洗脳戦隊


 

 
第八話 決戦(2)


 トゥルルル、トゥルルル。ガチャ。
「はぁい、こちら来来軒」
「すみません、冷やし中華1丁、キュウリトマト抜きで」
「すみませんねぇ、うちの冷やし、キュウリトマトは抜けないんですよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・ダリアか」
「・・・・・・シモンだな」
 いつもの符牒を交わす。シモンは手持ちの電子無線−−これは故障中の無線機とは別だ−−でダリアに連絡を取っている。ダリアがこわれた無線機の設計者なのだ。
「どういう風の吹き回しだ?もうお取り込み中の時間かと思ったが」
「それどころか、今、絶体絶命の危機だ」
「・・・モテる男は辛いな・・・シモン」
「いや、そういう色事ではなくてだな・・・、本当にピンチなんだ」
「・・・いつものことだろ。しかし電波が悪いな。もう少し大きな声で話せないのか」
「・・・・・・訳あって大声では話せん。我慢しろ」
 ダリアの調子は相変わらずだ。シモンは手短に用件を話す。
「・・・なるほど。とりあえず裏ブタを開けてみろ。・・・そうだ。すると赤と青のリード線があるな」
「・・・おぅ、あるぞ。切るのか?」
「・・・・・・それを切ると爆発するから気をつけろ」
「そんなことを教えてる暇があったら直し方を教えろよ!」
「・・・・・・」
「ああ!切るな切るな!落ち着け!!」
「・・・大声、まずいんじゃなかったか?」
「・・・・・・・・・・」

 倉庫の一室で緊迫感があるかないかよくわからない会話がなされる一方で、ローズは獲物を狙う豹のような足取りで2階にあがった。手には愛用のメイス。一つ一つドアを蹴破っては中を観察する・・・。しかしシモンもルピアも見当たらない。
 倉庫の2階の廊下は細く、両側に部屋が一つずつある。後7部屋・・・。ローズの静かな足音だけが廊下にこだまする。

「・・・リード線がどこも外れていないとなると、接点不良というわけではなさそうだな。・・・お手上げだな」
「こら、諦めるのが早いぞ!もう少し考えろ!」
「とはいえ、私がそこにいればともかく、声の説明だけでは原因がわからん。おそらく部品がいかれてしまったのだろう。私の可愛い無線機4号、安らかに眠れ。アーメン・・・」
「・・・ついでに俺も安らかに眠れそうなんだが・・・」
「だから言っただろうが。油断は禁物だと・・・」
 ピ。長い小言になりそうだったので、シモンは電子無線のスイッチを切る。
「・・・・・・・・・逃げるか」
 今からならなんとか逃げられるだろう。
 しかし、カーネリアに洗脳したことは、おそらくローズにはばれている。警戒されているこの状態で明日までにローズを倒すのは至難。となると、今日ローズに殺されるか、明日ベリル総帥に処刑されるかの問題である。
「考えろ・・・考えろ・・・」
 ドアを開ける音がまた近づいた。


 バタン。
 4つ目のドアを開く。さっきまでの暗い部屋とは違い、この部屋には陽光が差し込んでいる。埃っぽい部屋にはベッドが並べられており、その一つのベッドに緑色のローブを着た少女が横たわっている。
「ルピア!」
 ローズはルピアにゆっくり近づく。彼女の腕は縛られているが、特段外傷は無い。

「ルピア・・・しっかりして・・・」
 本当だったら駆け寄って揺さぶるところだが、ローズはルピアに対して警戒を解いていない。ここは戦場であり、全てに罠がありえるのだ。・・・当然とはいえ、こういう思考が当たり前のようにできるようになった自分が悲しい。
「・・・うん・・・あ・・・」
 ルピアはゆっくりとまぶたを開き、起き上がる。
「・・・こんなところで眠りこけるだなんて、割と神経太いわね、ルピア」
 ローズの軽口に目をしばしばさせるルピア。
「あ、ローズ司令、あれ、私なんでこんなところに・・・」
 ローズはしばらくルピアを観察する。・・・ちょっと寝ぼけていることを除けば、いつものルピアだ。・・・大丈夫だろう。ローズはルピアの腕を縛る紐をナイフで切る。
「・・・説明は後。とりあえず立てる?」
「・・・あ、はい・・・すみません・・・痛っ!」
 ルピアが立ち上がろうとした途端、足首をおさえてうずくまる。
「どうしたの?」
「・・・足を挫いたみたいです・・・」
「仕方ないわね、ほら、おぶさりなさい」
「すみません、ローズ司令」
 ローズはルピアを背負う。背中に柔らかなルピアの重みが加わる。
「・・・それにしても、あなた、胸大きいわね・・・。ちょっと羨ましいわ・・・」
「・・・こんなところでそんなこと言わないで下さい・・・」
 いつも司令部で繰り広げられるような会話を交わしながら、廊下に出る。
「・・・ローズ司令、これからどうするのですか?」
「・・・シモンを見つける」
「・・・なぜです?」
「・・・本当はあなたを助けたら今日はそれで終わりにしようかと思ったんだけど・・・、あの男、カーネリアを操ってこのローズ様を襲わせたからね。・・・落とし前、つけてあげようと思って」
 ローズの口調は笑っているが、目が笑っていない。
「・・・・・・司令の落とし前、怖いです・・・」
「今日はちょっと虫の居所が悪いからね・・・、ひょっとしたら血の雨が降るかもね・・・」
「・・・・・・」
 ローズは次のドア開ける。暗い部屋にはダンボールが山積みになっていて誰もいない。
 残る部屋は二つ、となった瞬間、突然奥のドアが開いた。黒い服を着た男、シモンだ。こちらを振り向きもせず廊下の突き当たりの階段をドタドタと駆け下りていく。

「待ちなさい!」
 ローズが背中のルピアをその場に下ろして追いかけようとする。その瞬間、下ろそうとしたルピアが、ぐっ、としがみついてくる。
「な?ルピア、ちょっと下りて!追いかけられないわ!!」
「・・・司令。追いかけて・・・追いついたら・・・シモンを殺すんですか?」
「・・・な、何言ってるの、いいから降りて!」
 しかし、ルピアはローズの首に巻きつけた腕を緩めない・・・。いや、むしろ締め上げ始める・・・。
「・・・シモン・・・様を・・・シモン様を傷つけるなら・・・ローズ司令でも・・・許さない・・・」

「・・・ル、ルピア、・・・・・・あなたもやっぱり・・・」
 ルピアの締め上げる力がぐっと強まる。ローズは構わず前に進もうとするが、ルピアの足がローズの足に絡められ邪魔をする。
 ローズは身体を思い切りよじり、ルピアを何とかふるい落とす。
 ルピアはゆっくりと立ち上がり、杖を構える。
「・・・捻挫も嘘だったわけね・・・」
「・・・・・・ローズ司令、・・・ごめんなさい・・・・・・」
「・・・あなたは・・・ヴァルキリーなのよ。ネメシスを倒すことが使命なの・・・、思い出して!」
 ルピアはその言葉を聞いてうつむく。
「私には・・・、わからない・・・、どっちが正しいのか・・・」
「どっちが、って・・・。ネメシスは人類の敵なのよ、わかってるでしょう!」
「そうですよね・・・。ネメシスは人類の敵・・・ですよね・・・。でも・・・」
 ルピアが顔をあげる。その瞳は熱っぽく潤み、霞がかかっている。
「・・・私は・・・シモン様が・・・好きなんです・・・。シモン様無しには・・・生きていけない・・・。だから、ここは通せません・・・、ローズ司令・・・」
「・・・・・・・・・説得の余地はないみたいね」
 ローズはメイスをゆっくり構える。ルピアも杖を握り締める。
 一瞬の静寂、だが詠唱は同時だった。

