洗脳戦隊


 

 
第四話 感情


「さて、これで仕事も終わりです」
 碧、ことルピアが清水先生ことローズから引き受けた仕事を終えたのはもう日が傾きかかっているころだった。
 学級委員長である碧は、時々こうやって雑用を頼まれる。
「朱美、勉強してるでしょうか・・・」
 学校では、お互いに本名で呼び合うようにしている。
 カーネリア、ルピア、ローズは言うなればコードネームだ。
 三人がヴァルキリーであることはトップシークレットであり、学校内で知っている人はわずかである。
 うーん、と伸びをしながら肩を揉む。最近どうも肩凝りがひどい。と、前に朱美に話したら「碧はおっぱいが大きいからね〜、うらやましいな〜」とひやかされた。
・・・やっぱり胸が大きいと肩が凝りやすいんだろうか。正直胸が大きくてよかったことなんてあまりない。
 人には色々言われるし、肩は凝るし、走りにくいし・・・。
 碧が帰ろうとしたその時、ドアががらっと開く。息を切らして朱美が飛び込んでくる。
「碧!大変!!」
「・・・まだ帰ってなかったのですか?あんまり遊んでると・・・」
「あーー!もぅ、本当に大変なの!こっちに来て!!」
 朱美が碧の反応も待つ間もなくそのまま廊下を駆け出す。
「待ってください・・・、って足速いんだから・・・」
 朱美を追って碧も駆け出す。朱美は階段を下りて一つ下の階に行く・・・。と、廊下にはうっすらと白い煙が立ち込めている。
 火事?
 煙の発生源は家庭科室らしい。ドアは閉まっているが、隙間から煙がもれ出ている。
「中から人の声が聞こえるんだけど、開かないよ!どうしよう、碧」
 朱美がうんうん唸りながらドアを開けようとしているが、どうやら鍵が中からかかっているらしく開かないようだ。
 ドア以外に入れる場所は・・・、と。
 碧があたりを観察すると、教室の下側にある小さい引き戸が目に飛び込む。
 調べると、一つだけ開いた。しかし、開けた瞬間に煙がもうもうと噴き出してくる。
「・・・た、たすけてくれ・・・」
 男の子の声が聞こえる。
「待ってて!今助けに行きます!」
 とはいえ、煙がひどい。少し吸うだけで咳き込んでしまう。
 碧が袖を長めにして口に当てようとするが、丈が足らない。
「碧!これを使って!!」
 朱美はハンカチを碧に手渡した。口に当てると湿り気がある。
 これがあればしばらくは持ちこたえられそうだ。
「ありがとう。朱美は先生を呼びに行っててください」
「了解!」
 と、朱美は一目散に廊下を走っていった。
 碧は引き戸をくぐって家庭科室の中に入った。
 ・・・辺りは真っ白で何も見えない。
「どこにいるんですか?」
「・・・ここ・・・ここだ・・・」
 家庭科室の隅のほうから声が聞こえる。
 腰をかがめて−−下の方がまだ煙が薄いのだ−−手探りで移動すると、床に伸びているガクランの腕が床に目に飛び込む。
 男子生徒がうつぶせになって床に倒れているのだ。
「大丈夫ですか!!」
 碧がハンカチ越しにくぐもった声を出す。
 煙を少し吸ったのか、頭が少し重い。
 彼の腕を引っ張って起こそうとするが、彼の体は動かない。
 よくよく見ると、男子生徒の体の上に机と椅子が大量に乗っかっている。
 そして彼の脇の床には缶詰上のものが大量に並んでいて、煙をもうもうと噴出している。
 どうやらバルサンのようなものが大量に焚かれているようだ。
 イジメかリンチにでもあったのだろうか。
 ともかく私一人ではこの机と椅子を全部どけるのは無理・・・と碧が救援を呼ぼうとすると、
「人を呼んでたら間に合わない・・・すまないが、君一人でこの机と椅子をどけてくれ・・・頼む・・・、助けて・・・」
 そうだ、人を呼んでたら間に合わない、私がやらないと。
 碧はぼんやりとした頭のまま、彼の体の上に乗っている机や椅子を一つずつどけはじめる。
