・ネメシスの・・・忠実なる・・・僕です・・・」
 ためらいなく答えるローズ。
「・・・違う・・・ローズ・・・お前は俺の部下だ・・・」
「・・・ぶか?」
「そう・・・部下だ・・・。そして、俺はお前の上司だ・・・お前はヴァルキリーの司令官であり、俺の部下でもある。・・・お前のヴァルキリーでの直属の上司はどういった地位だったんだ?」
「・・・長官です」
「じゃあ、俺はシモン長官だな・・・、復唱しろ」
「わたしは・・・ヴァルキリーの司令官で・・・シモン長官の・・・部下・・・です・・・」
「・・・そうだな、俺がネメシスであることは忘れろ。俺もヴァルキリーの一員だ。・・・いいな」
「・・・はい・・・」
「それと、部下は、上司に何かを聞かれたら、それを教えなくてはいけない。それが組織のルールだ。たとえそれがどんなことであっても・・・いいな?」
「・・・はい」
「・・・これから俺はお前に色々なことをするかもしれない。しかし、お前はひたすらヴァルキリーの司令官としての態度を崩してはいけないし、俺の行動を拒んではいけない・・・なぜなら、お前は俺の部下なのだから。そうだな?」
「・・・はい」
 シモンはテーブルの脇の椅子に座る。
「では、今から3つ数える・・・。するとお前は俺の部下であるヴァルキリー司令官に戻る・・・。3・・・2・・・1・・・ゼロ!」
 シモンがパチンと手を叩くと、ローズがはっと目を見開く。
「・・・ここは・・・」
「ローズ君、どうした?」
「え・・・あ・・・ああ、シモン長官。ここは・・・」
「ローズ君、忘れたのか。今日はヴァルキリーの機密について講義してくれる予定だったのだが」
「あ・・・そ、そうでした。申し訳ありません」
 深々と謝るローズ。
「困るよ、そんなことじゃ」
「ごめんなさい・・・」
「いや、こっちこそ少し言い過ぎたかな・・・。それでは、始めてもらえるか?」
「ええ、わかりました。・・・それじゃあ、何から?」
「・・・ええと。それよりも・・・その、上着とスカート、元に戻してもらえないか?目のやり場に困るんだが・・・」
「え、え、・・・あ、何で・・・こんな・・・」
 ローズは真っ赤になって服装を整える。
「申し訳ありません。お目汚しでした」
「いや、いい目の保養になったよ。それじゃあ始めてもらえるかい?」
 シモンはノートを開く。
「はい・・・それでは」
 ローズはヴァルキリーの組織構成、各組織の任務、ヴァルキリー隊員の使う武器と魔法、その弱点等を、備え付けのホワイトボードを使って手短に講義する。どれもヴァルキリーのトップしか知らない機密情報だ。
「・・・流石は高校の教師をやっているだけのことはあるね。的確でわかりやすい説明だ」
「恐れ入ります」
「そうだな・・・。さっき教えてもらった暗号の話だが、ちょっとわかりにくかったので、もう少し詳しく教えてもらえないか?」
「はい・・・。それでは改めて。ヴァルキリーで用いられる暗号には簡易、通常、極秘の三種類があります・・・」
 ローズはホワイトボードにペンで書き込みをする。実際に用いられる具体例を書いていると、シモンが立ち上がり、ローズの後ろに回りこむ。
「・・・シモン長官?」
「気にしないで続けたまえ」
「は、はい。・・・えぇと・・・まず簡易暗号ですが・・・」
 シモンはローズの胸を背中から鷲掴みにする。ローズは一瞬びくっと身体を強張らせるが、そのまま気にする風もなく説明を続ける。
「・・・簡易暗号は短時間での符号化と解読も目的としたもので、それゆえに甘いつくりではありますが・・・」
 シモンはローズの上着の紐をいくつか解いて、服の下に手を入れて胸をまさぐり始める。
「・・・戦場においては・・・ん・・・速度が最も重視される・・・あ・・・こともあるので・・・」
 シモンがローズの乳房を嬲りつづける間、時々鼻にかかった甘い声をあげつつも、ローズはレクチャーを続ける。頬はほんのり紅くなり、汗がにじんでいる。
「・・・続いて・・・通常暗号ですが・・・はぁ・・・」
 シモンの手がローズのスカートの中に滑り込み、下着の上から淫豆をさする。
「・・・電子的処理による符号化を利用しておりますので・・・基本的には解読は不可能ですが・・・」
 シモンの指は時に強く、時に弱くローズの敏感な部分に触れる。時折確かめるように下着の脇から肉襞とその奥の淫裂の具合を調べる。潤いが増して、くちゅ・・・という湿った音をたてる。
 ・・・あ・・・そんなところ・・・触られたら・・・。シモンの指が敏感な部分をかする度にローズの思考が白く弾ける。無意識のうちに腰をくねらしている。吐息が熱い。もう胸はすっかりはだけているのだが、そこまで意識が回らない。ただ、司令官として、長官の命令を忠実に果たす・・・それがローズにとっての最後の理性のよすがであった。
 しかし、その長官ことシモンは、ローズの思いとは裏腹にローズの敏感な部分を徹底的にまさぐる。
「・・・時として量子暗号との併用により・・・きゃ・・・」
 シモンがローズの耳たぶを噛むと、ローズの動きが止まる。
「・・・どうした、ローズ司令。続けないのか?」
「あ・・・は・・・はい・・・。ちょっとびっくりしたもので・・・」
「これくらいのことで驚いていては司令の仕事は勤まらないぞ」
「も、申し訳ありません・・・」
 ローズは震える指でホワイトボードに文字を書いていく。ローズは丁寧に書こうとするが、シモンが淫唇をさするたびに、文字はくねくねと揺れ動いて乱れてしまう。
「さ、最後に・・・はふぅ・・・極秘暗号ですが・・・んん・・・」
 ローズの潤んだ瞳は時々恨めしげにシモンを見つめる。しかし、シモンはそんなことは意に介した様子もなく黙々とローズの身体を嬲りつづける。
「・・・・・・んん・・・あぁ・・・」
「どうした、ローズ司令」
 ローズはシモンに体重を預けて荒く息をしている。シモンはその間もローズの身体をやわやわと揉みしだいている。