「ウィンドブリッド!!」「スプラッシュ・サンダー!!」

 風の咆哮と、稲妻の閃光が、薄暗く狭い廊下に交錯する。轟音が倉庫のヤワな壁を乱打する。床の土埃が舞い、視界がゼロになる・・・。

 もうもうと舞った埃が落ちつくと、人影が一つ、・・・倒れた人影がもう一つ。

「・・・ルピア・・・」
 床に倒れ込んだルピアにローズが話し掛ける。気絶しているが、多少手加減したから命に別状は無いはずだ・・・。一方ローズには傷一つない。魔法攻撃は、より強大な魔法攻撃で相殺される。ローズとルピアの魔力の差を考えれば、ルピアの攻撃がローズにかすり傷一つ負わせることができないのは明らかだった。
「・・・私と勝負したらどうなるか・・・、あなたならわかってたでしょう?」
 あの冷静沈着なルピアがそんな状況判断すらできなくなるほど、シモンのことを想ってたのだろうか。たとえそれが洗脳によって作られた感情だったにしても。
「・・・ふざけたことを・・・」
 洗脳の力の恐ろしさを改めて思い知ると共に、ローズの中でシモンに対する怒りがさらに激しくなる。
 突然、ローズのポケットが震える。携帯だ。
 ディスプレイには「松田朱美」の名前が表示されている。
 ローズは一瞬躊躇した後、スイッチを入れる。
「誰・・・?」
「司令・・・」
 耳元に押し当てた携帯から流れる声は紛れも無くカーネリアの声だった。
「・・・カーネリア、どうしたの?」
「司令・・・たすけて・・・」
「今どこにいるの?」
「・・・倉庫の・・・広い・・・所・・・」
「・・・待ってなさい、今行くわ・・・」
 無論、罠だ。
 そんなことは承知だが、カーネリアを見捨てるわけにはいかない。
 油断はしない。が、彼・・・シモンと私の能力差を考えれば負ける要因も無い。
 ローズは携帯を手にしたまま走り出した。

 階段を下り一本道の廊下を駆け抜け、ローズは大きな扉の前に出た。ここが最初に来た大倉庫につながるらしい。
「・・・司令・・・ろーずしれい・・・」
 うわごとのように繰り返すカーネリア。
「待ってて、今行くから」
 しかし、観音開きの大きな扉のレバーを回しても、びくともしない。レバーの上にはダイヤルがある。・・・どうやら数字を回して開ける形式らしい。
「カーネリア、この鍵の開け方わかる?」
「・・・・・・開け方は・・・・・・・」
 さらに雑音がひどくなったので、さらに耳にスピーカーを押し付ける。すると、電話の相手が変わる気配がした。
「・・・ふふふ・・・来たか。ローズ」
 スピーカー越しの声が男の声になる。・・・どこかで聴いた懐かしい声・・・。・・・シモンの声だ・・・。
「・・・あら、意外と元気そうね、シモン。さっきは随分と慌てて逃げたようだけど」
「・・・まあこっちには人質がいるわけさ・・・。慌てる理由など何も無いのだよ・・・」
「それはそれは・・・・・・じゃあ、ここを開けてもらえるかしら?」
「・・・嫌だと言ったら?」
「・・・何なら、この建物もろとも、貴方をケシズミにしてもいいのよ・・・」
「・・・カーネリアもケシズミになるぞ・・・・・・。いいのか・・・」
「・・・悪党に妥協はしないの。・・・こういう状況、別に初めてじゃないしね・・・。私相手に駆け引きしようだなんて思わないほうがいいわ」
「・・・目的のためなら味方の犠牲も辞さずか・・・。さすがは『白い魔女』といったところだな。君のような胆力と冷酷な心を持ち合わせている人間は、ヴァルキリーには勿体無い・・・。是非ネメシスにきてもらいたいね」
「ふふふ、今度はスカウト?あなたも大変ね・・・。まあ、失業したら考えてあげてもいいわ。ただ、今は自分の仕事をする必要があるわけ・・・。ねぇ、シモン。お互いの幸せを考えてみない?あなたがカーネリアを解放するなら・・・、あなたのことは見逃してあげるわ・・・」
「へぇ・・・、ヴァルキリーの司令官なんて頭が固いのかと思っていたけど、意外と融通が利くようだな。俺の上司も見習ってもらいたいよ」
 ・・・彼の最後の言葉には、なぜか本音が滲んでいるような気がする。
「・・・まぁいい。とりあえず、部屋にご招待しよう。その扉の開け方を今から言うから、よく聞くんだ」
「・・・音が悪いから、大きな声でお願いするわね」
「・・・まず、右と左にダイヤルとレバーがあるだろう。右のダイヤルを右に3回、左に1回、また右に4回回す・・・」
 ローズは一瞬迷う。ダイヤルを回した瞬間に爆発、といった罠がかけられているかもしれない。しかし、そんなことをするくらいだったら、さっきの無駄な会話の間に爆発させればよかったはずだ。
 ここは素直に彼に従ってみよう。カチチチチ、と金庫の扉についているようなダイヤルをローズは回す。
「次に左のダイヤルを、右に1回、左に5回、右に9回・・・」
 言われたとおりにする。面倒だが、こんな所で文句を言っても仕方が無い。
「・・・よし、そうしたら、そこの左のレバーを引き抜いてみろ・・・」
「引き抜く・・・って・・・これ・・・」
 引き抜いて、ローズは思わず目を見張る。レバー、と思っていたのは・・・いわゆる電動バイブ、というやつだった。やたらにリアルな形状とつややかな黒光りが相まって、グロテスクさを醸し出している。
「まあ形はナニだが、気にするな。それを今抜いたところに戻して右に2回回せ・・・」

「いい趣味してるわ。ほんと・・・」
 言われたとおり2回右に回す。
「・・・そうしたら右のレバーをねじれば開くはずだ・・・」
 レバーをねじる。しかし、扉は開かない。
「・・・開かないわよ・・・」
「・・・うむ、らしいな」
「・・・・・・ケシズミ、ご希望?」
「待て待て。・・・多分長いこと使っていないレバーだからな。滑りが悪いんだろ。すまないが、そのバイ・・・もとい、左のレバーを水で濡らして滑りをよくして、再チャレンジしてくれ」
「・・・水なんて、無いわよ・・・」
「・・・お前の唾液で濡らせばいいだろ」
「・・・・・・本当に、いい趣味してるわね・・・」
 別に誰が見てるわけでもないのだから、こんなところで躊躇してもしかたない。生まれて初めて見るバイブを、ローズは口にふくむ。ゴム特有の匂いと感触が口腔と鼻腔を刺激する。自然と唾液が湧き出す。
「しっかり濡らさないと駄目だからな。舌を使って舐めまわせ」
 ローズは初めはちろちろと、やがて大胆にバイブを舐めまわす。ジュプ、ジュプ・・・黒いバイブがローズの赤い唇を出入りするたびに音を立てる。
「・・・いやらしい音がするな・・・、感じてるのか・・・?」
「・・・ふぉんふぁふぉふぉ・・・ふぁうふあふぇ・・・ふあいふぁふぉ・・・」
 そんなこと・・・あるわけ・・・無いわよ・・・、と答えたつもりだが、咥えたままではうまく発音できない。ローズの秘部は、この異常な事態に反応して潤んできているが、そんなことを言うわけにはいかない。右手を使って口からバイブを出し入れしつつ、ローズは左手に持った携帯に返事する。
「・・・よし、もう良いだろう。もう一回試せ」
 ローズは口から唾液で光るバイブを取り出し、穴に差し込みレバーを回す。しかしやはり扉は開かない。
「・・・・・・・・・」
「・・・あ、忘れてた。その鍵は生体認証タイプでな・・・本人の体液を認証に使うんだが、唾液だけでは弱いらしい・・・、すまないが、そこでそのバイブを使ってオナ○ーをして、お前の体液をまぶしてもらえないか?」
「・・・・・・・・・私、馬鹿にされているのかしら?」
「いや、今度こそ開く。やってくれ」
 シモンの声には有無を言わさぬ迫力があった。
「・・・・・・いきなり言われても、・・・すぐには濡れないわよ」
「・・・多少時間をかけてもいいさ・・・さぁ、やるんだ、ローズ・・・」
 ローズは携帯とバイブを持ちながらぼんやりとシモンの声を反芻していた。ノイズ交じりのシモンの声は残響を伴いつつローズの頭の奥に沁みいってくる・・・。なぜだろう。彼の声には何かをひきつける不思議な磁場を感じる。彼の声に従えば、全てが解決する気がする。・・・もちろん、気のせいだろうけど・・・。・・・仕方が無い。処女でもあるまいし、こんなところで恥ずかしがって大事な部下を見捨てるわけにはいかない。
 ローズはその場にしゃがみこむと、上着の紐を解く。白地を基調とした上質の生地で縫製された上着の前を肌けると、ピンクのブラに包まれた白く透けるような肌が現れる。成熟した女の持つ独特の肉付きは、ルピアやカーネリアにはまだ無いものだ。フロントホックのブラを外すと、たわわに実った乳房が弾けるように飛び出す。右手は携帯でふさがっているので、左手で胸を揉みほぐす。手のひら全体で下から乳房を持ち上げるように、そして、乳首にはいきなり触らず、乳輪からゆっくりと指で撫でていく。
 その姿を、ドアの上に備え付けてある監視カメラは逐一捉えているのだが、ローズはそれには気づかない。
「・・・んん・・・」
 エナメル地のスカートの下に左手を入れて、ショーツを脱ぐ。ベットリと陰毛が濡れ、ショーツを肌から剥がす時にまとわりついた。ガーターがあるから腿の途中までしかショーツを下ろせない。窮屈だが仕方ない。
 ショーツを下ろした手にバイブを握りしめ、ゆっくりと差し込む。ほてった花弁にバイブがあたると、ひやりとする。前もって唾液で濡れていたバイブはさほどの抵抗感も無く、ローズの陰唇に飲みこまれていく。
「・・・ローズ・・・何かおかしいことはないか?」
「ん・・・、おかしい・・・?何が?」
「・・・いや、気にしないで続けてくれ・・・」
 変な奴・・・、何がおかしいというのか。扉を開けるためにやるべきことを私はやっているだけなのに・・・。ローズはバイブのスイッチを入れた。ブィィィンという音とともに、張型は震え、うねり出す。粘膜がかき回され、意識がぼぅっとする。熱っぽい吐息が携帯のマイクにかかるが、そんなことを気にしている余裕は無い。
「・・・ん・・・あ・・・」
「・・・どうだ、ローズ・・・。濡れてきたか・・・」
「・・・あ・・・もうちょっと・・・・・・」
「・・・・・・あんまり愉しまれても困るんだがね・・・そろそろ抜いてくれないか・・・」
「・・・そ、そんなんじゃ・・・、待って・・・」
 ローズはゆっくりと黒光りするバイブを引き抜く。ぬらぬらと光りながらうねるバイブのスイッチを切る。ローズの手袋に唾液と愛液が糸を引きながら垂れてくる。
「・・・抜いたわ・・・」
「・・・よし、じゃあそれをもう一回差して、レバーを回せ・・・」
 ふらふらと立ち上がり、バイブを元の場所に差込み、右のレバーを回す・・・と、カチリ、という音と共に、扉が開く。
「・・・あ・・・開いた・・・」
「・・・うまくいったようだな。入って来い・・・ローズ。ただ、この電話はまだ耳から離すなよ・・・」
「・・・・・・はい・・・」
 ローズは火照る身体をそのままに扉を開けると、部屋に入った。


