堺市堺区の北川睦子さん(69)とみられる遺体が奈良県の山中で見つかった事件は、知人の岩本孝子(63)、池田和恵(57)の両容疑者ら4人が死体遺棄容疑で逮捕された。大阪府警の捜査や知人らの証言から浮かび上がってきたのは異様な人間関係だ。北川さんから預金通帳を取り上げていた岩本、池田両容疑者、その2人の間にも存在した主従関係。序列の背景には、兵庫県尼崎市の連続変死事件と似た「暴力」による支配があった。
■きっかけは悪ふざけ
北川さんが岩本容疑者らが暮らす地区に引っ越してきたのは約3年前。まもなく夫が病死し、1人暮らしの北川さんが趣味のパチンコで意気投合したのが岩本容疑者だった。岩本容疑者の愛猫家仲間だった池田容疑者も交え、たびたび食事に行くほど親密になった。
ところが、平成23年冬、この関係が急変する。スナックで酒に酔った北川さんがふざけて岩本容疑者の頭を数発たたいたのだ。岩本容疑者は激怒し「後遺症が出た。慰謝料を払え」と執拗(しつよう)に要求。北川さんが応じたことをきっかけに「上下関係」ができあがる。岩本容疑者は暴力もふるうように。最後はキャッシュカードと通帳まで取り上げた。
昨年夏、自宅の電気を止められるまで困窮した北川さんに知人が援助を申し出たが、北川さんは「岩本さんに怒られる」と拒絶。知人は「まるでマインドコントロールされているようだった」と振り返る。
■逃したチャンス
岩本容疑者の“支配”に乗じて、北川さんに暴力をふるうようになったのが池田容疑者だ。
「あんたのせいで迷惑かかってるんや!」
池田容疑者は自宅に北川さんを呼びつけ、紹介したビル清掃の仕事をこなせなかったことを理由に、殴る蹴るの暴行を加えた。
2人の暴力が本格化したのは昨年夏ごろ。北川さんの顔はたびたび腫れ上がり、昨年10月には住民が「暴行を受けているようだ」と通報した。