 駄目・・・説明・・・しなきゃ・・・。長官の・・・命令だもの・・・。私は・・・ヴァルキリーの・・・司令・・・だから・・・。
 感度の高まったローズの肉を揉み尽すシモンの手は、あたかもローズの脳髄そのものを捏ねまわしているかのようだった。
「・・・・・・しゃべることもできないか・・・」
「・・・はぁ・・・んん・・・」
「そんな口は塞いだほうがいいな・・・」
 シモンはローズの顔を強引に向けさせると、唇を奪い、口腔を犯す。ヒルのように絡みつく舌がローズの舌を翻弄する。
 その瞬間、ローズの最後の理性はもろくも決壊した。
「んん・・・」
 くぐもった声をあげながら、ローズもシモンの首筋に腕を絡ませ、シモンの口腔から唾液を吸い取り始める。ごく、ごく・・・と喉を鳴らして唾液を飲み干す。
 シモンとローズが顔を離すと、二人の唇の間を唾液の糸がアーチをかけた。頬を上気させたローズが、ばつの悪そうな顔をしてうつむく。
「ヴァルキリーの司令官たるものが、こんなに淫乱だとはな・・・」
「・・・も・・・申し訳ありません・・・」
「・・・お前のような牝犬には調教が必要だな・・・」
「ちょ、調教って・・・何のことですか・・・」
 シモンがテーブルの上の淫具の中から、尾のようなものがついたバイブと、鎖のついた首輪を取り出した。
「・・・ローズ。この指を見ろ・・・」
 ローズの目の前にシモンが指を突きつける。ローズの視点がシモンの指先に集中する。「今から俺の指がお前に触れる・・・。すると、触れた部分は犬になる」
「い、いぬ・・・」
「指をじっと見つめるんだ・・・いいな」
「い、いや!止めてください!シモン長官!!そんなことが許されると・・・」
 シモンは叫ぶローズを無視してローズの唇を指で触れる。
「・・・わ、わん!わん!」
 思ってるんですか!と言い放ったつもりだったのに、出てきた声が犬の鳴き声だったので、ローズは自分の口を思わず手で塞ぐ。
「わ、わん!わぅん・・・くーん・・・」
 うそ!・・・うそ・・・そんなことって・・・。
 何を言おうとしても、ローズの口からは犬の鳴き声しか漏れてこない。本人が最もショックを受けている。
「フフフ・・・まだ信じられないか。君ほどの聡明な女性が意外だな・・・。現実を受け入れたまえ・・・」
 シモンの指が宙をさまよう。ローズはそれを必死で避けているが、その視線は常に指先に釘付けだ。シモンはフェイントをかけてローズの太腿に指を触れる。
「きゃうん!」
 ローズの足からがくりと力が抜け、床に四つん這いになる。
「犬が立っているのは変だからな・・・」
「くぅ〜ん・・・」
 ローズは涙目になってシモンを見上げる。自分に起きていることがまだ信じられないようだ。
「くっくっく・・・恥ずかしいか?」
「わん!わわん!」
 戻してください!早く!!とローズは抗議の声をあげる
「さて・・・最後に脳味噌を牝犬に変えてあげよう・・・これで君は俺のペットになるんだ・・・身も心もな従順なペットに・・・」
 シモンの指がゆらりと動く。その瞬間、ローズは身を躍らせてシモンに飛び掛ってきた。
「わわ!」
 シモンはもんどりうって床に仰向けの状態で踏み敷かれる。ローズが犬歯を光らせてシモンの喉に噛み付こうとした瞬間、シモンはローズの頭をがっちりと両手で挟み込んだ。「わん!わわん!わん・・・わん・・・きゃうん・・・・・・くーん」
 初めは激しく叫び声をあげて身体を揺さぶり抵抗をしていたローズだが、次第にその抵抗は弱々しくなり、怒りに燃えていた瞳はとろんとして、霞みがかっていく。最後には甘えるような声を出しながらシモンの首筋をぺろぺろと舐め始めた。
「よしよし・・・いい子だ・・・」
 シモンがローズの髪の毛を撫でると、それに甘えて頭を擦り付けてくる。
 シモンは手にもっていた首輪をローズの首につけ、尻尾のような飾りのついたバイブを淫液のしたたるローズの肉襞にずぶりと埋め込む。
「きゃん!」
 びくっと背筋を強張らせたローズだが、しばらくすると尻を振りながらしきりに尻尾を揺らす。
「ふふ・・・気に入ったか?」
「わん!」
 ローズは心底嬉しそうな笑みでシモンを見つめる。
「そうか・・・さて、散歩に行こうか。ローズ」
「くぅん・・・」
 シモンの足に身体をすりつけながら、甘い声で鳴くローズ。赤い首輪からは太い鎖が伸びている。上着がはだけているので、豊かな乳房が重力に引かれてゆらゆらと揺れている。尻からはバイブが突き出し、その先からは房のような尻尾が垂れ下がっている。バイブの刺さった淫裂から太腿につつっと愛液が垂れる。
 シモンはテーブルの上の道具をいくつか袋に入れると、それを持ってドアを開けた。・・・ドアの脇には座り込んでいる人影がある。・・・サファイアだ。
「・・・どうなさったのですか、サファイア様」
 サファイアはシモンを上目遣いにシモンを見た。顔は紅潮して、身体をもじもじとくねらせている。
「・・・シモンの部屋にいなかったから・・・。色々探してたら・・・ここで声がしてたから・・・その・・・」
「サファイア様、お立ちください」
 シモンの有無を言わさぬ声に気圧されるように、思わずサファイアは立ち上がる。
 シモンは遠慮なくサファイアのスカートの中に手を潜らせ、秘部に触れる。元々湿っていた秘部は、シモンの指が触れた瞬間、泉のようにじゅくじゅくと潤んでいく。
「・・・・・・」
「・・・ち、違う!こ、これは、その・・・ここでの声を聞いて・・・その・・・つい・・・、だから・・・自分で慰めたわけじゃない・・・から・・・・・・・・・約束は・・・守ってるから・・・」
「・・・約束は守ってるから・・・何ですか?」
「・・・だから・・・その・・・おしおき・・・してほしくて・・・シモンをずっと待ってた・・・」
 四つん這いのローズは、サファイアとシモンを不思議そうに見ている。
「・・・今から犬の散歩に行くところです。一緒に行きましょう・・・サファイア様」
 いつものサファイアの姿からは想像もつかないほど従順に、彼女は頷いた。