 広い部屋は、最初にシモンと出会った場所、カーネリアが操られて自分を羽交い絞めにした場所だった。ついさっきのことだったのに、もう遠い昔のような気がする。

 部屋の中央にはシモンが立っていた。おそらくはカーネリアの携帯を、片手にしている。相変わらず緊張感が無い。
「待ちくたびれたぞ、ローズ」
「・・・あんな手間がかかる鍵をかけた人間に、責任があると思うけど・・・」
「まあ、そういうな。おかげで非常に良いものを見させてもらったわけだし・・・」
 シモンの左手には携帯TVのようなものがある。
「ローズ、君のオナニー姿は、中々のモノだったよ。やはり大人の女性は違うな。テレビ越しの画像だけでもビンビン来るものがあったよ・・・」
「・・・何を・・・」
「ともかく、その姿はなんとかならないか。ちょっとこっちも目のやり場に困るんだが」
 ローズは自分の姿を見直す。胸ははだけ、腿には脱ぎかかったショーツが紐のようになっている。
「・・・!!」
 慌てて服をととのえるローズ。しかし、左手一本ではなかなかうまくいかない。ショーツはなんとかずり上げたが、ブラは上着の中に適当に押し込み、上着の前だけとにかく合わせる。なんで、自分はこんな格好を・・・。
 しかし、お互い声が聞こえる状態なのに、なぜ携帯を使って会話しつづけているのか・・・、ローズはそのおかしさにはまだ気づいていない。
 服をなんとかととのえて一息つくと、鋭い視線をシモンに放つ。いつものローズに戻っている。
「・・・・・・そろそろ終わりにしましょう。シモン」
「・・・何を?」
「決まってる。カーネリアを返してもらうわ」
「・・・そうか。おい、カーネリア。ローズ司令がお呼びだぞ」
 シモンが手を叩くと、物陰からカーネリアが現れる。・・・目には意思の光が無い。ふらふらとローズの方に歩み寄る。
「あなた・・・、二人を洗脳したわね」
「・・・まあな。ああ、そんなに警戒することは無い。もう、この娘たちを使ってお前を不意打ちしようだなんて思ってないから」
「・・・さっき、それをやった奴の台詞を、誰が信じられるかしら?」
 ローズは近づくカーネリアに警戒を解いていない。カーネリアが近づくと、腕を掴んで後ろ手にして、持っていた手錠をかける。カーネリアはそれには何の反抗もせず、なされるがままになっている。
「・・・部下を信頼できないとは悲しいねぇ。上司に信頼されない悲しさを知る者として、カーネリアに同情するよ・・・」
「・・・・・・本当、悲しいわ・・・。じゃあシモン、そうさせた責任、取ってもらえる・・・?」
 ローズは腰のメイスを抜こうとする。しかし、右手は携帯でふさがっている。左手で無理をしてメイスを抜くと、ゆらりと構えた。利き腕では無いが、ローズほどのものとなれば何の問題も無い。
「戦うのか?」
「・・・当然。私の可愛い部下をここまでされて、黙ってるわけにはいかないでしょ?」
「・・・そんな戦いばかりの生活では潤いが無いぞ。・・・ローズ。何ならお前も、ルピアやカーネリアのように全てを俺に委ねてみないか?・・・結構評判いいんだが」
「・・・・・・冗談にしても笑えないわね。だいたい、あなたの洗脳は薬を使うんでしょ
・・・。この間合いからじゃ無理ね」
「・・・そうでもないさ。もう、俺の仕掛けに君は嵌っているのだから・・・」
「何を・・・」
「・・・よく聴け、ローズ。質問だ・・・」
 突然シモンの声音が変わる。ローズは何かを言おうとするが、張り付いたように声が出ない。
「・・・お前にとって、俺は何者だ?」
 倒すべき敵、と言おうとした瞬間、ローズの脳内で何かが白く弾ける。今まで封じられていた・・・いや、今までもじわじわと沁みだしていた何かが、一気に封印を破ってローズの脳内を駆け巡る。・・・ローズの意思とは別に、口が自然に動き出す。
「・・・・・・・あなたは、・・・私の・・・、ご主人様です・・・。え?」
 自分で自分の発言に驚くローズ。
「・・・よろしい、よく覚えていたな。そう、俺はお前のマスターだ。・・・お前はその携帯から耳を離すことができない・・・。俺のいう言葉は全てお前の脳に直接届く・・・」
 携帯のスピーカーを通じて矢継ぎばやにシモンの指示がローズの耳に注ぎ込まれると、ローズの頭の中は沸き立つようにかき回されていく。心の底に隠れていた何かが急激に膨れ上がっていく・・・。
 ローズは頭を振る。これは・・・暗示だ。しかし、自分は洗脳薬を嗅いだ覚えは無い。だから、この携帯から耳を離すことなんて・・・。
「・・・疑っているな・・・。では、力をこめて携帯から耳を離してみろ・・・。離そうとすればするほど、耳と携帯は離れなくなる・・・」
 ・・・言われるまでも無い。さっきからやっている。しかし、スピーカーはローズの耳にピタリとくっついてはなれることがない。
「・・・そうだ。その携帯は離れない。その携帯から流れる俺が言う言葉はお前の筋肉を直接動かす。お前の魂を塗り替える・・・。思い出せ・・・お前は俺の奴隷だ。俺に従うことが悦びの奴隷だ・・・」

−−−シモン様・・・シモン様・・・、シモン様こそ私のご主人様・・・、シモン様に従うことが私の悦び・・・、私はシモン様の奴隷・・・どれい・・・ドレイ・・・ーーー

 心の中から沸き立つ言葉は・・・最初は小さく・・・次第に大きく・・・。やがて、頭の中を埋め尽くす・・・。ローズの理性が悲鳴をあげる。
「・・・ふざけないで!」
 ローズは左手でメイスを振り上げ、呪文を唱えようとするが、シモンはそれを片手で制するように左腕を突き出して宣告する。
「お前は魔法が使えない」
 途端、ローズの頭が真っ白になる。・・・呪文が、出てこない。口をパクパクさせるローズを見て、シモンはさらに言いつのる。
「・・・今から10数える。するとお前は深い深い眠りに落ちる・・・。10・・・9・・・」
 シモンの誘導が始まった。
 ローズもこうなったら行動は早い。メイスを握り締めたまま全力でシモンに向かって走り出す。・・・魔法が使えなくても、白兵戦で十分だ。この間合いなら、10秒以内に屠れる。
「!!!・・・8・・・7・・・6・・・」
 シモンはローズの突然の行動に驚き、花束が入っているダンボール箱を蹴飛ばしながら逃げ出すが、カウントダウンを止めない。表情は焦っているが、その焦りを少しも出さないあくまで冷静なシモンの声が、携帯越しにローズの頭に注ぎ込まれる。・・・頭の中にカウントダウンがこだまする。
「・・・5・・・4・・・3・・・」
 ローズはフェイントをかけながらシモンを部屋の隅にまで追い詰める。シモンは後ろ向きに逃げるが、体勢を崩しながら壁にぶつかる。でも、カウントの前に奴の声を封じれば、私の勝ちだ。・・・勝てる。
 ローズの腕からすさまじい勢いでメイスが繰り出される。狙いはシモンの喉笛。
 寸分違わぬ攻撃が、正に当たらんとする瞬間、シモンは巻き込むようにカウントを速める。
「2、1、ゼロ!!」
 刻が告げられ、時が凍る。

