洗脳戦隊


 

 
第二話 正義



 煙幕が晴れると、後には横倒しになったソファとガラスの割れた窓、そして3人の少女が残された。
「本当に、逃げ足だけは速いのね、あいつ」
「・・・誰にでも一つくらい取り柄があるものです」
「ルピア、相変わらず厳しいよね・・・。でも、本当に許せない。人様の家に入り込んで、しかもそこにいる女の子に手を出すなんて!最っ低!」
 カーネリアは肘まである手袋をはめた腕を組んで怒りを露わにした。
ルピアは座り込んで動けずに震えている少女に忘却魔法をかけ、寝室で休ませた。
自分たちの存在は、あくまでも秘密だ。知られるわけにはいかない。
 ルピアは戻ってくると、細い指を頬に当てながら言った。
「あの男・・・確か、シモンとかいう名前でしたね。今までも何回か戦いで見かけましたが、そのたびに彼は逃げおおせていました。大した力も無いから見逃してたのですが」
「今までは、ただの下っ端だと思ってたから手加減してあげてたけど・・・、今度あったら、絶対に叩きのめしてやる」
 握りこぶしを固めるカーネリアを見ながら、ルピアはふぅ、と内心で溜息をついた。シモンとやらも災難だ。カーネリアは誰よりも正義感が強い。そして弱いものいじめが大嫌いだ。その一途さは戦隊ヴァルキリーの中でも群を抜いている。かわいそうだが、彼は次は無事ではすまないだろう。丸焦げか、炭焼きかはさておき。
「・・・そうね。次、もしあいつと勝負することがあったら、私一人でカタをつけるわ。あんな卑怯な奴相手に、ヴァルキリーが二人がかりだなんて、いい笑いものよ。いいわね、ルピア」
 カーネリアは闘志に燃えた目でルピアに言った。・・・時としてその闘志は暴走しがちで、それを抑えるのは自分の役目だ。
「・・・カーネリア、『窮鼠、猫を噛む』の喩えもあります」
「きゅーそねこおかむ?」
「・・・・・・要するに、どんな弱い相手でも追い詰められれば強烈な反撃をすることもある、ということです。どんな相手でも、あまり甘く見てはいけません」
「ルピアは心配性ね・・・。まあ、覚えておくわ。『急須の交換』、だっけ?」
「・・・・・・」
 追加。彼女のかよわい頭の代わりになってあげるのも、私の役目だ。



「しかし困ったな」
 ここはネメシスのアジトの作業場。所狭しとガラクタや機材、作業台が並んでいる。光源は裸電球だけで薄暗い。
 そこに、作業服を着て溶接作業をしているダリアと、シモンがいる。バーナーで金属が灼ける匂いがたちこめる。ダリアはこういうガテンな仕事もこなす。
「たしかにすごい効き目の薬だが・・・、どうやってこの薬をあの娘たちに嗅がせればいいんだ?」
「・・・」
 ダリアは黙々と溶接作業をしている。遮光マスクをつけているので表情は見えない。
「あーーー、どうやって、嗅がせればいいんだろーーなあーーー!!!」
「・・・・・・・・・・・・」
 どことなく、ダリアの持ってるガスバーナーが自分を狙うように角度を変えたような気がしたので、シモンはわざとらしい独り言を止めた。

 そう、これさえあれば、あの憎っき正義少女どもに復讐できる・・・、と思ったのだが、考えてみればそう易しい話ではないのだった。
 まず最初にして最大の難関はどうやって薬を嗅がせるかだ。
 昨日のサファイアはダリアのことを信用していたから、スキだらけだった。おそらく同じことを俺がやっても絶対にうまくいかない。彼女の影を踏んだ瞬間に鞭が飛んでくるに決まってる。それはカーネリアやルピアでも同様だ。俺は彼女たちに面が割れているから真正面からでは無理。腕ずくで、と言いたいところだが、それができるならとっくに勝利をおさめている。
「・・・まあ、お前では使いこなせないかもな」
 ダリアが溶接の手を止めて、マスク越しにつぶやいた。
「この薬はだいぶ前に完成していたんだが、ここにいた連中は筋肉馬鹿や重火器好きが多くてな。連中にはこういう搦め手は使いこなせないと踏んで、渡さなかった」
「サファイア様に渡しておけばよかったじゃないか」
「あの人はプライドが高くてね。勝負では卑怯な手は使いたくない、とおっしゃる」

「・・・じゃあ何か、このネメシスで、卑劣卑怯な戦術が大好きで、しかも貧弱筋肉で重火器も使いこないせず、搦め手に頼らなくちゃ闘えないような奴を探してたら、俺だったというわけか?」
 ダリアはマスクを外した。珍しく笑っている。
「そこまで自己分析できてるなら上等だ。自分の心理がわかる、ということは相手の心理を読むことにも長けているはずだ。・・・この薬は、そういう分析ができる奴にしかつかいこなせない」
「けなされているのか、ほめられているのか、よくわからん」
「もちろん、ほめているのだよ」
「お、人をほめることがあるんだ、ダリアでも」
「ほめられて調子に乗ってくれるならいくらでもほめるさ。・・・私も、この薬を改良するためにもっと実験データが必要だからな。お前は死んでも構わんが、実験データだけは持ち帰ってこい」
 ダリアはそう言って、作業室から出ていった。

 ・・・結局、頼れるのは自分のみ、ということか。
「確かに、そんなに簡単に洗脳できるなら、俺たちこんな苦労はしてないよな・・・。所詮は搦め手・・・」
 俺は手中にある薬瓶を眺めながら、ふと、考え込んだ。
「・・・なるほど、搦め手、か」
 俺の頭はフル回転しはじめた。