 本当は両手を使いたいが、ハンカチを外すとあっという間に咳き込んでしまうので、左手で口を抑え、右手で机や椅子を投げ飛ばす形になる。
 しかし、片手ではなかなか埒があかない。両手でやろうとしてハンカチを外そうとすると、
「・・・ハンカチは・・・口に当てておいたほうがいい・・・この煙は吸っちゃ駄目だ・・・」
 男の子が言う。自分が苦しんでいるのに私のことを気遣ってくれるらしい・・・。
「ありがとう・・・わかりました・・・もう少しですから、我慢していてください・・・」
 彼の言うとおり、ハンカチは抑えたままで碧は作業を続ける。
 重いものを掴みすぎたのか、手がだんだん動かなくなってくる。
 ようやく彼の体が机の下から見えてくる。
 煙を吸って酸欠なのだろうか、頭がぼんやりする。
 碧はさらに強くハンカチを口に押し当てる。
「・・・君の名前は・・・?」
 男の子はうつぶせのまま碧に尋ねる。
「・・・碧・・・藤谷碧・・・」
 何でこんな時に名前なんて聞くのだろうか、という疑問がふと浮かんだが、碧は彼の言う質問に答えてしまう。
「碧・・・か、碧・・・、僕の体を持ち上げてくれ・・・」
「・・・はい・・・」
 碧は生徒の体を抱えあげ、肩を貸す。片手はハンカチに奪われているので、左手だけで必死になって引き起こす、すると彼の体が碧の方にもたれかかる。
 はじめて男子生徒と目が合う。
 ・・・あれ・・・この顔、どこかで・・・。
「碧・・・目をつむれ・・・」
 彼の言うままに、碧は目をつむる。
「よし、いい子だ。・・・僕はもう大丈夫だ。ありがとう。君のおかげだよ・・・」
 ・・・あ、よかった、彼は助かったんだ・・・。
「・・・どういたしまして・・・。じゃあ、早くここから出ないと・・・」
「そうだね・・・じゃあ、碧、目を開けて僕を見るんだ・・・ただし、僕が誰だか君にはわからない・・・わからなくていい・・・さあ、目を開いて・・・」
 碧は目をゆっくりあける。
 碧の虚ろな瞳には、ガクランを着たシモンの姿が映っているが、彼女は彼が誰だかすらもはやわからない。
 シモンはにやりと笑って言った。
「碧・・・これから君は僕の言う通り行動するんだ・・・いいね・・・」
「・・・はい・・・」
 素直に碧はうなずく。
「OK、じゃあこの煙りっぽい部屋から出よう。そこのドアを開けると隣の準備室に行ける・・・僕を連れて行ってくれ」
「はい・・・」
 碧はハンカチを口に押し当てたまま、シモンに肩を貸して準備室に入った。ドアがバタンと閉まる。

「碧。もうこの部屋は煙は大丈夫だ。ハンカチを外していいよ」
「はい・・・」
 碧の右手は、意思を喪ったようにだらりと下がり、その手からハンカチがぽとりと床に落ちた。
 彼女の目からは知性の光が消え、その瞳はただ深く昏い色に濁っている。長くハンカチを抑えていたせいか、半開きになった唇の脇から。
 唾液がつつっ、と床に垂れる。
「やれやれ、なんとかうまくいった、・・・・・・ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホ!!!!・・・」
 気が緩んだシモンは途端に床にうずくまって咳き込む。
 準備室のドアが開く。
「・・・シモン様、ただいま戻りました・・・」
 涙目をしているシモンがドアを見ると、そこには朱美−−カーネリア−−が立っている。
「ゴホッ!カ、カーネリア・・・す、すまんが水を一杯くれ・・・ゴホゴホッ」
 カーネリアから手渡されたコップの水を一気にシモンは飲み干す。
「・・・・・・ぷは。・・・本当に死ぬかと思った・・・」
 ぜいぜいと息をしながらシモンは汗を拭う。
 そんなシモンの悶絶を聞いても、碧はピクリともうごかず、そこに彫像のように立っている。
「カーネリア、煙玉の始末はしておいたか?」
「はい・・・机と椅子も元に戻しておきました・・・」