 不思議な光景だった。
 携帯片手に壁際に座り込んだシモン。同じく携帯片手に、メイスを繰り出しているローズ。そのメイスの先端は、シモンの喉元わずか数センチのところで止まっている。
 ローズの目からは、急速に光が喪われる。瞳にはシモンの姿が映っているはずだが、彼女の意識には届いていない。いや、そもそも意識そのものが喪われている。瞼がゆっくりと落ち、そのまま前のめりに倒れ込む。シモンはそれを抱きかかえる形になる。ローズの重み全てがシモンにのしかかる。あたかも全てを彼に委ねるかのように。
「・・・そう、そのまま・・・ゆっくり・・・深く・・・眠れ・・・」
 罠に陥ちた白い魔女は、シモンの両腕に抱えられながら、色の無い深い眠りに堕ちていく。腕から力が抜け、メイスが床に転がる。しかし携帯は相変わらず耳につけたままだ。耳元の琥珀色のピアスが、鈍く光った。シモンは彼女をあお向けにする。首の力が抜けているため、ローズの頭は何の抵抗も無く後ろに垂れ下がる。流れるような黒い髪、閉ざされた瞼、長い睫毛、半開きになった赤い唇、無防備な白い喉・・・。彼女の首筋に頬を寄せると、シモンは口を軽く開けて、喉を甘噛みする。・・・もちろん、ローズは反応しない。
「・・・チェックメイト、いや、むしろ将棋で言う『ヒシャトリ』という奴かな?」
 美しく危険な獣を捕らえた猟人の、勝利宣言だった。


 ローズに一通りの暗示−−−携帯越しではなく、直接のシモンの声で暗示が効くようになること−−−をかけ、再び眠らせると、シモンはようやく一息ついた。
「・・・やれやれ・・・心臓に悪い・・・」
 カーネリアの持っている携帯越しなら暗示にかかるのでは、と思いついたが、いきなり試して失敗しては大変なので、まずはドア越しに様々な指示を与えて、どの程度まで指示に従うか試してみた。・・・結果、携帯越しの歪んだ声ならどんなおかしな指示でも従うとわかったのでリモコン仕掛けの扉の鍵を開けたわけだが、・・・まかり間違えば喉仏を潰されていたところだった。やはり戦いを甘くみるものではない。
 シモンは改めて横たわるローズを見る。金糸で様々な意匠の装飾が施された白い上着は、倉庫の埃をかぶったせいか少し煤けているが、それでも彼女の持つある種の威厳と神々しさを減するには至らない。それでいて、光を反射させるエナメルのミニスカートから伸びる太腿は悩ましく、そのアンバランスさが卑猥な感覚をもたらす。ストッキングに包まれた白い太腿に触ると、手のひらに吸い付くようなすべすべとした感触と、柔らかな弾力が返ってくる。スカートの中を覗くと、ガーターベルトの奥に白いショーツが見える。触れると、さっきのオナニーの影響だろう、しっとり濡れたままだ。頬を撫で、髪の毛をかきあげる。それに反応することなく、ローズはただ静かに息をしている。ルージュのひかれた唇を指でなぞった後、キスをする。しかし、深い眠りについたローズからは、やはり反応は無い。
 さて、どうするか。今ローズには洗脳薬の毒針が深くささってはいるが、その針には引っかかりが無く、抜ける時にはすっぽり抜けてしまうだろう。・・・針を、もっと心の奥底まで喰い込ませる必要がある・・・。
「ローズ・・・ゆっくりと目を開け・・・ただし、意識はまだ眠ったままだ・・・」
 ローズはゆっくり瞼は開く。瞳には霞みがかかったまま、シモンの顔をぼんやりと見ている。
「ローズ、この炎を見ろ・・・」
 シモンのライターの炎に、ローズの焦点の合わない瞳が向けられる。
「お前は今この炎のゆらめきと俺の声しか感じることができない・・・。いいな・・・」
 コクリと、ローズがうなずく。
「よし、ローズ・・・、お前は今日、今起こったことを忘れる・・・。ルピアとカーネリアが洗脳されていることも・・・、自分が洗脳されたことも忘れる・・・。俺の奴隷、ということも忘れろ・・・。そして、今から俺が言うことをよくきけ・・・。お前は、俺につかまったカーネリアとルピアを助けるためにやってきたが、逆に俺に捕まってしまった・・・。ここは特殊な空間で、魔法は一切使えない・・・。そして、俺に物理的な攻撃もできない・・・。いいな・・・」
「・・・はい・・・」
「・・・お前はカーネリアとルピアを助けるために、俺の言う命令に従わなくてはいけない・・・。それがどんな命令だったとしても・・・、どんなに嫌な命令であっても・・・。それは二人を助けるためには止むを得ないことだ・・・。いいな?」
「・・・はい・・・」
「もう一つ・・・、お前の全身はすごく感じやすくなる・・・。お前の身体の全て・・・爪の先から髪の毛に至るまで、俺に触れられると性感帯に触れられたように感じてしまう・・・。しかもいつもの10倍も・・・100倍も・・・。更にその中でも唇と舌は、アソコと同じように感じてしまう・・・。乳首はク○トリスと同じように感じてしまう・・・」
「・・・・・・はい・・・」
「そして、お前は、俺の許可がなければイクことができない。感じるがイクことができず、ひたすらのぼりつめる一方だ・・・。いいな・・・」
「・・・はい・・・」
 シモンは、今与えた暗示をローズに何度か繰り返して言わせ、暗示を深める。
 その後、廊下に倒れていたルピアを倉庫に連れてきて、手錠をかけられたまま倉庫の床でぼんやりと座っていたカーネリアと共に催眠状態に堕とす。今日起こったことを忘れさせ−−ルピアにかけたシモンへの愛情の暗示も、カーネリアにかけた奴隷の暗示もキャンセルして−−今の状況に関して暗示をかける。今、自分たちはシモンに捕まってしまったこと。魔法は使えないこと。シモンに攻撃できないこと。自分たちを助けにローズがきてくれたが、捕まってしまったこと・・・。感じやすくなる暗示はローズと同じものを与え、二人を再び深く眠らせる。
「さて・・・、あなた方が信じる正義がなんぼのものか、見させてもらうとしましょうか・・・」
 すやすやと眠る三人のヴァルキリーを見て、満足そうにシモンは呟いた。