「ルピア!ルピア!」
「騒々しいです。何ごとですか?」
「これを見てよ!」
 カーネリアの手には新聞紙の文字の切り抜きを切り貼りした便箋が握られている。

「・・・脅迫状、ですか」
「そうよ!『戦隊ヴァルキリーのカーネリアに告ぐ。子供を一人預かった。帰してほしくば明日午後5時に○○山の倉庫まで身代金100万円持って一人で来い。二人以上来た場合、子供の命は無い。−−ネメシス第二部隊小隊長 シモン』・・・。どう思う?ルピア」
「・・・100万円で営利誘拐とは、かなり資金繰りに困ってるようです。あと、自分の名前を明記しているのに、切り貼りの脅迫状というのもいかがなものでしょうか」
「そんなことは聞いてないわ!!」
 ドン!と机の上に握りこぶしを叩き落すカーネリア。
「丁度いい。向こうから来てくれるなんて。今度こそ、徹底的に叩きのめしてやる」

「相手の指定どおり、一人で行くのですか?」
「一人で十分。卑怯な奴に、卑怯なことをして勝ちたくない」
カーネリアはきっぱりと言い放つ。
 ルピアは、この脅迫状に奇妙なものを感じた。そもそも金がほしいだけなら、何も自分たちに脅迫状を送らなくてもよいではないか・・・。しかし、何か罠があるとしても、それが何なのかはわからなかった。
 カーネリアは、文句あるの、といわんばかりに腕を組んで仁王立ちになっている。
こうなると、テコでも動かない。
 溜息を一つつくと、カーネリアに言った。
「・・・わかりました。ただし、2時間経っても帰ってこないなら、私も後から行きます。いいですね?」
「15分で十分よ。ありがと、ルピア」
 カーネリアはウィンクすると、準備するためにあわただしく部屋を出て行った。
「・・・心配しすぎもよくありませんよね・・・」
 ルピアは自分の胸騒ぎを抑えるように呟き、自分の作業に戻った。



 カーネリアが倉庫に着く。あたりは一面花畑で、どうやら花を出荷する倉庫らしい。夕暮れ時ということもあってか、今は人気が無い。壁の塗料は剥げ、ツタや雑草がいたるところに生えている。倉庫の扉は自分の背丈の2倍ほどだろうか。鍵がかかっていないことを確かめると、カーネリアは重いドアを開いた。
 中は暗い。
 身代金を入れた紙袋を手に、そろそろと中に入る。神経を研ぎ澄ます。人の気配は・・・一人、かすかにもう一人。数歩入ると、後ろのドアが閉まる。
 パチン、と明かりがつく。
「ようこそ、炎のカーネリア。遠いところをわざわざご苦労様」
 青と黒を基調としたスーツにスモークのバイザー、腰の特殊スティック、・・・前回逃げ出したアイツに間違いない。
「・・・、シモン、だったかしら。随分となめた真似してくれるわね」
 シモンはにやりと笑って応えた。
「こっちもなかなか資金繰りが厳しくてね。どこかの正義の味方さんが邪魔するものだから大変だよ。上役には怒鳴られるわひっぱたかれるわ。本当は俺もこんな卑怯なことはしたくはないんだがなぁ」
「あなた一人?」
「もちろん。君が一人で来てくれる、と信じてたからね」
 変だ。いつもの弱気なアイツではない。人質を取っているということで気が大きくなっているのだろうか?・・・だとしたら、そんな妄想は一撃で消しつぶしてやる。こんな卑劣な奴は絶対に許さない。
「子供はどこ?」
「安心しろ。まだ無事さ・・・。そこにぶら下がってるだろ」
 シモンが指差した先には小型クレーンがあり、縄で縛られた小さい女の子がクレーンからぶら下がっていた。ぐったりしているが、息はある。
 カーネリアは、あっさり沸点に到達した。
「・・・!今すぐおろしなさい!」
 カーネリアは腰の剣を抜いた。しかしシモンは落ち着き払っている。
「おや、立場をわきまえたほうがいいんじゃないかな?あの子が無事親元に帰れるかどうかは、君の心がけ一つだと思うんだけど」
「・・・身代金なら持ってきてるわ」
「OK。それでは交換と行こうか・・・。一応言っておくけど、この倉庫にはいたるところに爆薬がしかけてあるから、炎の魔法は使わない方がいいよ。こんなところで心中はごめんだからね」
 本当かどうかはわからないが、危険は犯せない。とにかく、子供を助けるのが最優先だ。
 カーネリアは紙袋を開けて札束を見せ−−これは本物だ−−床に置く。シモンは手元にあるクレーンのレバーを操作して、クレーンのロープが上下させて見せた。あのコントロールパネルを操作すれば、クレーンを下に降ろせるようだ。
「まず、その剣を捨ててもらおうか。危なくて近寄れない」
 カーネリアは少し迷ったが、剣を床に滑らせて壁際に投げつける。
「よろしい。それでは交換といこう」
 お互いが相手の位置へゆっくり移動する、ということになった。相手を見つめながら場所を移動する。カーネリアは睨みつけ、シモンは涼しい顔をして。
 カーネリアがコントロールパネルにたどり着くと同時に、シモンは身代金の入った紙袋にたどり着いた。
「ほう。確かに本物だ。さすがはヴァルキリー、金には困っていないらしいな」
 シモンが心底うらやましそうに言う。
「あ・・・あれ?」
カーネリアが困惑の声をあげる。レバーを動かしてもクレーンが反応しない。
「ちょっと!これ、動かないわよ」
「・・・使い方が書いてあるだろ。そのパネルに」
「その通りにやってるのに・・・」
「ああ、機械が少し古いらしくてな。起動するのに少しコツがいる」
「ちょっと、こっちに来てやり方を教えなさい!」
「・・・仕方ないな」
 シモンはカーネリアの方に向かっていく。
「・・・一応言っておくけど、ここで何かしでかしたら、ただじゃおかないわよ」
「こっちは金さえもらえれば何も言うことは無いさ。少しは信用しろよ」
「少女誘拐するような奴を信用しろだなんて無理ね」
 シモンはやれやれと肩をすくめると、意外と素直にやり方を教え始める。
「ここのレバーを右に、そしてもう一つのレバーを左に、そして、足元のペダルを踏む。これを同時にやるんだ」
 レバーを右に、もう一つを左・・・、レバーが離れた場所にあるので両腕が広がった形になる。足をペダルに・・・そして、そのペダルを踏んだ瞬間。

