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再び童話の問題

◆再び童話の問題

おふざけなので読む必要は全くないが、「やおい戦隊でれレンジャー」という替え歌をつくった。

もと歌は「電磁戦隊メガレンジャー」のオープニング曲なのだが、この曲には強く印象に残るできごとがあった。

「からだが かってに うごきだすのさ」という歌詞があるのだが、これを小さい子が「ガラガラ かってに うごきだすのさ」と歌っていたのだ。

その子の年齢だと、確かに「からだ」より「ガラガラ」のほうが親しみの多い語だっただろう。

また、谷崎潤一郎の「台所太平記」という小説には、「からだ」を「かだら」と言ってしまう女中さんが出てきたので、もしかすると日本人には「からだ」は比較的発音しにくい語なのかもしれない。

子どもに発音しやすいのは、なんといっても破裂音(「ぱ」など)や撥音(「ん」)である。

親戚の子は、赤ん坊の頃「さよなら」が言えなくて「ちゃんない」、「パチンコ」が言えなくて「パンチコ」と言っていたが、やはり前に音のある「ん」は発音しやすかったのだろう。

「アンパンマン」が乳幼児にこれほど人気なのには、ちゃんと理由がある。

言葉を話し始めたばかりの赤ん坊でも「あん・ぱん・まん」なら発音できるからだ。

乳幼児は自分で本を読めないため童話などを読んで聞かせるのは大人だが、自分で発音できない語が続出する童話が乳幼児の印象に残るとは考えにくい。

ストーリーの面白さももちろん大事だが、音と言うのは本当に大事だと感心させられる。

ごく小さい子向けの話を書くなら、主人公の名前は「からだマン」よりは「ぷんぷんマン」や「がらがらボンバー」のほうがいいだろう。

更に言うなら、恐らくは「がんばんマン(岩盤マン?)」のほうが、より憶えてもらいやすいはずだ。

長音も、小さい子には言いやすい気がする。

「きかんしゃトーマス」が人気なのにも、わけがあったのかもしれない。

たとえ「トーマス」が「とーましゅ」や「とーまちゅ」になったとしても、トーマスのことだと多くの人にわかる。

乳幼児が、童話などの主人公について(仮にも)大人と語り合うためには、やはり発音しやすい名前のほうがいい。

一方、「がらがら」が実は「からだ」だったと大人が気づくためには、もと歌を知っているか、あるいはもう少し高度な想像力が必要だ。

私の勝手な思い込みなので本当のところがどうかはわからないが、まだ舌のよくまわらない子向けの話を書く際には、よくよく気をつけなければいけない点だと思っている。

更新日:2013-05-07 19:49:22