「・・・起きろ・・・ローズ・・・起きろ・・・」
 湖の底から不意に持ち上げられるような気がする。遠くから聞こえていた声が急速に近くなる・・・、ローズは目を開けた。
 周りは薄暗い。手足を動かそうとして、自分の両手と両足が縛られていることに気づく。
「ここは・・・」
「お目覚めかな?ヴァルキリー司令官のローズ様」
 からかうような声が上から降ってくる。見上げるとそこにはスモークのバイザーを上に上げた黒いスーツの男・・・シモンだ。
「・・・・・・そうか、捕まったのだな、私は」
 そう。カーネリアとルピアを助けようとして、私は捕まってしまったのだ。手足は特殊なテープで縛られ、破ることができない。魔法も、ここでは使えない・・・。確かそうだったはず・・・。
「おお、覚えているわけだ。それなら話は早いな」
「・・・これから私をどうする気だ?・・・カーネリアとルピアは?」
「・・・無事だ。ほら、そこに」
 シモンが指差したところを見ると、ルピアとカーネリアが床に座っている。両腕を縛られて吊るされている格好だ。二人は目を閉じて眠っているようだが、生きている。
 少し安心したところで、ローズはシモンをギロっと睨みつけ、
「・・・二人を解放しなさい。さもないと・・・どうなるかわかってるでしょうね・・・」
「・・・おいおい、自分の立場をわきまえて発言してほしいね。ローズ司令。あの二人はもちろん、お前の命も、全て私の胸先三寸で決まるのだが」
 ローズは息をのみ、しばらく沈黙した後、
「・・・私は覚悟してるわ。でも、あの二人は解放してほしい。・・・彼女たちには未来があるのだから」
「・・・殊勝だな。・・・実のところ、俺もあまり殺生は好まない。何にせよ、一つだけ言えることは、二人の命はお前の心がけ一つというだ」
「・・・私の心がけ?」
「そう・・・、お前がしばらく俺の言うとおりのことをしてくれるんなら、考えないこともない」
「・・・・・・言うとおり、というと?」
「まあ、ぶっちゃけて言えば、これからしばらく、俺に肉奴隷として奉仕してくれ、ということだ」
 ローズの白い頬が染まる。それが羞恥心によるものか、怒りによるものかは分からない。
「・・・随分とわかりやすい表現、ありがとう・・・。でも、私がそんなことをすると思ってるの?」
「・・・さぁね。俺はどっちでもいいんだよ。ただ、してくれないなら、二人にはお前の目の前で死んでもらう。さて、どうする?」
「・・・・・・」
 ローズは考え込んだ。・・・ネメシスの下郎に奉仕するだなんて、もちろん、そんなことはしたくない。しかし、・・・二人を見殺しにするわけにはいかない。私が彼女たちをヴァルキリーとして育てた以上、その責任は私にある。・・・救出失敗の責任も・・・。確かにこの男がどこまで信用できるかどうかわからないが、今すぐ私たちを殺す気が無いのは確かだろうし、・・・満足させて油断したところを逆襲する、という手もある。
 ローズはしぼり出すように言う。
「いいわ・・・、あなたに奉仕する・・・。その代わり、二人には絶対に手を出さないで・・・」
「ああ・・・約束する。その代わり、お前も余計なことは考えるなよ・・・」
「じゃあ、何をすればいいわけ?」
「・・・そうだな、とりあえずしゃぶってもらおうか」
 シモンはスーツのズボンを下ろすと、屹立したイチモツをローズの前に突き出した。赤黒い怒張に思わずローズは唾を飲む。顔を近づけると、汗と体臭の入り混じったつんとした臭いが鼻腔を刺激する。
 手は後ろ手に縛られて使えない。ローズは顔を突き出し舌をゆっくりと伸ばして亀頭に触れる。その瞬間、ローズの下半身に痺れが走る。思わずローズは舌を引っ込める。
「おいおい、どうした?・・・嫌なら別にしてくれなくていいんだぞ?」
「え、いえ、違う・・・。・・・ちょっと変な感じだっただけ・・・」
 もう一度舌を伸ばす。舌が触れた瞬間に、やはり下半身に刺激が走る・・・。さらに舌全体を使って亀頭、カリ、サオを満遍なく舐めまわし始める。舐めれば舐めるほどさっき感じた痺れの正体がはっきりしてくる・・・。アソコが、熱くなってる・・・。まるで、自分の舌で自分のアソコを舐めているみたい・・・。
 自分の唾液でシモンのモノが濡れた後、ローズはシモンの怒張を口に入れ、口全体を使って刺激する。ちゅぷ・・・じゅぷ・・・くちゅ・・・。頭をグラインドさせるたびに、ローズの口は卑猥な音を立てる。口いっぱいにシモンの熱いモノを感じる。唇から唾が溢れる。アソコがジュクジュクいっているのが自分でもわかる。
 突然シモンはローズの口からモノを抜く。「あ・・・」と思わずローズは声を出してしまう。行き所を失った舌が中を彷徨う。頬が紅く染まり、瞳が熱っぽく潤んでいるのだが、ローズは自分では気づいていないだろう。
「ローズ・・・感じているのか?」
「・・・そんなこと無いわよ・・・」
 ローズは濡れているのを悟られないように腿をぴっちりと合わせる。閉じた唇の脇から溢れた唾がつつっと垂れて床に落ちる。
「ふぅん・・・、俺にはそうは見えないんだがね・・・」
 シモンはローズの長い髪の毛をかきあげる。ローズの背筋にぞぞっと刺激が走る。思わず口が半開きになり、熱い吐息が漏れる。
「まぁいい。じゃあ続きをやってくれ。こんな調子じゃ日が暮れても終わらない」
「・・・・・・わかったわ・・・」
 ローズは再びシモンのモノを咥える。ちゅぷ、くちゅ・・・口先で軽く刺激するフェラから、やがて喉奥まで使ったディープスロートに移行する。頬をへこませ、舌全体で彼のモノを飴のようにしゃぶる。唇、舌、頬の裏・・・彼のモノが触れるたびに、ローズの全身に快感が走る。ノーブラなので乳首が勃つと自分の上着の裏地に当たり、それがまた異なる甘美な刺激を与える。「んん・・・」と鼻にかかった声が漏れる。ローズは熱くなった自分の陰部を床に擦り付けるかのように、無意識のうちに腰を動かし始める。
 シモンは彼女の頭を掴み、自分の腰を動かし始めた。ローズの口の中のものを掻き出すかのように、捻り、深く突き刺し、また捻る。縦横回転が加わった動きが、ローズの頭のなかをぐちゃぐちゃにする。快感が下半身から脊髄を貫く。
「ん、ん・・・んん・・・!!!!」
「・・・!いいぞローズ・・・。俺のを飲み干せ!!」
 シモンが喉奥まで突き刺した瞬間、シモンの熱い精はローズの喉奥に迸った。ローズもその瞬間に思わずイきそうになる・・・しかし、その快楽は頂点に到達しきることなく、再び熱いゆらぎの中にローズの意識は立ち戻る・・・。
 シモンはローズの唇からイチモツを抜いた。つつっと、白い糸がシモンのモノとローズの唇をつなぐ。ローズはシモンの液をごくりと飲み干す。
「はぁ・・・ん・・・ああ・・・」
 喘ぎ声がローズの口から漏れると、あふれた白い精がとろりと紅い唇から垂れる。頬を上気させたローズは、美しい髪を振り乱したまま、熱っぽく虚ろな目でシモンを見上げる。そんなローズをシモンは舐めまわすように観察する。
「ふふ・・・。さすがにカーネリアやルピアより数段上手だな・・・。やはり経験の差というものは出るらしい・・・。しかし、まだ俺を満足させるには及ばないな・・・」
「・・・・・・」
 ローズは虚ろな目をしたまま、ただ喘いでいる。・・・火照った自分の身体が疎ましい・・・。
「どうした?口で奉仕しているだけなのにイってしまったか?」
「・・・・・・イってなんかいないわ・・・」
 これは本当だ。・・・イきたかった・・。イかせてほしかったのに・・・。ローズの火照る身体の奥では熾火の様な赤黒い炎が燻っている。しかし、そんなことを悟られてはいけない。・・・私はヴァルキリーの司令なのだから・・・・・・。ネメシスの男に奉仕してイきたくなるだなんて・・・。
「ふふふ・・・でも、感じてはいるようだな」
 シモンはローズの膝を曲げると、スカートの中に手を潜り込ませて陰部の上の下着に触れる。シモンの指は何の抵抗もなく下着ごと彼女の陰裂に飲み込まれる。
「いや!!やめて!!!」
「・・・騒ぐな・・・」
 シモンがローズを睨みつけ、静かな、しかし有無を言わさない言葉を投げつける。ローズは、思わず言葉を飲む。
「今から足の縛りを解くが・・・余計なことを考えるなよ・・・」
 シモンはローズの足首のテープを解くと、ガーターストッキングに包まれた太腿をつかんで左右に開く。短いスカートがめくりあがり、その下に隠されていた下着が露になる。割れ目の上のショーツはすっかり濡れて変色し、陰毛が透けて見える。襞の一本一本が見えるくらいだ。
「へぇ・・・こんなに濡れてるのに、感じてないのか・・・?」
 シモンが嘲りの言葉をかけながら、指で秘部を布越しに刺激する。
「はぁ・・・!!あ、あ、やめて・・・!」
 倍増された快感が怒涛のようにローズの官能を刺激する。
 シモンはローズにのしかかると、上着をはだけさせる。ブラは既に外れており、豊かな乳房がはじける。乳首は既にすっかり充血し、たっている。
 シモンは右手で乳房をゆっくりもみしだきながら、左手で乳首を弾く。時折、舌で乳輪を舐め、舌先で勃起した乳首を転がす。
「ふわっ・・・ああ・・・やめ・・・ああああ!!!」
 いやいやをするようにローズは首を横に振る。乳首を触られるだけでこんなに感じるなんて・・・自分の快感が信じられない。
「ああ・・・ああああ・・・」
 シモンの指がローズの肌をまさぐるたびに、快楽の波動がローズの頭の芯をえぐる。シモンの指がローズの濡れそぼった花芯をつまむ。
「やめ、やめ、やめて・・・あ、だめ・・・イク・・・イっちゃう・・・・・・!!」
 体中の骨が融けてぐずぐずになって、脳の芯も全て蕩けてなくなるような錯覚。もうローズは、カーネリアとルピアのことは忘れている。助けるための方便としてではなく、ただ快楽のために快楽を貪っている。シモンの指がローズの唇に触れる。ローズはその唇を咥える。シモンの指が逃げようとするが、ローズの唇はそれを追いかけ捕らえる。口に入ったシモンの指にローズの舌が絡みつく。途端にローズの脳内が白く弾け、秘部からは液が溢れ出す。ちゅうちゅうとシモンの指を無心にしゃぶるローズ・・・、もう自分が何をしているか、わかっていない。シモンは彼女の顔を自分の方に向けさせて、頬を舐める。ローズの唇がシモンの頬に押し当てられる。熱い喘ぎと吐息がシモンの顔にかかる。シモンがわざと顔を後ろにそらすと、ローズはのしかかるようにそれを追いかける。「シモン・・・シモン・・・」うわ言のように繰り返す。後ろ手にしばられたままシモンにまたがり、ローズはシモンの唇を奪う。シモンがローズの唇を割り、お互いの舌が絡まり、唾液が交換される。ローズはシモンの唾液をごくりと飲み干す。熱い体液が食道を通過し、胃の中に流れる。そんな胃の粘膜に与えられる刺激すらローズに快感をもたらす。
 しばらく獣のようにお互いの唇を貪っていたが、やがてシモンが唇を離す。「あ・・・」と呟きながら、ローズは離れる唇をもの欲しそうに見つめる。
「・・・どうだ、ネメシスの男の唇の味は?そう悪くもないだろう?」
「・・・・・・」
 今ごろになって羞恥心が湧いてきたのだろう。ローズはうつむいて何も答えない。
・・・私・・・ヴァルキリーの司令官なのに・・・何てことを・・・。
「・・・やれやれ。少し趣向を変えるか・・・。おい、カーネリア、ルピア・・・起きろ・・・」