 シュッ。

という音とともに右手首にベルトのようなものがかかり、レバーに右手がくくりつけられる。
「!」
 左手にもベルトがかかりそうになるが、カーネリアは反射的にそれをよける。後ろからシモンがカーネリアを羽交い締めにする。何か布切れのようなものがカーネリアの口元に押し付けられる。
「!!!!」
 首を振るが、シモンは執拗にその布をあててくる。頭がふらつく。カーネリアが体ごとひねると、シモンの左腕から一瞬力が緩む。その隙を突いてカーネリアは左拳を力任せに叩きつける。
「☆☆!」
 ゴスッという鈍い音とともにシモンの顔に裏拳がヒットする。
「・・・ガァ・・・」
 シモンがうめき声とともにカーネリアから離れる。
 カーネリアは懐から短刀を取り出すと−−−別に隠してたわけじゃないわよ。奴が捨てろ、といったのは剣だったわけだし−−−右手を縛るベルトを切り、シモンに向かい直る。なるほど、油断させたところをクロロホルムでも嗅がせて眠らせよう、という魂胆だったわけだ。
・・・ここまで卑怯なことを良く思いつくわね。
「よくも騙してくれたわね・・・そこに直れ!成敗してやる!」
 カーネリアが短刀を構える。
「あ、いや、悪かった。本当にすまん・・・いてててて」
 拳が当たった左頬を抑えながらシモンは懸命に謝る。
「今度という今度は・・・許さない!」
「すまん。この通りだ。そのパネルはこの鍵がないと起動しないんだ。これで絶対大丈夫だ!」
 シモンはカーネリアに鍵を放り投げる。
 カーネリアがその鍵を差込んでひねると、クレーンがウィーンという音とともに震える。どうやら今度こそ本当だったらしい。
「な、な、大丈夫だろ。悪かった。身代金も置いていくから許してくれ」
 シモンはへっぴり腰の体勢から後ろを向くと一目散に逃げ出した。

 追撃しようかと思ったが、余りの情けなさにカーネリアは毒気が抜かれてしまった。まあお金も女の子も無事だったわけだし・・・。
「!。そんなことより、早く降ろしてあげないと・・・」
 カーネリアはクレーンを操作し、女の子を地面に降ろすと、急いで縄をほどいた。

「大丈夫?」
「・・・ん・・・。あれ、ここは?おねぇちゃんは?」
 目をこすりながら尋ねてくる。小学校高学年くらいだろうか。
「私はあなたを助けに来たの。もう大丈夫よ。お父さんとお母さんの所に帰ろうね」

「あ、うん・・・おねぇちゃん、ありがとう」
「疲れたでしょう?おねぇちゃんがおんぶしていってあげる」
 カーネリアが女の子をおぶろうと腰をかがめると、女の子は「あっ」と言って、たたたっ、と走り出した。
 「あ、どこ行くの?」
 女の子が向かったのは、出荷前の花束が山のように準備されている棚だった。そこには黄色、赤、青のさまざまな花が咲き誇っている。
 「きれい・・・」
 女の子が箱から花束を一つ取り出して顔を埋める。花束が大きいものだから抱えるのが大変そうだ。
「そうね、本当に綺麗・・・」
 その一帯はラベンダーの棚だった。棚がラベンダーの花束で埋め尽くされて、遠目から見ると青いじゅうたんが壁にかかっているように見える。ラベンダーの香りが鼻をくすぐる。
「おねぇちゃん、この花束、一つだけ、もらっていいかな?」
 女の子は花束をじっと見つめていった。
 可哀想だけど、人の物を盗っては駄目だ。
「ん〜、それは駄目。これはお花屋さんのものだからね」
「・・・そっかぁ、お母さんに見せてあげたかったのになあ」
 女の子がしょぼんとしてしまったのを見ると、ちょっと悪い気がしてくる。
「・・・うーん。だったら、おねぇちゃんが、後でお花屋さんで買ってあげる」
「本当?」
 女の子は、ぱぁっと明るい表情になった。
「じゃあ、おねぇちゃん、この花、よく覚えておいてね」
 女の子はカーネリアに花束を押し付ける。青いラベンダーがたくさん詰まった花束。
「おねぇちゃん、この花じゃなくちゃだめだよ。お花の匂い、覚えてよ。すーーーって吸って?」
「はいはい。おぼえるわ」
 カーネリアは息を大きく吸った。ラベンダーの香りが胸一杯に広がる。
「うん、いい匂い」
「でしょ、これお母さんにあげたら、喜ぶと思うなぁ」
 女の子はうきうきと話す。それを見てると自分まで嬉しくなってくる。
「おねぇちゃん、花をよく見て、何個花があるか数えてよ」
「えぇ〜?たくさんあるよ」
 ラベンダーは一つの茎に何十個もの小さい花が鈴なりに咲いている。これを数えるのは大変だ。
「だって何個あるか覚えておかないとおんなじものが買えないよ、おんなじくらいいっぱいじゃないとだめだからね。はい、い〜っこ、に〜こ」
 女の子は腕をぶんぶん振り回してせがむ。
「わかった、わかった。じゃあ数えるよ。一個、二個、三個...」
 両手で抱えるのに精一杯の花束の中には50本以上のラベンダーがある。一つの茎に何十個もの青い小さな花が咲いている。ラベンダーの香りで鼻がツーンとしてくる。