 外は暑くもなく寒くもなく、快適な気候だ。月は満月に近く、あたりを照らしている。 ここら辺は夜間の人通りが少なく、あたりには人影は無い。
「・・・その・・・ローズは何でそんな格好なんだ?」
「彼女は犬ですから」
「くぅん」
 シモンは道路端のベンチに座るとローズを抱きかかえる。ローズはシモンの頬をぺろぺろと舐める。
「犬・・・って・・・」
 シモンはローズを解放する。ローズは大きく伸びをすると、舌を出してハァハァと息をしている。
「さて・・・躾はどうかな?ローズ、お手だ」
「わん」
 ローズはシモンの手に自分の手を載せる。
「伏せ」
 地べたにガバッと伏せる。
「チンチン」
 ローズは両手をだらりと下げ、膝を曲げたまま背筋を直立させる。いわゆる犬のチンチンの姿勢だ。股を開いてスカートの中味が丸見えになり、胸がふるふると震える。
「賢い犬だな・・・。そうしたらフェラだ」
「わぅん?」
 ローズは小首をかしげていたが、やがてシモンの方に歩み寄るとズボンに手をかけ口でずり下ろそうとする。しかし手が不器用になっているのか、下ろすことができない。
「そうか、すまんすまん」
 シモンは自らズボンを下ろす。シモンの性器は下着を押し上げている。ローズはシモンのトランクスを口をつかってずり下ろした。
「きゃうん。・・・あむ・・・」
 ローズはシモンのモノを口でとらえて、飴玉を転がすように舐め始める。
「おっと・・・犬だからといって噛むんじゃないぞ?」
「んん・・・」
 ローズは主君のモノを舐められるのが嬉しいのか、腰をふるふると震わせる。そのたびにローズのバイブにつながった尾がゆれる。再び淫裂からしたたる愛液の量が増える。
 サファイアはそんな二人の姿を唾をゴクリと飲んで見守っている。
「・・・サファイア様、ローズのバイブのスイッチを入れてやってもらえませんか?」
「・・・あ・・・あ・・・」
 サファイアはまともに返事を返すことができない。ただ、シモンの言われるがままにローズの膣口から飛び出すバイブのスイッチを入れる。
 ヴィーーンという音とともにバイブが生き物のようにローズの中身を捏ね上げ始める。「わふ・・・ふぁふ・・・ふぁ・・・ん・・・」
 ローズがたまらず身体をびくびくとわななかせる。
「おっと・・・口が留守になってるぞ・・・」
 シモンが鎖をぐいっと引っ張る。ローズは一度口からシモンのモノを離し、サオとカリを舌先で舐めまわすと、「くぅん」と甘い声をあげて再び深々と喉奥まで咥え込んだ。
じゅぷ・・・という音をたてて唾液がローズの唇からこぼれ落ちる。
「サファイア様・・・ローズのバイブを軽く抜き差しして・・・彼女を昇りつめさせてやってください」
「・・・あ・・・ああ・・・」
 サファイアはローズの股に顔を寄せる。淫臭が漂う秘部の周囲の下着は既にぐしょぐしょに濡れ、赤黒く充血した襞は原始的な生物のようにてらてらとぬめっている。サファイアはバイブを掴むと、ローズの蜜壷を捏ねるようにストロークしはじめる。くちょん、くちょんという音とともに、グロテスクな光を帯びたバイブが動く。
 ローズは顔を火照らせながら熱心にシモンのモノを刺激しつづける。時折上目遣いでシモンを見るとろんとした瞳は、主をただ気持ちよくさせたい一心の忠犬のものでありながら、淫欲に塗れた牝犬特有のものでもある。シモンはローズの乳首をコリコリ摘む。勃ちあがった乳首は恥ずかしげもなくその存在を主張している。シモンはそのまま手でローズの髪の毛をつかみ、激しくイマラチオをさせる。ローズは「んん・・・」と鼻を鳴らし、主君の望みに応えようとする。じゅ、じゅ、ぷちゅ・・・じゅ・・・くちゅ・・・。
「出すぞ・・・ローズ・・・」
 シモンは一層激しく腰を動かす。ローズは唇、頬の裏、舌、喉奥を駆使してシモンのものを刺激し、首を激しく動かす。サファイアも陶然とした表情で息を荒げながらバイブでローズを捏ね上げる。思わず手で自分の淫部を慰めようとしてしまうのを必死でこらえている。
「くぅ・・・!」「・・・んん・・・!」
 シモンは最後に激しく一突きをすると、シモンはローズの喉奥に白い精を放出し、ローズも同時に登りつめた。