 今まで目を閉じて微動だにしていなかったカーネリアとルピアが目を開く。二人ともしばらく目をぱちぱちさせたり、あたりを見回していたりしていたが、ローズとシモンの姿を見つけて、絶句する。
「ローズ司令・・・」
「・・・ローズ司令・・・、何で・・・?」
 何でこんなところに、と言おうとしたのか、何でそんな格好で、と言おうとしたのか・・・。おそらくはその両方だろう。ローズも腕が後ろ手に縛られている状態では、はだけた胸を隠そうにも隠すことができない。白い乳房を曝け出して、ただうつむくだけだ。
「・・・部下思いの司令様が、君たちを助けに来てくれたのさ・・・。自らの身を犠牲にして俺の肉奴隷となることで、お前たちを助けようとしているんだ・・・。感謝するんだな」
「・・・・・・」
「ローズ・・・司令・・・」
 二人の視線が、胸をはだけさせ、顔中に唾液や愛液をまとわりつかせたローズに突き刺さる。それはローズを責めているわけではないのだが、かえってそれが辛い。
「さて、ローズ、続きをしてもらおうか。そうだな・・・改めて口でしてもらうか」
「・・・え・・・」
 シモンはローズの頬に肉棒を当てる。
「奉仕してくれ、と言っているんだ。・・・カーネリアとルピアに、大人のエッチがどんなものなのか、教えてやれ・・・」
 ローズはちらり、とカーネリアとルピアの方を見る。二人は息を呑んでローズがこれからやることを見定めようとしている。・・・目の前にはシモンの赤黒い怒張が屹立している。これを口に入れたら・・・また何がなんだかわかんなくなちゃう・・・。それに・・・二人の前で・・・そんなことできない・・・。しかし、さっき絶頂に到達できなかった快楽の残滓は、ローズの体中に瘧のように転移し、増殖し始めている。・・・二人を助けるためなんだ・・・自分がしたくてしてるわけじゃない・・・自分が感じたくてしたいわけじゃない・・・。ローズはそう自分に言い聞かせると、瞼を閉じ、シモンの肉棒を横からゆっくりと舐め始める。・・・目をつむっていれば・・・二人の視線を見なくてすむから・・・。
 ちろちろと緩慢に舌を動かして怒張を再び勃起させると、青臭いカウパーを先走らせた亀頭を唇にくるむ。それだけでローズの意識はふわっと遠のいてしまう。
「ローズ、目を開けて奉仕しろ、気合が抜けてるぞ」
「んん・・・」
 シモンの言葉にローズはまぶたを開ける。カーネリアは悔しそうにシモンを睨みつけている。ルピアは正視できずにちらちらとこちらを盗み見ている。二人に見られている、というその事実が、ローズの羞恥心を煽り、秘部を一層湿らす。ああ・・・私、見られて感じてる・・・。ローズは首をグラインドさせ、シモンを早く昇りつめさせようとする。しかし、やればやるほど自分が昇りつめていく。ちゅぶ・・・じゅぶ・・・じゅっ・・・じゅ・・・、ローズの艶かしい唇から淫猥な音が溢れ、シモンの怒張が再びローズの唾液でてらてらとぬめる。頬を使ったバキュームフェラを始める。じゅぶ・・・じゅぷぷぷ・・・。
 カーネリアとルピアは、自分たちの尊敬するべき司令官が、ただの淫乱な売奴となってネメシスの男に奉仕している姿を、ただ唖然と見つめる。
「おら、気合が抜けてるぞ・・・どうした?」
「はぁ・・・はぁ・・・」
 シモンのイチモツを口から離し、ローズの口から吐息と喘ぎ声が漏れる。イきそうでイけない快楽の波動が何十回もローズの中で寄せては返し、ローズはもう自分が何をしているか、よくわかっていない。ただ、さっきから休みなく動かしている舌と唇は感覚が麻痺しかかっており、疲れから動きが鈍くなっていた。
「ふん・・・。情けないな・・・。まあ約束だったからな。俺を満足させられなかったのだから・・・、とりあえず、ローズ・・・。お前は成仏してもらおうか」
 シモンがローズの髪の毛を掴んで引っ張りあげる。それすら今のローズには快感でしかない。「あぁ・・・」と甘い喘ぎ声を上げる。もはや抵抗する気力もローズには無い。
「待って!」
 たまりかねたように、カーネリアが声をあげる。
「・・・あなたを満足させたら・・・、私たちを解放してくれる・・・。そういうこと?」
「・・・ああ・・・まあな・・・」
 シモンは快楽と疲労に包まれているローズの頬と髪を撫でながら、ぞんざいに答える。
「だったら・・・ローズ司令の代わりに、私がやるわ!それでいいでしょ!」
「カ・・・カーネリア・・・」
 ルピアが驚いたようにカーネリアを見る。
「・・・だって・・・だって・・・これ以上・・・見てられないよ・・・」
 カーネリアがうつむく。自分の尊敬する人が汚されていく姿を見るのに耐えられないらしい。
「ほぅ・・・、それはそれは・・・。まあ、俺としてはどっちでも構わないぞ。お前が満足させてくれるなら、3人とも助けてやる・・・。だが、俺を満足させるのは大変だぞ・・・?」
 そんなカーネリアとシモンをルピアは見ていたが、やがて、
「・・・私もします・・・」
 と、決然と言った。
「ル、ルピア?」
「・・・二人なら、もっと早く終わらせられます・・・。それに、・・・あなただけ犠牲にさせられません・・・」
「ほぅ・・・泣ける話だねぇ・・・、思わず貰い泣きしてしまうよ・・・・・・」
「・・・あなたなち、やめなさい・・・」
 ローズがうめく。
「・・・お前はこれでも使って、自分を慰めてろ」
 シモンが取り出したのはさっき使った電動バイブだ。ローズの下着をずらし、ぬらぬらとぬめる陰裂に差し込む。「はぁ・・・」ローズはそれだけで背筋を弓なりに伸ばす。シモンがスイッチをいれると、そのバイブはブィイインという音を立てて、ローズの蜜壷をこねはじめる・・・。
「さて、ご要望どおり、奉仕してもらいましょうか。お二人とも」
「・・・わたしたちがあなたを満足させたら、それで終わりにする・・・そう約束してください!」
 ルピアがきっとシモンを睨みつけながら言い放つ。
「・・・いいだろう。約束しよう・・・」
 シモンは二人に近寄る。まずルピアの顎に指をかけ、自分の方に向かせる。耳たぶを甘噛みして髪の毛を梳く。暗示によって感度を高めさせられているルピアはそれだけで熱い吐息を漏らし始める。シモンはルピアの唇に唇を寄せる。最初は唇を頑強に閉じていたルピアも、執拗に唇を舐められているうちに、その唇が緩んでいく。・・・いうなれば今の彼女の唇は陰唇も同じだ。しかも100倍の感度を持った・・・。
「あぁ・・・」
 耐えかねたように喘ぎ声が漏れた瞬間、シモンの舌は彼女の唇を割り、彼女の歯茎を舐めまわす。ルピアの瞳の色が見る見る霞んでいく・・・。シモンの手がルピアのローブの下に伸び、下着の中の肉襞に触れる。じゅぷ・・・という音とともに指が入り込む。
「・・・おや、司令の艶姿を見てすでに出来上がってたのかな・・・。もうこんなに濡れてる・・・」
 シモンはルピアの愛液で濡れた指をルピアの唇に入れる。・・・あの理性的な瞳の輝きは、もうどこにもない。獣のように身をよがらせて、ルピアは反射的にシモンの指をレロレロと舐めまわす。
「ル、ルピア・・・」
 隣にいるカーネリアが、余りのルピアの変貌に驚きの声を挙げる。キスされただけであんなに蕩けてしまうものなの・・・?驚いているカーネリアにシモンが笑いながら顔を向ける。思わずのけぞるカーネリアの胸を服の上からシモンは揉みしだく。
「ん・・・ああああ・・・!」
 服の上からなのに、電流のような快楽が彼女の体を走り抜ける。下腹が熱くなり、陰部がじわじわ濡れていくのがわかる。シモンが耳に息を吹きかけると、それだけで脳髄の奥が麻痺してくる。シモンの唇がカーネリアの唇を奪う。・・・彼女の記憶の中では、シモンとキスをするのは初めてだ。しかし、体の奥底で覚えているのだろう。シモンが舌を動かすと、それに反射的にカーネリアの舌も動きはじめる。条件反射で、カーネリアの陰裂も潤む。シモンの手がカーネリアの上着とブラを引き剥がし、乳首をつまむ。「はっ!!」という叫びと共にカーネリアはのけぞる。甘い快楽の波が、二重にも三重にもカーネリアの身体を駆け巡る。シモンはカーネリアのスカートに頭を潜らせると、鼻先で布越しにク○トリスを刺激する。「きゃう!!」という鼻にかかった喘ぎ声とともに、淫臭が一層強くなる。シモンの目の前で花弁から愛液が壊れた蛇口のように垂れ流され、布を湿らしていく。
 シモンはスカートから頭を出し、カーネリアの頬を撫でる。凛々しかったカーネリアの瞳も、今やすっかり牝の官能に飲まれ、潤み、霞んでいる。はぁはぁ、と切なく漏れる吐息と、相手を探して彷徨う艶かしい舌が、彼女がもう情欲の虜となっていることを示す。
「・・・おやおや、二人とも、私を満足させる前に、自分が満足したくなってしまったようだが・・・」
 揶揄するシモンの言葉も、もはや二人の耳には届いていない。
「・・・くく、ルピアが切なそうにしているな、カーネリア、ルピアを慰めてやれ」
「あ・・・あ・・・」
 シモンの言葉に、カーネリアは虚ろな瞳をルピアに向ける。ルピアは太腿をすり合わせて、舌を伸ばしながら荒い息をしている。両腕は縛られたままなので、自分で慰めることができないのだ。カーネリアはおそるおそるルピアの顔に顔を近づける。ルピアはそれを待たないでカーネリアの唇を奪い取る。最初は驚いて逃げようとするカーネリアだったが、瞳の色が霞んでいき・・・、進んで舌を絡めるようになる。
 二人がキスに夢中になっている間に、シモンは二人の手首を縛るテープを剥がす。・・・もう、彼女たちに逃げる意思は無いだろう。
 シモンはローズに向き直る。バイブは絶え間なく動き、それが快楽を100倍にされたローズの秘部で生き物のように蠢いている。・・・本当だったら、もうとっくにイってしまってもいいはずだ。しかし、シモンの許可無しにはイくことができないローズは、ただひたすら押しよせる地獄のような快楽の波動に身を委ねるしかなかった。ほとんど白目をむきかけており、時折体がピクピクと痙攣している。余りの快楽のために流した涙の跡が頬にべっとりついている。
 シモンはローズの腕の戒めを解き、バイブを抜き取る。じゅぽ・・・という音と共にバイブが抜けると、秘部からは愛液がどろどろと垂れて床に水溜りをつくる。
「ローズ・・・聴こえるか?」
 うっすらと目を開けるローズ。虚ろな目は焦点が定まっていない。
「どうだ・・・随分とお楽しみだったようだな・・・」
「あぁ・・・ふわぁ・・・」
 快楽で頭が痺れているのだろう。まともな言葉が返ってこない。
「・・・どうだ。ローズ。イけたか?」
「・・・ううん・・・イけない・・・・・・さっきから凄く気持ちいいのに・・・どうしてもイけないの・・・」
「・・・くく・・・イきたいか・・・」
 シモンの言葉に、ローズはシモンににじり寄り首をがくがくと震わして哀願する。