「よーく、花を見て。小さい花がいっぱいだよね。ちゃんと見て数えてよ」
「・・・うん、でも、多すぎて大変だよ・・・とりあえず、一本だけ全部数えるね・・・」
 目の前に青い青い小さい花。一個数えたかと思うと一つ飛ばしてしまう。匂いの吸いすぎか、頭が少し重い。
「じゃあ、私も一緒に数えるよ。よーっつ、いつーつ、むーっつ・・・」
「七つ、八つ、ここのーつ・・・とお・・・」
 何だろう、すごく、頭がぼうっとしてくる。
「おねぇちゃん、疲れたら座って数えていいんだよ」
「...そっか、座れば、いいんだね・・・」
 カーネリアは、ゆっくりその場にしゃがみこむ。腿の上に花束を乗せて、体全体で包み込むようになる。
「もっと花に目を近づけないとわからなくなっちゃうよ・・・」
「うん・・・」前のめりになって花束を抱きしめた形になる。
「今いくつまで数えたか覚えてる?」
「・・・とお・・・」
「そうだね、じゃあ続きからいくよ、おねぇちゃん、じゅういち、じゅうに・・・」
 もう、目には青い小さな花しか入ってこない。一緒に数える女の子の声と自分の声が溶けてぐるぐるまわっている。
 女の子の手が後ろからそっと自分の肩を挟みこんで、ゆっくりと揺らし始めたが、カーネリアは気づかない。
・・・。・・・。
「・・・さんじゅうに、・・・さんじゅうさん・・・」
「おねぇちゃん、聞こえてる?」
「・・・うん・・・」
「すごくいい匂いだよね・・・。ふかーく息を吸って。気持ちがよくなって体がふわふわしてくるよ・・・」
 すぅっ、と息を吸う。体がふわっと軽くなる。あ、ラベンダーって、こんなにいい香りなんだ・・・、わたしも、じぶんのいえに、かってかえろう・・・。
「おねぇちゃん、おねぇちゃんは、お花を数えるごとに、どんどん気持ちが良くなって、ねむたくなってきます。深く、ふかーく、眠ってしまいます。いいですね」
「・・・はい・・・」
「じゃあ、数えますよ・・・じゅう、きゅう、はち・・・」
「なな・・・ろく・・・ご・・・」
 体の揺れがどんどん大きくなっていく。
「にぃ・・・いーち・・・、・・・ゼロ」

 カーネリアの体から力が抜け、ラベンダーの花束が床に散らばった。



 女の子は、しばらくカーネリアの体を触ったり、瞳孔を確認していたが、
「いいぞ、シモン。堕ちた」
 振り向いた顔は、実験を一つ成功させた科学者の顔だった。
「お疲れ様。いい仕事に感謝するよ。ダリア」
「・・・しかし、お前も中々大胆なことを思いつくな。やってる内容は卑怯極まりないが。お前には正々堂々とか、お約束を守ろうとかいう心は無いのか?」
「・・・そういうこと言うかね」
 さっきカーネリアに叩かれた頬はまだジンジン痛む。
 カーネリアは首をがくりとうなだれて床に座り込んでいる。あたりはラベンダーが散らばっている。シモンはラベンダーを手早くどけた。自分まで薬にやられたんではかなわない。
「花に薬を染み込ませて嗅がせるか。その頭で考えたにしては上出来だ」
「おいおい、俺の体を張った演技もほめてくれよ。あの情けない逃走劇があったからこそ油断したんだ」
シモンがカーネリアの頭をなでる。
「私の演技と暗示があってこそだがな。それにしてもクレーンに随分とぶら下げられて体が痛い」
「感謝するよ」
「当然だ。・・・ところで、この娘はわたしを何歳だと思っていたんだ?随分子供扱いをしてくれたが」
 小学生じゃないのか?とつぶやきかけて、シモンはやめた。ダリアは子供っぽく見られることを嫌っているらしい。
「では、あとの暗示はお前がかけるんだな。これも練習だ。私はこの倉庫を外で見張っている。もう一人がくるかもしれん」
 ダリアはそのまま外に出て行った。
 俺と少女戦士だけが広く暗い倉庫に残された。


