[掲載]2009年2月8日
佐藤和歌子さん(28)
■無頼な20代のモツ酒場日記
20代の女性が書いた食べ歩きエッセーといえば甘味や洋食が思い浮かぶが、“ひとり焼き肉常連”のフリーライター、佐藤和歌子(さとう・わかこ)さんが食べ歩いたのは「ホルモン」。おやじの聖地に足を踏み入れ、ホッピー片手にミノ、レバ、シビレなどの臓物を食す日々をつづった週刊マンガ誌の連載が一冊になった。よくあるグルメ本と違って写真は一切ない。だがじゅわっと口に広がる味わいの至福の描写は、肉好きはもちろん、ホルモン無関心者の心の扉をも開かせる。魔力に満ちたエッセーだ。
「もともとホルモンに詳しかったわけじゃないんです。おいしいモツ焼き屋を一つ知っていたぐらいで」
それが、いくつかの店ののれんをくぐるうちにこう自問する。「そもそも、なぜロースでもカルビでもなく、ホルモンなのか」。自分で導いた答えは「赤身もたまにはおいしいけどさ、なんか予想を裏切らないというか、値段通りの味というか、つまんねえんだよな」。無頼だ。
“ひとりごはん”の魅力をきいた時の挿話もまたしかり。
「例えば、仕事で自己嫌悪に陥った時とか、ひとりでモツ焼き屋やとんかつ屋に行って、すごくおいしいのに1500円ぐらいだったりすると、『ああ、いい仕事してるなあ』と思う。私も原稿用紙1枚いくらという仕事をしているのですが、とても太刀打ちできないなと。その気持ちいい敗北感を味わうと、くさっててもしょうがない、がんばらないとなー、という気分になるんです」
慶応大の福田和也ゼミ出身。「酒と文筆ととんかつの師匠」と仰ぐ福田氏もちらっと登場。焼き肉に連れて行かれ、店を出るなり「で、何点だった?」と聞く師に「大人げないなあ、そういうことは面と向かって聞くもんじゃないっすよ」と返す楽しい場面も。
著者:佐藤和歌子
出版社:新潮社 価格:¥ 1,365