田中輝(手前)にアドバイスをする田中隼=飛騨市のふれあい広場で(宮崎厚志撮影)
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名古屋グランパスのDF田中隼磨(30)が15日、声で周囲を動かす重要性を説いた。飛騨古川キャンプで取り組む相手を追い込む守備では、選手同士の声かけなくして連動したプレスはかけられない。そこで人一倍ピッチに声を響かせているのが隼磨だ。チーム随一の運動量を誇る右サイドバックが、チーム全体の人を動かす意識を高める。
「ダニエル、行け!!」「直志、そこが一番きついけど、頑張ろう!!」。山に囲まれた飛騨古川のピッチに、ハスキーな隼磨の声が響く。これまでは闘莉王の野太い声ばかりが目立っていたグランパスの戦術練習だが、このキャンプでは隼磨の声も引けを取っていない。触発されるように各選手が声をかけ合い、激しい空気が生まれている。
「そのへんは自覚している。怒鳴るくらい声を出してほしいし、かみ合わなかったら話し合えばいい。ここ数年のキャンプとは状況が違う。もっともっとやらないといけない」。雨中の紅白戦が行われた15日の午前練習でも、プレーと声で高い熱量を注ぎ込んだ。
これまでもポジションの近い選手には積極的に声をかけていた。だが今は、逆サイドや前線にまで言葉を投げかける。「声を出して、前を動かす。コースの切り方だったり。みんなが共通理解を持ってやれる」。一瞬の判断を積み重ねながら連動して相手を追い込む新しい守備戦術。迷えば隙が生まれるが、後ろから声がかかれば考える前に体が動く。自らも動き続けられる驚異のスタミナと、豊富な経験を持つからこそ、的確な指示を出せる。
「オレの声は盛り上げるとかじゃなく、あくまで戦術的なもの」と強調したが、ランニング時には若手の佐藤や牟田、さらには別メニュー調整中の小川にまで声をかけている隼磨。高いプロ意識で周囲を引っ張ってきた右サイドの職人は、チームを変えようという思いを人一倍ほとばしらせている。 (宮崎厚志)
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