 俺はカーネリアの前にしゃがみこむ。
「カーネリア、こっちを向け」
 カーネリアはゆっくりと顔をあげた。目をうっすらと開けてこっちを見る。輝きを失った瞳だ。
「聞こえるか、カーネリア」
「・・・はい・・・」
 確かに暗示にかかりやすい状況になっている。・・・しかし、彼女にはどういった暗示を掛けるのがベストだろうか。最初の暗示だから、彼女の性格に合わないような無理な暗示は掛けられない・・・。俺は少し考え、ある趣向を思いついた。
「カーネリア・・・、お前は悪が憎いか?」
「・・・はい、憎いです・・・」
「卑怯な奴も嫌いだな?」
「嫌い・・・です・・・」
「よし、じゃあお前がもし悪い奴、卑怯な奴を目にしたら、どうする?」
「・・・懲らしめます・・・」
「どうやって?」
「魔法や・・・剣や・・・パンチで・・・」
「・・・カーネリア、それは間違いだ」
カーネリアはぼんやりとした顔で俺を見つめる。
「まち・・・がい?」
「そうだ、悪い奴は魔法や剣やパンチでは倒せない。倒すには、・・・相手にエッチなことをすることだ」
「・・・えっちなこと・・・?」
「そうだ。カーネリア、お前がエッチなことをすると、悪い奴は死ぬほど苦しむ。それ以外に悪い奴を倒す方法は無い」
「・・・えっちなことを、悪い奴に、する・・・」
「そうだ、カーネリア、悪い奴は、お前にエッチなことをされるのが一番嫌だ。エッチなことをされつづけると最後には死んでしまうんだ。そして、お前も悪い奴を見ると、相手にエッチなことをしたくなる、わかったな?」
「でも・・・」
「でも?」
「えっちなことを、するのは・・・恥ずかしい・・・」
「まあ、そうだろう。・・・ただ、それはお前が正義を貫くために行うことだ。この世の悪を滅ぼすための正しい行いなんだ。お前がエッチなことをすることで、世界の人が救われるんだ。だから、恥ずかしいけどお前は頑張って相手にエッチなことをするんだ。・・・わかったな?」
 焦点の合わない目のまま、コクリ、とカーネリアはうなずいた。
「じゃあ、言ってみろ。『私は、悪い奴を見ると、懲らしめるために相手にえっちなことをしてあげます。それは、正義の戦士として当然のことです。』」
「・・・わたしは・・・悪い奴を見ると・・・相手にえっちなことを・・・してあげます・・・それは・・・正義の戦士として・・・当然のことです・・・」
「よし、カーネリア。俺が手を叩くとお前は目を覚まし、今まで俺が話していたことは全て思い出せなくなる。だが、俺が言ったとおり、悪い奴を見たら懲らしめるためにエッチなことをするんだ。いいな?」
「・・・はい」
 俺はパンッと手を叩いた。