「・・・イかして・・・お願い・・・イきたい・・・終わりにして・・・・・・このままじゃ、おかしくなっちゃう・・・」
「・・・そうか・・・じゃあ、今からお前にこれを渡す・・・」
 シモンが取り出したのは・・・ローズの愛用のメイスだった。
「これの柄を使えば・・・お前はイくことができる・・・」
 シモンの言葉に、ローズが唾を飲み込み、熱っぽい視線をメイスに向ける。
「ただし・・・、お前がこのメイスを自分のアソコにいれた瞬間・・・その瞬間、お前はヴァルキリーの司令という立場を捨て・・・俺の僕になるんだ・・・」
「え・・・?」
「だってそうだろう?・・・お前は今、手も足も自由だ。そしてここにお前の武器があり・・・敵であるネメシスの俺が目の前にいる・・・。ここで、このメイスを使って俺を倒すのではなく快楽を貪ることを自分から選ぶなら・・・それはヴァルキリーであることを捨てることに他ならない。・・・違うか?」
「・・・・・・それは・・・」
「ただし、そのメイスを使って俺を倒したら・・・お前は一生イクことが出来ない・・・。その絶え間ない、しかし頂点に届くことの無い快楽を抱えながら・・・一生過ごすんだ・・・」
「そんな・・・」
 太腿をくねらせながら、ローズはシモンの言葉を頭の中で反芻する。・・・イキタイ
・・・イキタイ・・・アレヲツカエバイケル・・・ケド・・・ソウシタラ・・・しもんノシモベ・・・。

「さぁ。ローズ。選ぶんだ・・・。自分の手で、自分の運命を・・・」
 シモンはローズにメイスを手渡す。ローズはふらりと立ち上がり、そのメイスを虚ろな目で見つめる。やがて、メイスを手にしたままシモンにゆっくりと近づく・・・。
 シモンまであと1メートル、メイスで突けば・・・シモンの喉笛を掻き切ることなど造作もない・・・。シモンはただ、無防備に立ってローズの瞳を見つめている。そんなシモンを、輝きを喪ったローズの瞳はくすんだ鏡のようにただ映し出している。

 これで突けば・・・おわり・・・迷うことは無い・・・これで・・・突けば・・・つけば・・・あれ・・・わたし・・・何をつくつもり・・・だったんだっけ・・・。
 
 陶然とした表情のローズは、シモンの目の前でぼんやりと立ち尽くしていたが・・・、やがてメイスをゆっくりと動かすと、当たり前のように自分のアソコにメイスの柄を差し込んだ。
「はぁ・・・!!!」
 ローズは、その瞬間、快楽に顔を歪め・・・・・・軽くイッた。
「・・・よし・・・よくやった・・・ローズ」
 シモンはローズの身体を抱きしめる。
「・・・これでお前は俺のモノだ・・・。俺の奴隷、俺の僕・・・。そうだな・・・」
「・・・はい・・・私は・・・シモン・・・シモン様の・・・僕です・・・」
 うわ言のように繰り返すローズ。
「俺に従えば・・・、お前は今のような快楽と満足を常に得られる・・・。お前の決断は正しかったぞ・・・」
「あ・・・ありがとうございます・・・シモン様・・・」
 ローズは、自分の主人に熱っぽい口調で感謝する。
「よし・・・そうしたら、契約を交わそう・・・。メイスではなく、俺の肉棒でお前を貫いてやる・・・、嬉しいだろう・・・」
「はい・・・嬉しいです・・・ありがとうございます・・・シモン様・・・」
 ローズの手からが力が抜け、メイスが落ちる。柄に愛液がまみれたメイスは、その主人を永遠に喪い、カランと床に転がった。