 シモンはその場に倒れ伏したローズを引きずって道の隣の芝生に寝かしてやる。
「・・・あれ、サファイア様・・・。どうなさったのですか」
 サファイアは切なげに身体を震わしている。
「・・・・・・・・・お願い・・・もう・・・我慢できない・・・」
「何がですか?」
「・・・ずるいぞ・・・シモン・・・。私にそこまで言わせるのか・・・」
「私も察しの悪い男でして・・・申し訳ない・・・」
「・・・私に・・・おしおきしてくれ・・・。私も・・・ローズと同じように・・・昇りつめさせてくれ・・・。もう・・・このままじゃ・・・おかしくなりそうだ・・・」
「はぁ・・・」
 シモンは気のなさそうな声を出す。
「・・・一つ条件があります」
「じょ、条件?」
「・・・ベリル様の秘密のことです」
 シモンの言葉に、サファイアがびくりと身体を強張らせる。
「な、何のことだ?」
「・・・まぁ、私もこの組織に随分と長いこといるので、いろいろと噂は耳にしているんですよ・・・。ただ、決定的なことはまだ存じ上げないので、サファイア様からお伺いしておこうかと思いまして・・・」
「・・・・・・貴様・・・まさか・・・」
「・・・余計な詮索はしないでいただけますか?」
「・・・そんなこと・・・私が言うと思ってるのか?」
「どうでしょう?言ってくださらないのなら・・・もう、このまま一人でお帰りくださって結構ですよ?」
 シモンはローズの秘部からバイブをきゅぽんと抜き取る。愛液でぐずぐずのバイブは、月明かりと外灯の光を受けてシモンの手の中で妖しく光る。
「我慢・・・できるのですか?・・・できませんよね・・・、サファイア様・・・。あなたの身体はどんどん燃え盛っていきます・・・もう・・・我慢できません・・・早く・・・入れてもらわないと・・・貴方はおかしくなってしまうでしょう・・・」
 シモンはバイブのスイッチを入れたり切ったりしながら、サファイアの目の前でゆらゆらと動かす。サファイアの虚ろな目は自然とうねうねと蠢くバイブの先端を見つめる形になる。サファイアの口が緩み、舌が自然と伸びてバイブを舐めようとして硬直した状態になっている。
「・・・三秒以内にこたえてください・・・これがラストチャンスです。・・・3・・・2・・・」
「・・・言う・・・言う!言う・・・、だからお願い・・・」
 サファイアはシモンににじりより、バイブを舐めた。屈服宣言だった。



