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【コラム 撃戦記】

格闘技は原点回帰の時

2013年6月16日

 山梨県に、ほうとうというご当地料理がある。県人の私も大好物で帰郷のたびに食べ歩きをする。

 甲斐の国では戦国時代、ほうとうは武田軍の陣中食だった。鍋に野菜や肉など何でも入れて、みそスープで煮込む。戦後間もない時代は三食に米が食べられず、ほうとうは主食だった。私も小学生のころから母を手伝い、わが家のおいしい味が染み付いている。決め手はじゃがいも、かぼちゃ、きのこ。じゃがいもとかぼちゃをほどよく崩し、他の具と絡ませる煮加減がポイント。きのこは生命線で、山に自生する自然のきのこを干して保存し、冬も戻して食べる。

 帰省のたびに店を見つけては飛び込んで食べてきたが、満足できる味はなかなか見つからない。それが先日の帰郷で見つけた。ある和食店で出された品で、具だくさんの中に本物の山のきのこが入っていて感激した。「うちはずっと山のきのこです」と店主は話していた。

 人気店の競争は激しく、研究と工夫が進化につながる。それに比べ、進化どころか劣化さえ感じるのが格闘技界だ。団体の分裂が質を落としている。ボクシングも空手もキックも。甲斐名物の鳥もつ煮はB級グルメグランプリで優勝し、全国一になった。格闘技も“王者は一人”の原点回帰に知恵が必要な時代がきている。 (格闘技評論家)

 

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