「よし、よくできた」
 ・・・作戦としては単純である。
 洗脳薬をたっぷりしみこませたハンカチを碧に手渡して、火事にまきこまれた生徒ことシモンを助けさせる。
 もちろん火事は愛用の煙玉をつかった演出だ。
 ただ、すぐに助けてしまっては洗脳薬の吸入が足らないので、シモンの体の上には山のように机と椅子を積んでおいて、それをどける作業中にたっぷり洗脳薬を吸わせる。
「ふふ・・・避難訓練だったら、濡れたハンカチを口に押し当てて煙を吸わないようにするのが教科書どおりの行動だったんだがね。優等生なのがかえって仇になったな、碧ちゃん」
 シモンは碧の頬を指でつつき、彼女の唇をなぞる。
 しかし、彼女はシモンの嘲笑を理解することはなく、ただぼんやりとシモンを見ている。
「しかし、あんなに机と椅子を積まないでくれよ、カーネリア。本当に潰れそうだったぞ」
 シモンがカーネリアをデコピンする。
「・・・申し訳ありません」
「まあ、結果よければ全てよしだ・・・さて、碧、俺の声が聞こえるか?」
「・・・はい」
 碧はぼんやりその場に立っている。
 普段はゆったりとしたローブに身を包んでいるので体のラインが見えにくいが、制服のブレザー越しにみると、大きな胸をしている。
 それでいて腰は形良くくびれ、膝丈まであるチェックのスカートからは白いふくらはぎが伸びている。
 さて、どうするか。最初の誘導だ。無理なことはできない。
 とりあえず、シモンは碧を椅子に座らせ、体を楽にさせ、彼女のことを聞き出すことにした。
 とりあえず碧の名のまま誘導したほうがよいだろう。
「・・・よし、碧、今から俺の質問に答えるんだ・・・いいな」
「・・・はい」
「よし、まず、お前の本名は何だ?」
「藤谷 碧です」
「家族はいるのか?」
「3人家族です。父と、母と、私です」
・・・。
 シモンはしばらく当り障りの無い質問を立て続けにする。それにスラスラと答える碧。
 シモンは質問を変える。
「碧、体のサイズは?」
「・・・ウェストが・・・59・・・お尻は・・・86です・・・」
「・・・胸は?」
 碧は少し口篭もった後
「・・・・・・・・・・90です・・・」
 と答える。
「ふーん・・・、碧、自分の胸が大きいのは嫌いか」
「嫌いです・・・」
「・・・なぜ?」
「・・・・・・男の子はみんな私の胸を見るし・・・女の子も、色々陰では言ってます・・・」
 まあそれもそうだろう。
 学力優秀、美人、スタイル抜群、学級委員をしていて先生の信頼もあつい。
 当然女子にはひがまれ、男子には夜のオカズとして使われるだろう。
「碧、彼氏はいるのか?」
「いません・・・」
「付き合いたいとは思わないのか?」
「・・・男の人は嫌い・・・です・・・」
 うーむ。レズなんだろうか。
 カーネリアと仲がいいのは確かだが、レズとはちょっと違うような気がする。
 シモンはもう少し深く突っ込んでみることにした。
「碧、今まで何人くらい男の人と付き合った?」
「・・・一人です」
「いつ頃、誰と?」
「・・・1年前に、部活の先輩と・・・」
「ふぅん・・・どこまでやったんだ?キスか、エッチか?」
「・・・エッチまで・・・しました・・・」
 うらやましい・・・。まあこの体もそのうち俺のものになる。今はあせらないことだ。
「・・・じゃあエッチはたくさんしたことがあるのか?」
「・・・1回だけです・・・」
「ふぅん・・・じゃあエッチしただけで別れたのか?遊びだったのか?」
 碧は答えない。
「・・・どうした、碧、答えろ、遊びでエッチしたのか?」
「・・・・・・・・・私は、本気でした・・・。けど・・・むこうは・・・・・・遊び・・・だった・・・みたいで・・・」
 碧の目から涙がつっと落ちる。
「遊び、というと?」