「・・・なるほど・・・。うーむ・・・」
 サファイアの言葉を聞いてシモンは唸った。
「・・・これは・・・使えるのか?」
「・・・・・・・・・」
 サファイアは俯いている。何はともあれ、自分の快楽のために主君を売ってしまったのだから。
「まぁ・・・いいでしょう。サファイア様、約束でしたから・・・お仕置きをしてさしあげます」
「・・・あ・・・」
 シモンは袋の中からカチューシャを取り出した。ただのカチューシャではなく、犬の耳のようなものがついている。
「折角です。ローズと同じように・・・私の犬になってください」
「・・・え・・・」
「サファイア様・・・このカチューシャをよく見てください・・・。このカチューシャが貴方の頭に取り付けられると・・・貴方の身も心も・・・犬になります・・・。私に従順な小犬に・・・」
 サファイアの目がシモンの持つカチューシャに注がれる。
「・・・さっきのローズを見たでしょう・・・。私の犬になれば・・・この上ない快楽が与えられます・・・。今抱いている罪悪感も全てきれいになくなります・・・犬はそんなことを考えなくていいのです・・・ただ飼い主の命令に従っていれば・・・全てが許される・・・それが犬です・・・」
 サファイアがごくりと唾を飲み込む。
「さあ・・・、ご自分で取り付けてください・・・。そして・・・私の犬になるんです・・・。忠実で淫乱な牝犬にね・・・」
 シモンがサファイアにカチューシャを手渡した。サファイアはそれをじっと見ていたが・・・やがてゆっくり手を動かすと自分の頭にそっと嵌めた。シモンを見つめる瞳がその途端に霞んでいく・・・。
「サファイア様・・・よくお似合いですよ・・・」
「くぅん・・・」
 シモンはサファイアに抱き寄せられると、甘い声で鳴いた。シモンはサファイアの唇を奪い、舐めまわすと、サファイアもそれに応える。シモンが胸をさわると「くふん」と鼻を鳴らす。頬を摺り寄せ、シモンを見つめる目は・・・邪気の無い、ただ甘える子犬の目・・・それで居て淫乱な牝犬の目・・・。シモンがカチューシャについているふわふわとした作り物の耳を撫でると、サファイアは気持ちよさそうに目を細める。
 シモンが手を離すと四つん這いになってシモンのイチモツに口を寄せようとする。
「まあ待ちなさい。せっかくだから、あっちの牝犬と一緒に愉しみましょう・・・」
 シモンはいつのまにか起き上がり、舌を出してハァハァと腹を動かすローズの方を指差した。
 
