事情を聴きにきた警察官に、北川さんは「自分で転んだだけ」と否定。2人を恐れていたためとみられるが、暴力から解放される最大のチャンスを逃した。
これが運命の転換点だった。まもなく、北川さんは岩本容疑者が住む文化住宅に転居させられ、“監視下”に置かれるように。そして今年2月、この部屋で命を落とした。遺体の肋骨(ろっこつ)は複数折れ、激しい暴行を受けた痕跡があった。
こうした経緯は、些細(ささい)なことに因縁をつけて他人を取り込んで“疑似家族”を形成し、暴力で支配した尼崎市の事件と重なる。
■責任なすりつけ
「私もたたかれるようになり、こわくて命令に従っていただけだ」
北川さんの失踪が明るみに出た5月、池田容疑者は押し寄せる報道陣に、失踪への関与は否定しながらも、北川さんへの過去の暴行などを認め、「とにかく仕返しが怖く、言われるがままだった」と“岩本容疑者主導”を主張した。
これを聞いた岩本容疑者は「罪をかぶせようとしているのは分かっているんや」と報道陣の前で恫喝(どうかつ)。池田容疑者らが逮捕された今月5日には「やっぱりあいつらやったか」とおびえた様子で語ってみせた。
しかし、池田容疑者は府警の調べに「岩本容疑者と2人で暴行した」「遺体をセメントで固めて捨てろと指示された」と供述。池田容疑者と親しい南政宏容疑者(56)も「岩本容疑者に指示された」と説明し、岩本容疑者は11日、死体遺棄容疑で逮捕された。
岩本容疑者は「死体も見ていないし、指示もしていない」と否認しており、府警の捜査の焦点は、岩本容疑者の「指示」の状況の解明と北川さんが死に至った経緯に絞られつつある。一方、李誠二容疑者(45)については、南容疑者らに頼まれて遺体を運んだだけとみている。