「ローズ・・・そうしたら、床に伏せて尻をこちらにむけて突き出せ・・・」
「はい・・・」
 ローズは迷うことなく床にうつ伏せになり、シモンに尻を突き出す。スカートがめくれ、白い臀部が露になる。ショーツはまだつけているが、汗と体液でべとべとになった上、激しく動いたためによじれ、ほとんど紐のようになっており、赤く充血した花弁と愛液でベトベトになって陰毛がはみ出している。それでいて、ガーターストッキングはそのままに、彼女の白い太腿を包んでいる。
 シモンはその紐になった下着をずり下げ、自分の肉棒でローズの陰唇を刺激する。

「あ・・・あああ・・・ん・・・シモン様・・・そんな・・・いじわるしないで・・・」
 一気に貫いてもらいたいローズは、腰を艶かしく動かして、シモンの棒を自分の肉棒に入れようとするが、シモンはわざとローズのひくつく穴の周りをぐりぐりと刺激する。
「お前・・・部下の前でそんなはしたないおねだりをしていいのか?」
 シモンの声に、ローズは顔をあげてぼんやりと赤と緑の戦闘服を着た二人を見やる。カーネリアとルピアは、シックスナインの体勢になって、相手の性器を舐めまわし、胸をはだけさしてお互いの乳首を相手の身体にこすりつけている。二人ともスカートはまくれあがり、ルピアのストッキングはずり落とされ、カーネリアの下着は丸まって足首に絡み付いている。時々びくっと身体が震えるが、お互いイクことができない無限に続く快楽の地獄を、虚ろな目をしたまま彷徨っている。しかし、二人は、時折ローズの方を羨ましそうな視線を送る・・・。その視線は・・・イカせてもらえる牝への嫉妬の視線・・・。
 ローズはその視線に微妙な優越感を覚え、シモンの方に熱い視線を送って嘆願する。
「・・・もう・・・私はヴァルキリーではありません・・・。シモン様の奴隷です・・・。だから・・・だから・・・シモン様に愛される姿を見られることは・・・恥ずかしいことではありません・・・。ですから・・・お願いです・・・イカせてください・・・」
「・・・よし、じゃあ、一気に行くぞ・・・」
 シモンは棒をローズの中に差し込む。じゅぷぷという音とともにローズの愛液が溢れ出す。襞という襞、粘液という粘液が、全てシモンのモノを待ち構えていたかのように一斉にシモンのモノを包む。下腹から生まれた快楽がローズの背筋をぞぞっと這いあがり、ローズの頭を白濁させる。
 じゅりゅ・・・じゅる・・ずちゅ・・・。初めはゆっくり、次第に早く、シモンは動いていく。
「ふわ・・・は・・・はう・・・んあ・・・」
 声にならない声をローズはあげ、自分の指や腕を噛む。
 ずちゅ、ずちゅ、ちゅ、ちゅ、じゅ、じゅ・・・。
 ・・・ある程度自己催眠でコントロールしているとは言え、シモンのモノもかなり限界に近づいている。
「ローズ・・・ローズ・・・行くぞ・・・契約の刻だ・・・誓え・・・俺のモノになると・・・」
「は・・・はい・・・わたしは・・・ローズは・・・・・あぁ・・・シモン様の奴隷です・・・。・・・永遠に・・・シモン様に・・・はうぅ・・・お仕えします・・・。わたしのご主人様は・・・シモン様だけ・・・、んあぁ・・・シモン様の為なら・・・何でも・・・何でもする・・・奴隷です・・・!!んあ・・・あああああ!!!!!」
 シモンのグラインドが頂点を極めた瞬間、ローズは絶頂に達した。シモンはローズの蜜壷から肉棒を抜き、ローズの顔に白濁液を振りかける。
「んんぁぁ・・・あはぁ・・・シモン様の・・・熱い・・・美味しい・・・・・・」
 ローズはうっとりとした顔で自分の顔にべっとりとついた精液を指で広げ、口に入れる。赤い舌に白い液が浮かび、滲んでいく。
「よし・・・ローズ・・・。お前は深く眠れ・・・。ただし、さっきの誓いは目覚めても有効だ・・・。わかったな」
 ローズはこくりとうなずくと、そのまま目をゆっくりと閉じて、その場に倒れ込んだ。
「シモン・・・様・・・」
 いつのまにかカーネリアとルピアがシモンの足元に四つん這いになってにじり寄ってきている。服装は乱れきっているが、スカートや上着は申し訳程度に身体を包んでおり、ニーソックスやブーツはそのままなのがかえって淫靡だ。
「・・・私たちも・・・はぁ・・・私たちにも・・・」
「お願い・・・イかせて・・・あぅん・・・もう・・・変になっちゃう・・・」
 喘ぎ声交じりの嘆願だ。
「・・・おいおい、俺を満足させてここから解放させてもらうんじゃなかったのか?」
「そんなのどうでもいいの・・・お願い・・・イカせて・・・」
「・・・ローズ司令ばっかり・・・ずるい・・・」
 二人の瞳の色はもう常軌を逸している。シモンは微妙に命の危険を感じた。
「わ、わかった。二人ともイカせるから、ちょっと落ち着け・・・」
「はい・・・」「・・・ありがとうございます・・・シモン様・・・」
 シモンは溜息をつくと、二人にも隷属の儀式を交わした・・・。

 その後は、シモンとヴァルキリーの3人は、お互い快楽をひたすらに貪りあった・・・。今までの立場や、これから起こることは全て忘れて・・・。
 4人があまりの疲労から眠りについたのは、日も傾きかけた頃だった。

 くしゃん。
 自分のくしゃみでシモンは目を覚ました。・・・素っ裸で寝ていたせいだろう。日中は暑いくらいだとはいえ、夕方になると少し冷え込む。
 シモンはあたりを眺め回す。薄暗い倉庫の中で、ヴァルキリーの3人は床に横たわり、気だるい眠りをむさぼっている。
 シモンは立ち上がると、水で濡らしたタオルを持ってくる。さすがに体中に唾液やら精液やらをつけたままアジトに3人を連れ帰るわけにはいかない。起こして自分でやらせてもいいのだが、幸せそうな3人の顔を見ていると起こす気にはなれなかった。
 まずは、カーネリアの顔を拭いてやる。
 ・・・にしても、こうして3人と愉しんでいられるのも明日まで・・・。明日の夜には3人まとめてベリル総帥に引き渡さねばならない。ベリル総帥が、ヴァルキリーを生かしておくことはないだろう。・・・おそらくは、処刑・・・。ヴァルキリーさえいなければ、このチキュウを征服するのはたやすく、特に彼女たちを生かしておく必要は無いからだ。
 シモンが物思いに沈んでいると、タオルの下のカーネリアがうんうん唸っている。シモンがタオルをどけると、真っ赤な顔をしたカーネリアが、ぜーはーぜーはーと息をしている。
「・・・おい、カーネリア。大丈夫か?」
「・・・はぁ・・・はぁ・・・あ・・・シモン様・・・」
 カーネリアが目を開く。目が潤んでいる。
「・・・夢をみました・・・」
「夢?」
「・・・・・・すごく綺麗なお花がいっぱい咲いていて、大きな川があって、船がぷかぷか浮いていて・・・・・・」
 ・・・濡れタオルで窒息して、三途の川を見たらしい。
「・・・・・・気のせいだ・・・、いいから寝てろ」
 汗をかいたカーネリアの首筋を拭いてやる。くすぐったそうな顔をしながら、カーネリアはシモンの顔をじっと見ている。
「・・・何だ。まだ何かあるのか?」
「・・・シモン様・・・。すごく暗い顔をしてます。・・・何か心配事があるんですか?」
「・・・ああ、とりあえずお前の頭が心配だ。もともと少ない脳細胞を酸欠で更に減らしてしまったらしいから」
「・・・・・・よくわからないんですけど、馬鹿にされてるんでしょうか・・・」
「・・・多少」
「・・・うう・・・」
 カーネリアは目をつぶり唸り声をあげたが、目を開くと、再びシモンに真剣な眼差しを送る。
「・・・でも、シモン様・・・。もし私たちでできることがあれば、何でも言ってください。私たちの心も身体も、シモン様のモノですから・・・」
「・・・・・・ああ、わかってる。余計な心配はしなくていいからゆっくり寝てろ・・・」
 シモンはカーネリアの瞼を閉じさせる。カーネリアはそのまま深い眠りに落ちる・・・。
 すやすや眠るカーネリアを床に横たえて、シモンは立ち上がる。
「・・・・・・今のお前たちなら、命をくれ、といっても、喜んで応じてくれるんだろうなぁ・・・」
 タオルを手にしたまま、シモンはぽつりと呟いた。
 この期に及んでも、悪の中間管理職は、相変わらず板ばさみのままなのであった。

 
 


 

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