「部活の先輩たちの間で・・・私のこと・・・落とせるかどうか・・・賭けていて・・・それで・・・私は告白されて・・・私は・・・その先輩のこと好きだったから・・・付き合って、エッチもしたけど・・・先輩は、遊びだったって・・・・・・私の体だけに・・・興味があったって・・・」
 碧の体が震えてくる。
 シモンはあわてて碧の肩に手を乗せる。
 碧がびくっと反応する。
「・・・嫌い・・・男の人なんて・・・嫌い・・・・・・」
「碧・・・よく聞け・・・」
 シモンは涙にあふれる碧の目をまぶたの上からそっと抑える。
「・・・大丈夫だ、碧。今から3つ数えると君の心は静かになるよ・・・1、2、3」
 碧の体の震えが収まるが、まだ顔は少し強張っている。
 まずは、彼女の心の壁を取り除くのが先決のような気がする。
「碧・・・その先輩のこと、本当に好きだったんだな・・・」
 碧はこくりと頷く。
「よし、碧。よく聞くんだ。俺が今から10数える。すると、先輩のことを一番好きだった頃に、君は戻っていく。いいかい。先輩との悪い思い出は全て忘れて、先輩との楽しかった思い出、いい思い出、それだけが10倍にも100倍にもなって思い出されてくる・・・。そして、数え終わった時に目を開くと、目の前にその先輩が現れているんだ・・・お前は、自分の素直な心のままに行動するんだ・・・いいな・・・」
「・・・はい・・・」
 シモンは碧の体をゆっくり回しながら、彼女の耳元でささやく。
「じゃあ、数えるよ・・・1つ、2つ・・・君は少しずつ昔に戻っていく・・・3つ・・・4つ・・・先輩のことを一番好きだった頃に・・・」
 碧の表情が柔らかになっていく。
 力はすっかり抜け、首はシモンが体を揺らすたびにぐらぐらとゆれる。
「・・・5つ、6つ・・・先輩を好きな気持ちは100倍になっているよ・・・7つ、8つ・・・そして、目を開いて目の前にいるのがその先輩だよ・・・9つ、さあ目が開く・・・10!」
 碧がゆっくり目を開く。
 目が、ガクランを着たシモンに合う。
 碧の顔が赤くなっていく。
「・・・せ、先輩・・・なんでこんなところに?・・・というかここは?」
「・・・覚えていないのか?」
「うん・・・良く寝てたような気がする・・・」
「もう放課後だよ。家庭科室で寝てたみたいだよ、碧は」
「あれ、・・・そうなんだ・・・」
「いくら起こしても起きないし。碧も寝ぼけることあるんだねぇ。」
 碧はぶぅっと膨れる。
「そんなことを言わないでください・・・。私だって、寝不足な時くらいあります・・・」
「ん〜、でも、寝顔すごく可愛かったよ」
 途端に碧の顔が真っ赤になる。
「・・・ばか」
「写真に撮っちゃったし。今日はこれをオカズにしようかなぁ〜」
「・・・ばかばかばかばかばか」
 碧がシモンをぽかぽか叩く。
「あたたた、やめやめやめて」逃げ回るシモン。
「カメラ、返して下さい」
「嘘。嘘。写真なんかとってないって」
 慌てて弁解するシモンを、碧は上目遣いで見る。
「・・・本当に?」
「本当」
「・・・先輩、すぐ嘘つくから・・・信じられないです・・・」
「・・・そっかぁ。僕は碧から信用されてないんだぁ。嫌われてるんだなぁ、碧に」
 シモンはがっくり肩を落とす。
 慌てる碧。
「あ、違います。私、先輩のことを大好きです!」
「どれくらい?」
 いじけたように碧を見るシモン。
「えぇっっと・・・これくらい、かな?」
 両腕を一杯に広げる碧。
「僕はこれくらい碧のこと好きなんだけどなあ。僕が思ってるほど、碧は僕のことを思ってくれてないのかぁ」
 と、シモンは部屋の右の壁と左の壁をタッチしてみせる。
「そ、そんなことないです!世界の誰より先輩のこと好きです!」
「・・・言ってて恥ずかしくない?」
 碧は顔を真っ赤にしてうつむく。
「碧のそういうところも可愛いね・・・、ねぇ、こっちに来てごらん。外、すごくいい景色だよ」