 カーネリアははっと目を開く。随分長い間眠っていたような気がする。ここは・・・倉庫。床に散らばるラベンダー・・・。カーネリアは今の状況を思い出した。倉庫に来いと言われて、誘拐犯につかまった女の子を助けて・・・、その後は・・・思い出せない。
けど、目の前には、あの卑劣な誘拐犯、シモンが戻ってきている。しかし助けた女の子の姿が見えない。
「・・・!!シモン!貴様!女の子はどうした!」カーネリアは立ち上がった。
「・・・ふっふっふ。どうしたのかなぁ、彼女は」とぼけるシモン。
「・・・さっきあれほど痛い目を見たのに、懲りていないようね」カーネリアは目を細めて戦闘態勢に入る。
「痛い目?ふふん、あのヘナチョコパンチか。あの程度じゃ、全然効かないね」
 シモンは笑っている。
「卑劣な奴だ・・・許せん!」カーネリアは怒りに身を震わせる。
「へぇ、許せないならどうするっていうんだ?」
「こうしてやる!」
 カーネリアは紅いスカートの裾をつかむと、じりじりとたくしあげはじめた。彼女の健康的な太腿が次第に露になっていく。
「うっ・・・」たじろぐシモン。
「・・・どうだ、これでも、彼女を返すつもりはないのか?」
真剣なまなざしでシモンを睨むカーネリア。
「それくらいじゃ・・・、まだまだ・・・」
シモンは多少苦しそうな様子で返す。
「・・・じゃあこれで、どうだ!」
カーネリアは意を決したかのように両腕を引き上げた。短いフレアスカートがまくりあがり、白いパンツが見える。
「ぐはぁっ!」
ダメージを受けたのか、シモンはくらくらとふらついている。
効いている!そうだ。相手は極悪非道の卑劣な奴だ。エッチなことをすればするほど苦しむ。
「これくらい、序の口だ!」
カーネリアは一気にシモンにかけより、押し倒す
「うわっ!」
 カーネリアは床に倒れたシモンと顔をつき合わせる。お互いの温もりと息が感じられる。許せない。あんな小さな女の子をお金のために誘拐するなんて・・・!カーネリアはシモンのバイザーを剥ぎ取り、彼の頭を腕で抱え込むようにして、唇を自分から重ねた。
「・・・!・・・!」
 もがき苦しむシモン。・・・唇を押し付けながら、カーネリアはシモンの唇の柔らかさを感じていた。・・・あ、悪い奴でも唇って柔らかいんだ・・・。カーネリアは少しうっとりする。
・・・だめ、これくらいじゃ。もっとエッチなことしなきゃ。確か、マンガに載ってた。エッチなキスのやりかたが・・・、カーネリアは思い出しながら、舌を使ってシモンの唇をこじ開け、舌を絡める。シモンの舌は始めは逃げていたが、やがて、根負けしたようにカーネリアの舌に絡みつく。シモンがくぐもった声でうめく。
・・・よし効いてる。カーネリアはさらに懸命にシモンの唇に貪りつく。お互いの唾液が相手の喉を流れる。生まれて初めてのディープキスは、カーネリアの敏感な部分を、ジュン、と湿らせる。
「ぷはぁ!」
 カーネリアが一息つく。ぜいぜい息をするシモン。苦しんでいる。当然だ。相手は悪なのだから。もっと、もっとエッチなことをしなきゃ・・・カーネリアはとっさにシモンの手をとり、自分の形の良い胸に押し当てた。
「うわぁ!!助けてくれ!!!」
 シモンは首を左右に振って苦しむ。胸をまさぐるシモンの手がカーネリアの上着のボタンを外して胸に直接さわってくる。混乱してやけになっているのだろうか?そんなことをすれば自分が苦しむだけだと言うのに。・・・気が付くとシモンの指はカーネリアのブラの下に滑り込み、キスで興奮して立った乳首を刺激し始める。
「あ・・・あん・・・」
 シモンの指が胸の敏感なところを触るたびに、カーネリアは鼻にかかった声を出す。
・・・いけない、私は相手を倒すためにやっているんだ。カーネリアは快楽を押さえ込もうと必死に努力する。...まだ、まだ倒れないの?カーネリアは潤んだ目でシモンを見つめる。
 しかし、シモンは苦しげだが、まだ倒れる気配がない。
 これ以上どんなエッチなことをすればいいんだろうか・・・。自分はあまりエッチなことを知らない。どうすればいいんだろう・・・。
「くくく・・・カーネリア・・・、お前は、究極秘技、フェラチオを会得していないのか?」
 シモンがあざ笑うように言う。
「ふぇら、ちお?」
「そうだ・・・、やはり戦隊ヴァルキリーの一員とは言え所詮若造、まだ未熟だな」
カーネリアはカチンと来た。
「何をいうの、わたしだって・・・。できるわよ。ふぇらちおくらい!」
「ほほぅ・・・では、やって見るんだな、付け焼刃のフェラチオでは俺にダメージを与えることはできんだろうがな。・・・一応説明してやるが、フェラチオとは、相手の性器を自分の舌で舐めて刺激を与える、究極のエッチ技だ。もちろん、正義の戦士様はご存知だと思うが」
 シモンはにやにやと笑って言う。
「も、もちろん知ってたわよ。そんな説明しなくたってわかってるわ!」
・・・知らなかった。そんな技があったなんて・・・。でも、それを私にしゃべってしまうところが、所詮は下っ端悪党の浅はかさね。
「じゃあ、見てなさい。本当に未熟かどうか、思い知るがいいわ!」
カーネリアはシモンのベルトを外し、スーツの下ズボンをずり降ろす。膨らんだモノがトランクスを押しあげている。トランクスをめくる。おち○ちんが勢いよく飛び出してくる。・・・あ、大きい。子供の頃弟は見たことがあるけど・・・まるで別モノだ。・・・いけない、こんなのに見とれてては。私は「ふぇらちお」をして、こんな卑怯な悪人は倒してやるんだ。
 カーネリアはおずおずと舌を伸ばして、舐め始めた。
 レロ、レロ、レロ・・・。ん・・・なんか変な感じ・・・。
「ふ、まだまだ。さらに口の中に入れて舐めまわすんだ。舐めれば舐めるほど、エッチだ。歯は当てないように気をつけるんだ。当てるとエッチじゃなくなるからな」
「ふわ。はむ・・・くちゅ...くちゅ・・・」
 カーネリアはシモンの言う通りに咥え始める。最初は唇で亀頭を包み込み、舐めま
わす。
「くぅ!」
シモンがうめいて、腰を押し出す。カーネリアの口の中にシモンのモノが深く差さる。カーネリアは頬をすぼめる。ちゅぱ・・・ちゅ、ちゅ・・・。いやらしい音が倉庫に響く。
「ぐぐぅ・・・カーネリア・・・貴様、フェラチオの才能があるな・・・、こんな上手な・・・いや、強烈なフェラチオ攻撃は・・・初めてだっ・・・」
 そうか、私には『ふぇらちお』の才能があるんだ。カーネリアは嬉しくなり、止めをさすべく、モノを根元まで口一杯に咥え込む。舌が生き物のように激しく、それでいて丁寧に這い回る。「ふぁぁ」カーネリアは思わず声を出す。・・・なんだろう・・・舐めていると、なぜだか、自分も気持ちよくなってくる・・・。いつまでも舐めていたい・・・。カーネリアの腰は自然と何かを求めるように動きはじめていたが、彼女はそれに気づかない。
「カーネリア・・・貴様・・・まさか自分も感じているんじゃあるまいな・・・?」
「・・・そんな・・・こと・・・くちゅ・・・ありま・・・ぶちゅ・・・せん・・・」
 シモンのモノを大事そうに口でほおばりながら、返事をするカーネリア。
「ほほぅ・・・それなら、ここがぬれてるのは何でだろうねえ?」
 シモンは足を伸ばし、カーネリアのスカートを器用にめくる。じっとり濡れた下着
の上から大事な部分を刺激する。
「はぁ!・・・あぁん!」
 体を快感が貫き、思わず口からモノを外してしまう。
「お、外してくれるか、なら今から反撃を・・・」
 駄目だ、それはさせない!カーネリアはすぐにフェラチオを再開した。
「ぐはっ!くぅ...苦しい・・・うぅ・・・」
 シモンが苦しんでる!カーネリアは嬉しくなり、さらに舌を激しく動かす。顔もグラインドさせるとさらにシモンが苦しむので、動きを激しくする。
「ん・・・、もうだめだ・・・!で、出る!!!」
 咥えたおち○ちんから何かが口の中に飛び出てくる。生ぬるくて、苦い。
「うわっ、頼む、それを、それを飲まないでくれ!!それは俺のエネルギーなんだ!!!」
 それを聞いて飲まないわけにはいかない。カーネリアはそのねばっこい液体を一気に飲み込む。唇から少しはみ出した分も、指を使ってぺちゃぺちゃと舐める。更に、シモンのおち○ちんの周りに飛び出た分も、丁寧に舐める。 シモンはばったりとあお向けに倒れたままピクリとも動かない。カーネリアも疲れ果ててぼんやりとしている。・・・けれど、カーネリアの体は火照ったままだ。
「どう・・・?悪は・・・正義の前に・・・滅びる運命にあるのよ・・・」
 ・・・あ・・・。私の体・・・。なんか変・・・。
「くく・・・流石は戦隊ヴァルキリー・・・、今の一撃はこたえたぞ」
「まだ・・・動けるの?」
 カーネリアは潤んだ瞳を体を起こしかけたシモンに向けた。目はなぜかシモンのモノにいってしまう。・・・アレがホシイ・・・。いや、それは、正義のために、欲しいんであって・・・いや欲しいんじゃなくて・・・彼を倒すために・・・必要なことだから・・・。別に私が・・・気持ちよくなりたいんじゃなくて・・・。
 口をうっすらと開いたまま、とろんとした瞳で自分のモノを見つめているカーネリアを見て、シモンはくくく、と笑って言った。
「どうやら・・・俺もお前も・・・まだ多少余力があるようだな・・・。ならば、最後の決戦だ!」
 シモンが立ち上がった。さっき『エネルギー』を放出してしなびたモノがまた、大きくなり始めている。
「カーネリア・・・お前のフェラチオは中々のものだった・・・。さすがの俺も本当に死ぬかと思った・・・。だが、お前も相当疲れているはず。俺もお前も、もう余力は無かろう・・・。こうなったらお互い最後の奥義を出し合って勝負するんだ!」
「最後の・・・奥義?」
「お前には、さっきのフェラチオを更に越える奥義がある。・・・ヴァルキリーの中でも一部にしか伝えられていない秘伝だ」
「え、どんな?」
「俺のエネルギーをお前の体に吸収しつくしてしまえばよい。・・・しかし、それは諸刃の剣。失敗すれば、お前は俺のエネルギーを吸収できず、敗北することになる・・・。正々堂々、勝負するか?」
 正々堂々、といわれて拒否できるカーネリアではない。
「もちろん勝負するわ!」
 カーネリアは立ち上がった。熱い液が彼女の太腿をつつっと伝って落ちる。唇からは白い液がうっすらとにじみ出ている。頬はほてり息は荒い。でも、まなざしは真剣だ。