「ローズ、サファイア・・・二人ともキスをして、相手を慰めてやれ」
「くぅん」「わん・・・」
 二人は芝生の上で抱き合い、お互いの頬を舐めあっている。お互いの顔が唾液でベトベトに濡れている。
 シモンはそんな二人を横目にもってきた袋の中から双頭のディルドーを取り出す。
「二人とも、これの先を舐めろ」
 ローズとサファイアは突き出されたディルドーを丹念に舐めまわす。
 シモンは濡れそぼった張型をローズとサファイアの濡れた淫裂に差し込んだ。二人とも抱き合ったままビクリと反応し、やがてゆっくりと腰を動かし始める。自分の動きは相手に伝わり、それはまた自分に返ってくるのだ。
 シモンはサファイアの上着を剥ぎ取り、乳房を剥き出しにした。
「・・・相手の乳首も舐めてやれ・・・」
 シモンの言われるがまま、お互いが相手の乳首を舐め、首筋に唇をあて、耳たぶを甘噛みする。青臭い芝生の中で、艶かしい白い肌を晒して二人の牝犬はまさぐりあう。
「サファイア・・・入れるぞ・・・」
「わぅん?」
 ローズを組み伏した形のサファイアの膣口からディルドーを抜くと、シモンは自分の肉棒でサファイアを突き刺した。
「きゃうん!・・・あぅん・・・」
 シモンはそのままサファイアの締め付ける媚肉を貫くように腰を動かし始める。
「くぅん・・・」
 切なそうな声をあげるサファイアの唇をローズが奪う。サファイアがローズの舌に応える。二匹の牝犬がお互いの口を犯しあい、シモンがサファイアの下の口を貫く。
 ずじゅ、ずじゅ、ずじゅ・・・、待ちに待った肉棒を受け入れ、サファイアの秘部からは愛液があふれかえっている。ディルドーのもう片方だけが刺さったままのローズは、切なげに腰をくねらせ、自分の乳首をサファイアの乳首で刺激することで疼きを誤魔化そうとしている。獣欲と唾液に塗れた二人の表情は、とても今まで殺し合いをしていた組織の幹部同士のものとは思えない。お互いがお互いを慈しみ、愛しあい、嬲りあい、奪いあい、慰めあい、与えあう・・・。ただ、牝の本能に任せて二人は互いに互いを高めあっていく。
 シモンはサファイアの胸を後ろから捏ね上げ、うなじを舐める。「ふわ・・・くぅん・・・」という甘い声を出してサファイアは反応した。
「サファイア・・・お前は俺のものだ・・・。安心しろ・・・」
「くぅん・・・」
 耳元で囁くシモンをペロペロと舐めるサファイア。
「ふふ・・・ローズもだ。安心しろ・・・」
 ちょっと悲しそうな顔をしたローズにもシモンは声をかけてやる。唇に指を寄せると、その指をちゅうちゅうとローズは吸い上げた。
「いくぞ・・・二人とも・・・」
 シモンは腰を一層激しく動かし、同時にローズに突き刺さるディルドーのスイッチも入れた。ずじゅ、にゅぷ、ぺちゃ、くちゅ、といった粘液と粘膜がこすれ合う音と、ブゥーーンとバイブが震える機械音。「くぅん」「はぁ・・・わふぅ・・・」という淫声・・・媚声・・・。ただそれだけが三人の聴覚を支配する。
「ああ!」「きゃぅん!!」「ぐっ!」
 シモンが射精すると同時に、二人もアクメに達した。