 シモンは窓の脇に碧を連れて行く。
 空は赤く染まり、夕日が山に沈もうとしている。
「綺麗・・・」
 碧は移ろいゆく空の色に見とれている。
 シモンは碧を背中から抱きしめる。
「あ・・・先輩・・・」
「碧・・・僕のこと、好きなんだよね・・・」
「・・・はい・・・」
「じゃあ、それを証明して・・・」
 シモンは右手を彼女の胸に絡ませ、左手を彼女のスカートの下に潜り込ませる。
「せ、せんぱい!ここ、学校で・・・んんん・・・!」
 抗議の声をあげる碧の唇をシモンは塞ぐ。
 碧は最初は抗うような素振りをしていたが次第にその抵抗は弱々しくなっていく。
「んん・・・ん・・・」
 碧は鼻にかかった甘い声を出す。
 シモンの手はシャツの間から碧のたわわな乳房をリズミカルに揉みしだく。
 時々乳首の周辺を刺激すると、碧はあぁ、と声をあげて身体をシモンにこすりつける。
 抵抗ではなく、もっとしてほしいという哀願の動きだ。
 シモンの左手は一気に碧の下着を膝までずり落とす。
 抗う碧の腕を掻い潜り、彼女の秘められた割れ目を刺激する。
「ひゃっ。あ、いや・・・」
「ふぅん・・・もうこんなにぐっしょりしてる・・・、優等生なのにイヤらしいよね、碧は」
「・・・いや、そんなこと言わないで・・・」
「学年トップクラスの成績を誇る君がこんなことを学校でしてるって知ったら、みんなどう思うかなあ?」
「そ、そんな・・・あ、あああん・・・んん・・・」
 胸へ、秘部へ。シモンの刺激が激しくなり、碧は身体を激しくわななかせる。
 黒く長い髪の毛は千々に乱れる。
 脇、膝裏、脇腹、腿の付け根と、身体のあらゆる性感帯も満遍なく触られる。
 首筋をシモンの舌が這い回ると、碧の理性は完全に蕩けた。
「先輩・・・先輩・・・」
 碧はシモンの耳を甘噛みする。
 シモンは舌を碧に突き出してうねらせると、碧は水に飢えた獣のようにその舌に吸い付く。
 唇と唇が重なり合い、互いの唾液を飲み干しあう。
 シモンは手を碧の身体から離して、彼女の顔の頬を挟んで、碧の瞳を覗き込む。
 荒い息をしてシモンを見つめる碧。
「碧。僕のことが好きか?」
「はい・・・」
「そうか、じゃあ碧、この炎をじっと見るんだ」
 シモンはポケットからライターを取り出し、点火した。
 薄暗くなって部屋の壁には、ライターの炎で照らされた二人の影が妖しく映し出される。
「碧。僕は今から君に催眠術をかけるよ・・・、君が僕のことを愛しているなら、僕の催眠術には当然かかるはずだ・・・。催眠は、互いに信頼しあい、愛し合っているもの同士ならかかるはずのものだからね・・・。さあ、目を閉じて・・・、僕の声だけを聞くんだ」
 碧は目を閉じる。
「碧・・・しばらく君は眠っていろ・・・僕が指をならすと、身体から全ての力が抜けて、深い深い眠りに落ちるよ・・・はい」
 パチンとシモンが指を鳴らすと碧は膝からがっくりと倒れる。
 シモンは碧の体を支えて、ゆっくりと床に横たえてやる。
「・・・さて、優等生にはしばらく寝ていてもらうとして・・・」
 シモンはちらりと部屋の隅に目をやる。床の上にはカーネリアがいた。
「はぁ・・・ああ・・・んん・・・」
 カーネリアはスカートと上着を乱して、右手と左手の両方で自分の身体を刺激している。
 シモンと碧が抱き合うのを見て、我慢できなくなったんだろう。
「カーネリア、どうした?」
「ああぁ・・・シモン様・・・」
 カーネリアはうっとりとシモンを見上げる。
「シモン様・・・私は・・・シモン様の命令を果たしました・・・。どうか・・・カーネリアのことも・・・抱いてください・・・」
「ふふ、そうだったな、約束だったもんなぁ・・・」
 さて、これからこの二人をどう料理しようか・・・。
 シモンは、床に眠り込む碧を見ながら少し考え込んた後、ある実験を考えついた。

 
 


 

 

戻る