「じゃあ、そこの壁に手をついて、尻をこっちに向けるんだ」
「・・・え?・・・なんでそんな・・・」
「お前の体の大事なところには穴があるだろう?そこがお前たちヴァルキリーの最終兵器だ。これは秘密だが、そこを使って俺たち悪のエネルギーを吸収することができるんだ」
「・・・わかったわ」
 カーネリアは壁に手をつくとお尻をぐいっとシモンに向けて突き出した。スカートがめくれて白い下着が露わになる。
「ふぅん、ぐちょぐちょに濡れてるな。さっきのフェラチオでかなり感じてしまったようだな」
 シモンは濡れて変色したカーネリアの白いパンツの横から指を入れて、彼女の秘部を直接触る。
「はぁ!いや・・・やん・・・」
「・・・準備はできているようだな・・・。ならば、最後の勝負と行こう。カーネリア、パンツを下ろすんだ。お前の大事なところに俺のここが入る。お前が俺より先にイッたら俺の勝ち、逆なら、俺の負けだ。さぁ」
 カーネリアは言われるままパンツを下ろす。パンツと蜜壷の間を愛液が白い糸のようにのびる。
 シモンはカーネリアの胸を背中越しにさすり、乳首を乱暴につまむ。
「あぁ!や・・・やめて・・・」
「やめて、というわりには、もうここはどうしようもなくなってるけどな」
 シモンが自分のモノでカーネリアの濡れそぼった部分を刺激する。
「んん・・・」
 カーネリアの腰が動くが、それはシモンのモノを求めての動きだ。
「じゃあ、覚悟するんだな」
 シモンがカーネリアにずぶりと入り込む。
「・・・痛い!」
「・・・カーネリア、この技は初めてか?」
 涙目でうなずくカーネリア。
 シモンは優しい声でカーネリアの耳元でささやく。
「大丈夫だ。痛くない。痛ければ痛いほど、エッチな気持ちが強くなる、そして気持ちよくなっていくんだ。お前の正義の戦士だから、痛みは感じない、わかったか」
「・・・はい・・・」
「そうか、偉いぞ、カーネリア」
 シモンはカーネリアの耳たぶを噛む。
「ふわぁ・・・!」
カーネリアが肩をすくませる。その勢いでシモンのモノは根元まで入り込む。
 シモンはゆっくりと動かし始める。
「カーネリア、どうだ?」
「・・・んん・・・、なんか、むずむずする・・・」
「そうか、すぐにむずむずを通り越して、気持ちよくなっていくよ・・・、ほら!」
ジュッ、ニュチュ、グチュ、という音と共にシモンのモノが出入りする。
「あ、ああ、はあぁ・・・。は・・・あん」
 カーネリアの顔が上気し、うっとりとした顔で喘ぐ。シモンが口に指を入れると
カーネリアはその指にしゃぶりつく。くちゅ、ちゅぱ、くちゅ、といった音が倉庫に響く。次第にシモンのものの動きが激しくなっていく。あぁ、という声とともにカーネリアの口が指を放つ。
「あ、あん、いや・・・ふわ・・・だ、だめ・・・い、いっちゃう・・・いって・・・あ、あ、や・・・」
必死で快感をこらえようとする。シモンの舌が彼女の耳裏
からうなじにかけて動き回る。それにこたえるようにカーネリアが腰を振る。パン、パン・・・とカーネリアの尻とシモンの腿がぶつかる音がする。
「いくんだ、カーネリア」
シモンの声がカーネリアの頭の中で弾けた。
「・・・や、いっちゃう、だめ、だめ、ぁああああああ!!ふあぁぁ!!!」
 カーネリアの体から力が抜け、壁にガックリともたれかかる。
 シモンはカーネリアの体からイチモツを抜き、カーネリアの口もとに持っていくと、精をぶちまけた。
 カーネリアは呆然とそれを顔と口で受け止める。どろりとした液がぼたり、と床に
落ちる。魔法戦士の服を着たままだったが、下着は脱げ、胸ははだけ、アソコからは血がにじみ出ている。
「カーネリア・・・残念だったな。お前の負けだ。お前のほうが先にイってしまったのだからな」
 シモンは厳かに言った。
 ・・・確かに、私のほうが先にイッちゃった・・・。悪に・・・負けた・・・。
「私の・・・負け・・・」
「そうだ。正義の戦士なのに、悪の手下に負けた・・・。これがどういうことだかわかるか?」
 ふるふる、と首を振る。
「お前はこれから永遠に俺に逆らうことはできない。俺に危害を与えることはできない。なぜなら、お前は、俺よりも弱いのだからな・・・」
「そんな・・・。私は・・・悪を倒さなくては・・・」
「その悪に倒されたのはどこのどいつだ!」
 シモンの怒鳴り声にビクっと体をちぢみこませる。目はうるんで、今にも泣き出しそうだ。
「・・・安心しろ」
 シモンは、一転、優しい声になる。カーネリアが顔をあげるとシモンは彼女の顔をどこからか取り出したハンカチで優しくぬぐう。
「お前は、戦隊ヴァルキリーの一員であることに変わりない。正義の戦士として、これからも正義のために闘うがいい」
「・・・本当に?」
 カーネリアはほっとしたように緊張を緩ませる。その隙を狙って、シモンはハンカチで彼女の口と鼻をふさぐ。・・・カーネリアの目が再び強く霞みがかる。
「だが・・・お前は、俺にだけは攻撃ができない。そして逆らうことができない。もし俺に攻撃をしたり、逆らおうとすると怖くて怖くてたまらなくなる。逆に、俺に従うと、心の底から安心できる・・・。弱いものは強いものに従うべきだ。そして・・・お前は俺よりも弱いのだから。・・・そうだろう?」
「・・・は・・・い・・・」
 シモンは洗脳薬を浸したハンカチを彼女から外した。あまり短い間に多用すると命の危険がある、とダリアは言っていた。この駄目押しが効いたかどうかは、次に彼女に出会ったときにわかるだろう・・・。
 シモンは彼女に、今日起きたことを忘れさせ、代わりに偽の記憶−−−女の子は無事でシモンは逃げ出した−−−を植え付けた。そして、家に戻って体を洗ってからヴァルキリーの本部に行くように命じた。
 下着をつけ、服の乱れを直し、シモンに体を一通り拭かれたカーネリアは、ふらふらと倉庫から外に出て行った。