 シモンは、気だるい快楽に包まれている二人に暗示を与える・・・。その暗示は、二人の心の奥底に深く浸透していった・・・。


 その後、サファイアとローズを部屋に帰した後−−当然、犬耳カチューシャと首輪は回収した−−、シモンはあくびをしながら自分の部屋に向かった。
 途中、白衣を着た小さい影が見えた・・・。ダリアだ。
「・・・よぅ」
「・・・ご苦労。どうだった?」
「お前のテープは凄いよ。俺の出る幕じゃないな・・・」
 シモンはローズに関するレポートを書いたノートをダリアに手渡した。
「んじゃ、俺は寝かせてもらうよ・・・さすがに疲れた・・・」
 シモンが手を振ってその場を立ち去ろうとしたが、ダリアはそれを遮った。
「・・・シモン・・・お前、本気であの娘たちを助けようと思ってるのか?」
「・・・・・・・・あぁ・・・」
 今更嘘をついても仕方が無い。
 ダリアは呆れたように言った。
「・・・シモン。お前があの娘たちに抱いている感情は、単に自分の思い通りになる、自分になついているペットに対する感情に過ぎん。私たちが人間どもの命を思いのままにすることと、本質的な違いは無い・・・。お前は自分の行為に酔っ払ってるのかもしれないが、それは単なる偽善だぞ。それを理解しているのか?」
「・・・まさかネメシスで『偽善』なんて言葉をきくとは思ってなかったな」
 シモンは苦笑した。
「俺は別に自分がしようとしてることが思いやり溢れる善行だなんて思ってないぜ・・・。そんな善人が、ことあるごとに自分のモノをしゃぶらせたりするもんか」
 シモンの乾いた笑いを受け流してダリアはシモンの脇を通り過ぎる。
「・・・シモン、お前が賢明な選択をすることを祈ってるぞ。私はお前を『処理』したくない」
「・・・」
 ダリアが遠くに見えなくなった後、シモンはボツリと呟いた。
「・・・俺もお前と喧嘩なんぞしたくないよ」


 シモンは部屋に入り、ベッドに横たわった。
 明日、ベリル総帥がどういう判断を下すかはわからない。しかし、もし3人を処刑する、ということであれば・・・最終手段をとるだけだ。そのためのシナリオはシモンの頭の中で煮詰まりつつある。
 しかし、問題が一つある。ダリアの存在だ。
 ダリアを放置しておいては、最後の段階で寝首をかかれる恐れがある。ヴァルキリーの3人は−−いや、サファイアも含めれば4人−−、ダリアの支配下でもある。ダリアがその気になれば、彼女たちをつかって自分を殺すことも雑作も無い。
 となれば、一番直接的な方法は・・・前もってダリアを洗脳しておくことだ。・・・可能性はさておき。
 しかし、・・・同時にシモンは考える。既にヴァルキリーを洗脳し、サファイアも洗脳した。そしてベリル総帥を・・・洗脳、ないしは・・・最後の手段をとって排除した上で・・・・・・ダリアをも洗脳する。となれば、ネメシスを、いやこの地球をどうするかは、俺の心ひとつ、ということになる。俺が全てを判断し、それが全て実現する・・・。
「・・・そんな甲斐性ないよなぁ・・・」
 万能な者、あるいはそう思い込んでいる者であればこの上なく甘美な体験かもしれないが、シモンにはどうにもしんどく感じられる。誰かに助言や相談が出来ずに、全てを自分の判断でやっていかなくてはならない・・・そんなことができる自信はシモンにはさらさらなかった。
 ・・・今まで、シモンに助言を与え、軌道修正をしてくれたのは、ダリアだった。そんな彼女を洗脳して、意思無き人形にしていいのだろうか?
 ここでもう一つの選択肢が浮上する。・・・ダリアを洗脳することなく、こっちの陣営につける方法だ。もとより、ダリアを洗脳できる可能性は低い。だったら、薬も催眠術も使わずに潔く説得を試みて、自分のやることに協力、とまではいかなくても、せめて自分のやることを黙認してもらうのだ。
 ・・・しかし、もし説得に失敗したら?あるいは、説得されたふりをされて、結局裏切られたら?・・・不意打ちができなくなる分、圧倒的に不利だろう。その場合は、間違いなくシモンの命は無い。
 シモンの思考は、ここでいつもループする。

 時間は、もう無い。

「・・・よし、決めた。俺は・・・」








 


 

 

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