南海トラフ:30年以内に起こる確率は60〜70%
毎日新聞 2013年05月24日 21時35分(最終更新 05月24日 23時21分)
政府の地震調査委員会(委員長・本蔵義守(ほんくら・よしもり)東工大名誉教授)は24日、南海トラフを震源とする巨大地震の長期評価を見直し、新たに発生確率を公表した。これまでは「東海」「東南海」「南海」の各領域に分けて発表していたが、駿河湾から九州・日向灘までの全域で統一した確率を計算。マグニチュード(M)8〜9クラスの地震が今後30年以内に起こる確率を60〜70%とした。
これまでの確率(今年1月1日)は、30年以内に▽東海88%(M8程度)▽東南海70〜80%(M8.1前後)▽南海60%(M8.4前後)▽日向灘10%(M7.6前後)−−だった。今回、確率を統一したため、東海では見た目の確率が下がり、日向灘では大きく上昇した。
一方で同委員会は、日向灘の領域が単独で地震を起こす可能性もあると指摘。その場合には従来の発生確率(10%)が参考になるとしている。
新たな発生確率は、対象領域を、同時に動きうる最大の範囲に想定。ただし、南海トラフ全域が同時に動いても、一部の領域に限定されても同じ確率で表すこととした。確率計算の基となる、過去の地震の発生領域や地震の規模が多様で、発生パターンを絞り込めないためだ。ある委員は「確率を出さないという意見さえあった」と予測の困難さを説明した。
また、東日本大震災を受けて内閣府は昨年、「南海トラフで起こりうる最大級の地震」としてM9.1も想定したが、今回の確率予測には使わなかった。
24日記者会見した本蔵委員長は「評価の手法や数値が変わったが、切迫度が変わるわけではない。むしろ、大きな地震が南海トラフで起こる可能性はかなり高いという認識で、防災を進めるべきだ」と話した。【渡辺諒、飯田和樹】
◇南海トラフ
駿河湾から九州沖にかけて延びる海溝。フィリピン海プレート(岩板)が、日本列島の西半分が乗るユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。付近では90〜150年間隔でM8級の地震が発生。直近では、1944年に東南海領域でM7.9、46年に南海領域でM8.0の地震が発生している。