「・・・はぁ・・・」
倉庫の隅に転がっているボロいソファにシモンは体を埋めるように座り込んだ。
「真っ白だ・・・・・・・・・。今までの戦いで、一番きつかった・・・」
「ほほう、若いのに随分とじじむさいことだな」
「!!」
 いつの間にか背後にダリアが立っている。
「脅かすなよ・・・もう一人のヴァルキリーかと思っただろうが」
 ダリアはシモンの前のソファーに座った。ソファーが大きいから、小柄な体がいつもよりもっと小さく見える。赤いチェックのワンピースに、ワンポイントのついた白いソックス。いつもの白衣やツナギ姿だと結構大人びて見えるが、元が童顔だから、良くて中学生、下手すれば大人びた小学生に見える。座るとスカートの裾が上がって細い足が剥き出しになるが、さすがにその奥を覗き込むのは憚られる。
「・・・というか、お前、いつから見てたんだ?」
「フェラチオが奥義だとかなんとかお前がほざき始めた頃からだが」
「ずっと覗き見か?趣味が悪いな。・・・なんなら一緒に参加すればよかったのに」
 ダリアは少し赤くなって言った。
「・・・馬鹿言え。薬の効き目を知るためだ。異星人同士の交尾に興味は無い・・・。しかし、よくあそこまで出鱈目が次から次へと思いつくな。呆れるを通り越して感心する」
「・・・夢中だったからな・・・。というより、俺もまさかあそこまであの娘がやるとは、正直思ってなかった」
「一回目であそこまで強く暗示にかかるのを見たのは、私も初めてだ」
 ダリアが口に手を当ててしばらく考え込む。かぶりを一つ振ってシモンに問いかける。
「しかし、なぜ、徹底的に洗脳しなかった?アジトに拉致すれば時間をかけて調教もできたはずだし、あそこまで深く被暗示状態にあれば、彼女をこの場で裏切らせてこちらの味方にすることもできただろう」
「・・・あ、その手があったか。考えもしなかった」
 ダリアは呆れたように溜息をついた。
 うーむ、とシモンは腕組みをして、続けた。
「まあ、さっきも言ったとおり、成り行き、というのもあったし・・・。後、もう少しじっくり楽しみたい、というのもあるじゃないか。なんというか、彼女が、己の信じる正義と俺の言葉との間で板ばさみになってる様子をもう少し観察したい、というかなあ・・・」
 ダリアはしばらくシモンの顔をじっと見て、つぶやいた。
「・・・お前に薬を預けたのは、失敗だったかもしれんな」
「甘すぎる、ってことか?まあ、長い目で見てくれよ。初めてだったんだから」
 シモンはすまなそうに返事する。
 そうだ。初めてにしてあの技術。そして、洗脳の過程を楽しむことへのこだわり・・・。ある意味、天性のものだ。・・・そして危険だ。
 しかし、シモンは彼女の言葉の裏にある意味をまだ感じ取ることはできなかった。

「とにかく、今日はもう帰って寝る。本当に疲れた・・・」
シモンはフラフラと立ち上がり、ダリアはそれを追って、アジトへと向かった。
 

 
 


 

 

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